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生まれ変わる老舗デパートに
特別なレストランとホテルを

温泉地や、古くからの観光地に行くと、旅人を迎え慣れているせいか、街全体から「ようこそ」と言われているような印象を受けることがある。

車が自然に道を譲ってくれたり、「どこから来たんですか」と声をかけてもらったり。大人になってからはじめて訪れた松山も、そんな優しさを感じる街だった。

地元の人にとっては当たり前の毎日だけど、旅行者にとっては特別な1日。

その感覚は、すべてのサービス業に通じるホスピタリティの原点とも言えるものかもしれません。

今回、この松山で募集するのは、そんなふうに誰かの特別な日を一緒に迎え続ける仕事。大規模リニューアル中の松山三越に新しくできる、ホテルとレストランのスタッフを募集します。

地方都市の百貨店というと、一昔前までは、地域のなかで特別な存在でした。親や祖父母世代が懐かしく語る思い出話のなかには、デパートの話がよく出てきます。

家族が世代を超えて、思い出を紡ぎ共有できる特別な場所を、もう一度街の中心部に。

そんな思いでプロジェクトを担っているのは、道後温泉で古くから宿泊業を営んできた茶玻瑠(ちゃはる)という会社のみなさんです。のんびりとした情緒ある街へ、話を聞きに行きました。



愛媛県松山市。商店街のアーケードには、小学生が夏の季語で詠んだ俳句が並んでいる。

松山三越は、そんな商店街の一角、城下町時代からある大街道という通りのなかにある。

現在はリニューアルに向けて、1階エントランス周辺のみが限定的に営業中。紫の暖簾の前に並んだ椅子では、年配の女性がひと休みしていた。

そんな街の中心部から、みかん色の路面電車に乗ること20分ほど、道後温泉を目指す。

古くから文学の題材にも取り上げられてきた、古湯。趣ある道後温泉本館のちょうど真裏にあるのが、茶玻瑠というホテル。

今日はここで話を聞かせてもらう。

さて、フロントで用件を…と思うより前に、ドアのところに立っていたスタッフの方が、私を取材の担当者だとわかって取り次いでくれた。サービスのプロってすごいなあ。

3階のレストランフロアで迎えてくれたのは、副社長の草宮さん。

「今回のプロジェクト、街にとっても我々にとっても夢があるチャレンジだと思うんですよ」と、話しぶりからも意気込みが伝わってくる。

戦後間もなく創業して以来、街の人に親しまれてきた松山三越。ところが近年は業績不振が続いており、再起をかけて大規模リニューアルをすることに。

今、Googleで「松山三越」と検索すると、予測ワードとして「どうなる?」が上位に出てくるほど、多くの関心が寄せられているプロジェクトでもある。

地下1階、地上8階の全フロアのうち、百貨店は3フロアに限定。そのほかは、地域のさまざまな事業者が参画して新しい商業施設をつくっていく。

茶玻瑠は、その最上階に当たる7、8階でレストランとホテルを手がけることに。

どんな企画になるのか、まずは担い手である茶玻瑠のことから聞いてみたい。空間全体に温かみや優しさがあって、落ち着く雰囲気ですよね。

「10年ほど前に、愛媛出身でマリメッコのデザイナーの石本藤雄さんとご縁があって。テキスタイルや家具など、北欧の上質なリビングスタイルをとりいれています」

「もともと茶玻瑠は旅館としてスタートして、当初は『茶春』という表記を使っていたように、お遍路さんをお茶でおもてなしする、そのおもてなしの心を磨いていこうというところにルーツがあります」

茶玻瑠は、創業以来、地域の方に愛されるホテルを目指して、いろんな挑戦を進めてきた。

たとえば大宴会場だった場所を、地元の人が気軽にビュッフェを楽しめるレストランに改装し、イングリッシュガーデンを併設。昼の道後の活性化に取組み、観光客に限らず、多様な人が行き交う場になってきた。

地域の人に愛される場をつくりたいという思いは、三越の事業にも共通している。

「松山で生まれ育った方から話を聞くと、20〜30年前はレストランフロアに直通のシースルーエレベーターに乗るとき、独特のワクワク感があったそうなんです」

「そういう高揚感を感じるレストラン然としたレストラン、みたいな特別な場所をもう一度つくりたいんです。この街を代表するホテルとレストランをつくる中で、我々自身も道後温泉の旅館からステップアップをしていきたい」



そのイメージについて、さらに詳しく教えてくれたのは、レストラン部門の開業責任者として企画を進める岡部さん。

茶玻瑠に着任したのは約半年前。それまでずっと東京の飲食業界でキャリアを積んできて、地方で働くつもりはなかったという。

「エージェントに茶玻瑠を紹介されたときも、あまりピンとこなくて。面接っていう名目で、温泉旅行ができるかもしれないと思って来てみたんです。それが、代表の川本に会って話しているうちに、思わず惹きつけられちゃって」

「松山から、四国・瀬戸内をもっともっと発展していきたい、ってすごく楽しそうに語るんです。最初は突拍子もない話に思えたんですけど、だんだん、この人は本気なんだっていうことが伝わってきて。今まで自分が培ってきたものを生かすなら、こういうチームがいいなって思えたんです」

