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めじは、広島県・尾道で活動するまちづくりの会社。
まちに足りてない機能を見つけ形づくることで、より良いまちづくりに挑戦しています。
2023年の5月に設立したばかりで、メンバーは4人。
飲食事業を起点に、まちづくりもおこなう山根さん。ファンに愛されるまちづくりを目指して、観光事業を展開する松村さん。全国各地で地域プロデューサーを育てている山本さん。アーティストでもあり建築士でもある本間さん。
どの方も、ゼロイチで事業をつくってきた方たち。
今年の6月には、尾道市内の高根(こうね)島に、空き家を改修して一棟貸しホテル「farm and bed SETODA」をオープン。
新しく加わる人は、このホテルの運営をしつつ、尾道に足りない機能を探し、事業にしていきます。雇用形態は正社員と業務委託。副業もOKです。
宿泊業界での経験などは必要ありません。経験豊富なメンバーと働くことができるので、将来、地域でまちづくり会社を立ち上げたい人など、野心を持った人は大歓迎です。
尾道駅の改札を出ると、すぐ目の前に瀬戸内海の島々が見える。
お盆シーズンということもあり、まちは多くの観光客で溢れている様子。
車に乗り換えて高根島を目指す。
しまなみ海道の真ん中あたりに位置する高根島。
生口島も含む尾道市瀬戸田町は、日当たりもよく、年間の降水量が少ない温暖な気候。レモン栽培が盛んで、生産量は日本一を誇る。
そんな島の一角に、「farm and bed SETODA」はある。
入り口から裏庭に抜けると、一面のレモン畑。すぐ近くには、穏やかな海と大小700もの島々の景色。
余計な情報もなく、自分だけの空間。なんて贅沢な場所なんだろう。
ホテルに入り、めじ発起人の山根さんに話を聞く。
1997年に有限会社いっとくを設立した山根さん。これまで飲食店や宿泊施設を20店舗ほど立ち上げたほか、いくつかの別会社で代表や役員を兼任しているという。
「人と何かやるのが好きだから多店舗展開していったし、飽き性やから焼鳥屋とか鉄板焼きとか、ラーメン屋とか。常に業態を変えて、新しいことに挑戦してきました」
「当初は、尾道に空き店舗がいっぱいあって。若者がつどってワイワイできるような飲食店もあんまりなかった。だからそういう元気なお店をつくっていきたくて。飲食業から、まちをつくる会社になっていったんかなと」
まちづくりもしようと思ったのは、何かきっかけがあるんですか。
「尾道に、新開(しんがい)っていう歓楽街があるんですね。そこの焼き鳥屋を引き継いでくれないかって頼まれて、8年前かな。小さいころに家族でよく行った馴染みの店だったから、どうにかしたいなって思いました」
「何も関係のない人がやったら、お店の味も空間も変えちゃうと思うんだよね。僕だったら、そうはしない。内装もタレの味もそのままにして、お店を経営できる」
1年後には、となりの居酒屋も引き継いだ。
当時は治安もあまりよくなかったという新開。山根さんが新しい風を吹き込んでいった結果、まちの雰囲気はそのままに、観光客も訪れる場所に。スナック街からは若い歌声も聞こえる賑やかさが生まれている。
「僕たちのお店で育って、尾道で独立してる人も結構いるんですよ。それがまたまちの風景になっていく。そういう意味では、飲食を通してまちの賑わいや面白さをつくってきたのかな」
「これまでに、新開に4つの宿泊施設をオープンしました。食う、寝る、遊ぶっていう機能をすべて持つことで、まち全体が盛り上がると思ったけど、本業もあるし、ひとつの会社ですべてやるのも難しい。よりまちづくりに踏み込んでいきたいと思って、めじを立ち上げました」
次に話を聞いたのは、めじで代表を務めている松村さん。
「もともと全国のまちづくりを支援する会社で働いていました。広島に配属されて、地域の事業者さんと一緒にいろいろとやったんですけど、とくにツアーに力を入れていて」
「観光って外からきた人にお金を落としてもらえる大事な産業。広島市内には、飲食店や泊まる場所はたくさんあるけど、アクティビティが少ない。そこにしっかりと付加価値をつけることができたら、まちもより盛り上がるはずなんですね」
ガイド付きサイクリングツアー、シーカヤック、クルージング、山登り、お好み焼きづくり体験など。その土地や文化を活かしたサービスを地域の事業者とともにつくってきた。
だんだんと自身もプレイヤーとしてまちづくりに関わりたいと思うように。そんなとき、共通の知人を通じて山根さんと出会う。
「めじとして初めて取り組んだのが『尾道御伽草子』というイベント。光と陰の空間作品を創り出すインスタレーションアート集団とコラボして、西國寺をライトアップしました」
アーティストのひとりは、尾道在住。たまたま山根さんが新開で知り合い、尾道で大きなイベントをやりたいという声を聞いたのがきっかけだった。
山根さんは、こんなことを話していた。
「やりたいことをやろうと思ったら500万円ほどかかるって言われて。都内の大手代理店や行政くらいの規模ならできるかもしれないけど、でかいところしか想いを形にできないっていうのは、すごく歪んでいるんじゃないかって」
「尾道で活動している人と一緒になって、夢を叶えたい。それで僕らも一緒にやらせてもらうことにしたんです」
使える補助金を探したり、地域の人に協力してもらったり。約20年ぶりのご開帳にもつながった。1週間ほどの期間で、約3000人が来場するほどの盛況ぶり。
