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地域に飛び出して
未来の移住者を
迎える土壌づくり

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2020年は、テレワークが浸透した一年でした。

同時に「地方移住」「二拠点生活」といった言葉もよく聞くようになり、これから地方がさらに注目されていく予感がします。

福岡県香春町(かわらまち)。

5年前から移住促進に取り組んできたこの町では、地域おこし協力隊が中心となって町をPRしたり、移住相談にのったり。その取り組みが評判となり、少しずつ転入者が増えています。

「これまでは移住希望者に空き家を紹介して、入居してもらうまでがゴールでした。これからは地域住民を巻き込んで、移住者を面で受け入れる体制をつくっていきたいと思っています」

そう話すのは香春町役場の坪根さん。香春町の移住促進政策は、第二ステップを迎えているようです。

今回は、移住促進を担当する地域おこし協力隊を募集します。

(取材はオンラインで行いました。写真はご提供いただいたものを使用しています。)



香春町は、北九州市と福岡市、二つの大きな街のちょうど中間にある。

2本の国道が走っていて、北九州市からは車で50分、福岡市からは70分ほどで行けるのだそう。

「香春町はほとんどが農村地帯です。そのなかに住宅街もあれば、里山暮らしができるエリアもある。車で大都市にもすぐ行けるので“都市間イナカ”という言葉でPRしています」

そう教えてくれたのは、香春町役場まちづくり課の坪根さん。

坪根さんの背景に写っているのは、JR採銅所(さいどうしょ)駅の駅舎。築100年を超える建物を、4年前にリノベーションしたのだそう。

「町が主導しつつ、当時の協力隊のみんなとアイデアを出し合って。カフェのような雰囲気の、レトロでかわいらしい建物になりました」

駅舎には、列車を待つ待合室以外にもう一つ大切な機能がある。

それが、香春町の移住・交流の拠点“第二待合室”。

「香春町の暮らしへ乗り換えるために、人や情報が集まる場所」という意味なのだとか。

「町の人もみんなふらっとやってきますね。冬はコタツが登場するので居心地がいいんです(笑)。協力隊には日替わりで常駐してもらっていて、移住相談対応のほか、情報発信や交流イベントの開催をお願いしています」

香春町では、過去5年間で7名の協力隊を受け入れてきた。

全員に共通するミッションは「香春町に新しい人の流れをつくること」。

香春町の資源を活かして自分の生業をつくりながら、第二待合室やSNS等を通じて、移住者目線で香春町の生活を発信してきた。

その甲斐あって、移住相談は少しずつ増えているそう。

人の流れが生まれる一方で、新たな課題も見えてきた。

「まず一つが、すぐに住めるような状態の良い空き家が町の空き家バンクになかなか出てこないことです。家がないから移住はやめておくという方もいらっしゃいます」

そしてもう一つが、いい空き家を見つけて移り住んでも、地域との関わりが生まれにくいということ。

「これまで移住に関しては役場や第二待合室で完結していたので、地域の側に、移住者を受け入れる意識を醸成できていなかったのが正直なところです」

「これからは、地域全体で移住者を受け入れる土壌をつくっていきたいと考えています。今回募集する協力隊は、その業務を一緒に担ってほしくて」



具体的にどんなことをしていくのか。参考になりそうな取り組みを紹介してくれたのは、香春町役場まちづくり課の村上さん。

「昨年度から、役場が主導しながら地域の未来について語り合う場をつくっているんです。町内には集落が40ほどあるんですけど、人口減少や廃校活用など、それぞれの集落ごとに課題やテーマがあって。住民の方々と一緒に地域のことを考えられたらと思って、まずは対話の場づくりから始めています」

町は昨年度から、様々なテーマでワークショップを開催している。

たとえば、若い世代がフラットに対話しながら香春町での暮らしを豊かにする企画を考えるワークショップでは、実際に草刈りやデイキャンプも行いながら対話を重ねていったそう。

また廃校をどう活用していくか、という視点で地域の未来を考えるつどいも4つの小学校区で開催した。

「最初はみなさん『何をやらされるんだ?』という感じだったんですけど、今では聞いて話すことにだいぶ慣れてきて。若者からお年寄りまで、楽しくまちづくりについて議論している。これまで町になかった対話の場を歓迎してくれている様子でした」

今回募集する協力隊は、移住をテーマとした対話の場を企画し、参加者をつのるところから当日の進行まで担当してほしい。

対象となるのは、町のなかでも少子高齢化が進んでいて、地域の存続が危ぶまれる集落。

「まずは2〜3のモデル地区をターゲットにしたいと思っていて。最初は4、5人が集まる座談会のイメージです。それを徐々に膨らませていきながら、地域全体として移住者をどんなふうに受け入れていくのかという議論を進めていけたらいいなと思っています」

横で聞いていた坪根さんが付け加える。

「住民の方は、自分の思いや考えを否定せずに聞いてもらえることを求めているんだなと、この2年間ですごく感じていて。『自分はこう思うんだけど』と伝えられる場所をつくることを大事にしたいんです」

