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地方のリアルをまるごと学ぶ
これからのインターン

大学生のインターンシップが浸透し、多くの企業や自治体がプログラムを用意するようになりました。

一日の職業体験から、コンペ形式で企画を競う短期インターン、社員と机を並べてプロジェクトに参加する長期インターンまで。最近では、1年次から参加する学生も少なくないそうです。

北海道むかわ町でも、2023年から「ムカワカレッジ」というインターンが始まりました。役場主催のインターンとしては珍しく、2週間から3ヶ月の中長期間、町内で就業体験ができます。

むかわ町で就職する学生を増やす目的はありつつも、「大学生に、地方のリアルなまちづくりを学んでもらいたい」という想いも大きいこのインターン。担当職員の貝澤さんはこう表現していました。

「朝、インターン生はそれぞれ農園さんや漁業者さんのところに行って、一日中働いてヘロヘロになって、仕事終わりは町のおっちゃんたちにBBQで揉みくちゃにされたりなんかして。どっぷり地域に浸かるなかで、自分なりにこの町の課題を見つけて考えをアウトプットして、大人からフィードバックをもらう。噛み応えのあるプログラムをつくりたいんです」

今回は、インターンコーディネーターとして、ムカワカレッジ事業を進めていく地域おこし協力隊を募集します。地域の方を巻き込んだプログラムの立案や、インターン生のサポートなど、コンセプトの組み立てから現場仕事まで幅広く担う役割です。

本格始動したばかりのこの事業。まだ柔らかく、粗い部分もあります。だからこそ、コーディネーター自身の想いや考えを反映させられる面白さがあるはずです。

 

むかわ町は、札幌から高速道路を走りおよそ1時間の場所にある。新千歳空港からも車で50分と、北海道の感覚では「札幌から近い町」だ。

市街地を抜けて、広い畑と青空を眺めながら車を走らせ、町に入る。

中心部は役場やスーパー、病院など生活に必要な施設がコンパクトにまとまっていている。少し先には海も見えて、温泉付きの道の駅には、地域の人に混じってツーリング客の姿もちらほら。

ゆったりとした、暮らしやすそうな町だなあ。

役場に到着し、プロジェクトの担当者の貝澤さんを尋ねると、分厚いファイルとノートを抱えて、小走りでやってきた。

「走りながら悩みながらこの事業をつくってきたもので。昨日も募集要項を書きながら、どう話をしたらこの取り組みが伝わるのか… と唸っていました(笑)」

人口7500人の町がインターンシップを始める。どんな経緯があったんだろう。

「前提として、むかわ町は若者に、まちづくりのプレイヤーになってほしいと考えているんです」

他地域の例にもれず、むかわ町でも、中学や高校卒業をきっかけに町を出る若者は多い。町と高校は、地元の子どもたちが進学したくなる学校を目指そうと、7年前に鵡川(むかわ)高校魅力化プロジェクトを立ち上げた。

最大の特長は、3年間かけて地域の大人を交えたフィールドワークで町を掘り下げる「むかわ学」。

生徒の発案で、町のPRを目的にコスプレイベントを開催したり、SDGsもふまえたスマート農業や魚介類のPRを役場に提言したり。毎年高校からさまざまな発信がおこなわれるようになった。

「若者が活躍できる土壌こそが、まちづくりの肝だと思っているんです。高校生がまちづくりに積極的に参加してくれるようになったこの6年で、町の人たちも以前よりずっと高校生を身近に感じて、応援するようになりました」

一方で、高校を卒業した若者が町を去る傾向は今も変わらない。そこで近年は、都市部の若者の関係人口を増やす取り組みに力を入れ始めている。

その一環として、町は2022年に「高校×大学×地域連携事業」のもと、札幌大学と協定を締結。高校と町のつながりを札幌圏の大学まで広げ、大学生がむかわ学のサポーターとして、高校生をサポートする取り組みが始まっている。

「はじめてのことなので、最初は何をやるかめちゃくちゃ悩みました。でも大学生もむかわ学を通して町を楽しんでくれて。もっとむかわや地方のリアルを知りたい生徒もいるんじゃないかと感じて立ち上げたのが、ムカワカレッジです」

ムカワカレッジは、2週間から3カ月間のインターンシップ・プログラム。インターン生は日給をもらいながら、町に滞在して働くことができる。

まずはトライアルとして、役場の仕事を体験する第1期生を募集したところ、札幌大学から2名、東京大学から1名の応募があった。

2023年2月から2週間活動をおこなったインターン生たち。実際に受け入れてみて、いかがでしたか。

「うーん… 正直なところ、まだまだ理想と現実のギャップが大きくて。課題だらけだなと感じました」

課題だらけ?

