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子どもたちと
一緒に“ソウゾウ”する
島と自分の未来

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

子どものころ、将来の夢って何だったっけ?

学校の先生、お医者さん、警察官…。

思い返すと、身近にいる大人たちの職業が将来の夢になっていたような気がします。

周りにいろんな大人がいるほど、思い描く将来の想像は広がっていくのかもしれません。

けれど、小さな島に住んでいるとすると、どうなるだろう。

鹿児島県・沖永良部(おきのえらぶ)島。

奄美大島と沖縄本島の間にあるこの島は、人口が1万2000人ほど。和泊(わどまり)町と知名町という2つのまちがあります。

島に住む子どもたちの多くは、小学校を卒業するとまちに二つずつある中学校を経て、島に一つの高校に通うことになります。

今回の募集は、知名町の知名中学校や田皆中学校の生徒が集う公営塾のスタッフ。塾の立ち上げから携わります。

任期の3年間、勉強を教えるだけでなく、一緒に島の魅力を見つけたり、地域の人と子どもたちをつなげたりする仕事です。

高校を卒業した子どもたちのほとんどが島を出ていくという現状のなかで、自分が育った島に誇りを持ってもらうために。そしていつか戻ってきてもらうために。子どもたちにどう語りかければいいのか。

想像しながら読んでみてください。

 

東京から鹿児島へ飛行機で向かい、さらに飛行機を乗り換えて、およそ4時間。沖永良部島に到着。

空港から知名町までは車で20分ほど。

左手にさとうきび畑、その奥には綺麗な海。潮風が強くてさとうきびがザワザワと揺れている。

今回訪れたのは知名町役場。空港からはほぼ一本道で到着する。

入ってすぐの階段で3階に上がると、学校教育課のデスクが。

挨拶もそこそこに、会議室に案内してもらう。

まずは企画振興課の永野さんに話を聞く。昨年度まで島の教育魅力化プロジェクトを担当し、公営塾を知名町に取り入れようと手を挙げた発起人。

「島には高校までしかないので、卒業したら、島から出ていくのは当たり前なんです。地域のおじいちゃん、おばあちゃんも子どもや孫が帰ってきてくれたらうれしいっていうんだけど、帰ってきてもしょうがないっていう思いもあって」

「このままでは、まちの人口がどんどん減っていく。役場の職員としてまちづくりに携わってきたから、どうにかしたいとずっと思っていたんです」

この土地に今、何が必要なのか考えたとき、まちに愛着を持つ人を増やすことが大切なのではないかと考えた永野さん。

そんなとき、たまたま株式会社Prima Pinguinoという高校魅力化プロジェクトを伴走する会社が登壇する講演会に参加した。

「隣の徳之島まで行って、はじめて『高校魅力化プロジェクト』について知りました。そこで自分たちの土地に愛着を持ってもらうには、地域の歴史や文化、根付いている産業とかを学ぶ機会が大事なんだと気づいて」

「以前、小中学生と島の課題や未来について話し合う機会があったんです。そのときに、ひとりの子どもが『沖永良部島は観光でご飯を食べているところ』って言ったんです」

実際は、沖永良部島に住む人のほとんどは農業で生計を立てている。

さとうきび、じゃがいもなど、特産品と言えるものはあるけれど、子どもたちにとっては当たり前の風景。

当たり前に思っていると、ありがたさや魅力が薄れてしまう。島という環境のため、ほかの地域との違いを知る機会が少ないということも理由のひとつかもしれない。

「もともとは高校に公営塾をつくる予定だったけれど、一歩手前の中学生の段階から島について学ぶ機会をつくることで、子どもたち自らが島の魅力に気づいていくんじゃないかと思っているんです」

まずは子どもたちの反応を見ようと、昨年の夏休みに「トライアル公営塾」を開催。

小学生と中学生を対象にまちの公民館で開かれ、講師として全国から5人の大学生が集まった。

大学生お手製のドリルで一緒に勉強したり、沖永良部島の地図を手づくりのすごろくにして遊んだり。

「地域学体験」として、知名町に住む大人たちと、まちの課題について一緒に話し合う時間もあったそう。

子どもたちにとって、楽しみながらまちのことを考えるきっかけになったと同時に、普段関わることのない大学生と交流することで、刺激にもなった。

「地元の中学、高校に行って、島を出る。これが当たり前なんです。なんとなくではなくて、なぜ大学に行くのかとか、どんな自分になりたいのかとか。考えるきっかけになったんじゃないかな」

講師の大学生も、島の子どもたちから素朴な疑問を投げかけられて、自分を見つめ直す機会にもなったのだとか。

永野さんは、どんな人に来てもらいたいですか?

