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宿のような、家のような
MAYAにあるのは
非日常な日常

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

不思議な場所だった。

日が経つごとに、そこにいた時間だけが別の時空にあるような感覚が生まれてくる。

「MAYAはサンスクリット語で『幻』です。この家に泊まると、なんだかあまり現実感がないような気分になるなと思って」

取材のときに教えてもらった名前の由来を、身をもって実感する。

宿なのだけれど、家のような。MAYAという場所を紹介します。

鎌倉の材木座にあるMAYAは、築90年の古民家をリノベーションした一棟貸しの宿。宿泊のほかに、ウエディングも行っています。

今回募集するのは、企画・調理スタッフと企画・運営スタッフ。

お客さんの「こんなことがしたい」という要望に応え、リクエストに合わせた料理や体験を提供する。その日訪れる一組のために、オーダーメイドの滞在を演出する仕事です。

 

鎌倉駅から海のほうへ歩いて20分、バスに乗れば10分ほど。材木座エリアは、昔ながらの一軒家が多い、海岸近くの静かな住宅地だ。

MAYAの入口は、バス停のある通りから少し奥まったところにある。立派な門を抜けると、緑が生い茂る庭の奥に建物が現れた。

暖簾をくぐり中へ入ると、スタッフのみなさんが出迎えてくれた。

みんなでランチに回転寿司を食べたと教えてくれたり、「緊張してるでしょ?」と笑い合ったり。趣ある建物といい意味でギャップがある人たちだなあ。

その中心にいるのが、MAYAを運営する10T株式会社代表の高村さん。ざっくばらんに肩肘張らず話せる雰囲気の方で、スタッフのみなさんからは「快人さん」と下の名前で呼ばれている。

都内の外資系企業を経て、独立した高村さん。

地元鎌倉に拠点を移したタイミングで、知人を通じて築90年のこの古民家と偶然出会う。リノベーションをしたのち、2020年にMAYAをオープンした。

「ここで事業をすると決めてから、いろんなアイデアを考えたけどなかなかピンと来なくて。1年くらい悩んで最終的には、自分が行きたいと思える場所をつくることにしました。MAYAは、僕のわがままなんです」

高級ホテルでも、ホステルでもない。誰にもじゃまされずに過ごせて、料理をつくれるキッチンもある。午前中からチェックインできて、ゆっくり一日過ごして、翌日も夕方まで過ごせたらいい。

思い描くイメージを形に落とし込むときに気をつけたのは、自分自身の色はもちろん、誰の色も感じさせない空間をつくること。

お客さんには、自分の家にいるような感覚で過ごしてほしいから。

「家って、普通は誰か持ち主がいるじゃないですか。でもここは、みんなの家にしたかった。なので個性的な家具は置かずに、食器もシンプルなものを選んでいます。そうすると、どことなく匿名な感じになるんですよね」

誰の家でもないからこそ、どんな人の家にもなりうる。

訪れるお客さんたちは、思い思いの時間を過ごす。宿泊前のやりとりは、「MAYAでどんな滞在がしたいですか?」という話からはじまるという。

「過ごし方は本当に自由です。ペットと一緒に来る方もいるし、特に会話もないんだけどリピートしてくれる方もいる。なかには朝食の片付け中にそこのソファで寝てる方とかいて、結構無防備なんですよ(笑)」

「リクエストには最大限応えるので、お子さんとスイカ割りをしたいっていう人には、スイカや棒を用意するし。一日一組なので、そのお客さまだけのためにスタッフ全員が動くことができる。どう過ごすか、可能性は無限に広がっているんです」

お客さんの要望を聞いて、一緒に理想の滞在を形にする。働く人たちは、プランナーとも言えるかもしれない。

さらに、MAYAが今年はじめたのが、滞在型のウエディング。

結婚式ではなく2泊3日の「結婚の日」として、金曜日にチェックインし、土曜日が挙式と披露宴、日曜日にチェックアウトするというプランだ。

宿泊できる和室が複数あるから、両家の家族も一緒に泊まるケースが多いという。

「ウエディングでは、MAYAを『間家』と表して、両家の間にある家だと捉えています」

「本当に家で挙式しているような雰囲気になるのがすごくいいんですよ。朝、支度をする花嫁の姿をお母さんが寝巻きのまま眺めている、みたいな光景が当たり前にあるんです」

非日常だけど、日常的な時間。MAYAという場所だからこそ生まれるもの。

2020年のオープン直後にコロナ禍となったものの、今年は宿泊も婚礼も多数の予約が入っている。

そんな背景もあり、今回新たにメンバーを募集することになった。

 

現在、宿泊業務の中心を担っているのが、企画・運営スタッフの藤本さん。アルバイトではあるものの、社員と同じようにフルタイムで働いている。

MAYAの仕事は複合的。布団の準備や施設の管理・清掃、予約対応はもちろん、食材の買い出しをしたり、婚礼前にはウエディングプランナーとの打ち合わせをしたり。

披露宴では15名ほどのアルバイトスタッフが必要なので、人員調整やマネジメントも担う。

「お客さまをお迎えする前には、窓拭きも欠かさずやります。一日8時間のなかで、近くにあるオフィスとMAYAを行き来しながら、いろんな仕事をする感じ。私はそういう働き方を面白がれるタイプなので、合っているなと思いますね」

学生時代は現代美術を学んでいたという藤本さん。今はデザイナーの仕事のかたわら、MAYAで働いている。

「卒業後しばらくは、学生時代から働いていた居酒屋にいて。 お魚を捌くこともあれば接客もするし、一通りのことを経験できました。お客さんと話すのが本当に楽しかったんです」

「いつか自分のお店を持ちたいなって思いながら、地元の鎌倉に帰ってきて。その役に立つような経験を積みたいと思っていたときにMAYAを知りました。HPを見ただけでぐっとくるものがあって。きっとここには学びしかない、どんな形でもいいから働きたいと思いました」

MAYAでは、どんなことが学びになっていますか?

