求人 NEW

まちで商い、まちに還す
正直でおもしろがりな
不動産建築屋さん

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

落語が好きです。

面白いのが、ドタバタ劇をくり広げる登場人物たちが、「大家さんに相談しよう」と気軽に出かけるところ。当時の大家さんは、土地や家屋を管理すると同時に、住人の生活から町のことまで幅広く面倒をみていたようです。

住まいの松栄の取材を終えて、そんな落語のワンシーンを思い出しました。

住まいの松栄は、横浜・妙蓮寺で不動産建築業を営む会社。賃貸から売買、建築にシェアハウスの運営など、住まいに関するさまざまな仕事を手掛けています。

いわゆる“まちの不動産屋さん”なのですが、街の人のインタビューサイトを立ち上げたり、「おいしいコーヒー豆を買えるお店がほしい」というお客さんの声を聞いて知り合いのコーヒー屋さんを誘致したりと、街に新しい場所をつくる取り組みもしています。

今回はコンサルティングスタッフという肩書きで、不動産の売買スタッフと建築の設計現場担当スタッフを募集します。未経験の方も歓迎です。


渋谷から東急東横線に乗り30分。妙蓮寺駅で電車を降りる。

駅を出ると大きなお寺があり、個人店の並ぶ商店街が続いている。この日は土曜日の午前中。学生や親子連れでにぎやかだ。

松栄の事務所は1年前、駅から徒歩4分の広い公園の隣に移転したばかり。以前取材で訪れたときよりも駅に近くなり、建物も新しくなった。

日当たりのいい室内に入ると、代表の酒井さんが「ご無沙汰です」と声をかけてくれた。

お久しぶりです。お元気でしたか?

「おかげさまで毎日忙しくさせてもらって。それで仕事百貨さんをお呼びしました(笑)」

松栄は、酒井さんのおじいさんが創業した会社。

建売分譲から始まった仕事は、地域の住まいの相談に応えるうちに、不動産の売買、仲介、注文住宅建築と、次第に広がっていった。

「61年間、妙蓮寺と両隣の駅に絞って狭く深く仕事をしてきました。これまで続けてこられたのは、祖父の代からの信用のおかげだと思います」

一方で酒井さん自身は、家業を継ぐ気はまったくなかったのだとか。

「僕が学生時代のこの業界は、お客さんをごまかすとか、強引に契約を迫るような人がまだたくさんいたんです。『そんなのありかよ、俺はこの業界で働けない』と思って」

大学卒業後はCGデザイナーとして働いたものの、体調を崩したお母さんの代わりにお店を手伝うように。あらためて、自分はどう働くのか考えるようになったそう。

「借りてください、買ってくださいという営業トークはしたくない。それよりもお客さまに長く信頼してもらえる商売をしたいと思っていました」

酒井さんは宅建士や建築士、住宅診断士などさまざまな資格を取得。接客では、その土地や物件を選ぶメリットとデメリットを伝えて、最終的な判断を委ねるスタイルをとった。

「お客さまがこの買い物をしてもメリットはないと思ったら、正直にお伝えします。たとえば以前、汚水処理事業を始めたいという方がいらっしゃって。土地も見つけて銀行の許可もあるから、契約だけお願いしますというご相談でした」

「でも汚水処理事業は許可を取るのがすごく大変で、土地を購入しても必ず事業をできるわけではないんです。それに周辺の成約事例より坪単価も高いから、再販時に損する可能性もある。それなら賃貸で許可をとれる土地があるはずだから、そっちを探してみませんかとお伝えしました」

後日お客さんからは、購入を見送る連絡があった。今は「松栄なら安心」と、知り合いを紹介してくれているそう。

「何でもかんでも反対することはなくて、これは買いだと思ったら自信をもっておすすめします。不動産も建築も100点満点の条件はほぼありません。でもデメリットも分かったうえで選択できたら、いい買い物になると思っていて」

「そうやって仕事をしていたら、お客さまがわーっと来てくれるようになって、いい仕事をしたらこんなに喜んでもらえるのかと気づいて。松栄さんに頼んでよかったと言ってもらえるともう本当にうれしくて、この仕事やめられないなって思うんですよね」

その後松栄は、不動産建築で得た利益をもとに新たな取り組みも始める。

たとえば、妙蓮寺エリアの人やエンタメを紹介するサイトを立ち上げたり、管理している古民家でイベントを開催したり。

ついこの間も、事務所の近くに曜日替わりのキッチンカースペースをつくったそう。

この土地は、東急株式会社が運営するマンションの駐車場。この駐車場を見て、何かもっと街のために使えないかと考えていたのだとか。

「あの土地は妙蓮寺のメインロードにあってアクセスがいい。それに在宅勤務が増えている今、毎日の食事の選択肢が増えたら楽しいよなと思って」

キッチンカーの構想を伝えたところ東急も快諾してくれた。 今は毎日盛況で、妙蓮寺のホットスポットになっている。

「誰でも、自分が住む街にカフェがほしいとか、ケーキ屋さんがあったらなとか、感じると思うんです。そういう声を聞いて人を呼んだり、場をつくったりするのも僕らの役割だと思っていて。でも、俺が街を変える!とかは絶対に嫌なんです。喜んでいる人を物陰から見たいタイプなので(笑)」

「松栄にとって、これらの取り組みはボランティアではありません。不動産建築でしっかりビジネスをして、その利益を街に還元する。そのうち街の価値が上がって、ここに住みたいという人が松栄にやってくる。売上、まちづくり、集客という循環なんです」

