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みんなで育むポラリス
子どもの魅来が
まちを元気にしていく

生徒が安心して過ごせる場所。何かやりたいと思ったときにサポートしてもらえる場所。

勉強だけでない関わり方を大切に、まちのみんなで子どもたちを育てている場所が公営塾「お鬼楽塾(おきらくじゅく)」。

舞台は、愛媛県鬼北町。 

全国1741の自治体で唯一「鬼」の文字が入るまちです。

そんなまちの中心部にある唯一の高校、県立北宇和高校。このまま生徒数の減少が続けば、近隣の高校と統廃合になる可能性がありました。

まちの未来を担う高校生のためにも、まちと学校が連携して「北宇和高校魅力化プロジェクト」が始まりました。その柱のひとつが、「お鬼楽塾」。

今回は、ここで働く塾スタッフを募集します。

一方的に教えるスタイルではなく、生徒の声に耳を傾けて特別講座をつくったり、一緒に遊んだり。ときには、マルシェに出店することも。

未経験でも大丈夫。地域や学校と協力しながら、生徒と向き合う仕事です。

 

松山空港から車で1時間半ほど。

高速道路を走っていくと、鬼北町に到着。

JR予土線の近永(ちかなが)駅を中心に商店街や高校が集まっていて、あたりはなだらかな山々に囲まれている。

まちのところどころには、鬼をモチーフとしたウォールアートが。なかには生徒が書いたウォールアートもあるそう。いまにも出てきそうな勢い…!

まずは駅から徒歩1分ほどの場所にある「warmth」に向かう。

150年ほど前に酒蔵として建てられたもので、現在はコワーキングスペースと宿泊機能を備えた複合施設になっている。

中に入ると、鬼北町役場企画振興課中川さんが迎えてくれた。

「鬼北町は、自然が豊かな場所です。四万十へも宇和島へも気軽に行くことができるし、四国カルストへも車で1時間ほど。アウトドアが好きなら、ここから様々な地域へ旅行できると思います」

寒暖差の大きい気候を活かした、ゆずの生産が盛んな地域。また、白い首の模様が特徴の高麗キジも、低カロリーで高タンパクなお肉として有名だ。

「僕はこの町で生まれ育ったんです。このあたりは飲食店が多かったんで、高校時代は放課後によく、友だちとたこ焼きやお好み焼きを食べて過ごしていましたね」

ところが、近永郊外に県道のバイパスができたことで、郊外の交通事情が格段に向上。それに伴い、バイパス沿いに大型スーパーが続々と進出したことで、かつて賑わいの中心地であった近永駅周辺の商店街のお店はだんだんと減り、賑わいが失われていったという。

「人口減少が進めば、予土線は運行できなくなるし、高校生が通学できず、まちがさらに衰退してしまう。そんな現状を変えていくために、2019年に “近永駅周辺賑わい創出プロジェクト” を立ち上げました」

まちに人を呼ぶために、まずは地域の人と北宇和高校の生徒を巻き込んでアイデアを出すワークショップを行った。

warmthも、みんなから出てきたアイデアのひとつ。

鬼北町には宿泊施設があまりなかったことやテレワークの需要が高まったことを背景に、2022年にオープンした。現在は、地域内外の人の交流スポットになっている。

どうして高校生も巻き込んで、まちづくりをしようと思ったのでしょうか。

「若い声が聞きたいというのがひとつ」

「北宇和高校がこれからの地域活性の核になっていくと思ったんです」

そうして始まったのが、北宇和高校魅力化プロジェクト。

魅力ある教育環境をつくることが、まちの活性化にもつながっていく。

学校、そして地域と連携し、公営塾・教育寮の新設、地域みらい留学を通じて全国からの生徒募集などに取り組んできた。

「お鬼楽塾がオープンしてから今年で3年目。プロジェクトを続け、『高校生たちが頑張っているなら自分たちも頑張らないと』と前向きに動く、地域の大人も少しずつ増えてきました」

「新しく入る公営塾スタッフには、より地域と連携しながら魅力化プロジェクトを進めていただけるとうれしいです」

教育寮は、昨年1棟目ができたばかりだけど、すでに定員に達したという人気ぶり。そこですぐに動いたのが鬼北町役場。来年8月には、新しく県内外の生徒が長期滞在できる多世代交流施設が完成予定。地域の人と高校生が交流できるような設計にしているそう。

まちとして、地域との交流を応援する姿勢が伝わってくる。

 

次に向かったのは、北宇和高校。

正面玄関を入ると、一枚の看板が飾られている。

“きみだけの北辰(ポラリス)をつかみ きみだけの魅来を描こう”

「これは僕ら教師と生徒たち、そこに役場や塾の関係者も加わって、みんなで考えた高校魅力化プロジェクトのコンセプトなんです」

北宇和高校の上甲(じょうこう)先生が出迎えてくれた。

北宇和高校魅力化プロジェクトの立ち上げから関わり、現在も学校側の中心となって活躍している。

「北辰って北極星のことを指しているんですよ」

「校歌の歌詞にも使われています。北宇和高校が北極星のように、地域のシンボルとしてこれからもあってほしい。そんな想いが込められているんじゃなかろうかと」

北極星は英語でポラリス。生徒が活躍することで、学校は輝き続ける。

「そこから、ポラリスを『生徒自身のなかで決して動じない目標・信念』といった意味で用いています。『魅来』になっているのは、ワクワクするような自分の人生を切り開いていこうという想いを込めました」

