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日本と大陸の最前線に
自分の足で立つ

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

福岡空港からプロペラ機に乗り、30分ほど。

九州と朝鮮半島の間に、ぽっかりと浮かぶ緑豊かな島が見えてくる。

国境の島、対馬。

九州よりも、韓国・釜山に行くほうが近く、まちなみや花火大会まで見えるスポットもあるそう。

大陸との交易の歴史や、独自の生態系。その特殊な環境で紡がれてきた文化や人々の暮らしを感じられるユニークな地域です。

この場所で、地域になくてはならない通信インフラ事業と放送事業をかけ合わせた事業を展開しているのが、株式会社コミュニティメディア。

今回は放送事業の中心、地域に情報を発信する対馬市ケーブルテレビの制作スタッフの募集です。

対馬の日常を取材編集し、夕方6時半から毎日放送される30分の番組制作が主な仕事。

地域のイベントや身近なニュース、行政の情報など。島内のほか、ときには本土や対馬と深い関わりがある釜山まで取材に行きながら、地域の暮らしに寄り添う番組をつくります。

映像制作の仕事ですが、未経験でも構いません。

今働いているスタッフも別の業種から飛び込んできました。希望すれば自社で運営するデジタルハリウッドSTUDIOの映像制作のプログラムも学ぶことができます。

対馬、そして韓国・釜山の2つの場所での取材。旅をするような気持ちで読んでみてください。

 

まず訪れたのは対馬。

対馬やまねこ空港に到着すると、コミュニティメディアの代表の米田さんが迎えてくれる。

「対馬は昔からの道がよく残っていて。その昔、朝鮮通信使もこの辺りを通って江戸に向かっていったんです」

空港から車を走らせ、長いトンネルを抜けた先、対馬の中心市街地である厳原(いづはら)地区へ。

石垣や門など、城下町の風情が色濃く残る。2つの城跡、武家屋敷跡などの史跡、旧跡があり、まち歩きをしている観光客の姿も多い。

案内してもらったのは、大通り沿いにある施設。もともとは島で唯一エスカレーターがある商業施設だったそう。

この建物の2階に、コミュニティメディアで運営するスクール「デジタルハリウッドSTUDIO対馬」と、コワーキングスペース「AGORA対馬」がある。

コワーキングスペースの会議室で、あらためて話を聞く。

米田さんが起業したのは2007年。それまでは、大手電気メーカーでシステムエンジニアとして働いていた。

「私は生まれも育ちも対馬。大学進学のために長崎市に移って、働いて、そこで家族もできました。このまま長崎市に住み続けるかを考えたときに、対馬にひとりで暮らす母のことが頭に浮かんだんです」

「家族がそばにいる状況をつくりたかった。これまでの経験を活かして、地域で仕事をつくり、ひいては地域の可能性を広げることができないかと考えました」

システム開発事業からはじめ、情報技術で地域の課題解決に取り組む。

「システムをつくっても、ネット環境が整っていないと使えません。地域に目を向けると、そもそもネット環境が整っていないところが多かった」

「ネットも今ではインフラのひとつ。ただ、大手通信会社に任せておくと、何かあったときに対応しきれず、生活が成り立たなくなってしまう。地域で通信に関わる事業をするならば、全部を自分たちでやる必要があります」

対馬には島内の約1万7000世帯すべてをつなぐ光ファイバーが、行政のもと整えられている。起業の翌年、光ファイバーの管理運営を含む対馬市ケーブルテレビの指定管理者となった。

コミュニティメディアは、このネットワークインフラを利用したケーブルテレビやインターネットプロバイダ、IP電話といった通信サービス事業と、ケーブルテレビやFMラジオなどの放送事業をメインにしている。

島民にとっては、月額1000円でテレビ12チャンネルとBSが見られたり、インターネットを手頃な価格で使えたり。島内の通話も無料で利用でき、通信インフラを支える存在となっている。