移住者を集落で受け入れていく環境をつくるには、まずは住民の気持ちを聞くところから。

受け入れに前向きな人もいれば、何か不安に思っている人もいるかもしれない。正直な気持ちを引き出した上で、集落としての方向性を考えていくことが大切。

もちろん、移住者の受け入れはしないという結論に至る地域もあるかもしれないけれど、それも一つの成果。

移住者を受け入れたいという地域には、次のステップとして状態のいい空き家の情報提供をお願いしていく。

その後、どんな移住者に来てもらいたいか、地域としてどんなことができるかという対話をリードしながら、住民と一緒に考えていくような役割になる。



新しく来る人は、第二待合室の運営を通じて、移住者を発掘し支えていくことにも取り組んでほしい。

協力隊2年目の小野沢さんは、今その仕事に携わっている運営メンバーの一人。

神奈川出身の小野沢さん。もともと田舎暮らしに興味があって、地域おこし協力隊を探しているときに香春町を知ったそう。

「田舎暮らしのイメージがテレビの『人生の楽園』だったので、初めて来たときはこんなに車通りがあるのかって驚きました。協力隊OBが町で面白い活動をしていることもSNSから伝わってきたので、移住前から安心して来れましたね」

仕事の一つが、移住希望者の問い合わせ対応や、SNSやブログでの情報発信。

移住相談の問い合わせは月に4~5件ほど。テレワークの浸透もあって、今年の夏ごろからは移住相談数も伸びているという。

そんな声に応えるべく、7月からはオンライン相談も始めて、移住生活をざっくばらんに語るオンラインイベントも開催しているそう。

そして地域の中に入り込んでいくのも大事な仕事。

「地域のキーパーソンは、協力隊の先輩や役場の方が紹介してくれます。自分も地域で面白いことをしている方を見つけたくて、ピンポンを押して『こんにちは〜』って話しかけに行ったりしますね」

フットワークの軽い小野沢さん。今では地域のおじいちゃんから「これから一緒に飲まないか?」と電話がかかってくるのだそう。

「香春町では、町内外の人が交流するきっかけづくりとして、隊員それぞれが興味のある分野でイベントを開催していて。僕は自分が主役になるよりも、何か光ることをしている人を主役にした企画を立てることが多いです」

「たとえば、つる草を編む“かずら編み”が得意なおばあちゃんがいるんです。すごくきれいなカゴをつくるんですけど、全然認知されていなくて。仲良くなって『これ面白いから、何か一緒にやってみましょうよ』って声をかけたんです」

そこで、おばあちゃんからかずら編みを習うイベントを開催。その情報はメディアにも伝わり、やがておばあちゃんの密着取材が決まったそう。

「最初は『私なんか…』って遠慮されていたんですけど、今は周りの人も一緒に、次はこんなイベントをしてみよう!って元気になってきていて」

「その番組を町外の人が観たら、香春町を知ってくれるかもしれない。その先で移住を検討する人が出てきたら、この待合室で相談に乗ったり町の暮らしを伝えたりもしていける。小さい輪は、そうやっていずれ大きな輪になっていくんじゃないかな」

今は対話の場づくりを担えるように、ファシリテーションの勉強もしているという小野沢さん。新しく入る人と一緒に活動する機会も多い。

協力隊OBには、不動産屋を開業して空き家バンクに関わっている方や、移住体験住宅を運営している方もいて、随所で力を貸してくれるとのこと。

頼りになる先輩たちがいるのは、きっと心強いと思う。



そんな香春町の協力隊を、町の外から見守っているのが西塔(さいとう)さん。

福岡県の上毛町(こうげまち)で協力隊として働いたのち、現在は全国の自治体を対象に、地域おこし協力隊の支援をしている。

「香春町には、協力隊の受け入れを開始した5年前から関わっています。仕事がら協力隊の受け入れ自治体を数百カ所見てきましたが、香春町の職員さんの協力隊制度への理解と熱意、サポート体制は本当にすばらしいなと感じています」

「任期途中でやめた方もいませんし、OB3人が香春町に根付いてお仕事をされていて、来春に任期満了予定の隊員も定住予定ということで。その結果は安心できるし、3年後を見据えた活動を提示しているという特徴もあって、定住につながっているのかもしれません」

今回募集する協力隊の要項にも、「任期満了後に法人組織を立ち上げられるように、任期中に準備すること」が明記されている。

というのも今、坪根さんたち役場の職員と小野沢さんたち協力隊で、移住促進やまちづくりを担うNPOを立ち上げようという話が進んでいるそう。

香春町には地域活動を行なっているNPOが少ないため、行政より近い立場でまちづくりを行う組織が求められているという。

そこで、町として培ってきたノウハウや地域との関係性を活かして、まちづくりの専門性をもったNPOをつくりたい。NPOができたら、第二待合室の運営や、現在外部の方に委託している対話の場のファシリテーションなども行政から受託できるそう。

今回募集する協力隊には、将来的にその中枢を担っていってほしい。

「県内にはNPO法人の立ち上げを支援してくれる団体があるので、まずは坪根さんたちと一緒に相談にいくところから始まります。3年間じっくり考えながら新しいNPOを準備していけるのは、面白い課題ですね」

「とはいえ、最初から定住するつもりがないと採用しないという意味ではなくて。まだ迷っている方でも、業務のうち何か一つに興味を持ってもらえたらウェルカムです。3年間の活動を通して、どんな地域か肌で感じてもらえたらと思っています」


みなさんの柔らかくフラットな雰囲気と、町として新しいことにチャレンジする意気込み。移住相談が増えている理由がわかったような気がしました。

良い予感がしたら、一度連絡を取ってみてほしいです。きっと香春町の雰囲気を感じられると思います。

(2020/12/02 オンライン取材 遠藤真利奈)
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