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「但馬地域ならではものをつくる。この地域で商売をするなら、その思いを具現化するための事業づくりを、僕たちは目指しているんです」
有限会社ティーアンドエムズで代表を務める、谷口さんの言葉です。
舞台は、兵庫県・豊岡市にある城崎温泉街。
「7つの外湯めぐり」で知っている方もいるかもしれません。
ティーアンドエムズは、城崎温泉を中心に、スイーツ、カフェ、デリカと大きく3つの事業を展開している会社です。
今回は、ティーアンドエムズが運営する、スイーツを扱うカフェのスタッフを募集します。
接客販売を担いながら、ゆくゆくは管理職を兼任するマネージャーとして働いてほしいとのこと。
経験は、問いません。この地ならではのお店づくりに興味がある人に、ぜひ知ってほしい会社です。
姫路駅からはまかぜ3号に乗って、兵庫県をぐんぐんと北へ進む。1時間半ほどで、城崎温泉駅の一つ手前、豊岡駅に到着する。
豊岡駅と城崎温泉駅は、県の北部に位置しながら、大阪・神戸・京都からもそれぞれ鉄道が出ていて、2時間程度でアクセスできる。
まず向かったのは、駅近くにあるティーアンドエムズの本社。
オフィス、工房を構えていて、一階には直売店がある。
迎えてくれたのが、代表の谷口さん。
もともと、城崎温泉の隣町の農家で生まれ育ったという谷口さん。上阪しサラリーマンとして働いていたとき、阪神大震災を経験した。
「幼いころから“食”というものが身近にありましたが、あの惨劇を前に、『食べることって生きることなんだ』と痛感したんです。便利さを求めて、きちんと生きることを忘れているんじゃないかなと」
あらためて自分の生き方を問い直し、実家の農業を手伝うことに。けれど、安価なお米が流通し、無農薬でこだわりのつまったお米を売っていくことの厳しさを知った。
そこで、お米を原材料にした商品をつくって、新しい価値を生み出そうと考えた。
そうすれば、実家の農業を含めて、地域の生産者に利益を循環させられるし、後継者や地域経済に貢献することができる。
その思いで、2001年、城崎温泉にある大師山のロープウェイのふもとに、城崎ジェラートカフェChayaをオープン。あわせて、山頂でもお団子などを楽しめる休憩処茶屋を始めた。
地元の卵を使った「温泉たまごづくり体験」や、地元の牛乳を使用したアイスクリーム、実家のお米を原料にしたお団子など。その土地で採れる食材を活かした商品をつくった。
「当時、城崎温泉は7つの外湯めぐりだけというイメージで、今よりもずっと寂れていたんです。そこに『食』と温泉地の風情、そぞろ歩きが交わって新しいコンテンツが生まれて」
食べ歩きがを目当てに、だんだんと観光客がお店に訪れたり、ロープウェイに乗るお客さんも増えたり、まちの盛り上がりにも貢献した。
谷口さんが次に手がけたのが、「米粉バウムクーヘン」という土産物。
「温泉街にお土産屋さんはあったけれど、その地域の食材を使った銘菓のようなものはなかった。土に産まれた、で土産って書くんですよね、でもこの地域で生産されたものがないのはもったいないと思ったんです」
原材料には、環境保全型農業「コウノトリ育む農法」でつくられた、人にも自然にもやさしいお米でつくられている。
城崎スイーツの中心にある、食づくりと地域への貢献。
その思いを軸に、自家焙煎珈琲、ジェラートやシェイクといったスイーツ、但馬牛を使った牛まんなどのデリカを開発。現在は、スイーツで3店舗、カフェとデリカで1店舗ずつ店を展開している。
「豊岡と城崎に根を張って、お客さまと生産者さんに対して誠実な食づくりをする。そのために、まずはこの4店舗をしっかり育ててきたい」
今回募集する人は、ロープウェイのふもとにある城崎ジェラートカフェChayaと、温泉街にある城崎スイーツ本店のスタッフ。
基本的なオペレーションは共通しているため、日別で2つの店舗を代わりつつ働くことになる。
「ゆくゆくはお店のマネージャーとして、店舗を運営してもらいたいと思っています。お店を任せられるようになったら、その先も一緒に考えていきたいと思っていて」
のれん分けをしてお店を継承することもできたり、新規で独立したい場合は、起業のサポートも用意されているんだそう。
「一緒に働く人が、ここで暮らしていく未来を描けるように。世界から人が訪れる田舎の観光地で働くことがすごくいいよと、一緒に働く人に伝えてあげられるような会社でありたいですね」
お店で下積みをして、マネージャーになった人がいるとのことで、運営する店舗の一つ城崎珈琲へ。
ロープウェイに乗って、山頂へ移動する。
お店は、降り口のすぐとなりに併設されている。降りると、ちょうど開店をするところ。
ロープウェイを降りたお客さんが流れるように入ってきて、店内は満席に。コーヒーやホットドッグをテイクアウトして、食べ歩きをする人も。
「いらっしゃいませ」と、笑顔で迎えてくれたのが、城崎珈琲でマネージャーとして働く谷口史敏(ふみとし)さん。代表と苗字は同じだけれど、親戚ではないみたい。
もともと、ビルメンテナンスの会社で働いていた史敏さん。飲食事業部で働いていて、ショッピングモールなどで飲食店のフランチャイズの出店、指導業務をしていたんだそう。
「お店を立ち上げて数ヶ月間は、自分が店長として働くんです。次の店長候補を採用して、教育をして仕事を覚えていただいたら、僕自身は次の出店に向かうというような流れでした」
