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新しいモノやコトに出会ったとき、ワクワクするのか、不安を感じて避けたくなるのか。
どちらが正しいわけではないけれど、常に自分の考えや視野をアップデートするように意識することで、新しい世界は広がり続けるのだと思います。
株式会社neuthingsは、大阪で創業したアパレルメーカーです。
自社ブランド「NO CONTROL AIR」「FIRMUM」のふたつを展開し、直営店「YEANAY」を運営しています。
今回募集するのは、大阪、京都、東京の各店舗で働くスタッフ。アパレル業界未経験の人も歓迎です。
あわせて、大阪にあるアトリエで働くアトリエスタッフも募集します。
新大阪駅から電車に乗って大阪駅へ。
JRの大阪駅から西側に歩いて10分ほど。再開発中のエリアを超えたところに、YEANAY OSAKAがある。
スタッフの方に迎えてもらい、お店の中へ。建物の2階のスペースで話を聞くことに。
階段を登ると、落ち着いた内装に、シンプルなデザインの洋服が目に入る。
洗練された空間だなと思ったのも束の間、ショーケースにレゴブロックを発見。
ほかにも白いキューピー人形が等間隔で3つ並んでいたり、黒いコップが3×3でまとまって飾ってあったり、何やらメタリックなものも置いてある。カウンターにはヴィンテージの時計も。
洋服も気になるけれど、ほかのものにも目が離せない。一体ここは何屋さんだろう。
疑問を胸に、まずは代表兼デザイナーの米永(よねなが)さんに話を聞く。
「この会社を創業して20年ぐらい経つんですね。活動自体は、学生のときから奥さんとふたりでやっていて。洋服をつくっては、セレクトショップに売りに行っていたのがはじまりでした」
はじめは卸売からはじめたneuthings。その後、2003年に自分たちの直営店を立ち上げた。
「ふたつのブランドがあるんですけど、これ!っていうコンセプトって、とくにないんですよね」
コンセプトがない?
「最終的な着地点を決めずにつくってるんです。こういうコートやズボンをつくりたいって先に絵を描いてから、それに向かってものをつくるやり方はしていなくて」
「先に絵を描くとそれが最終地点になってしまうじゃないですか。僕はそういうつくり方が好きじゃないんです。ここをカーブさせたらどうなるんだろうとか、こんな形をつくったらどうなるんだろうとか。そういう疑問を見つけては、とりあえず形にしてみるんです」
たとえば、と言って教えてくれたのはシャツの襟。
一般的な襟は直線部分が多く、首元でボタンをとめることできれいな印象を与えるものが多い。
一方で、米永さんが設計したのは、フラットでカーブが主体の襟。ボタンをとめる位置が低く、襟自体もカーブしている。パターンをもとに社内のアトリエスタッフが試しにつくってみたところ、きれいな印象は残りつつ、決めすぎない緩さも感じられるような、バランスの襟に仕上がった。
「この襟だとネクタイは巻けないですし、ほかのメーカーのジャケットと合わせにくいときも結構あるんです。でも柔らかさと硬さが調和して、いい感じの雰囲気を出せているのかなって」
「ほかの襟もあるんですけど、結局これが一番人気なんですよ」
一般的にはデザイナーがイメージを描いて、それに向けてパタンナーが具体的な服づくりに落とし込んでいくけれど、米永さんの服づくりはパターンを基点にはじまる。
形と素材を別々で進行させておいて、出来上がったものを見てから組み合わせを考えて洋服の形にしていく。
「うちの服って、着てみたら『あれなんかおかしいよね』って思うところが結構あるんです。街中で着ている人をみたら、すぐにわかる」
「最終的に普通の服っぽく見せるんですけど、実はその中に狂気が宿ってるっていうような感じが、僕らとしては面白くて。そういうものづくりをしてるんですよね」
化学反応を楽しんでるみたいですね。
「自分たちの感性の幅をどんどん広げていくような作業をしたい、というか。日々の生活でもそういうふうにしたいと思っていて。だからお店づくりも同じなんです」
お店づくりも同じ、ですか?
「定期的に古物を集めて、お店で販売しているんですね。室町時代から平成時代、美術的・骨董的な価値があるものないもの、結構たくさん集めていて」
「洋服屋なのになんでそういうことをするかっていうと、視野を広げて、いろんな価値観を持っている人になりたいと思っているからなんです」
店内には本当にいろいろなものが並べられている。たまたま目に入ったオブジェについて聞いてみた。
「あれはギプスなんですよ」
ギプス?
