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雑誌、広告、ドラマ、映画…
華々しい舞台で活躍するのは、モデルや俳優ばかりではありません。
主役を引き立てる、大事な“脇役”たち。
東京・参宮橋にある『barbie(バルビー)』は、撮影の現場に欠かせない小物や家具を貸し出すレンタルショップです。
このお店を経営するスタイリストの岡本さんは、barbieのほかにも参宮橋や笹塚で撮影スタジオ『barbie bleau(バルビーブロー)』を運営しています。
今回はbarbieのショップスタッフと、barbie bleauでの撮影補助やメンテナンスなどを行うスタジオスタッフを募集します。
参宮駅から歩いて3分ほど。
明治神宮の参拝路に面したbarbieの建物は、緑豊かな森に囲まれている。
中に入り、建物の2階にある撮影スタジオへ案内してもらった。
1階にショップがあるため、スタジオを利用するお客さんは小物や家具のレンタルを一緒に利用することも多いそうだ。
白ホリといわれる真っ白なスタジオではなく、窓があって自然光が入り込むハウススタジオ。リビングやキッチン、庭と多様なロケーションを備え、色々なシーンに利用できる。
ここで最初に話を伺ったのは、代表の岡本さん。
もともとインテリアスタイリストとして、女性誌を中心に活躍している方だ。
barbieという名前は、フランス・パリから郊外へ60㎞ほどの小さな村バルビゾンに由来する。
この地に魅せられた岡本さんは、そのテイストをスタジオに取り入れ、また、いたるところにスタイリストとしてのこだわりをちりばめているという。
「私は昔からハウススタジオばかりで撮影していました。でも、ハリボテっぽいスタジオが多くて。そういうのは絶対に嫌だったので、ここはリアルに見えるように、そして自分だったらこうしたいっていう希望をできる限り叶えてみたんですね」
たとえば窓は、色々な種類を用意するのはもちろん、インテリアのスタイリストとしてのこだわりがいくつかあるそうだ。
そのひとつが小窓につけた10cmほどの奥行。
「モノって引いて撮ることもあれば、寄って近くから撮ることもあります。窓のちょっとしたところにモノを置けると画になるので、絶対つくろうって。壁も単に塗るだけでなく、微妙なディテールにもこだわりました」
小物や家具のレンタルショップは2001年から、レンタルスタジオは2011年からはじめた。
お店はどうしてはじめることにしたのだろう。
「私自身、レンタルショップをよく利用していました。でも、当時のそういうお店って広告業界のスタイリストさん向けにモノを扱っているところが多くて。私は雑誌畑で育ってきているので、そっちとはちょっと感覚が違ったんですね」
当時の広告は高級志向。小物のペンひとつにしても高級な万年筆が多く、雑誌に合ういわゆるナチュラルなモノがなかった。
「だから、自分のコーディネートを実現しようとすると、結局雑貨屋さんとかに買いに行くことが多くなって。モノはどんどん増えていくばかりなので、それだったらと、自分で納得のいくお店をはじめました」
岡本さんと同じ悩みを抱えるスタイリストは少なくなかったようだ。
オープンから次第にお客さんは増えていき、barbieは数あるレンタルショップの中でもナチュラルなモノが豊富に揃うお店として知られるようになった。
商品数はなんと1万点を超えるという。
フラワーベース、オブジェ、フォトフレーム、洋書、ステーショナリーといった小物から、布や家具まで。棚ごとで分類されているものの、ひとつのジャンルだけでも1000点を超える。
「これだけあると、同じようなものがたくさんあって。たとえばフラワーベースでも、花を入れる花瓶と、オブジェとしての花瓶があります。その違いが感覚的に分かる方が良いかもしれませんね」
その感覚は、岡本さん独自のものでしょうか?
「そんなことないですよ。雑貨が好き、インテリアが好きっていう人なら分かると思います」
「モノがどんどん増えていくばかりで、人手が足りていないので。とにかくモノが好き!という人に来ていただきたいです」
barbieで働いているのは、たしかにそんな人たちだ。
入社5年目の小池さん。取材時はショップスタッフとして働いていて、現在は産休に入られているそう。
毎日モノに触れることで愛着が年々増していっているという。
「ホコリを被っていたり、奥のほうでシュンとなって見えづらくなっている子がいると、ディスプレイを変えてあげるんです。すると、お客さまが手に取って選んでくださるんです。思いをかけるとモノは動くんですね、不思議と」
商品のほとんどは代表の岡本さんがセレクトしたもので、なかには小池さんが仕入れに同行し、自分で選んで買い付けたものもある。
また、生地を買ってオリジナルのクッションカバーなどを自分たちでつくることもあるという。
そういった商品がお客さんに選ばれたときは、まるで我が子がデビューしたような感覚でとても嬉しいのだとか。
「今ではプライベートでも、お店に行くとディスプレイされている小物や家具にも目がいっちゃって。モノがもっと好きになりましたね」
小池さんは前職、アパレルのお店で店頭販売や買い付けの仕事をしていた。
心機一転、新しい仕事を探していたときに、2015年に日本仕事百貨で掲載されていたbarbieの記事に出会った。直感で感じた良さと、ちょうど雑貨や家具に興味を持ちはじめていたこともあって応募したという。