松山から、瀬戸内一円へ。ゆくゆくは茶玻瑠がプロデュースする、オーベルジュのような施設を増やしていく構想もある。

今回手がけるホテルとレストランは、その大事な拠点のひとつになる。

レストランは客席数80席で、ブレックファスト、ランチ、ティータイム、ディナーと、朝7時から23時まで営業。ディナー単価は1〜1.5万円ほどの都会的で洗練されたモダンフレンチレストランを目指す。

「今、松山にフレンチレストランって、数えるくらいしかなくて。ハレの日に食事をするときは、わざわざ県外に出て行くこともあるらしいんです。街のなかでも、特別な日を過ごせるような、ラグジュアリーなレストランにしたい」

「愛媛は魚介類をはじめとしていい地物がたくさん手に入るから、フィールドとしてもおもしろいですよ。一方で、地元の人に特別な体験をしてもらうためには、僕たち自身がアンテナを張って、首都圏や海外のトレンドも取り入れていく必要があると思います」

料理だけでなく、サービスのあり方や空間演出など、一人ひとりの気づきでお店をブラッシュアップしていく。

今は立ち上げ期なので、これから入る人は、できれば飲食の経験があることが望ましい。ただ、一番大切なことは「レストラン業が好き」だということ。

岡部さん自身も、レストランの仕事を好きだと意識するようになった原体験があるという。

「僕はもともと20年くらい前に、コックとして業界に入ったんですが、当時はかなり封建的で、新人に包丁なんか持たせてくれなくて。まずはホールの仕事を覚えることになりました」

自分の持ち場の予約をチェックして、タイムスケジュールを考える。お客さんが席に着いたら、様子を見ながらコミュニケーションをとる。

状況に応じてパズルのように手順を組み替えながら、最適な関わり方を工夫していく。それがホールの役目だった。

「ある日、いつもどおりに仕事をしていたら、お客さまから帰りがけに『楽しかった、また遊びに来るね』って言ってもらえて。飲食店での褒め言葉って『美味しかった』だけじゃないんだなって感動しましたね」

「レストランって、ただ料理を提供するだけじゃなくて食を通してお客さんに喜んでもらうための場だから、もちろん裏側には地味でキツい仕事もたくさんあるんですが、それもひっくるめて、レストラン業が好きだって言える。そういう人となら、いろんなことにトライしていけるんじゃないかなと思います」

ここまで話を聞いて感じるのは、このプロジェクトに関わるメンバーがみんな、とても前向きなモチベーションを持っているということ。

かつて、百貨店のレストランにあったステイタスをもう一度取り戻す。飲食という仕事に対して前向きに取り組みたいと思う人にとっては、いいきっかけが得られる場所になるんじゃないかと思う。



一方で、ホテルはどんなコンセプトなんだろう。百貨店とホテル、あまり前例もない気がする。

プロジェクト全体を統括する常務の池尻さんに、話を聞かせてもらう。

「僕たちがつくるホテルは、客室数がわずか11部屋。つまり、スタッフがお客さま全員の顔と名前を覚えられるから、カスタムメイドのサービスができる。ここが大事なところなんです」

一人ひとりに合わせたおもてなしは、茶玻瑠のルーツである旅館にも似たスタンスですね。

「ホテルももともとそうだったんだけど、それがいつの間にか形式張ったものに変わってきてしまった。だから、もう一度原点に戻って、自分の家族のようにお客さまを迎え入れる。そのためには、顔が見える関係性をつくること、そして相手が今何を感じているのか読み取ろうとするマインドが大事です」

サービスのスキルではなく、マインド。

そう話す池尻さんは、これまでUSJの立ち上げや高知県の地域活性など、さまざまなプロジェクトにマーケティングを主軸に携わってきた仕掛け人。

企画をうまくオペレーションに落とし込むためには、現場スタッフとの関わり方が大事だという。

「未経験者でも大丈夫ですよ。そのときに大事なのは、最初に“判断基準”を明確にすること。つまりビジョンやミッションですね。それに沿って、自分ができることを考えてもらうんです」

「僕は、否定的なダメ出しはしません。『今のでもいいけど、もっとこうしたらどうなると思う?』っていうコミュニケーションを根気強くやる。そうすると、それぞれの個性や強みがサービスに生きてくる。完璧な人なんていないし、全員が平均的なサービスを目指しても面白くないと思いませんか? それじゃカオナシですよね」

どんなにいい企画でも、お客さんと接している肌感覚がなければ、そこからブラッシュアップしていくことはできない。

だからこそ、現場のスタッフが主体的に、自分の感性を生かして接客できるような仕組みが必要になる。マニュアルだから、ではなく、その人の心から出た振る舞いでサービスをしてもらったほうが、お客さんもうれしいはずだ。

オープンは今年の秋の予定。

まずは1年間運営してみて、得られた気づきを今後に生かしていく。今回加わる人は、まさにその草創期を一緒につくっていくことになる。

いつか、ここで食事や宿泊をした時間が、誰かのかけがえのない思い出になるかもしれない。

そんな気持ちで、1日1日の仕事に向き合える人を探しています。

(2021/7/21 取材 高橋佑香子)
※撮影時はマスクを外していただきました。

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