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なくても困らなそうだけど
必要なものってなんだ?

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

なくても社会や日常では支障なさそうなものでも、なくなってしまうと寂しかったり、困ってしまうものがある。

たとえば、コロナ禍で出社しなくても仕事はできると思ったけれど、やっぱり対面で会って話すことは大切だと思いました。

あとは派手なプレーはしないけど、チームのバランスを取っている黒子の選手とか、外からよく見えないけれど縁の下の力持ちのような存在。

entakuも、そんな場所だと思いました。

entakuは、一般社団法人ツギノバが運営している飲食を軸にしたコミュニティスペースです。

今年の1月、鹿児島県・沖永良部(おきのえらぶ)島の知名町にオープンしたばかり。

日本財団の「子ども第三の居場所」事業の助成を受けて、子どもたちが無料でご飯を食べられたり、自由に時間を過ごせたりできるオープンキッチンを設置。

また、島外から多種多様な生き方・働き方をしている人を呼んで、イベントの企画・運営もしています。

どうしてそういった生き方・働き方をしているのかを話してもらうことで、島の子どもたちのキャリア教育も含めた新しい気づきにつながるように。

ほかにもカフェやコワーキング機能も兼ね備えているため、仕事や打ち合わせもできます。

目指しているのは、子どもを中心に考えながら、異なる性別、年齢、肩書き、そして島内外の人が集まる交流拠点。

今回は、entakuで働くサブマネージャーと調理担当の2つの職種を募集します。飲食業の経験よりも、コミュニティづくりに興味のある人が良さそうです。

 

沖永良部島と書いてオキノエラブジマと読む。一度聞いたら忘れない、特徴的な名前だと思う。

鹿児島・奄美群島の南西部に位置する島で、年間平均気温は22度の亜熱帯気候。高低差がほとんどない土地で、農業が主産業。サトウキビやジャガイモ、花きの栽培が盛ん。

また島には300を超える鍾乳洞があって、新しい観光資源として注目されている。

鹿児島空港を飛び立った機内で、どんな風景が広がっているのか想像する。

48人乗りの小さなプロペラ機は、1時間ちょっとで沖永良部空港に到着した。

東京を出発したときは上着を着ていたけど、外に出ると半袖でちょうどいい気候。沖縄のような南国に降り立った感じがする。

空港から車を走らせる。山がほとんどない島なので遠くまでよく見える。平らな土地に続く畑の向こうでは、海がきらめている。

海沿いを南下すること30分ほどで白いホテルに着いた。

entakuは左の青い建物の1階。

扉を開けて中へ入る。

内装は木材が中心で明るい雰囲気の店内。カウンター越しに漁港が見える。

一般的な食堂のようだけど、子連れのママさんやパソコンを開いている方、5、6人のビジネスマンが打ち合わせをしている姿も。

この場所を運営しているのが、一般社団法人ツギノバ。

離島を中心に地域課題の解決や地域社会を維持・振興することに取り組んでいて、現在は沖永良部島のほか、北海道・利尻町、東京都・新島村などにも関わっている。

沖永良部島では知名町を中心に事業を展開中。

まずは、代表の大久保さんに話を聞く。

「一般的にどこの地域も同様だと思うんですが、まちの課題感って、とても多岐に渡っていて」

たとえば、少子高齢化が進んでいて、そのなかで産業振興していかなきゃいけない。でも担い手がいない。そうすると雇用の場が縮小していって、高校生などの若い世代の島離れが加速する。ますます少子高齢化が進んでいく。

「一つの側面だけを見ると少子高齢化という言葉でまとめられてしまうのですが、それを引き起こしている要因にはいろんなことが連動しています」

さまざまな地域課題の要因を俯瞰して、横串を刺すように複数の取り組みを連動させる。

一過性で終わらない継続的な対策にしていくのが、ツギノバが知名町と連携して進めている3本の事業。

1つ目は北海道・利尻町と連携して取り組む人材シェア。2つ目は企業誘致や観光需要を増やすテレワーク事業。3つ目は移住定住相談窓口の運営。

3つの事業をつなげながら、まだ明らかになっていない課題を顕在化させていく場が、entakuと言えるかもしれない。

まず誰もが訪れることができる場所をつくり、集まってきた人たちの接点をつくっていく。会話する機会が生まれるからこそ、いろいろなことがはじまる。

大久保さんも、島の人たちとの会話を大切にしている。

もともとは、ウェブマガジン『離島経済新聞社』、通称リトケイの代表を務めていた方。メディアの仕事を超えて、今ではどっぷり地域に入り込むようになった。

「計画策定とか事業ごとに現場に入るんだけど、つくったらそれで終わりになってしまうのはいやで。2泊3日で現地に行っても、それだけじゃ地域の本質的なところってやっぱりわからないんですよね」

「現場でさまざまな課題に向き合っている方々がたくさんいて、そういった人と一緒に悩んで、考えて、動いていきたいと思うんです」

2017年ごろ、初めて月の半分を北海道・利尻町に滞在するような生活になったときに、ようやく“まち”が見えてきたという。

話してくれたのは、北海道・利尻町につくった定住移住支援センター「ツギノバ」での経験。

仕事や暮らしの窓口としてだけでなく、カフェやコワーキングスペースなどの機能のほかに、小・中学生向けの塾を受け入れるなど、多面的な活動ができるようにした。

「子どもたちが卓球している近くで、僕らみたいな外から来た大人が仕事をしている。いろんな属性の人たちが、お互いの存在を認識しながら一つの場所にいる」

いろいろな人たちが集まるからこそ、化学反応が起きる。

entakuでもそんな狙いが形になったことがあった。

「オープンキッチンの取り組みを見て、農家さんがじゃがいもや玉ねぎなどを安く譲ってくれて。味は同じなのに、規格外で使えないサイズの話などを聞いて、そういった野菜をうまく活用できないかとメニュー開発のきっかけになったり」