「やっぱり山根さんがこれまで築いてきた基盤があって。僕が尾道でまちづくりしようと思ったら、地域の人と関係つくるだけで10年はかかると思うんですよね。それはとても助かっています」
できたらいいなとは思うけれど、実現までは至っていない。山根さんも松村さんも、まだないものを見つけて形にしていくのが得意な人だと感じる。
実は、めじとは別に観光事業の会社も立ち上げた松村さん。
「尾道も“遊ぶ”っていう機能が足りないので。まだまだ切り込む余地があるなと」
サイクリングの盛んな尾道。走る人は多いけれど、次々とほかの島へ行ってしまう現状があるそう。
地域に滞留する時間が生まれるよう、まちの面白い人に出会ったり、まちの歴史や文化に触れたりすることができるような機会をつくろうとしている。
「farm and bed SETODAでも、カヤックのツアー事業をやらせてもらっているんです。めじという会社があることで、僕がやりたいこととも、すごく相互作用があると感じています」
今回新しく入る人には、farm and bed SETODAのある瀬戸田町に拠点を置き、ホテルの運営をしながら、まちに足りない機能を探して事業をつくってほしい。
将来的には、松村さんのように別会社を立ち上げる選択肢もありだと思う。
farm and bed SETODAのことについて教えてくれたのは、山本さん。インターローカルパートナーズという、地域プロデュース会社の代表を務めている。
「いろんな地域に行かせてもらうんですけど、何回も訪れるまちってかなり限られていて。尾道は学生のころからよく遊びにきていたんです。何かしらの形で関わりたいなって思っていたときに、めじの立ち上げの話を聞いて」
「正直、山根さんみたいに、自分のまちをあれだけ好きって言い続けられる人って羨ましいじゃない? それで、自分も入れてよ! って参加させてもらうことになりました」
farm and bed SETODAは、もともと農家さんの自宅だった建物。
「50坪の平屋と、130坪の農地。林の奥へ抜けると瀬戸内海が見える。まわりからは見えないようなお籠り感もあって。こんな好物件そうそうないんですよね」
「この原風景は残したいけど、僕らは農家じゃないから農業でこの風景を維持するのは難しい。そこで考えたのが、農的暮らしの一番いいところを抽出した一棟貸しホテルでした」
具体的には、どういうホテルなんでしょう。
「農家さんの根源的な生き方は、自然環境の中でどういう風に暮らしていくかってことじゃないですか。それを再現したいなって。農的暮らしの妄想を追求してできたのが、farm and bed SETODAなんです」
朝の農作業が終わったあとに、潮がよければ釣りをしていたんじゃないか。夕陽を見ながらサウナに入っていたんじゃないか。仲間と一緒に焚き火しながら、夕食を共にしていたんじゃないか。
鉄や石をコンセプトにした部屋。レモン畑の真ん中には、本場・北欧産の電気式バレルサウナ。食事には、地元の猪肉を使ったソーセージとレモンサワー。
コンセプトを具体的な設計やサービスに落とし込んでいき、今年の6月にオープンした。
現在宿の運営は、めじの4人と地域の人たち数人で回している状況。
チェックイン対応、掃除など。食事はオプションで、地域の農家や料理人と協力して提供している。
この日も全員で手分けして庭の手入れをしたり、リネンを交換したり。「オレ、明日当番やったっけ?」など、和気あいあいとした雰囲気。
いそがしそうだけど、自分たちでの掃除も欠かさない姿を見ると、やはり地域に根をおろすことを大切にしているんだと感じる。
今後は、山根さんが電動バイクのレンタル事業を予定していたり、松村さんはブライダルの可能性を考えていたり。新しい人も宿の運営を通して、アイデアを形にしていってほしい。
また、farm and bed SETODAのほかに、もうひとつ物件を借りていて、こちらも長期滞在可能な宿泊施設を検討中。新しく入る人はここに住み込みながら働くこともできる。
地域にないもの、あったらまちがより盛り上がるもの。そして自分がやりたいと思うこと。そんな視点から事業をつくっていけるといい。
最後に話を聞いたのは、本間さん。
尾道に来る前は、新潟で自分の設計事務所を持ちながら、まちづくりの仕事に関わってきた。
「尾道の商店街のある店主さんから、まちを盛り上げるために何かできないかって相談を受けて。尾道を舞台とした演劇ツアーをプロデュースしました」
「山根さん自身もアートや芸術が好きで、このツアーがきっかけで山根さんと出会ったんです。めじの立ち上げ話を聞いたときに、ぜひ一緒にやりましょうということで参加することになりました」
めじの面白さってなんだと思いますか。
「面白そうって思ったら、瞬間的にスタートできるところですかね」
「今はフルリモートで会社員をやりながら、めじの活動に参加していますが、会社はマクロな視点で社会を見ながら、大きな資本を借りてチャレンジできるのが面白い。一方でめじは、ミクロな視点というか。より地域と密接に関わりながら、どうやって事業を形づくっていくか。両極で活動している感じです」
それぞれにやりたいことがあって、めじというプラットフォームをうまく活用している。全員が経営経験者というのも珍しい。
将来まちづくりプレイヤーとして活躍したい人にとって、飲食、ツアー、人材、建築など、多ジャンルのプロと一緒に働くことができるのは、またとない機会だと思います。
まずは一度、めじのみなさんと話してみてほしいです。
(2024/08/14 取材 杉本丞)