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入り口は自分次第
等身大のゼロ・ウェイスト

ホテルのチェックインをしていると、固形石鹸と切断器を渡された。

「滞在期間中に使い切れる石鹸の量を決めて、お使いください」

1泊2日で使い切れる分量ってどれくらいだろう。

まずは入室して手を洗うし、トイレに行くたびに使うはず。あとは一回あたりどれくらい使うか。いつもどれくらい使っていたっけ?

自然と浮かんだ自分の暮らしへの問い。

そんな小さな疑問から、環境問題への道は開けているのかもしれません。

宿泊したのは、徳島県上勝町内にある「上勝町ゼロ・ウェイストセンター」の一部。

ゴミの中間処理施設に教育・研究・発信・宿泊機能をつけた複合施設です。

ゼロ・ウェイストとは、ゴミをゼロにすることを目標に、可能な限り無駄や浪費、廃棄物を減らす活動のこと。

施設が「?」のマークになっているのは、ゴミに対する疑問を社会に対して投げかけるため。

日本で初めてゼロ・ウェイストを宣言した自治体が、上勝町です。

その背景には、焼却炉の買い替えが財政的にむずかしく、燃やすゴミを出さないようにする必要がありました。

生ゴミは各家庭でコンポストを利用して堆肥化し、そのほかのゴミは住民各自がゴミステーションに持ち寄る。はじめは9分別でしたが、いまでは45分別に。

再資源化率は80%を超えています。

現在は、ゼロ・ウェイストをまちおこしの火種として、町外から人を呼び込もうとしているところ。

そこに民間企業として携わっているのが、株式会社スペック。

上勝町ゼロ・ウェイストセンターに加えて、醸造所併設のレストランバーも運営しています。

今回は、それぞれの施設で働くスタッフを募集します。

環境問題に興味がある人だけでなく、暮らしの豊かさに興味がある人にも、ぜひ知ってほしい仕事です。

 

徳島空港から車で1時間30分ほど、レンガ色の建物が見えてくる。

ここは、スペックが運営するレストランバー「RISE & WIN Brewing Co. BBQ & General Store」。

なかでは食品の量り売りもしていて、お米などを購入することができる。

まずは代表の田中さんに話を聞いた。

「僕はもともと徳島市の出身で、上勝町には縁もゆかりもなくて。スペックとしても、食の安全にかかわる検査サービスを中心に提供していたので、ビールづくりやホテル運営とも、まったく関係ないんです」

「きっかけは、若い人たちが都市へ出て行ってしまうことを良しとする、田舎の風潮に違和感を感じたことで」

どんな違和感でしょうか。

「若い人が出て行ったら、地域の人口減少も高齢化も進んで、ますます未来は無くなってしまう。でも、若者が帰ってきたいと思うような町をつくるために、自分は何も抗えていない」

「このままじゃダメだと思って、活動を始めました」

ビーチクリーン活動に参加したり、農家さんの商品開発や販路開拓を手伝ったり。

そんなとき、上勝町から「町内で使用する電力を、再生可能エネルギーで自活できないか」という相談を受けた。

「町内をいろいろと見せてもらって。エネルギーの問題よりも、過疎のほうが大きな問題じゃないかって感じたんです」

上勝町は林業で栄えた町。

6500人ほどいた人口は、林業の衰退とともに減少し、田中さんが訪れた2010年ごろには1700人ほどまで落ち込んでいた。

「人口が減っていけば、経済活動も回らなくなってしまうのではないかって町長にもお伝えして。そのときに、ゼロ・ウェイストのことを教えてもらったんです」

2003年にゼロ・ウェイスト宣言をした上勝町。すべての町民が、ゴミステーションに自らゴミを持ってきて45分別をしている。

その現実に驚いた田中さん。

「町民の人たちにとって当たり前でも、外から見たら面白いと思って。この活動を対外的にアピールすることで、上勝町のまちおこしをしていこうと思ったんです」

どうしたらこの町の魅力を伝えられるか、外から人を呼び込めるか。

思いついたのは、当時話題になっていたクラフトビールをつくること。

上勝町では、柚香(ゆこう)と呼ばれる柑橘類が特産で、ポン酢などの材料に使われている。

ただ、搾汁後の皮は捨てられて、何にも使われていなかった。

香りの強い柚香の皮を使ってビールをつくれば、きっと美味しく仕上がるし、ゼロ・ウェイストにもつながって面白いのではないか。

そうして2015年、醸造所を併設したレストランバー「RISE & WIN Brewing Co. BBQ & General Store」がオープンする。

こだわりは建築にも。

壁面は、町内産のスギ板の端材と廃材建具を組み合わせてできたもの。

ほかにも、空き瓶を利用してシャンデリアにしたり、使われなくなった農機具をディスプレイとして置いたり。

処分されてしまう予定だったものをアップサイクルして構成している。

「環境問題って大切なことはみんなわかっているけど、自分ごと化するのってむずかしいですよね。『もっと頑張ろうよ』とかって、説教臭いじゃないですか」

「そうじゃなくて、『あ、ここのビール美味しそう』、『この建築かっこいい』みたいに、ポジティブな感情に訴えるほうが自然ですよね」

たしかに、いいこととわかっていても、それをストレートに勧められると、素直に受け入れられないというか。

入り口は違っても、まずは興味を持ってもらったほうが、結果的に環境問題について考えるきっかけになりやすい。

町の問題についても、同じだと思う。

田中さんたちは自分たちでリスクを背負って事業を始め、実際に人を呼び込むことで、町の人たちの理解や信頼を獲得していった。

 