「あらためて聞かれると難しいですけど…。たとえばお寺って雑巾掛けしますよね。それって、ただの行為として見れば雑巾掛けだけど、やっている意味がきっとあると思うんです」

「たとえばMAYAって、ものを置くときに拳ひとつぶんのスペースを開けるんです。そのほうがゆったり見えるからって。漠然としているけど、そういう学びがたくさんあります」

直接的なスキル以上に、ここで時間を重ねることで、MAYAに宿るものが心身に染み込んでいく。そんな感覚なのかもしれない。

「この前、新郎新婦さんがチェックアウトするとき、庭の木になっている梅の実を採ってもらったんです。それも、数日前に梅がたくさんなっているのを見て、快人さんが『これ持って帰ってもらおうか。空いてるビンある?』って言いはじめて」

「MAYAで提供するのは一流のサービスとは違います。そういうことよりも、梅の実を採りませんか?って気軽に言えるおもてなし。そういう自由さがいいなって思います」

運営や調理担当のほか、ウエディングプランナーや経理・管理担当まで含めると、日々MAYAに関わるスタッフは10人弱。

お客さんの特別な一日のために何ができるか。各スタッフが意見を交わしながら、一つの滞在をつくっていく。

決まったルールのもとで働きたい人には、あまり向かない環境。仕事の範囲を限定せずに、クリエイティブな働き方を楽しめる人が、MAYAには合っているんだと思う。

 

いい宿泊にも、ウエディングにも欠かせないのが、おいしい料理。

企画・調理を担当するのが、1年ほど前に入社した正社員の豊田さん。

これまで、インテリアショップや飲食店、宿泊施設など、さまざまな仕事を経験してきた。

「今振り返れば、仕事を通じて衣食住に関することの基礎を吸収できたように思います。これまでの経験がMAYAで生きているなと感じることは結構ありますね」

「今は基本的にキッチン周りの仕事が多いだけで、布団も敷くしメールにも対応します。料理担当として入る人も、幅広い仕事に取り組むことになると思います」

婚礼では、鎌倉野菜のサラダや新鮮な魚介、炭火焼きのお肉など、スタッフみんなで考案したコース料理を提供。

素材のおいしさを生かした料理は、お客さんにも好評だそう。

一方、宿泊では、お客さんのリクエストに合わせた料理をつくる。

コースを希望する人もいれば、庭でバーベキューや流しそうめんがしたいという人も。予約受付の段階で大まかなリクエストを聞いておき、その後メール等で詳細を決める。

「お魚は魚屋さん、お肉は生産者さんから直接仕入れます。リクエストに応じて仕入れ元と食材を相談しながら、いくつかプランを提案して、お客さまに選んでいただく形が多いです」

たとえば、今年訪れたあるお客さんは、ご両親と成人したお子さんたちでの宿泊。「母の大好物の伊勢海老づくしの料理を食べたい」とリクエストがあった。

「ただ、当時は旬の季節ではなく、良いものが手に入る保証はなかった。正直に伝えてほかの食材も提案したんですけど、『家族みんなで集まれる貴重な機会だから、どうしても伊勢海老を』と強く要望されて。特別な滞在なんだと伝わってきて、どうにか応えたいと思いました」

市場に数日通い、伊勢海老を確保。初日は和風、2日目はイタリアンとメニューを変えたコースを夕食に用意し、とても喜んでもらえたという。

「お客さまのご要望に応えるには、いろんな障壁もあります。でも、どんな想いでMAYAを選んでくれたのか、どんな滞在にしたいのかお聞きしながら、できる限りの提案をすることが醍醐味だと思っています」

そんな姿勢で向き合うから、提案は食事の範囲にとどまらない。

ある家族連れのお客さんからお刺身をリクエストされたとき、マグロをブロックのまま仕入れたこともある。解体から参加してもらうことで、MAYAでしかできない体験になるのでは、と考えた。

初めての経験に、お子さんたちはとても喜んでくれたそう。

「要望にそのまま応えるだけでなく、より良い滞在になるよう、+αの提案も積極的に行います。決まった形はどこにもないので、それぞれのお客さまと話しながら決めていきます」

毎回異なる提案をするのは、大変そうですね。

「準備には時間がかかりますし、お客さまをお迎えして料理を提供すると一日は長いんですけど、それはどちらかというと楽しい業務ですね。それなりに大きい施設なので、お掃除とかのほうが大変です」

「でもそれも、お客さま に気持ちよく過ごしてもらえたら達成感がありますし、結果自分のお給料にもつながっているわけですから。大変だけど健全というか。目の前の仕事の先にあるものを見て取り組むように、いつも意識はしています」

婚礼のときは屋外の炭火にいることが多い、と話す豊田さん。式や披露宴の様子をじっくり見ることはできないそう。

「でも、たとえば式前夜の過ごし方とか、断片的に見える風景だけでも沁みるんです。MAYAって夜は結構暗いんですけど、灯りの下でおばあちゃんから孫までがご飯食べている様子とか。自分たちでやっているのに、毎回いいなあって思いますね」

MAYAだからこそできること。

訪れる人も働く人も、この不思議な家ならでは魅力に惹かれ、集まっているようでした。

ここでの滞在を思い出して、その後も心が満たされるような場所だと思います。

(22/6/6 取材 増田早紀)

※撮影時はマスクを外していただきました。

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