「ほかにも、色々な取り組みをしているのを知って、高校生を対象にしたイベントを開催できないか、などといったさまざまな相談をいただくようになりました」

人が集まるから会話もするし、いろいろなことが起きる。

どのようにして人を集め、良いハプニングを起こしていくのか。

それは、今回募集するサブマネージャーと調理スタッフに求めていることでもある。

entakuでは、通常の営業だけでなく、オープンキッチンをはじめ、島外の人とも関われるようなワークショップやイベントもおこなっている。

たとえば、月に1回さまざまな生き方・働き方をしている人を呼んで開催するイベントもその一つ。

4月のゲストは、Webの制作・コンサルティングのかたわら、カレー屋をオープンしようとしている企業さん。彼らがつくるカレーを食べながら、生き方や働き方についてみんなで話した。次のゲストは、歌いながら全国を旅したご夫婦。

島の外からゲストを呼ぶことで、これまで接点のなかった島民たちもつながっていく。

「ここに来た人たちがつながっていったり、お互いに支え合う関係ができたり。子ども同士であっても友だちになって自然に遊ぶようになるとか。そんな場所にしていきたいです」

現状、食事メニューの考案やイベント企画のほとんどは大久保さんがひとりで担っている。

「食事のメニューが固定化してくると、調理スタッフも新鮮みがなくなってくるんですよ。だんだん流れ作業になってくるから。そうするとクオリティを上げたり、維持していくのが難しくなるんですよね。それはキッチンもイベントも同じです」

場は一度つくって終わりではなく、編み続けるもの。

そのためには、新しいアイディアを出して、形にできる人がほしい。

調理スタッフであれば、お酒が好きで、自宅でお酒のつまみをつくるのが好きとか、発酵食を趣味でつくっているとか。サブマネージャーだったら、新しい企画を考えるのが好きな人など。

日々の生活を自分で楽しむことができる人だと、島での暮らしも含めて面白い環境だと思う。

またコミュニティづくりには、コミュニケーションも欠かせない。人と関わるのが好きという根っこは大切だ。

 

次に話を聞いたのは、一般社団法人ツギノバでディレクターを務める森川さん。前職は、北海道のドラッグストアで販売員をしていた。

「ドラッグストアでは7年ぐらい働いて、ひと通りやりきったというか。漠然とほかのことをやってみたいと思って」

新しい挑戦をしようと、転職を決意。そのとき日本仕事百貨で、ツギノバの記事を見つける。

「定住移住の窓口だけでなく、場づくりしているところにも惹かれました」

場づくりに興味があったんですか?

「そうですね。ふらっと来たお客さんが、何を買うわけでもなく、『ちょっと顔見に来たよ』って世間話をして帰っていく。ドラッグストアで働いていたときも、そんな時間が好きでした」

森川さんが拠点とする移住定住相談窓口は、entakuのすぐ向かいにある。ふらっと地域の人たちもやってくるし、島の人たちと会話する機会も多い。

オープンキッチンの宣伝をするためにチラシを配ることもあるし、島外企業が入居するテレワークオフィスの掃除も含めた管理や、SNSの更新による日々の情報発信など。施設や各種取り組みの発信も担当している。

今ではすっかり溶け込んでいるように見える森川さんも、移住当初はすぐに北海道に帰りたくなってしまったそう。

「最初の1週間は仕事もなかったし、大久保さんも島にいなくて。すごい孤独を感じました」

帰りの飛行機を探してしまうくらい思い詰めてしまったとき、近所のおばあちゃんに話しかけられた。

「『引っ越してきたのは分かっていたんだけど、なかなか会うタイミングがなくて』と声をかけてくれました。話をしていると気持ちもだいぶ落ち着いて」

「町の皆さん、すごく気にかけてくださるんです。声をかけてくれたり、野菜持ってきてくれたり」

会話があるからこそ、大きな支えにもなる。

 

entakuのオープンから半年。ようやくお店がまわり始めてきた実感がある。

「これからさらにいろんなことができると思います」と代表の大久保さん。

たとえば昼でも夜でも、島内外の飲食店さんとコラボした限定メニューを提供できるかもしれない。

「あと、今はオープンキッチンを親子限定にしているんですけど、ゆくゆくは、島のおじいちゃん、おばあちゃんとかいろんな人が来て、自然とみんなで食卓を囲めるような居心地の良い空間になっていってほしいですね」

気軽に集まれたり、作業できたり、普段会わない人と会話できたり。

一般社団法人ツギノバは、会って話す場所があるからこそ育まれるもの、生まれるものを意図的につくっているように思います。

そしてentakuは、料理やコミュニケーションを通じて編まれていく場。

何か目立ったスキルや経験が必要なわけではありません。

みんなが集まりたいと思う場所、そしてentakuに行けば、何か起こりそうというワクワク感。

常に最適解を探求し、実行できる人を求めています。

(2023/05/16 取材 杉本丞)

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