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奈良に302年続く老舗、中川政七商店

『奈良晒』と呼ばれる、奈良特産の高級麻織物の卸問屋からはじまり、時代の波を乗り越えながら、ものづくりを続けてきた会社です。

13代社長の中川政七さんは、就任当初から「14代は中川家以外に継いでもらう」と話していました。

そして今年。日本仕事百貨を通じて7年前に入社した千石あやさんが 14代社長に就任し、新体制を支える仲間を一挙に迎えることになりました。



日本の工芸を元気にするため、変化をいとわず進み続ける中川政七商店。

この記事では、会長となった中川政七さんとともに働く人を募集します。

具体的には、中川さんが全国の工芸メーカーに対して行ってきたコンサルティング、茶道文化を喫茶・稽古・物販という3つの入り口から提案する「茶論」のデジタルコミュニケーション、経営企画のような形で中川さんと伴走する会長秘書という、3つの職種の募集です。

これまで中川政七商店を引っ張ってきた中川さんとともに働く。将来どんなふうに働いていくとしても、その経験は大きな糧になると思います。

東京事務所を訪ねると、真っ白な会議室で中川さんが迎えてくれた。中川政七商店の13代社長であり、現在は会長を務めている。

社長交替から少し経ち、「表情がやわらかくなった」と言われることもあるそう。

「ぼくはそもそも、45歳で中川政七商店のトップは引退すると決めていて。お尻が決まっているからこそ、そこまではちょっと普通じゃないテンションでやってこれたと思うんです」

「このペースで65歳までいくのは、考えただけでもしんどいですよ(笑)」

その言葉通り、社長としての10年間、中川さんはものすごいスピードで駆け抜けてきた。

工芸業界ではじめて、製造から小売までを自社で行うSPA業態を確立。入社当時4億円だった年商を52億円まで伸ばした。

2009年には工芸業界特化型の経営コンサルティングをはじめ、これまでに全国16社の再生に貢献。

また、最近は新潟県三条市や佐賀県など、行政からの依頼を受けて月に一度、地域の事業者とクリエイターを対象にした経営塾も開講している。創業の地である奈良でも、今年から塾の企画・運営をはじめた。

ひとつの原動力となってきたのは、社長就任の前年に掲げた「日本の工芸を元気にする!」というビジョンだ。

とはいえ、そのビジョンは常に、危機感と隣り合わせだったという。

「年間にコンサルティングできる数は3〜5件が限界だとすると、このペースじゃ間に合わない。放っておけば20〜30年の間に業界全体が潰れる可能性もあります。だからひとりでも多く、工芸を立て直す力を持った人を増やしたい」

そんな想いが今回の募集にもつながっている。

募集するのは3つの職種。全国の工芸メーカーのコンサルタント。「茶論」のデジタルコミュニケーション担当。そして、中川さんと伴走する会長秘書。

それぞれ、どんな人を求めているのだろう。

「コンサルタントについては、はっきり言って、業界経験は問いません。絶対的に求められるのは、話をして、目の前の人たちを動かしていく説得力」

説得力。

「説得力を分解すると、ロジカルさとコミュニケーション能力だと思います。どんな課題を抱えていたとしても、相手は経営者。相対する覚悟みたいなものは問われるし、軽いものではないです」

意外にも、工芸に対する興味関心はそれほどなくてもよいとのこと。

どちらかと言えばモノへの興味を持っていてほしい。

「たとえば服が好きだとか、身の回りの生活雑貨にはこだわるとか。モノに対する興味の絶対値は必要だと思います。説得力と同時に、クリエイティブマネジメントの力も求められるので」

続いて、茶論のデジタルコミュニケーション担当。

茶論とは、季節のお菓子やお茶を楽しめる「喫茶」、人それぞれのペースでお茶を点ててみる「稽古」、茶器や茶杓などの道具を扱う「見世」の3つからなる事業。

さかのぼれば、千利休が茶巾として愛用した「奈良晒」の卸問屋としてはじまった中川政七商店。茶道は創業時よりつながりの深い文化であるものの、この20年間で茶道人口は3分の1まで減少してしまった。

そこで中川さんは、昨年5月に道艸舎(みちくさや)という別会社を立ち上げ、これまでまったく茶道に触れたことがない人にも茶道文化の入り口をひらく取り組みをはじめている。

「茶論では、主にデジタル領域のコミュニケーション設計ができる人を求めています」

コミュニケーション設計?

「ありとあらゆるタッチポイントをどうマネジメントするか、という話です。たとえば、展示会に出るのも、店頭で接客するのもコミュニケーション。そのなかでも、Webや動画などデジタル領域のコミュニケーションに強い人に来てもらいたい」

一般的には、Webマーケターと呼ばれる仕事に近いのかもしれない。

現在、茶論の拠点があるのは、ならまちにある「遊 中川」本店奥のスペース。9月には東京・日本橋に第二の拠点がオープンする。

「まだ伝えるべきブランドの中心もやわらかい段階です。そこを固めつつ、コミュニケーションに落としていく。大変ではありますけど、立ち上げ期ならではの面白さを感じられる仕事だと思います」

そして、会長秘書。

秘書と聞くと、スケジュールの管理や調整、メールや電話の応対などがパッと思い浮かぶかもしれない。

ただ、中川さんの秘書の仕事は、こういったイメージとは少し異なる。

「秘書は1年交代制にしているんですよ。その意味するところは、ぼくの直下でやるので、良くも悪くもかなり厳しく仕事の型を叩き込まれる。型がないと絶対にこなしきれない。一番成長するポジションだと思います」

