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海の宝石・珊瑚
その美しさを
ジュエリーに込めて

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

鮮やかな色合いと、つやのある輝き、肌に馴染むやわらかさ。

深海で数百年かけて成長する宝石珊瑚は、古来より世界中の人々にお守りとして大切にされてきたそうです。

世界でも最高品質の宝石珊瑚がとれる高知県高知市で、コーラルジュエリーの企画からデザイン、加工、制作までを手がけているのが、株式会社KAWAMURA。

ジュエリーを通して、日本産の宝石珊瑚の美しさを世界の人々に伝えてきました。

今回は、東京・銀座にある直営店で働く販売スタッフを募集します。

(取材はオンラインで行いました。現地の写真はご提供いただいたものを使用しています)



太平洋をのぞむ、高知県高知市。

土佐湾は、江戸時代に美しい宝石珊瑚が発見されて以来、世界有数の産地として知られている。

珊瑚を見つけた土佐藩はその美しさに驚き、幕府の目から隠すべく『御止め品』として採取や所持、販売を禁止したという。とくに血のような赤さをもつ血赤(ちあか)珊瑚は「トサ」と呼ばれ、現代でも高く評価されているのだとか。

「土佐湾にあがる宝石珊瑚は、深く濃い赤色が特徴です。珊瑚というとサンゴ礁をイメージする方が多いかもしれませんが、まったくの別物なんですよ」

そう教えてくれたのは、KAWAMURAの社長である川村さん。

光の届く浅瀬に広がるサンゴ礁に対し、冷たい深海で、数百年かけてゆっくりと成長する宝石珊瑚。

その骨格はとても硬く、磨くと美しい光沢があらわれることから、紀元前からお守りや宝飾品に使われてきた。

「宝石珊瑚は地中海からシルクロードをわたって、日本に入ってきました。国内最古の珊瑚は、正倉院に所蔵されています。どの国や地域でも、幸せを呼ぶ証として愛されてきたようです」

「赤やピンク、白などいろんな色があって、温かな印象を持つ宝石なんですよ。私たちは、たしかな品質の日本産珊瑚を選び抜いてジュエリーにしています」

珊瑚の加工職人としてキャリアをスタートして以来、50年にわたって宝石珊瑚に携わり続けている川村さん。

KAWAMURAを立ち上げる以前は、珊瑚を使ったお土産品をつくっていたのだそう。

「高知の宝石珊瑚は、昔から高級土産として知られていました。市内のお土産店には、数万円のネックレスや指輪がたくさん並んでいて。ただ、時代が移り変わるにつれて、それらも売れなくなっていきました」

何か、高級土産にかわるものはつくれないだろうか。そう考えていたときに、旅行先のイタリアであるものを目にしたそう。

「世界に名だたるブランドが、宝石珊瑚を使ったジュエリーを販売していたんです。デザインはすてきだったけど、使っている珊瑚は、私たちのほうが質が高いとすぐに感じました」

宝石珊瑚を使った装飾品はコーラルジュエリーと呼ばれる。

質の高い日本産宝石珊瑚を選び抜き、デザインや世界観をしっかりつくり込んでいけば、世界に通用するブランドをつくれるんじゃないか。

そんな想いから会社を立ち上げた川村さんは、以来およそ十数年にわたってコーラルジュエリーをつくり続けてきた。

そのジュエリーがどんなふうに形づくられるのか、教えてもらう。

「高知では、世界で唯一の宝石珊瑚の入札会が行われるんです。短い時間のなかで、色合いのはっきりとした、大きな珊瑚を競り落としていきます」

入札会では、小さな珊瑚に数百万円から数千万円の値が次々と付いていく。まるで賭場のような、独特の雰囲気なのだそう。

落札した珊瑚は、デザイナーと加工職人の手によって、一つひとつジュエリーへと姿を変えていく。

宝石珊瑚は、ダイヤモンドなどの鉱物と比べて加工しやすく、自在に彫ることができるのが特徴。KAWAMURAのコレクションには、花をかたどったデザインや、螺鈿(らでん)や沈金を組み合わせたデザインなど、アート作品のようなジュエリーもある。

