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大切なことはすべて
里山が教えてくれる

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

「畑から収穫した梅をきれいに洗って、一つひとつ丁寧にヘタを取る。この作業がはじまると、今年も初夏が来たなって感じます」

豊かな土壌から生まれる自然の恵みに感謝し、余すことなくいただく。

そんな暮らしのなかにお客さんを迎えている人たちがいます。

熊本・上阿蘇にある標高700mほどの山のなかに、30軒の旅館が点在している黒川温泉。

その土地で300年前から宿を構えているのが、「歴史の宿 御客屋」。

創業当時から田畑を耕し、山を手入れしながら宿を営む「半農半宿」のスタイルで、訪れる人々をもてなし続けてきました。

今回は、里山の恵みと受け継がれてきた営みを、未来に残していく里山案内人を募集します。

食に興味がある人なら、経験は必要ありません。

まずは調理補助や料理案内からはじめて、野菜について学びます。ゆくゆくは自社農園をお客さんと一緒に歩き、とれたての野菜を調理して、その場で食べてもらうことも。

里山の恵みを届ける案内人のような役割を担っていってほしいです。

 

熊本空港からからバスに乗り、1時間ほど。車窓には、阿蘇山から上がる噴煙、草原をゆったりと歩く牛の姿が見える。

トンネルを抜け、山の谷間を下ると、ひっそりと佇んでいる御客屋に到着した。

「遠い所から、ようこそお越しくださいました」とスタッフの方が出迎えてくれる。

「お腹空いているでしょう、まかないを召し上がっていかれますか?」

お言葉に甘えて、スタッフのみなさんとご飯をいただく。

この日のメニューは、ハヤシライス、春菊のおひたし、大根のサラダ、自家製のお漬物。

使っている野菜は、すべて御客屋の畑でとれたもの。昨日収穫したばかりの春菊のおひたしを食べたあと、お肉と野菜の旨みが凝縮されたハヤシライスを口いっぱいに頬張る。

移動で疲れていた体に染み渡り、ふうっと一息。

「御客屋では、まかないを大切にしていて。丹精込めて育てた野菜を、まずは自分たちがいただく。素材のおいしさを知り、心身ともに豊かだからこそ、お客さんにも伝わるものがあると思うんです」

そう教えてくれたのは、代表の北里さん。

江戸中期、細川藩の御用宿として建てられた御客屋。

当時から田畑を耕しつつ、採れた食材を活かした料理を振る舞い、湧き上がる温泉とともに、人々の疲れを癒してきた。

3年前には、会社のなかに、自社農園や田んぼ仕事に従事する畑チームを立ち上げた。

畑の野菜は農薬をなるべく使わず、自然の状態で育てているという。

自家農園で収穫できる野菜、米、山菜は、いまでは60種類を超えるほどに。

現在は旅館に加えて、阿蘇の赤牛が味わえる「わろく屋」、それから土鍋で炊き上げた地元のお米「あきげしき」を中心に、日本の里山ごはんを提供する「予祝」というレストランも運営している。

いまは合計3つの店舗を、4人の料理人で回している状況。また、旅館の担い手となっていた団塊の世代が引退しはじめるなど、旅館業の未来に危機感を覚えている。

「これまで先輩方から受け継いできた風習や、これはお客さんに食べてもらいたいと思えるもの、田畑や山林などの原風景。すべてを引き継げるわけではないけれど、将来に残していきたい。そのために仲間が必要なんです」

将来に向けて、働き方の改善だけでなく、教育にも力を入れている北里さん。

定期的に、御客屋グループの全員が参加する研修を開いている。

たとえば、宿を飛び出して地域内でのフィールドワーク。

実際に山のなかを歩き、水源地の筑後川からつながる黒川の井出(いで)と呼ばれる用水路について勉強したり、地元猟師の付き添いで狩猟の現場を見学したり。

ほかにも社員が主体となり、畑をめぐり、物語のある旬のおもてなしを組み立て、メニューを考案した。

「料理を食べたときの味や、お呼びしたゲストの何気ない言葉など。感動したことは、その人の記憶に残るんです。そうした体験を、今度はお客さまに提供できる人になっていってほしい」

研修がきっかけとなり、ヴィーガンのお客さん向けの料理をつくろうというアイディアも生まれた。料理人チーム全員で、鹿児島に料理を学びにいく予定なんだそう。

「御客屋がこの土地にあり続けて、風土・風習・風味を未来につなげていく。そのためには、お客さまに更なる価値を提供して、きちんと対価をいただける仕組みづくりが必要です。それも一緒に探求できる人と出会えたらうれしいですね」

 

宿を後にして、車で10分ほどの畑に案内してもらう。

ビニールハウスの脇にいるのは、タヌキ?

「あれはアナグマですね。畑に穴を掘ったり、作物を荒らしたりすることもあるんですけど、お互いに共生できる道があると思って、色々と試行錯誤しています(笑)」

教えてくれたのは御客屋で畑仕事を担っているしげさん。新しく入る人とも接点は多いと思う。

福岡出身のしげさん。大学で野菜について学び、JAで働いた後、御客屋に就職した。

「黒川の近所に祖父の家があって、休みのたびに遊びに来ていました。仕事で農家さんと関わるなかで、自分も野菜を育てる暮らしがしたいと思って。こちらに引っ越してきました」

おじいさんが育てた野菜を卸していた縁から、御客屋にも少しずつ関わるように。6年前、御客屋が農業部門を立ち上げたタイミングで入社した。

「自分がつくった野菜を食べてもらいたくて、はじめは直売所にも出していました。でも御客屋であれば、育てた野菜をお客さんが食べる姿を間近で見ることができる。自分が目指していた農業の形に近づいているなと感じます」