「はい。たとえば東大の男の子は『地方の教育格差について知りたい、教育関連のプロジェクトを立ち上げてみたい』とエントリーしてくれたんですが、僕らがどこまでハードルを上げてよいものか慎重になるあまり、高校や公営塾、役場の見学で終わってしまったんです」

「本当は現場で話を聞いて課題を設定して、出してもらった提言を事業化するには何が必要か、役場や高校の大人たちと議論させてあげたかった。受け入れ体制が未熟で、お客さん扱いになってしまったのは大きな反省です」

一方で、思ってもみなかった発見もあった。

「1期生の3人には、公営塾やムカワカレッジそのものの改善を提言してもらったんですが、想像以上のクオリティだったんです。大学1年生、2年生でここまでやるかと驚いて」

「学生間の発表で終わる予定だったんですが、急遽教育長や他部署の職員も呼んで、発表会をして。正直『見学して楽しかった』で終わると思っていたんですが、もっとハードルの高いこともやらせたくなりましたし、大学生もそれを望んでいるんだとすごく感じましたね」

1期生の受け入れを終えた今、貝澤さん自身も事業の今後の方向性が見えてきた。

その具体案が、農園や地域商社など、民間企業を含めた町の仕事を体験できるプログラム。

「お客さんとしてではなく、インターン生が主体的に地域に飛び込む内容にしたいんです。農家さん、NPO、お寺さんなど、うちの町にも熱い思いをもって活動している事業者さんはたくさんいて。さまざまな年齢の人と関わって、『田舎にはこんな面白いおっちゃんたちがいるんだぞ、これがリアルなまちづくりの現場なんだぞ』って目の当たりにしてほしいんですよね」

「通常業務の体験以外に、自分の能力を試せる機会もつくりたくて。たとえば商品企画や、事業化を目指してプロジェクトをやってみるとか。大人からフィードバックをして、もっとこうすればよかったね、と振り返るところまで体験できる内容にアップデートしたいと思っています」

第一歩を踏み出したばかりのムカワカレッジ。今回はコーディネーターとして、貝澤さんと二人三脚でこの事業を進めていく人を募集したい。

任期の3年間の目標は、今のところ2つ。役場以外の受け入れ先を開拓すること、通年でインターン生を受け入れられる体制をつくることだ。

コーディネーターは、大学生が地域にどっぷり浸かれるように、裏方として汗をかくことになる。地元を回って粘り強く受け入れをお願いすることもあるし、インターン生それぞれの希望をヒアリングしながら臨機応変にプログラムをまとめる必要もある。ときには、インターン生や地域の方の間に立って話をすることもあると思う。

「僕らが今後つくっていくインターンがどれだけの需要があるのか、まだ測りきれていません。中身がこのままでは普通のインターンで終わってしまうとも思っています。あとはどう中身を用意するかなんです」

「2023年度は数十人受け入れられるだけの予算は確保しました。もしこれだけの若者が関係人口になってくれたらと思うと、新しい文化をつくる仕事なんじゃないかなと感じます。一緒に悩みながら楽しんで挑戦してくれる方に来ていただけたらうれしいですね」

 

インターンに参加していた大学生は、どう感じていたんだろう。後日、1期生の一人、東京大学の中島(なかしま)さんにオンラインで話を聞いた。

「春休みだったので、漠然と今しかできない何かをしたいと思っていたんです。都市部と地方の教育格差に関心があったので、現状を見聞きして、主体的に行動できるようなボランティアを探していました」

「むかわは募集要項に『プロジェクトの立ち上げ』という文言があって、ほかと違う感じがして。これだ、と思って応募しました」

大寒波でフライトが5時間遅れるハプニングもありつつ、辿り着いたむかわ町。

「夜に駅に着いたんですけど、あたり一面雪景色で、うわあ、想像通り何もないって。野球部の寮でお世話になる予定だったので、郷に入っては郷に従えで、高校生たちとお風呂に入るところから始まりました」

活動期間を振り返ってみて、いかがですか。

「現状を知るという意味で、すごくいい経験をさせてもらいました。科目の選択肢が少ないことや就職が当たり前の選択肢になっていることも目の当たりにして」

「野球部の子に軽い気持ちで『大学行かないの?』と聞いたら、『目的もなく行かないですよ』と言われたのもグサッと来ました。自分はまさに目的もなく大学に行った人間だったので、こんなに意識の差があるんだ、って」

中島さんは高校魅力化の一環として開校している公営塾に興味を持ったそう。現場見学や高校生へのヒアリングを経て、「もっとこうしたらよいのでは」という考えも浮かんだ。

「ただ、提言も教育長に報告して終わってしまって。活動期間も短いので何かを抜本的に変えることはむずかしいだろうとは思っていたんですが、職業体験で終わってしまった物足りなさはありました。誰かに自分が感じたことや考えを話して、フィードバックをもらえる環境があるだけで全然違うんじゃないかと思います」

「ほかにもやりたかったことはたくさんあったんですが、役場の方に気軽に相談するのも気が引けて。今回募集されるコーディネーターが、大学生と町の間に立って『こんなことができるよ、やってみる?』と伴走してくれる体制ができると大きく変わると思いますね」

「野球部のみんなとは、夏の予選を見にいくって約束しました。僕も朝練夜練にがっつり参加したので」と中島さん。

鵡川高校生の出会いは新鮮だったようで、地方の高校生に東大生が勉強を教える事業を興しても面白そう、と考えている。

「ムカワカレッジは、うまく使えばもっといい制度になると思います。将来のことを考えたい、地方や都市部との格差という全国的な課題を、自分の体で体験したい人は僕の周りにもたくさんいて」

「こういう大学生の期待に応えるプログラムを、ぜひつくっていってほしいです」

北海道の小さな町で始まった、若者を巻き込んだまちづくり。ムカワカレッジが目指すプログラムは、大学生にとっても貴重な経験になるはずです。

また、取材後2023年8月上旬から9月下旬にかけてムカワカレッジの第2期もスタートしました。第1期を上回る9名の学生が合計5つの大学から参加し、地域により大きな風を吹かせています。

事業はまだまだこれから。町と大学生と一緒に走りながら、面白い未来をつくる人を待っています。

(2023/03/20 取材 2024/2/13 更新 遠藤真利奈)

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