今回募集する職種の一つは、RISE & WINで働く料理スタッフ。

店長を務める池添さんに話を聞く。

「クラフトビールは、いつも10種類ほどがショーケースに並んでいて。規格外品の鳴門金時イモを活用したビールなど、ゼロ・ウェイスト要素のあるものが半分ほどあります」

そのほかにも、取り組みに賛同したアーティストや企業とコラボレーションしたビールも限定で発売。

たとえば、RISE & WINのほか、コーヒーロースターとBean to Barチョコレート会社が原料を持ち寄って醸造したビール。

副原料にコーヒー豆とカカオニブを使用したビールは、カラメルのような甘い香りと、カカオのビターなテイストが特徴なんだそう。

「徳島産の素材を使って、ビールと合うようなグリル料理などを提供しています。レシピは監修してくれている方がいるので、その通りにつくっていけば大丈夫なんですけど、これから新しいメニューも増やしたいと思っています」

ガーデン内でのBBQとランチプレートのほか、ゼロ・ウェイストセンターに併設しているホテルの朝食の提供をメインに営業している。

新しい人が入ったら、今後はディナーの受け入れもしていきたい。

「2年前には、『reRise』っていう資源循環システムを自社で開発して。ビールを醸造すると、年間で20トン以上のモルト粕が出るんです。それを集めて液肥にして、畑に撒いて麦を育てて、またビールをつくる」

「今後は麦だけでなく野菜を育てて、その野菜をレストランで使用する予定です」

池添さんは、お店の運営のほか、ビールの醸造所の視察ツアーのアテンドもしており、ゆくゆくはお店をはなれてさまざまな活動をしたいと考えている。

そのため、お店の運営や料理を任せられる人に来てほしい。

「ここはゼロ・ウェイストをいろんな視点から伝えているお店です」

たとえば、上勝ビールの空き瓶を回収して、長野県のガラス作家さんに渡し、それを器やグラスコップにしてもらい、RISE & WINで展示している。

新しく入る人も、ゼロ・ウェイストを軸にメニューの開発ができるといいと思う。

 

もう一職種の施設運営スタッフが働く、上勝町ゼロ・ウェイストセンターへ。

迎えてくれたのは、スタッフの大塚さん。

もともと洋服が大好きで、将来は洋服に関わる仕事に就きたいと考えていた。

学んでいくうちに、業界の問題について知ることに。

「自分のクローゼットの大半がファストファッションで。でもそれをつくっている途上国では、劣悪な環境のなかで働いている人がいて」

「自分が好きなものを通じて、社会問題に加担している側になっていると知ったとき、社会で起きているいろんな問題が自分ごとになったんです」

日本産業の衰退や地域社会の課題についても関心を持ち、都内の大学を卒業後、上勝町へ。

施設の運営に携わりつつ、今年度から洋服に関するプロジェクトを始めた。

それが「くるくるファッションプロジェクト」。

国内で家庭から焼却・埋め立てされる服は約45万トンといわれている。そこで上勝町を含む県内の自治体と一緒に服を回収し、再生を目指すことに。環境省のモデル実証事業としてスタートした。

現在は、3つの方法を試験中。

1つ目はイベントを通したリユースの促進。2つ目は東京の古着屋にデザインを依頼し、使用済みのシャツをリメイク。制作は町内の工房にお願いしているという。

3つ目は、マテリアルリサイクルとして、コットン製品はコットンの糸にもどし、ほかの製品は車の部品の一部に生まれ変わる。

「このセンターにいるからこそ、つながれる人がいたり、発信できることがあったり。そこから社会を変えるために生み出せることがあるんだなっていうのは、強く感じています」

自分の興味関心からスタートして、等身大のゼロウェイストに取り組んでいる大塚さん。

上勝ゼロ・ウェイストセンターは、5つの機能を持っている。

ゴミステーション、リユースショップ、交流ホール、オフィススペース、ホテル。

これまでゴミステーションは町が運営していたけれど、今後はスペックが運営を受託して進めていく。

今回入る人には、宿泊客のアテンドや訪れる人への施設案内、地域住民がよりステーションに集まりたいと思うようなアイディアを形にするなど、この施設に関わる運営全般を担ってほしい。

「地域住民みんなが集まる場です。町外からも宿泊や視察でいろんなゲストが来るので、コミュニケーションを楽しめる人だといいと思います」

 

「実はこの町には仙人がいるんです」と代表の田中さん。

仙人ですか?

「町民の一人なんですけど、ほとんど自給自足な暮らしをしていて。月の電気代は370円。水道は沢の水を引っ張ってきていて、冷蔵庫もエアコンもない」

「でも、すごく楽しそうなんです。住んでいる古民家も彼の美的感覚が散りばめられていて。たとえば、薪置き場は太さごとにきれいに並べてあって」

暖をとるだけでなく、煮炊きにも使うため、いつでも必要な分をすぐに取り出す必要があるから。

「いまの便利な世の中、わざわざ不便を選ぶってしないじゃないですか。でも、あえて選んで楽しそうに暮らしている人がいる」

「ゼロ・ウェイストってこんなに豊かなんだって思ったし、自分たちももっと表現したいと思います」

都会にいると、消費することに対して疑問を持ちづらい。大量生産・大量消費が日常に溶け込んでいるから。

でも、こうやって都市と距離を置いて、ゼロ・ウェイストに触れると、自分にとってほんとうに大切なことが見えてくると思いました。

ゼロ・ウェイストをいろいろな視点から発信していく人を求めています。

(2023/12/18 取材 杉本丞)

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