普段はどんなふうに仕事をしているのだろう。
「まず、スタイリストさんやカメラマンさん、製作会社の方など、第一線で活躍されているお客さまが来店します。お話をしていると『こんなものはない?』と聞かれることがあるので、私たちからご提案することもあるんですよ」
「ドレッサー周りで合う小物は?」「女性の部屋にありそうなものは?」など、漠然と聞かれることもあるそうだ。
そんなときは、まずはどんな撮影なのか、ターゲットはどの層なのか詳しく聞き、思い浮かんだものを提案する。
「1+1=2の世界じゃない、いろんな感覚がある中をすり合わせていく感じです。分からないことも多いですけど、最近はご相談いただくことが増えました。信頼に繋がってるのかな」
そうして注文されるアイテム数は5点のときもあれば100点を超えることも。そのすべての商品を貸し出し当日までに梱包し、お店まで取りに来たお客さんに引き渡す。
撮影後はお客さん自らが梱包し直したものが返却される。商品が戻ってきたら、梱包を解き、伝票とつけ合わせてチェックをする。
なかには商品が足りなかったり、割れたり汚れたりしていることがあるので、見落としがないよう一つひとつ丁寧に確認をする。
そうしてようやく棚に戻すのだが、これだけの商品数の中、元に戻すだけでも一苦労だ。重いものを運ぶことだってよくある。
「お客さまがお店にいないときも、やるべきことは膨大にあるんです。塗装が剥げていたら塗り直し、布が汚れていたら染み抜きもします。ホコリはだんだんと溜まっていくので、掃除もしないと。やることが多すぎて果てしないです(笑)」
お客さん以上に、モノと向き合うことの多い仕事なのかもしれない。
日々のお店の運営に加え、商品のメンテナンスまで。仕事量は多くなかなか大変かもしれないが、そこまで手をかけるからこそ愛着が湧いてくるのだと思う。
まるで自分のお店のように、小池さんがbarbieのことを語っていたのが印象的だった。
商品管理のリニューアルや新商品のデータ入力など、やりたいことはたくさんある。ただ日々の運営で手一杯なのが現状だ。
今回の募集で新たに加わる人とは、どうすればお店をより良くしていけるのかを一緒に考えていきたいという。
「私が入社したころは雑貨やインテリアの知識がほとんどなかったんですけど、たくさんのモノに出会って触れていく中で、日々一つひとつ学ばせてもらっています。なので、まずインテリアや雑貨が好きで、仕事に対して一生懸命取り組める方と一緒に働けたらな、って思います」
最後に話を伺ったのは、スタジオの運営を担当している中村さん。
もともとbarbieで2年ほど働き、一度退職してから2016年にこの会社へ戻ったという。
どうして再びここで働くことにしたのだろう。
「一度辞めてからデザイン事務所でマネージメントの仕事をしていたんですけど、いろいろあってお休みが必要になっちゃったんです。岡本とは辞めてからも近況報告がてらよくご飯に行っていたので、だったらうちにポジションつくるから戻ってくる?と言ってくれて」
もともと美大出身ということもあり、日々クリエイティブな人やモノに触れられるbarbieの仕事は好きだった。
現在は事務作業を中心に、今回募集するスタジオ運営・管理の仕事にも携わっているという。
「お客さまのお出迎えから荷物の搬出入、あとはスタジオのご案内。撤収作業も手伝って、お見送りして。そのあともまた次のお客さまに気持ちよく使っていただけるように、スタジオ内を復旧・メンテナンスする」
「ここまでは一般的なハウススタジオの業務なのですが、うちは撮影中にも現場に入り、お客さまのお手伝いをするんですよ」
ロケハンを対応する機会も多い。単に空間を貸し出すというよりは、適切な距離感で撮影がスムーズに進むようサポートしていくような役割なのだそう。
「スタジオスタッフには、テレビ番組の照明部にいた人間もいます。撮影に対する思い入れや熱量を持っていることが、ひとつ大事なポイントかなと思います」
経験やスキルは、とくになくても大丈夫でしょうか。
「そうですね。まずはお客さまの要望をしっかりと聞いて応えるコミュニケーション力、あとは応用力や気配り力も必要です。撮影の現場は千差万別なので、臨機応変に対応していかないといけない。あとはやっぱり撮影に対する情熱ですよね」
早朝や深夜に撮影が入ることもあるので、勤務時間は変則的。高価なカメラなど重い荷物を運ぶこともあるため、体力も必要だし、その道のプロに相対する緊張感もある。
そのぶん、やればやっただけ認めてもらえる環境でもあるという。
「プロの方ほど、よく見てくださるので。『また〇〇さんにお願いしたい』と言っていただけることもありますし、あるカメラマンさんに目をかけていただいて、専属のアシスタントになって卒業していったアルバイトスタッフもいます」
DIYも得意な中村さん。木材に塗装やエイジングをかけて、スタジオの内装を自らアップデートすることも。
挑戦したいことがあれば、いろいろとチャレンジできそうな気がする。
「代表の岡本も、いい提案であればすぐ採用してくれるので、やろうと思えば何でもできちゃいます」
「もちろん新しく入る方からも、私に吸収できることがあれば教えてほしいですね」
商品やお店に愛着を持って接するショップのみなさんと、撮影の現場に並々ならぬ情熱を注ぐスタジオのみなさん。
きっと好きになれるモノやコトがここにはあると思います。
(2017/11/30取材森田曜光 2019/9/10 更新 中川晃輔)