「いちばん多く手がけているのは、珊瑚を磨き上げて丸い山形に整えたジュエリーです。珊瑚そのものの光沢を楽しめる、美しいジュエリーですよ」

KAWAMURAのジュエリーはその品質が評価され、2012年には世界最大の宝飾見本市・バーゼルワールドで、宝石最高部門に選出。日本を代表するコーラルブランドとして、少しずつ世界に認められてきた。

「日本では“珊瑚=ちょっとしたお土産品”のイメージがまだまだ根強いです。インバウンドの方のなかにも、アジアで珊瑚を買うなら台湾という印象があるようで。日本産珊瑚の価値を伝えるむずかしさを、日々感じています」

「ですから今回の出店は、お客さまに直接宝石珊瑚の魅力を伝えられる最高のチャンスだと思っているんです」

昨年9月、銀座三越の宝石フロアにオープンしたKAWAMURA初の直営店。

数々の宝石店が並ぶ銀座でも、コーラルジュエリーの出店は初となる。

今回はこのお店で、ジュエリーを通して宝石珊瑚の魅力を伝える販売スタッフを募集したい。

「今の世の中を見ると、しばらくは売上がまったく立たなくても不思議じゃない。まずは売上よりも、来店されたお客さま一人ひとりに、宝石珊瑚の歴史や価値、魅力をじっくり伝えていきたいと思っています」

お店には、ネックレスや指輪をはじめとするオリジナルジュエリーが数百点並ぶ。これほどの数の宝石珊瑚が揃うのは、日本でもこの場所だけなのだそう。

ジュエリーを手にとって眺めてもらったり、試着をしてもらったり。なによりもスタッフとの会話を通して、宝石珊瑚の魅力を伝えていきたい。


そんな想いのこもったお店で店長を務めるのが、助野(すけの)さんだ。

助野さんには、GIAという米国宝石学会で学んだ経験がある。

「いろんな宝石を見たなかで、宝石珊瑚がいちばんジュエリーとしての可能性があるんじゃないかと思いました。お土産品やサンゴ礁というイメージが根強いぶん、魅力をきちんと伝えられれば、それだけ人の心を動かせる宝石だと感じたんです」

店長業務に加え、小売店への営業や催事での販売も担当する助野さん。

以前、銀座三越で開催した催事を振り返りながら、この先目指していきたいことを教えてくれた。

「お客さまには、まず宝石珊瑚そのものを知って、楽しんでいただきたいです。催事では、ディスプレイとして飾っていたネックレスに興味をもってくださる方が多くて。これはなに?とよく声をかけてもらいました」

血のような深い赤、かわいらしいピンク、象牙のような白など、宝石珊瑚ならではのさまざまな色合い。KAWAMURAの選ぶ珊瑚の品質や、デザインに込めた思い。

「長くお守りとして愛用されてきたことをお伝えすると、娘さんやお孫さんにプレゼントしたいとお求めになる方もいらっしゃって。前回の出展では、お孫さんにネックレスを贈られたお客さまが『孫もとても喜んでいたの』と挨拶しにきてくれました」

