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こだわりはない
“好きだな”はある
そのメガネはルーツを超えて

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

「こだわりはとくにないんです」

その言葉は、否定的な意味に聞こえるでしょうか。

ただ、こだわりを持たないおかげで人の意見に耳を傾けられたり、いいと感じたことをどんどん取り入れられたりもする。縛られるぐらいなら、最初からこだわりを持たないほうがいいんじゃないか、とも思えてきます。

東京・渋谷で、35年前からメガネやサングラスなどのアイウェアをつくってきた株式会社グラスルーツ。

ここで働くみなさんは、余計なこだわりを持たない人たちだと思います。

中川政七商店やCLASKAなど、日本仕事百貨でも馴染みのあるライフスタイルショップや雑貨店で販売されている、グラスルーツのアイウェア。もともとは直営店でのみ販売していた自社ブランドを、「ここに置いてもらいたい」と思うお店を一軒ずつ回ることで広げていったそうです。

この1年ほどは海外にも進出していて、すでにヨーロッパやアジア、中東の国々とも取引をはじめています。

今回は、こうした国内外の取引先とのコミュニケーションを中心に担う企画運営スタッフと、商品の企画デザインを補助するスタッフ、商品管理などを担うアルバイトスタッフを募集します。

 

東京・渋谷。

たくさんの車と人が行き交う明治通り沿いに、グラスルーツの事務所はある。渋谷駅と明治神宮前駅のちょうど中間地点で、いずれの駅からも徒歩7〜8分。

エレベーターで3階まで上がると、メガネやサングラスの並ぶ空間が現れた。

ここで出迎えてくれたのが、デザイナーの小原芳晃さん。

グラスルーツの前身となる会社を、現代表のご両親が創業したのが1984年。

このビルの1階に直営店を構え、自社ブランド「JUJUBEE(ジュジュビー)」のメガネやサングラスなどを販売してきた。

「ただ、ここ数年でアイウェアに関わるいろんなことが変わっていて。JINSさんのような会社が出てきたことで価格帯も変化したし、それに伴ってメガネの役割も変わってきているんじゃないかと」

メガネの役割?

「今求められているのは、ライフスタイルアイテムとしてのメガネだと思うんです。生活のなかでフィットするものを、雑貨や生活用品に近い感覚で手にとる人が増えている」

価格が下がったことで、いくつかのメガネを所有し、必要に応じて使い分ける人も珍しくなくなった。それに、目が悪くない人でもファッションの一部として取り入れたり、パソコンをよく使う人ならブルーライトをカットしてくれるメガネをかけたりもする。

もともと視力を矯正する道具だったメガネは、生活様式や価格帯の変化に応じて、少しずつその役割を広げてきたことがわかる。

従来は直営店での販売やメガネ専門店への卸しをしていたグラスルーツ。このままでは時代にフィットしていけないと考え、2011年ごろから雑貨店やライフスタイルショップへの卸しを本格的にスタートさせる。

「自分がお客さんとして素敵だなと思う店に、一軒ずつノックして回って。『ここに置いてもらうにはどうしたらいいだろう?』と考えながら、少しずつ取引先を増やしていったという感じですね」

その甲斐あって、現在は取引先の8〜9割を雑貨店やライフスタイルショップが占めている。

また、生産体制も整備。メガネのまちである福井県鯖江市の提携工場で製造しつつ、一部の組み立て作業は社内でまかなうなど、なるべく安価にいい商品を提供するための工夫を重ねてきた。

さらに、商品のラインナップにも変化が。

メガネやサングラスのほか、メガネケースやメガネ拭き、ルーペなど、アイウェア周辺のさまざまな小物をリブランディングし、雑貨店などの雰囲気に合う形で企画・販売するようになった。

「リーディンググラス、いわゆる老眼鏡をつくりはじめたのもここ数年です。40代ぐらいからちょっと見えづらくなってきたという人でも手に取りやすいような、質感や色、ちょうどいいバランスのデザインを意識してつくっています」

昨年1月には、パリの国際展示会「メゾン・エ・オブジェ」に出展。

そこで新ブランド「Ciqi(シキ)」をお披露目したことを皮切りに、ヨーロッパやアジア、中東へも展開。今年の1月からはイタリアのエージェントと契約するなど、海外での流通網も新たに構築しつつあるところ。

「これまでは“雑貨”として出展する機会が多かったんですが、最近だとプリミエール・クラスっていう展示会に出たり、パリのポンピドゥー・センターに置いてもらったり。“ファッション”や“カルチャー”の分野でも受け入れられはじめているように感じますね」

この取材の直前にも、小原さんはパリに行っていたという。

デザイナーでありながら、これまでも生産管理や営業、海外戦略などさまざまな役割を経験してきた。

メガネに対する想いも相当なものだろうと思いきや、意外にも「思い入れやこだわりはとくにない」そう。

「工場でつくってみて、想定と違うものができあがることもあります。でもそこで落ち込むよりも、『これも可愛くない?』『こっちのほうが人気出そうだね』って言えるような柔軟性を大切にしたくて」

専門学校でメガネづくりを学んだものの、次第に窮屈さを感じるようになったという小原さん。

機能や造形美ではなく、もっと自然に人の生活にフィットするものをつくりたい。そんな自身の気持ちに気づいてから、こだわることをやめた。

「メガネが目立ってほしいとは思わないんですよ。それは服装や髪型、ライフスタイルとのバランスもそうですし、お店のなかに置かれたときの、アイテムの一個としてのバランスもそうで」

