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アニメを観るのが好きです。
『ガンダムシリーズ』や『SHIROBAKO』、『ゆるキャン△』…。子どものころより、今のほうがいろんなものを観ているかも。
コンテンツの数は増える一方で、つくり手不足が課題に。
そこでこれまで東京に一極集中していたアニメ制作会社を地方で展開し、つくり手を確保。さらにはアニメを通して地方創生につなげる動きが生まれています。
高知でアニメ制作に取り組む、株式会社スタジオエイトカラーズもそんな背景から生まれた会社です。

今回募集するのは、コミュニケーションマネジャー。
アニメーター育成の要である、制作の学習プログラムを社内外に広げることに加え、イベント運営や社内のコミュニティ醸成に関わります。自身が絵を描くわけではないけれど、地方で活躍するアニメーターを増やすためにも大事な仕事です。
あわせて、映像ディレクターやアニメーター、制作進行といった、実際のアニメ制作に携わるスタッフも募集中。
コミュニケーションマネジャーと映像ディレクターについては、アニメ業界での経験は問いません。
アニメづくりに関わりたい。アニメ業界や高知を盛り上げていきたい。
そんな想いに共感できる人であれば、面白く、そしてやりがいを持って働けると思います。
高知空港からバスで30分ほど。高知駅周辺にはアーケード街がいくつも伸びていて、路面電車も走っている。繁華街だけど、古き良き雰囲気も残っているまちだ。

スタジオエイトカラーズがあるのは、高知駅とはりまや橋の真ん中あたり。
大通りから一本奥に入ったところにあるビル。階段を上がって中に入ると、作業をしているみなさんが。
パソコンと液晶タブレットに向かい、それぞれ作業に没頭している。

そっとスタッフの人に声をかけると、ミーティングルームへ案内してくれた。そこで迎えてくれたのが、代表の宇田さん。
「高知信用金庫さんのビルをお借りして、ここでアニメを制作しています。地方での制作スタジオも増えていますが、高知ではうちが唯一の制作会社ですね」

「基本的にはCGではなく手描きです。元請けの仕事もありつつ、他社さんの仕事をお受けすることも多いです。あとは地元で開催するイベントの仕事もありますね」
最近だと『ねこに転生したおじさん』を初の元請け作品として制作。取材したときはちょうど最終話放送の直前だった。
ほかにも『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』の制作にも一部関わるなど、さまざまな作品を手がけている。

会社を設立したのは2021年。
宇田さんはもともと大手電機メーカーで経営管理の仕事をしており、7年働いたのちアニメ業界に転職した。
「当時、これから日本の主力産業はハードからソフトに変わっていくことを考えていて、それでソフトコンテンツ業界に行ってみようかなと」
アニメの制作経験はなかったものの、経営管理の実績はアニメ業界では貴重。宇田さんは業界内で数字に強い人として知られていった。
その後は『新世紀エヴァンゲリオン』で有名な株式会社カラーにも加わり、庵野秀明さんとも一緒に仕事をしたという。
「アニメ業界では人材不足が長年の課題で。地方から上京してアニメをやりたいって子は多いけれど、家庭の事情で帰らなきゃいけないとか、働きたいけどそもそも東京に行けないとか、そういう人が多いんです」
「以前からずっと地方の人材を活用するためにはどうすればいいかを考えていて、じゃあ地方でスタジオをつくろうと。知人に誘われたのもあって、高知で会社を立ち上げました。地方の人材発掘はできていて、いまの課題は人材育成ですね」
アニメ制作の現場では、ベテランが新人にフィードバックする形で教えることが多い。そのためエイトカラーズのような新設スタジオだと、新人の育成に時間がかかる。
そこでここ数年実践しているのが、「ササユリ動画研修所(以下「ササユリ」)」の育成カリキュラムの活用。
ササユリとは、スタジオジブリで数多くの作品を手がけた元ジブリアニメーターの方が代表を務める、アニメーション制作技術に関する教育機関。
良質な動画の技術や知識などを継承し、新人がすぐに仕事を開始できるカリキュラムを提供している。

スタジオエイトカラーズでは、これに参加したアニメーターが、ササユリの許可を得たうえで、社内でカリキュラムを共有している。
先輩が後輩に教える、というキーマンが必要な教育方法ではなく、決まったカリキュラムのもとでアニメーターとして成長できる環境を整えているところだ。
「今は社内で知見を共有していますが、ゆくゆくは社外へも広げて、アニメーター人材をより増やしていきたい。ただ、そのためには専任でそれを任せる人が必要だと感じていて。今回募集するコミュニケーションマネジャーには、そこを担ってほしいと思っているんです」
ササユリのプログラムを受講し、社内にレクチャーしているスタッフは現状二名。コミュニケーションマネジャーには、その二人をサポートして、プログラムを社内外に広げていってほしい。
具体的にはどんなことをしていけばいいのでしょう。
「カリキュラムは決まっているので、時間と場所の調整や、教材の購入・準備をして。まずは社内向けに動いてもらい、社外の人に提供する際には、人をどう集めるかとか、会場はどうするか、なども考えてもらえたらと思っています」
またエイトカラーズでは、地域イベントの「高知アニクリ祭」に参加したり、学校の授業で子どもたちにアニメ制作を教えたり。地域企業として貢献するための活動を積極的におこなっている。
現状はイベント担当がいないため、手の空いている人が調整や準備をしている状況。コミュニケーションマネジャーには、地域でのイベント運営にも関わってもらいたい。
スケジュール管理や外部との折衝がメインになるので、イベント運営の経験があれば入りやすいと思う。