「骨折などの治療で患部が動かないようにするアルミ製の鋳物で、本当は自立するんです。立ち姿もカッコよくて。本当にいいものって、その背景に関係なく感情を揺さぶられると思うんです。そういった感覚をここで味わってもらいたいなって」
時代性やアート、デザインの文脈など。いろいろな面から置き方を考えることで、人の心に響くように見せる。
目の前にあるのはギプスだけど、博物館の展示のようで、なんだかカッコいい。
「新しく入る人も、全体的にうまくできる人より、ちょっと偏ってるぐらいの方が、うちの会社に合うのかなって」
「接客が好きとか、接客はしたことないけど写真撮ってSNSで表現するのは得意ですとか。そんな部分があったら、また僕たちの幅も広がって面白いと思っています」
服づくりもお店づくりも働き方も。決めつけず、常に変化の余白があるように感じる。実際に働くスタッフはどんな人なんだろう。
次に話を聞いたのは、大阪店で働くショップスタッフの八尾さん。
大手アパレルショップやセレクトショップで働いた後、5年前に入社した。
「最初は見立てる力を身につけるのが大変でした。そこが一番の壁ですね。はじめの1年は、その価値観がなかなかわからなくて。よく怒られてました(笑)」
隣で聞いていた米永さんからも、思わずこんな話が。
「ふたつのものをディスプレイするときに、普通は低いものを手前に置いて高いものを奥に置くじゃない? そうしないと低いものが隠れちゃうから。それよく逆にやってたよね(笑)」
「見立てる力っていうのは、要はモノの価値をより引き立てる方法を考えることで。たとえば店に飾る花に最初は興味を持っていなかったけど、最近は季節に合わせて花を選んでくれているし、写真もめちゃめちゃ上手いんですよ」
YEANAYでは、ヴィンテージの時計も取り扱っていて、八尾さんが日々時計の写真をSNSにアップしているそう。
店内の古物と組み合わせて、いろいろな構図で撮られている。時計のいろんな表情が見れて面白いですね。
「時計一本一本を調べる作業を大事にしていて、デザインもそうなんですけど、つくられた時代の背景を知ることで、そこからイメージを膨らませて、組み合わせを考えたりするんです」
「ここにきて、自分の視野を広げてもらったなって思います。中学生ぐらいのときからずっと服が好きで、服しか興味なかったんですけど、ついこの間も急に家に白い器を飾りたいなと思って、作家さんの展示に行って器を買ったりしてたんですよ」
現在YEANAYは、ひとり体制で運営している店舗がほとんど。大阪店は2階建てのため、ふたりで2フロアをまわしている。
役職をつけることで業務の枠を決めてしまわないよう、会社では代表の米永さんを除いて役職がない。少人数で運営していることもあり、一人ひとりの業務は幅広い。
八尾さんの場合は、お店で接客や販売をしつつ、商品の出荷、卸先とのやりとり、SNSの運用などを担当。
そのほかにも、コロナ禍で卸先のお店が休業になってしまった際は、未経験にも関わらず即席でWEBショップの体制を整えたこともあった。
接客以外でも、その人のやる気とスキル次第でさまざまな挑戦ができる環境があるし、何よりものを見立てる力は、きっと一生役立つスキルになるはず。
「前に働いていたセレクトショップでは、国内のブランドも取り扱っていて。本当いろんな服を見てきたんですけど、やっぱりここの服ってとにかくきれいなんですよ。クオリティが高い」
「お客さんも同じだと思いますね。建築家の方やデザイナーの方など、いい服着たいなっていう潜在意識を持ってる人がやっぱりここにも集まってるんだろうなっていうのは感じます。だからリピートのお客さんもすごく多いんです」
シーズンごとに発表するコレクションは、半分は定番の形を販売しているというneuthings。同じ生地を使った形違いの洋服があれば、違う素材で同じ形の洋服もある。
「お客さんも『次は違う形に挑戦してみよう』とか、『違う素材で同じ形の洋服を買ってみよう』とか。長くブランドと関わってもらいやすいんです」
お客さんとの関係を築いていくには、洋服はもちろんのこと、接客も大切。
「ぜひ話を聞いてもらいたい人がいる」とのことで、後日東京のYEANAY KICHIJOJIへ。
話を聞いたのはスタッフの下村さん。
現在は、吉祥寺店と渋谷店、ふたつの店舗をひとりで運営している。
「この前、はじめて渋谷店に来られたお客さまがいて。ほしい服の在庫が吉祥寺店にしかなかったんですね。でも、その方は出張で来ていたので吉祥寺に行ってもらう時間もなくて。オンラインでご注文いただいたら、私が出荷しますよってお伝えしたんです」
「そしたらさっそく注文が入ったんですよ。それで、商品を送る際に一筆添えたんです。『ご来店いただきありがとうございました。また出張の際は、渋谷店にもご来店ください』って」
今でもそのお客さんは、近くを訪れるたびにお店に遊びに来てくれるそう。オンラインでも洋服を買ってくれているのだとか。
そういった細やかな気配りは、買う側にとってはとてもうれしいし、また買いたいと思うきっかけになるのだろうな。
米永さん夫妻とは大学の同級生だったという下村さん。
アパレルは未経験だったものの、YEANAYの渋谷出店のときに米永夫妻から誘いを受け、働くことに。
「うちのブランドが好きな方って、優しい人が多いなと思いました。最初は商品のこともあまりわかっていなかったので、お客さまから教わることもあったし、店内が混み合っているときは、自主的に外で待ってくれる方もいたりして」
「あとは、感性が細やかな人が多いです。なので新しく入る人は、几帳面であろうとする人がいいのかなって。窓に指紋がついているとか、ディスプレイがちょっと曲がっているとかに、ちゃんと気づいて行動できる。そんな人がいいですね」
ちょっと変わったアパレルショップ「YEANAY」。
興味を持った方は、まずはお店に足を運んで、その空気感を味わってみてください。
(2022/10/27 取材 杉本丞)
※撮影時は、マスクを外していただきました。