「誰にも馴染むけれど、何ものにも染まらないような、曖昧なものをつくっていきたい。だから海外に出していくときも、国内と大きく何かを変えることはなくて。このテイストはなんとなく好きだっていう感覚さえ合うのなら、国籍も年齢も性別も、関係ないんです」

そんなものづくりの姿勢を表す一例として紹介してくれたのが、ローネットと呼ばれる手持ちのルーペ。

胸ポケットやカバンにしまえる大きさ、ミニチュアのメガネのような形、色のバリエーションなど。さまざまなバランスに配慮した“ちょうどいい”デザインが国内外問わず人気なのだとか。

「海外の展示会にうちの商品を持っていくと、面白いんですよ。北欧の人が『北欧っぽい』と言ったかと思えば、『イタリアらしいデザインだね』とか『フランスに馴染むね』と言う人もいる。で、日本でつくってますって言うと『やっぱりね』って(笑)」

「みんなそれぞれ、解釈したいように解釈する。それでいいと思うんです。キャッチーな商品もあれば、少しわかりにくい商品もあって、自分なりの解釈で気に入ってくれる人がいる。その幅がブランドとしての魅力だと思うので」

小原さんのものづくりに対するスタンスは、ある意味ドライだと思う。自らデザインしたメガネについても、常に一定の距離感を保っている感じだ。

その距離感が解釈の余白をつくり、身に着ける人に自然と馴染むようなメガネを生み出しているとも言える。

今回募集する人も、グラスルーツや小原さんのスタンスに共感できる人だといい。

具体的に募集したい職種は3つ。

まずは国内外の取引先との窓口となってコミュニケーションをとっていく企画運営スタッフ。最近はとくに海外とのやりとりが増えているため、そこに力を注いでもらいたいとのこと。

「パリは文化の発信地だし、オランダのライフスタイルは日本と似ているところがある。スイスは小さい国だけど、お金があって購買意欲も高い、とか。商習慣や文化の違いを、日本にいながら感じられるのは面白いところだと思います」

ファッションやカルチャーなど、バックグラウンドの異なる人との関わりも多くなっている。その意味でも、さまざまな領域の人と関われる柔軟性や好奇心、センスの求められる仕事だと思う。

そんな日々のコミュニケーションを通じて得られた情報は、商品の企画やデザインにも活かされていく。その橋渡しをするのが、企画デザイン補助のスタッフ。

取引先とのやりとりに加え、商品の企画やデザインなど、小原さんの仕事を補助する形で関わることになる。

そして3つめが、商品管理やパソコンを使った作業、国内の営業サポートなどを行うアルバイトスタッフ。取引先ごとの要望を聞いて、正確に出荷やストックの整理を行うことが求められる役割だ。

「いずれにしても、スピード感は大事です。パッと動かないと時代についていけないですし、仕事のしかたを自分でどんどん更新していくようなフレキシビリティも必要。マイペースすぎる人は合わないかな」

「あとは会社に依存しない人。この環境を利用してやる、ぐらいのマインドの人のほうが、一緒に働いていて気持ちがいいと思います」

 

ここで働くなかで、その先にどんな可能性が広がるか。

パートタイムスタッフとして入社し、現在は正社員として働いている黒川暁代さんのこれまでの話が参考になると思う。

もともとメガネ店で働いていた黒川さん。

結婚して東京に移り住み、旦那さんの紹介をきっかけにグラスルーツで働きはじめたそう。

「この会社で人を探しているというので、扶養範囲で働こうと思ってパートで入ったんです。基本は商品管理と営業アシスタントで、週2〜3日の時短勤務でした」

ところがいざ働きはじめると、やりたいこと、やるべきことがいろいろ出てくる。その都度話し合いながら働き方を変えていくうちに、正社員として働くことになった。

「そのうち商品企画にも関わるようになって。小原と一緒に、この色がいいとか、こっちの素材はどう?と相談しながら、商品を完成させていくところも担当しています」

企画デザインの補助にあたっては、デザイナーの小原さんと感覚やセンスを共有していることが重要。取引先からの声や情報をものづくりに活かせるチャンスもあるはずだ。

ほかにも、国内外の展示会や取引先でのフェアなど、イレギュラーな案件が舞い込むこともある。やりたいことがあれば、自ら提案していってほしい。

ただ基本的には地道な仕事も多い。

「順序立てて判断する力が大事」と黒川さん。

「最近は取引先の数も増えてきて、正確であることはもちろん、スピード感も必要です。それからお店ごとに要望も異なるので、どの商品をどのお店にどうやって提案するかも考えなきゃならない。注文にそのまま応えるだけの単純作業ではないです」

「ここは小さな会社ですし、それぞれの役割からこぼれた作業を拾うことも出てくると思います。そのあたりの柔軟性も持っている人だといいですね」

黒川さんのように、パートタイムスタッフから入社して商品企画に携わることも、育児休暇をとってもう一度復帰することもできる。

働き方は柔軟に相談しながら決めていける環境です。

何かにこだわりを持って取り組むのは苦手だけれど、“好きだな”と思えるものや価値観はある。そんな人に似合う会社だと感じました。

(2019/2/4 取材 2019/11/7 更新 中川晃輔)

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