「大切なのは、また訪れたくなるような接客やお店づくり」と話す助野さん。

銀座店のオープン後も、何気なく商品を眺めていたお客さんが、後日「あのジュエリーが忘れられない」と、再びお店を訪れることもあるのだとか。

記憶に残る接客となるように、実際に身につけてもらい、日本産珊瑚の質の高さや魅力を丁寧に伝えることを心がけている。

「初めての直営店なので、試行錯誤している部分もたくさんあって。今回は接客経験をお持ちの方にもぜひ来ていただけたらと思っています」

助野さんは営業職と兼務しているため、お店に常駐することはむずかしい。

そこで、正社員として店舗運営全般を支えてくれるスタッフと、未経験でも宝石珊瑚に興味をもってくれる販売スタッフにそれぞれ来てほしいそう。

「ブランドも、まだ発展途上です。私もこれからさらに成長していくために、マナーや宝石珊瑚の知識、外国語など、勉強していきたいことがたくさんあります」

「勉強してもすぐ売上に結びつくとは限りませんし、新しく入る方も苦しい時期を経験するかもしれません。でもそこで諦めずに、常に自分を成長させるための努力を前向きに重ねてほしいです」

初めてコーラルジュエリーに触れるお客さんも、目利きのお客さんも。

どんな人にも宝石珊瑚の魅力を伝えられるように、チーム一丸となって取り組みたい。

「発展途上のお店をつくっていくのは、大変なところであり面白いところだと思うんです。チームとしてお互いをフォローしながら、一緒に成長していきたいですね」


最後に話を聞いたのは、前回の日本仕事百貨での募集をきっかけに、今年2月に入社した石部さん。将来的には助野さんの後を引き継ぎ、店長になる予定だそう。


長年百貨店に勤め、外商部でジュエリーや時計を扱っていた石部さん。なぜKAWAMURAへ?

「百貨店にいたころ、お問い合わせの多くがダイヤモンドやパールについてでした。地名度は高くないけれど、実は日本は世界最高品質の宝石珊瑚が採れる国。それを伝承の職人技で仕上げたジュエリーは唯一無二の美しいものです。日本産珊瑚の素晴らしさを、世界に広めるチャレンジがしたいと入社を決めました」

宝石珊瑚は養殖ができないため、ジュエリーはすべて天然の一点もの。それぞれの珊瑚が持つ色味を活かして磨き、仕上げている。

店頭に並べるにあたり気になる箇所はないか、一つひとつ丁寧に検品する。あわせて、本来の色むらなどは宝石珊瑚の特性なのだと、しっかりお客さんに伝えていくことが大切だという。

「完全無欠でないことこそが天然の証だとご理解いただけるように、でも押し付けがましくならないように、心がけてご説明します。珊瑚を深く知れば知るほど、購入した後も愛着が湧くものだと思うので」

たしかに、すべて天然と聞くと特別なものに感じられます。

ほかのジュエリーと宝石珊瑚の販売には、何か違いがありますか?

「やはり希少なものなので、大量に採取できるものとは違うむずかしさがあって。血赤珊瑚は色味の違いやサイズによって値段も大きく変わりますし、お客さまにはその理由を丁寧にお伝えしていきます」

「高品質で希少だからこそ価値があるのだと、実感を持ってご案内する必要があると思います。だからこそ、お客さまにほしいと言っていただけたときは、気持ちが伝わったのだとうれしくなりますね」

技術の発展した現代では、宝石を合成することもめずらしくないという。だからこそ、磨くだけで美しい天然の宝石珊瑚は、今後さらに需要が高まると石部さんたちは考えている。

まだ発展途上のブランドだからこそ、それぞれのスタッフには、主体的な関わりが求められる。

新たに開設した銀座店のインスタグラムでの発信にも、石部さんを中心に力を入れている。一緒に働く中国人スタッフとも、インバウンド対策や中国人への訴求方法について日々話し合っているという。

「宝石珊瑚は、まだ魅力が十分に知られていないからこそ、飛躍のチャンスも無限大だと思います。日本の珊瑚に愛情と誇りを持って、一緒に世界に広めていきたいというチャレンジ精神のある方と、銀座店を盛り上げていきたいですね」

海が育んだ宝石、宝石珊瑚。

美しいジュエリーとともに、その背景にある歴史や物語を届けるような仕事なのだと思います。

(2020/08/03 取材 遠藤真利奈  2021/05/25 再編集 増田早紀)

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