近くのビニールハウスも見せてもらうことに。

室内には、生育中の緑色のトマトが実をつけている。

「食べてみますか?」としげさん。

「食べられるんですか?」と質問する前に、トマトをパクッと食べる。

「これはえぐみが強いけど、そのぶん、甘みに変わると思います。まだ甘くはないので、ピクルスにしたら美味しいんじゃないかな」

実際に一口かじってみると、酸味はなく、えぐみのなかにトマトの風味をうっすらと感じる。熟す前のトマトってこんな味なんだ。

「将来的にはお客さんを畑にご案内して、季節の野菜を食べてもらうつもりです。たとえば、きゅうりの花を天ぷらにして味わってもらうとか。それができたら、きっと楽しいですよね」

「去年は体験型の宿泊プランを企画して、お客さんと収穫した柚子で胡椒をつくり、鶏鍋と一緒に食べてもらいました。ほかにも、一緒に収穫した野菜を小鉢に使っていますよ、と料理を提供する際にもご案内しています」

ビニールハウスを出ると、ゆずの木が育っている。ほかにも、しいたけや梅、ブルーベリー、唐辛子など。今後はこのあたり一帯を案内できる場所として整備していく。

農園の管理は「畑チーム」が担当するため、いまは里山案内人が直接関わる機会は少ない。

けれども今後、人が増えて運営が安定してきたら、その日の料理に使用する野菜を畑で収穫してくる、なんてこともあると思う。

「野菜を育てていると、季節の変化を感じます。山菜が出てきたからもうすぐ春が来るな、しいたけが出てくるころには梅雨が明けそうだとか。これからもぼくらが感じていることをお客さまに伝えていきたいですね」

初夏秋冬の四季をさらに6つに分け、季節の訪れを先んじて察知する。そして、農耕作業をすすめていく暦として、古くから使われてきた「二十四節気(にじゅうしせっき)」。

御客屋の人たちはまさに、季節の移ろいを感じながら暮らし、働いている。

 

「食材のストックをつくるときは、今年もこの時期が来たなと感じます。とくに梅やニンニクは下ごしらえが大変で(笑)。時期になるとパートのみなさんも総動員して、ひいひい言いながら作業をしていますね」

最後に話を聞いたのは、御客屋グループの料理長を務めるのぶさん。

「ここで働いていると、旬の時期って1年に2週間くらいしかなくて。その時期は調味料を加えるよりも、茹でて食べるのが一番美味しいんです。その旬を学んで、お客さんに伝えることが、自分たちの役割だと思っています」

「たとえば、一般的には食べることのないヤングコーンのひげや、ズッキーニの花も、旬の時期に食べると実はおいしい。新しく入る人も、仕事や暮らしのなかで、生きた知恵を身につけていってほしいですね」

今回募集する里山案内人も、まずは調理技術を習得しながら、料理の案内を通じて、里山の魅力をお客さんに伝えていってほしい。

「うちのメンバーには未経験からはじめた人もいるので、調理経験がなくても大丈夫。厨房に入るだけでも、いろんなことが学べると思いますよ」

「たとえば、レタスに水をふくませたペーパーを巻いて保存したら、3週間たっても採れたてと同じくらいおいしいし。『50℃洗い』といって少し熱めのお湯で洗うと、野菜がシャキッと元気になるんです」

野菜のことも、調理のことも、楽しそうに話すのぶさん。好奇心旺盛な人だと、のぶさんのもとで働くのは毎日刺激的だと思う。

「体験プランを検討する前から、『畑を歩かせてくれ』って頼まれる方もいて、年に数回、遠くから足繁く通ってくれるお客さんも大勢います」

たとえばと教えてくれたのが、はじめてのぶさんが料理を提供した常連さんのこと。

お寿司を出してほしいと頼まれて、車海老やかんぱち、平目などを綺麗にのせて提供すると、すぐにお客さんから呼び出しがあった。

「『なんで山のなかにこんな車海老があるんだ。ここは野菜がおいしい場所だろう』とご指摘いただいて。お客さんが求めているのは、やっぱり野菜なんだと気づくきっかけになりました」

そこから野菜を中心に据えたお寿司を考案。

じっくり焼いて甘さと香りを引き出したパプリカや、肉厚なしいたけ、たけのこやミョウガの細巻きなど。いまでは御客屋の定番料理になるほど、多くの人から求められるメニューになった。

のぶさんは、どんな人と一緒に働きたいですか?

「食べることが好きな人かな。おいしさに感動できる心があれば、自分もつくってみようという気持ちになる。その積み重ねで、腕前は自然と上達していくと思います」

「あとはやっぱり挨拶。毎日顔を合わせて働く仕事なので、自分たちが気持ちよく働くためにも、お客さまにおもてなしをする上でも、笑顔や挨拶を大切にしてほしいですね」

 

心身ともに豊かで、自然への感謝を忘れない。

御客屋で働くみなさんの健やかさは、自分たちが育てる野菜によって支えられていると感じました。

課題に直面しながらもこの土地にあり続け、風土、風味、風習を残していく。

さらなる挑戦を迎える御客屋で、未来をともにつくる人を求めています。

(2025/06/25 取材 櫻井上総)

取材後、御客屋さんから採れたてのお野菜を送ってもらいました。

日本仕事百貨が運営するビル「リトルトーキョー」2階のレストラン、 the Blind Donkey協力のもと、お野菜を使った特別メニューを、8月6日(水)からの期間限定でご提供いたします。

熊本・黒川温泉の地で、御客屋のみなさんが育てた野菜を、この機会にぜひお楽しみください。

the Blind Donkey(〒135-0022 東京都江東区三好1-7-14 リトルトーキョー)

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