専門的な情報通信のサービスを対馬で展開するのはとても大変なことに感じるし、平坦な道のりではなかったはず。

けれど、その先端を進む米田さんは、穏やかに楽しそうに仕事の話をしてくれる。

「純粋に、自分が住む地域が楽しくなればいいなって思うんです」

「アートが好きなので、2011年から芸術祭を開催してきました。Webデザイナーや映像クリエイターを育成する学校『デジタルハリウッド』を誘致して運営したり、長崎大学との共同講座を企画したり。対馬に住む人が楽しく、やりたいことができる環境をつくりたいという想いが強くて」

今回募集するケーブルテレビの番組制作の仕事も、地域の可能性を広げる仕事のひとつ。

プラットフォームを持ち、撮影から編集まで一手に担えることに、ローカルメディアの大きな強みがあるそう。

「番組は対馬島内のみで放送されます。だから出演してくれる地域の人も安心してカメラの前に立ってくれるし、ありのままの日常を記録発信できます。コミュニティメディアで責任を持って届けているので、フェイクニュースもない」

YouTubeとも、大手テレビ局とも違う、住む人に近い目線での番組づくりができる。

今放送しているものだと、市役所の担当者が市の取り組みを紹介する「教えて 市役所さん」、地域を歩きながら人々の暮らしを紹介する「ぶらっと対馬」、小学生が地域を取材してつくる「スクールディレクター」など。

「私が企画編集した『otofune(おとふね)』という音楽番組があって。最近ネットで音楽を聴く機会が増えたけれど、予期せぬ音楽との出会いが少ない。対馬の人たちに聞いたことのないジャンルの音楽に出会ってほしいと思って企画しました」

「こういう企画は、新しく入る人とぜひ一緒にやりたいし、その人のアイディアで面白い企画を形にしていってほしいです」

 

車に15分ほど乗り、次に訪れたのは対馬市CATV。

今回募集する制作スタッフは、ここを拠点に働くことになる。

1階ではカスタマーサポートや経理など事務スタッフが、2階のスタジオでは制作スタッフがそれぞれ働いている。

ここで話を聞いたのは、対馬出身の制作部主任の辛嶌(からしま)さん。今日は、対馬市議会の中継を終え、先日撮った合唱コンクールの映像を編集しているそう。

先日1人が産休に入り、今は辛嶌さんともうひとりのスタッフで、毎日夕方6時半から流れる「つしまる通信」の番組制作を担当している。

「対馬は端から端まで行こうとすると車でも2時間かかります。着いて撮影して、戻ってきて編集して、ナレーションを入れて、となると慌ただしいですね」

つしまる通信は、30分の放送時間内に、ニュースのほか、警察や市役所からのインフォメーション、企画編集したコーナーなどが収まっている。

大きな特徴は、撮影から取材、編集、ナレーション入れなど、映像をつくる工程を1人で担うこと。

「最初は誰か先輩と一緒に現場に行くことからはじめます。慣れてくると1人で現場にいくことが増えてきますが、映像制作が一通りできるようなサポートや、ナレーションが苦手ならほかの人に読んでもらうとか苦手な分野をフォローし合う体制があるので、そこは安心してほしいです」

「撮りたい画をどう撮るか。1人で現場に行くようになった今も現場ごとに都度考えるのは確かに大変に感じることもあります。けれど、それがその人の映像の個性になるというか」

映像の個性?