「公営塾はこれからだから、正直どうなるかわかりません。最初から全部うまくできなくても大丈夫。明るく前向きに取り組んでくれたらうれしいですね」

「清水くんは沖永良部が出身だけど、海外に行ったりいろんな経験をしたり、考え方が柔らかいんです」

 

「いやいや…」と照れながら話すのは、学校教育課の清水(きよみず)さん。

知名町出身で、高校を卒業後、専門学校で岐阜に行ったり埼玉で就職したり、オーストリアで暮らした経験もある方。

これまでの経験を愛着のあるこの島で活かしたい、その想いで知名町へ帰ってきた。

「子どもたちには、想像する力と探求する力をつけてほしいと思っていて」

「今、小中学校ではICT教育に力を入れているんです。プログラミングを取り入れたり、パソコンで問題を解いてみたり。楽しみながら自発的に学んでいく仕組みをつくっているところです」

今回、一緒に公営塾をつくる人は、英語を中心とした教科の学習指導と、地域の文化などを学ぶ探求学習に関わることになる。

「教科の指導は、学校の先生たちと連携をとりながら公営塾で補足して教える形になると思います。先生たちが一番子どもたちと接する時間が長いので、学習の進捗具合とか子どもたち自身のこととか、うまくコミュニケーションをとりながら進めてもらいたいですね」

「今回着任いただく方には、もうひとつの探求学習にも深く関わってほしくて。たとえば、沖永良部高校では方言とか特産物とか、島の文化を学ぶ地域学習の時間があるんです」

授業では、学んだことを活かし、生徒から出たアイデアをもとに特産品を商品化する、といった実践的なこともしている。

そこで生まれたのが、「えらぶ仕事図鑑」。

これは、「みらい探求プロジェクト」という一般社団法人三菱みらい育成財団からの助成を受け、生徒が島で働く大人たちにインタビューをし、図鑑として一つの冊子にまとめたもの。

取材のアポ取りから記事作成まで、生徒たちだけでおこなったそう。

図鑑を見せてもらうと、じゃがいも農家や漁師など、この土地ならではの仕事をしている人、移住してきて新しくホテルを開業した人など、まちにある仕事とそこで働く人が紹介されている。

「高校生たちがそれぞれ興味を持った分野を選んで、グループで話を聞きにいって。ポスターにまとめて発表する時間もありました」

生徒たちは、身近にいる大人がなぜこの仕事をしているのか知ることができ、自身の将来について想像するきっかけにもなった。

「島についてもっと知りたい、学びたいと思える時間を、高校だけじゃなく中学の段階からはじめられたらいいなと思っています」

「あとは、公営塾に小学生が遊びに来られるようにしたり、高校の探求学習につながるような授業のサポートをしたり。垣根を超えて、島のいろんな人たちをつないでいってもらえるとうれしいですね」

新しく着任する人は、子どもたちと島の大人たちをつなぐコーディネーターのような役割にもなるのかもしれない。

「一番は、子どもたちに伴走してもらうということ。将来どうなりたいのか一緒に考えたり、島のことを知って興味を持ってもらう機会をつくったりしてほしいです」

最後に話を聞いたのは、地域おこし協力隊としてふるさと納税の受付やPRをしている橋井さん。

3年前に京都から移住してきた。

「自然環境に生活が左右されるのは、日々感じています。台風とか天気が悪いと船が出なくて、ものを運ぶことできないから、スーパーから品物がなくなることもありますし、梅雨の時期は一面に霧で視界が悪くなることもある。驚くことは多かったですね」

「でも海が近くて、本当にきれいなんです。京都に住んでいたころは、海に行くのに車で何時間もかかっていたのに、今はすぐそこにあって。夜は静かだし星空もきれいで、居心地がいい場所です」

「あと、知名町の魅力は人だと思っていて」と、橋井さん。

昨年、ふるさと納税の返礼品のPRとして、農家さんや個人商店など、島に住む人にフォーカスした動画の作成を企画。

「マンゴー農家の方は、まるで家族の一員ようにマンゴーを大切に育てていて。マンゴーってほかの地域でもつくられているけど、知名町のマンゴーはつくり手も魅力の一つなんだなって発見がありました」

ほかにも、小学生が放課後を過ごす居場所づくりをしている人や、「島留学」として島外から1年間子どもたちがやってくる取り組みを担う人など。さまざまな人が活躍している。

「草木染めをしたり、畑で野菜つくったり。あとは子どもたちと一緒にビーチクリーンをしたこともありました。自然に触れながら成長していけるのが、この島の魅力なんだと思います」

「外から来た人も、島の人や文化に触れていい刺激を受けるし、子どもたちも外からの新鮮な刺激を受ける。いい循環が生まれやすい場所だと思います」

役場の人も外から来た人には親切に対応してくれるし、橋井さんのようにすでに地域に馴染んでいる人もいる。新しく来る人にとっても、大きな助けになってくれると思う。

 

取材の道中、学校帰りの小中学生を見かけました。

信号のない横断歩道で待っていた小学生に道を譲ると、渡り終わった後に大きな口を開けて「ありがとうございました」と言ってくれる子がいたり、ツタを使って塀を登るわんぱくな子どもたちがいたり。

その子どもたちに、家族なのか近所に住む人なのか、軽トラックから話しかけ、楽しそうに会話している風景も。

小さな島だからこそ、アットホームであたたかな雰囲気を感じました。

子どもたちと一緒に未来を想像して、この島の道標を創造していく。

きっとワクワクする時間になると思います。

(2023/07/06 取材 大津恵理子)

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