「もう一つお願いしたいと思っているのが、社内のコミュニケーションをより円滑にすることで」
アニメーターは職人的な仕事でもある。そういった面で、人と話すのが苦手な人もいるそう。
ちょっとおせっかいに話を聞くような人が必要ということでしょうか。
「そうかもしれないですね。人と話すことが苦手だから絵を描く、っていう人も多いのかなと思っていて。それ自体はいいことだと思うんです」
「ただ、アニメ制作はチームプレイなので。制作に携わりながら社内のコミュニケーションに気を配るのは、やっぱり難しい。だからこそ入ってくれる人の立ち回りで、業務改善のための前向きな話し合いが増えるとか、そんな空気をより増やしてもらえたらいいですね」
入社してすぐにクリエイターと打ち解けるのは難しいと思う。なので、まずはみんなの仕事を見て、声をかけたり、絵の感想を伝えたり。細かい気遣いを重ねることで、だんだんと心を開いてくれるはず。
「アニメや絵が好きな人のほうがいいと思います。別にアニメオタクじゃなくてもよくて。『鬼滅の刃』観てます、くらいで全然いい。明るい性格で、アニメの話ができるといいですね」
「その上で、地域をアニメで盛り上げる、という想いに賛同してくれる人だと、やりがいがあるんじゃないかな」
続いて話を聞いたのは、入社して4年目になるアニメーターの長尾さん。ササユリのカリキュラムを受けた一人だ。

「小さいころから絵を描くことが好きで。絵を描きながらコミュニケーションをとるような子どもだったんです」
マンガもアニメも好きだという長尾さん。好きなマンガを聞くと、いろいろあるんですけど… と悩みながら『ハチミツとクローバー』とうれしそうに答えてくれた。
高知市出身で、大学は地元で絵を学べるところに進学。
「4年生のとき、おなじ研究室の仲間がスタジオエイトカラーズの募集を見つけて教えてくれて。絵が描ける仕事に魅力を感じて応募を決めました」
地元での就職を選んだのはどうしてだったのでしょう。
「安心していられる場所なんですよね。地元で自分の生きる道があるなら、それがいいなって。会社も実家から通っています」
「高知市は空が広いし、山や海とか自然もたくさんある。会社も高知市の中心街にあって便利だし、いい環境だと思いますね」

現在、仕事では主に原画や第二原画、TP修正などを担当しつつ、毎週一回、社内研修を行ないササユリで学んだことを共有している。
「アニメーターとして入る人は、TP修正の仕事からはじめることが多いですね。色が塗ってある放送直前の素材を制作会社さんがチェックして、ここの顔がもうちょっとキレイになるといいよね、みたいな指示を受けて修正する、という仕事です」
「最初は、最終的に放送されるものを私が描くんだっていうことがプレッシャーで。だんだんとそれが充実感に変わっていきました。クレジットに自分の名前が載るのは、やっぱりうれしいですよ」

コミュニケーションマネジャーとして入る人は、ササユリのノウハウ共有のために、長尾さんと関わることが多いと思う。
「研修の調整とか、イベント運営とか。手が回っていない仕事をお任せしていけたらいいなと思っています」
「みんなで切磋琢磨して技術を上げていこうとか、お互いに興味を持って助け合おうとか。一緒に社内のコミュニケーションをよりよくしていきたいですね」
最後に話を聞いたのは、長尾さんとおなじくササユリのプログラムを受けた山﨑さん。入社して3年目になる。
徳島県出身で、就職を機に高知市で暮らしはじめた。

「わたしも中学生のころから絵を描くことが好きで。父親の実家が高知だったこともあり、一人暮らしするのにも安心できる場所でした」
「アニメは『ハイキュー!!』が好きです。アニメは全部観て、映画も観て。毎回泣いちゃいます、感動して(笑)」
ササユリでの研修ではスタジオジブリの手法をもとに、「歩き」、「走り」の描き方やタイムシートの見方など、アニメ業界では基礎とされることから丁寧に学ぶ。
山﨑さんも学んだことを業務に活かし、長尾さんとともに社内に共有する立場になっている。
社内の雰囲気はどんな感じなのでしょう。
「個人作業なので、基本静かです。お昼とかも作業の区切りがいいところで切り上げて、みなさんそれぞれ休憩している人が多いですね。仲がいい子たちは、チャットツールで誘って一緒にお昼に行ったりしています」
「黙々と作業をしているからチャットなのかな… でも仕事の相談とかは直接話すことが多いです。その会話をより活発にできたら、もっといいチームになるのかなと思います」

「業界経験者なら、高知で暮らすことも楽しんでほしい」と山﨑さん。地方都市ならではのコンパクトさは、住みやすいと感じる人も多いと思う。
最後に、二人の話を聞いていた宇田さん。
「ササユリの普及も、地域でのイベントも、アニメ業界の未来のためのチャレンジだと思っていて」
「だからこそ、地方できちんと教育できる仕組みをつくって、高知からアニメを発信していきたい。場所に関係なく、誰もがアニメ制作をおこなえる未来をつくりたいです」
まずは業界経験がなくても「アニメが好き」からで大丈夫。
社内育成やイベント運営などを通して、高知でクリエイターたちを支え育てる。
その積み重ねが、これからのアニメ業界をより良くしていく。可能性にあふれた仕事だと思いました。
(2024/09/05 取材 稲本琢仙)