「そこで、接客販売とマネジメントの経験を積むことができました」
ご家族で子育てについて話し合うなかで、2011年、奥さんの生まれでもある城崎へ移住することに。
「ちょうど、40歳になるタイミングでした。仕事をどうしようかと探していたときに、たまたまお客さんとして城崎ジェラートカフェChaya を訪れたんです。地元食材を使用したジェラートと、自分でつくる温泉たまごも食べました」
「小さい規模のお店だけれど、スタッフさんのサービスのよさや、商品のクオリティの高さに驚いて。さらに、お客さんが絶えず訪れて、コミュニティのような場所としても機能していて。そんな景色を見て、ここで働きたいと思いました」
縁あって入社し、6年間は店舗スタッフとして働いた。
2017年に、山頂の休憩処茶屋が「城崎珈琲みはらしテラスカフェ」へとリニューアルするタイミングでマネージャーに。今では、城崎珈琲の事業全体を任されている。
「基本的に定休日の木曜日以外は勤務していて、店頭で接客販売をします。週に2日は、お店の営業をほかのスタッフさんにバトンタッチして、本社でシフトを組んだり、発注をしたりとお店の運営管理業務をしています」
ほかにも、珈琲豆の焙煎やドリップバックをつくって卸先に発送することも。
これから入る人も、最初は店頭で基本的な接客販売を覚えてから、少しずつマネージャーへと業務を広げていく。いずれは史敏さんのように、店舗と事業部の責任者を目指すこともできる。
史敏さんと働くお店は違うけれど、相談に乗ってくれると思う。
今回募集するマネージャーのポジションは、隔週2日の休みで、年間休日数にすると80日。ほかのスタッフは週休2日の働き方だけれど、マネージャーは少なくなってしまう。
「土日祝日や夏休み、年末年始などの国民の休日がお店にとっての繁忙期で、近年観光客がぐんぐんと増えていることもあります。正直、人手が足りていないのが現状。とはいえ、長期休暇も取れますし、働き詰めというほどではないので安心してください」
「新しく人が入れば、そのぶん余裕が生まれるはずなので、休みを増やして労働環境を良くしていきたいと考えています」
史敏さんも、入社して1年ほどで役員へと昇格していて、役員報酬があるんだそう。
「任されているぶん、働かないといけない。けれど、やらされている感じではなくて。会社の成長と自分の成長が重なっているから、やりがいと達成感がとても大きいんですよね」
仕事は多岐にわたるから、店舗で接客販売をしてもいいし、製造のことを学んでもいい。いろんなことにチャレンジできる環境だと思う。
「自分で独立したいと思う人にはぴったりだと思います」と、史敏さん。
史敏さんもいずれは独立するんでしょうか?
「いえいえ。僕はどちらかというと、番頭さんタイプだと思うんですよ」
「会社を成長させるための力になれればそれでいいなって。そのために今やるべきことをしっかりしていきたいと思うんです。だから、地域や誰かのために頑張りたい人も、活躍できる場だと思いますよ」
場所は変わって、城崎ジェラートカフェChaya から歩いて5分ほどの城崎スイーツ本店。
城崎温泉街を流れる大谿(おおたに)川の柳並木沿いを、浴衣を着て歩く観光客の方とすれ違う。カランコロンと、下駄の音が涼しい。
お店で迎えてくれたのが、社員の吉田さん。働きはじめて1年半が経つという。
これから入る人にとって、仕事を教えてくれる一番身近な存在になると思う。
「生まれが城崎で、大阪の短大へ進学したんです。就活のタイミングで地元に戻ろうと思っていて、ハローワークで城崎スイーツの求人を見つけました。趣味でスイーツをつくっていたことと、短大で外国語を学んでいたので、語学を活かせる環境だと思ったんです」
「ほかにも、地産地消を徹底していたり、本社でソーラーパネルを設置していたり。環境へ配慮している会社の姿勢にも惹かれましたね」
現在は、城崎スイーツ本店で接客販売を担当。吉田さんともうひとり、半年前に入社したスタッフの2人でお店を回している。
「オペレーションは難しくないので、仕事は2〜3週間あれば覚えられますよ」
営業に関する判断やSNSの更新は、現場に任せてもらえる。いそがしいと事前に予測できるときは、営業時間を1時間ほど延長をすることもある。
現場では、お客さんに喜んでもらえる商品を提供する、という社長のこだわりを感じることが多いんだそう。
「たとえば営業後、社長に営業について電話で報告するんです。今日の売り上げとか数字的なところと、どんなお客さまが来られて、どの商品がよく選ばれたかとか。5分ぐらいお話しします」
「売り上げが低い日とか、緊張します。でも、怒られることはないですね。今後どうしていくといいのか、きちんと言葉にして伝えてくださいますし、『明日も頑張ってね』と応えてくれるので。ちょっと気になることも、相談できるのはありがたいですね」
取材中、お店の立て看板の位置を調整したり、厨房で味のチェックをしてアドバイスしたり。店内ですれ違うお客さんに「いらっしゃいませ!」と声をかけたりしていた代表の谷口さん。
「一生懸命美味しいものをつくったときではなく、お客さまが評価してはじめて、お店が成長していく。じっくりと育てていくようなお店づくりを、僕はしていきたいんです」
ぽつりとこぼれた言葉が、印象に残っています。
広く大きくではなく、狭くても深く。
世界から観光客が訪れる場所で、お客さんを笑顔にする。この地ならではのお店づくりに、一緒に進んでいける人を待っています。
(2024/08/23 取材 田辺宏太)