たとえば、中川さんが取材を受ける際には同行し、議事録を作成。メールマガジンや食事会を企画し、社内外に中川さんが今考えていることを共有したり、全国を飛び回る中川さんに会社の現状をまとめて伝えたり。

経営陣と組織全体のコミュニケーションを円滑にするハブのような役割を果たしている。

「秘書を経験したあとは、他部署の重要なポジションに就くっていうのがこれまでの流れとしてはあります。現社長の千石がその最たる例ですね。まあ、弟子みたいなものです(笑)」

一見すると、3つの仕事は脈絡がなく、関連性も薄いように感じる。

しかし中川さんは、これらに「教育」という共通のキーワードを見出している。

「コンサルティングできる人を増やしたり、経営塾をはじめたりしているのは、ひとりで担当できる数に限界があるからです。各地で弟子みたいな人が生まれて、その人たちが成果をつくっていくほうが面白い」

実際、3年前に三条市で行った経営塾の一期生が手がけた最中アイスはよく売れているし、その後もお箸屋さんや料亭のブランディングにも取り掛かるなど、少しずつ目に見える成果が生まれはじめているところ。

工芸業界全体を考えるなら、プレイヤーは多いほうがいい。

「茶道だって、道を学ぶわけですよね。これも教育です。では、なぜ茶道人口がこれだけ減っているのか。教育のありようとして、時代に即していないところがあるんだと思うんですよ」

どういうことでしょう?

「いきなり紫の布を渡されるわけです。そして袱紗捌きという作法を一生懸命覚える。でも、それが何につながっているのかわからない。修行からはじめる選択肢しかないから、やる人が減っているわけで」

「茶道の一番の楽しさが凝縮されるのはお茶会だと思うので。まずは楽しさを味わい、それから奥深さを知る。自分でやってみたい、と思ってはじめて、お点前を知る必要が後からついてくるんです」

勉強でも、サッカーでも、茶道でも、経営でも。

人が学びを得て成長していくためには、共通の「型」があるという。

その型を伝えるのが教育であり、中川さんは今後、そこに注力していこうとしている。

ひとりでできることや、人生の長さには限りがある。工芸なり、地域なり、個人の一生を超えて何かを存続させるためには、教育は欠かせないものなのかもしれない。

いずれは中高生向けの学校や、老若男女さまざまな立場の人が通える場づくりを進めていく計画もあるという。

「10人いたら、1人は自主的に伸びていくだろうと。でも、もし10人のうち2人を伸ばせたら、この1人増えたことが教育の価値だと思います。それこそ、これからのぼくの仕事だなというふうに思うんですよね」

今回募集する人たちは、中川さんのもとで学び、ゆくゆくは自ら教育を実践していくことが期待されている。

今、一緒に働いている人はどんな人たちなのだろう。

コンサルタントの島田さんにも話を聞いた。

中途採用支援の営業や事業企画、シンクタンクでの人事コンサル、化粧品メーカーでの商品企画やマーケティングなどを幅広く経験したのち、中川政七商店へ。

中川さんの考え方に共感し、直接履歴書を送って入社したそう。

「数字を見つつ、クリエイティブも考えてPDCAを回していく。右脳と左脳を両方使う仕事が性に合っていて。その分野を体系化していた中川の考え方がスッと腑に落ちたんです」

今年の1月からコンサルタントとして働いている島田さん。

中川さんとともに働くことは、刺激的な反面、大変なことも多そうだ。

実際に働いていて、どうですか。

「求められるレベルは高いと思います。ロジカルとクリエイティブ両方の視点が必要ですし、経営者の方のお話を大事にしつつ、自分が経営者だったらという視点で考えてアウトプットを形にしていく。いろんな意味で、バランスをとれる人でないと難しいですね」

自ら情報収集したり、仕事のなかから学びを得る力も欠かせないそう。

「さまざまな分野で活躍されている方とご一緒させていただくことも多いです。自分もその案件のなかで学びを得られることは、わたしにとってはすごくやりがいになっていますね」

後日、茶論事業部長の宮下さんを訪ねた。

産業機器メーカーの営業や学習塾の教室長、バッグメーカーの経営企画など、さまざまな仕事を経験してきた宮下さん。

廃れていく文化を遺すことや、職人の技、生き方にはもともと興味があった。

「茶道って、ブラックボックス化していて。ぼくも今まではよく知らなかったんです。これを現代の人にも響く形で世に出していくことは、意義があるなと思って入りました」

とはいえ、茶道をただカジュアルに伝えることはしたくない。

産地の職人さんや総合監修を務める茶人・木村宗慎さんとやりとりしながら、本物の器を使って茶道の奥深さを味わってもらえるよう、工夫を重ねている。

「集客は予想に達していませんし、まだまだ課題はあります」

「ただ、稽古を体験したあとにこんなに楽しいとは思ってなかった!と話してくれる方もいて。まだ小さいですけど、茶道文化の復興に一石を投じられているのかなと思います」

ここで何を得て、どうその先につなげていくか。

自分自身のキャリアも、日本の工芸の未来も。いろんな可能性を創造できる環境だと思いました。

(2018/6/7 取材 中川晃輔)

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