『魅来』は、“魅”力ある未“来”を願ってつくられた造語とのこと。“魅”にひっそりと“鬼”が隠れているのも鬼北町らしさを感じる。

生徒たちがやりたいことを見つけ、形にする力を育てるために、総合的な探究の時間にも熱心に取り組んでいる。

「1年生は、地域で働く大人たちの仕事内容や仕事への想いをまとめたお仕事図鑑の作成、病院や保育園など地域の事業所でのインターンシップ、そして地域からいただいた課題に取り組みます。2年生になると、1年生で知ったこと・体験したことを土台とし、更なる地域の課題発見・解決に取り組みます」

新しく入るお鬼楽塾のスタッフも授業で生徒と関わる機会もあるかもしれないとのこと。

たとえば、2年生の活動の一つが、国指定史跡にも認定されている等妙寺のPR。

今年の秋には史跡公園としてリニューアル。森林浴やウォーキングなど、老若男女問わず楽しめる場所になっている。

「まずは地元の小学生たちに知ってもらう機会として、生徒たちで旧境内のハイキングフォトミッションを企画しました。10月に実施して、合計で20人ほどの参加があったんですよ」

そのほかにも、上甲先生が地元のケーブルテレビに声をかけ、「ポラリスタイム」と呼ばれる高校生の番組が実現。

日々の学校風景などを生徒が取材・撮影・編集し、月1回放送してもらっている。

学校側としては、公営塾をどのように位置づけているのでしょうか。

「勉強のサポートもですが、うちにくる生徒は繊細な子もいて、学校に行くのをしんどいと感じている生徒もいます。だからこそ、まずは塾に気軽に来てほしい。学校や家以外の居場所もあるよってメッセージもお鬼楽塾という名前にこもっています」

「今年で3年目になるんですけど、『放課後、塾に行けるから学校に来る』って子もおるんですよ。ありがたいですね」

 

学校をあとにして、「お鬼楽塾」へ。

受付のとなりの部屋が学習スペースになっていて、その奥の部屋の黒板には「caféスペース」と書かれている。

塾スタッフがDIYをしたというテーブルや間接照明、そして楽器にバレーボールもあり、ゆったりできる場所。

学習スペースへと戻り、塾スタッフの浅越さんに話を聞く。

もともと私立高校で英語教師をしていた浅越さん。

企業でバリバリ働いていた人や、元研究者など。経験豊富な先生たちと一緒に働くなかで、自分自身の経験不足を感じることもあったという。

一度学校を離れ、自分の経験を活かしながらももう少し幅広い経験ができることを探したい。そんなときに公営塾を知った。

「いろいろな公営塾を見学したんですけど、最終的には鬼北町の人の良さに惹かれました」

「数回の面接がある中で、合わせて10人ぐらいの方にお会いしたんですね。役場の方はもちろん、学校の先生、塾スタッフ。僕に興味を持って、いろいろと話を聞きにきてくれたのがすごく印象的でしたね」

入ってみていかがでした?

「まち全体で、北宇和高校の生徒さんたちの声に応えようという雰囲気があって。たとえば、生徒からスポーツ大会をしたいって要望があがったときに、役場の方に相談してみると、じゃあ町営施設の使用許可を出しておくねみたいな」

「勉強以外の活動に対しても協力的に関わってくださるのは、とてもありがたいですね」

勤務日は、お昼ごろに出勤し開塾準備。

塾は基本的に自習のスタイル。開塾までに週に数回、授業のサポートで学校へ行くこともある。

「生徒とは、勉強のことだけでなく、やってみたいことや好きなことについてもよく話しています」

たとえば、塾生でBBQをしたいなど。マルシェに塾として出店するときには、生徒の希望を聞いて、一緒に考え形にしていく。

「夏のマルシェではコーラをつくって売りました。今年はフロートアイスを乗っけてみたいとか、提供するカップもおしゃれにしたいって声が出てきました」

「初めての取り組みでもどうしたら実現できるか考えて。最終的には、カップに貼るシールを生徒がデザインしたんです」

見せてもらうと、鬼の絵が描かれていて、コーラフロートを飲んでいる。

花火も描かれていて、可愛らしいデザインですね。

「そうなんです。当日も可愛いって声をたくさんもらえて。生徒の『やりたい』が形になってうれしかったですし、買った側も見てる側もハッピーになるというか。よかったですね」

浅越さんは、日々生徒とどのように接していますか。

「まずは自分の居場所だと感じてもらえるように接することを大切にしています」

「勉強してもいいし、ちょっと遊んで帰るだけでもいい。ゲームをやろうって誘われたら一緒に遊びますし、もちろん勉強の相談を受けたら、必要に応じて講義を開くこともあります」

あるとき、生徒から数学を教えてほしいと相談された浅越さん。得意科目ではなかったものの、その生徒のために猛勉強し、教えたこともあった。

また、学校行事にも積極的に参加している。鬼北歩行という行事にも参加して、生徒たちと一緒に25kmを完歩したのだとか。

「最初は交流のなかった生徒からも質問を受けたり、『友だちが増えたよ』って声が聞こえてきたり。徐々に関係ができてくるとうれしいです」

新しく入る人も、子どもたちのやりたいことや相談に耳を傾けて、受け止めてあげられる人がいいと思う。時間をかけて関係性をつくっていくことで、生徒のやりたいことを形にしていけるはず。

 

行政、学校、公営塾に教育寮。

みんなで協力し合って生徒の教育に関わっている鬼北町。

生徒の魅来にわくわくして行動できる人は、きっと鬼北町が温かく迎えてくれると思います。

(2024/11/26 取材 杉本丞)

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