今、松栄には多くのお客さんが訪れている。とくに家の購入希望のお客さんは、対応しきれないほどだそう。

その状況を改善するため、今回不動産売買のスタッフを募集することになった。

「土地や家を買いたい方、売りたい方のご相談に乗る仕事です。うちは業界の慣習に縛られないところも多いので、未経験のまっさらな方にもぜひ来てもらいたくて」

未経験の場合、まずは酒井さんたち売買担当スタッフのアシスタントから。接客や打ち合わせに参加したり、書類作成を手伝ったりしながら一通りの仕事を覚えてほしい。

小さいチームのため、不動産売買をメインに、新築時の打ち合わせから参加するなど建築側の仕事にも関わることになる。同様に、設計士として入社する人も、建築を軸に不動産にも関わっていく。

「うちは不動産建築で利益を生む会社です。個人のノルマはないけど、会社として全体の予算は当然あります。まちづくりの仕事も、不動産建築で自立してはじめてできると考えています」

「そのうえで真剣に住まいの仕事をしたい人と働きたいです。うちは不動産と建築どちらも行っているので、本当の意味で住まいの仕事の一人前になれます。この仕事はずっとなくならないし、経験や信頼が積みあがるほど楽しくなるんですよ」


スタッフはどんなふうに働いているんだろう。話を聞いたのは、売買担当の高木さん。

「分譲の場合は、会社で土地を購入して、住宅を建てて売りに出すまでがワンセットです。ほかにもマンションや戸建てを見たいという方がいればご案内しますし、土地や家を売却したい方のご相談にも乗ります。家や土地に関するほぼすべてが仕事ですね」

売買スタッフは現在3人。ゆるやかに役割を分担していて、酒井さんともうお一人が主に接客を、高木さんが契約やとりまとめなどを担当している。

今回募集する人は一連の仕事を覚えたうえで、お客さんとの打ち合わせや案内をメインで担当してほしい。

「お客さまの9割は、松栄のイベントやお友達の紹介でうちを知ってくれた方です。相見積もりを取る方よりも、うちにお願いしたいと言ってくださる方が多い。ありがたいし、通勤路でもよくお会いしますし、中途半端な仕事はできないなと思います」

多くのお客さんにとって、土地や家の売買は大きな買い物。自分の財産を任せる相手は、やはり信頼できる人がいい。

ローコストや高価格買い取りを謳わない松栄の成約率が高いのは、高木さんたちの姿勢によるところが大きいと思う。

「会社全体の予算は来てくださるお客さまに対応すればきちんと達成できますし、酒井も気遣いの人なので、目先の数字を追って仕事をするということはありません。そのぶん、お客さまや自分の発言に責任をもつこと、中途半端な対応をしないことは強く求められます」

分からないことはあって当然。高木さんも、スタッフや司法書士の先生、近隣の不動産業の先輩たちによく相談しにいっている。

ただ、いきなり答えを教わらないようにしているそうだ。それは売買のコンサルティングスタッフとして 独り立ちしたあとに細かく指示されることがなく、お客さんへの提案内容も各スタッフに任されているからだという。

「僕はこの裁量の大きさが気に入っています。忙しいけど自分でペース配分を決められるし、土地選びから建築までワンセットで関われる。契約が終わったあとも、生まれた赤ちゃんの顔を見せに来てくれたり、だんだん成長する姿も見られたりして。お客さまがご近所さんになるんですよね」


松栄のスタッフは全員で8名。加えて、設計や管理物件の修繕などスポットで協力してくれるパートナーが十数人いる。

そのなかで、建築設計をとりまとめているのが能勢さんだ。

松栄は丁寧な仕事を約束できる範囲として、年間10棟、妙蓮寺から車で30分以内を目安にしている。10棟の半分は自社設計の分譲、もう半分は基本プランにお客さんの希望を反映するハーフオーダー式だ。

「松栄では、設計士も土地探しや引き渡し後のメンテナンスに関わります。お客さまとの打ち合わせ、現場の段取り、設計の仕事を大体3分の1ずつやっていて。設計図やスケッチを描くこともあれば、見積書をつくったり、写真を撮ったりブログの記事を書いたり… 自分は何者だろうと思うときがあります (笑)」

前職では規模の大きな公共施設の設計を担当していた能勢さん。地方の仕事も多く、建物がどう使われているか見届ける機会はそれほど多くなかった。

今は自分が建てた家がどこにあって、誰がどんな暮らしをしているか分かる。自分の仕事の結果がよく見えることが、能勢さんが松栄で働く大きな理由になっている。

「僕らが設計する家は、とがったデザインとか垢抜けたオシャレさはなくて。あえて言うなら、普通の家なんです」

普通の家。

「もちろん性能は高いしデザインもするけど、松栄のお客さまは打ち合わせが楽しかったとか、言葉にできなかった希望を汲みとってもらえたとか、そういうプロセスをいちばん評価してくれる。設計はあくまでタスクで、本質は暮らしをつくる仕事です」

「この会社に入ったばかりのころ、古民家で映画を観るイベントを企画して、版権をとってポップコーンの機械を買ったこともあります。それでこの街の人が、ここに住んでよかったと喜んでくれたらうれしい。接客も設計もまちづくりも、自分でいろいろやってみたいんです」

酒井さんは以前、「ワクワクとビジネスを両立する」と話していました。

誠実な仕事をしてお金をいただく。そのお金を街に還元する。売上だけでも、夢だけでもない循環には手触りがあります。

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(2021/08/21 取材 遠藤真利奈)
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