「もう一人のスタッフの田中さんは、学校の取材が得意。自然と子どもたちが寄ってきて、子どもに近い目線で、普段の様子を映像におさめるのが得意なんです。僕は子どもには怖がられてしまうので、そういう現場は田中さんにお願いしています(笑)」

「自分の前職はアニメ制作会社の進行管理。畑違いのところから来て、仕事のなかで学んできました。はじめは大変かもしれないけれど、自然と上達していきます。自分のつくった映像がテレビで流れているのは、なんだかうれしいですね」

地域密着のメディアなので、視聴者との距離も近い。何度も足を運ぶ取材先の人からは、「前のコーナーよかったよ」と直接感想をもらえることも。

「高校卒業までの18年より、ケーブルテレビで働いてきた3年半のほうが密度が高い。対馬のいろんなところに行って、この仕事をしているから出会える人がいて」

「自分は人と関わるのがあまり得意ではないと思っていたんですが、対馬の人たちはいい方が本当に多い。最近は人を取材して、知り合いが増えるのも楽しいなって思うんです」

基本的には平日8時45分から17時45分の定時内で働きつつ、イベントがあれば週末に働くこともある。あとは島内を取材して回るために車の運転も欠かせない。

対馬での暮らしはどうでしょう?

「コンビニやスーパー、ドラッグストア、ホームセンターなどはあって、日々の買い物に関しての不便はありません。服や家具とかは、通販か船便1本で福岡、釜山に買いにも行ける」

「釣りがしたくて移住してきた方もいて、自然が好きな方にはいい環境だと思います。会社で家を探すとか引っ越しの補助とかもあるので、住まいに関しては安心してもらえたら」

 

宿に1泊して、翌日は対馬から韓国・釜山へ。

「対馬と釜山の距離感を一度味わってほしい」と、釜山での仕事のタイミングに合わせて同行させてもらうことに。

島の北部にある比田勝港(ひたかつこう)からは、釜山行きの船便が毎日何本も出ているそう。

港には大きな観光バスがいくつも停まり、韓国からの観光客で賑わっている。

チェックインをすませて、乗船。90分ほどで大都会、釜山に着く。

対馬とまったく違うまちの雰囲気、そしてこんなに簡単に海外に行けることに驚く。

国境は、国を隔てる「溝」のように感じていたけれど、「通過点」でしかないのかもしれない。さまざまなモノ・コトが海を渡ってきたことに思いをはせる。

対馬で会った人たちの柔らかさは、日本と韓国の間にあって、島外から来るモノを柔軟に受け入れてきた積み重ねからかもしれない。

入国審査は、飛行機よりもずっとスムーズで早い。韓国語がわからず、そわそわしながら入国。

通訳や現地での調整を協力してくれる人と合流。韓国での仕事では、現地のパートナーと一緒に動くことがほとんど。ほっと一息つく。

釜山では、釜山外国語大学への教育プログラムの提供、朝鮮通信使の式典の記録撮影、お茶などの文化交流事業といった仕事が、すでに動いている。なかでも朝鮮通信使の式典は、毎年ゴールデンウィークごろに行われ、毎回の記録撮影をコミュニティメディアで行っている。

今日は、5月に開催する落語会の打ち合わせ。

対馬在住の落語家、立川こしらさんの落語会を企画している。

当日の会場となる写真スタジオがあるのは、江戸時代、対馬藩が釜山に置いた施設「倭館」の跡地。

対馬とのつながりがある場所、というのがこの会場の決め手となったそう。東京でいうと原宿のような感じで、若者のまちとして賑わっているエリアだ。

これまでに3回開催してきたという落語会。

会場のスタッフと打ち合わせをして、当日の動きなどを確認。辛嶌さんをはじめ、コミュニティメディアのスタッフは何度も出入りしている会場なこともあり、確認はスムーズに進む。

当日の落語会の様子は制作部が撮影し、ケーブルテレビで放送予定。落語家さんと一緒にまち歩きの番組も企画しているそう。

 

対馬と韓国の歴史文化的なつながりだけでなく、地域同士がつながるような仕事ができないかと、米田社長を中心にその種を蒔いていきたコミュニティメディア。

文化交流のハブになってきた対馬から、また新しい「うねり」が生まれてくるのかもしれません。

ローカルとグローバルがゆるやかに混ざり合う地域を取材し、発信する。

ほかにはない面白さがある仕事です。

(2025/02/20、21 取材 荻谷有花)

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