ふるさと納税は、離れた地域と気軽に関われる仕組み。
一般的には、美味しいものを手ごろに食べられるお得なイメージがあるかもしれません。
そんなきっかけから、地域とのつながりをつくり、経済も人も回していく仕事があります。

株式会社さとゆめは、全国の自治体や地域と伴走し、産業や事業を生み出す「伴走型コンサルティング」を行う会社。
地域と密に関わり、観光や特産品の開発、ときには事業会社を立ち上げて、運営までまるごと担ってきました。
近年、新たな柱として取り組んでいるのが、ふるさと納税事業。
今回募集するのは、その事業を進めるディレクターです。地域に足を運び、事業者や自治体と向き合いながら、返礼品開拓から事業づくりまでを一貫して担っていきます。
さまざまな地域と関われるため、課題解決のノウハウを応用しやすい環境です。また、さとゆめがこれまで培ってきた、宿泊・観光の経験を活かし、現地で開拓した事業者や資源をつなげて、新たな観光の事業を立ち上げることも可能。
EC、営業、プロジェクトマネジメント、プロモーションなどの経験があればより活躍しやすく、経験がない人でも、横断的にスキルを身につけることができます。
向かったのは、東京・西多摩エリアにある檜原村(ひのはらむら)。さとゆめがふるさと納税事業ではじめて関わった自治体だ。
新宿駅からJR線を乗り継ぎ1時間半ほど。武蔵五日市駅でバスに乗り換え、約20分で村の中心地に到着する。
少し早めに到着しそうだったので、一駅前のバス停を降りる。檜原村は、東京都で島しょ部を除く唯一の「村」なんだそう。歩いていると山を近くに感じる。

時間になり、役場へ向かう。
まず話を聞いたのは、さとゆめの八間川(やまかわ)さん。ふるさと納税事業や人材育成事業など、さとゆめの新たなサービス・事業を進める地域共創本部の部長を務めていて、新しくディレクターになる人とはミーティングする機会も多い。

さとゆめは、“ふるさとの夢をかたちに”という理念を掲げて2012年に立ち上がった会社。
地方自治体のビジョンに沿って、地域の資源を観光や特産品開発、施設運営などの事業に落とし込む「伴走型コンサルティング」を行ってきた。
「大切にしていることの一つが『地方創生の民主化』です。地方創生は行政だけで完結するものではなく、個人や民間企業など、いろいろな人が関わりながら育てていくものだと思っていて。関心を持つきっかけを、もっと増やしていきたいんです」
その象徴的な事例が、700人の村がひとつのホテルになる「NIPPONIA 小菅 源流の村」。
地元の人が宿の運営スタッフとなったり、地域資源を活用した体験ツアーをつくったり。その土地でしか味わえない体験が話題になり、観光客数はさとゆめが関わる以前の約8万人から約18万人へと増加した。

「私たちは自治体さまからの受託で事業を広げています。ただ、自治体さまの財源には限りがあって、新しい事業を立ち上げたくてもむずかしいケースもあるんです」
そこで、新たな財源の柱として注目したのが、ふるさと納税。
「ふるさと納税は、地域とのライトな関わりを生む仕組みだと思っていて。寄付をきっかけに、100人に1人でも現地へ行ってみようと思うかもしれないですよね」
寄付だけでも地域を応援することにつながるし、現地を訪ねる人がいればさらにお金も地域に落ちる。そうして地域内で財源が生まれたら、新たな事業に向けた投資もしやすくなる。
そんな新しいチャレンジの最初のパートナーになったのが、檜原村だった。もともとさとゆめは、最寄りの武蔵五日市駅前にある施設と、観光ツアーの造成をするプロジェクトに関わっていた。

現在、ふるさと納税事業は檜原村のほか、長野・小海、の2地域で展開していて、来年度に新たに1自治体を開拓していく。今後は、これまでさとゆめが関わってきた自治体を中心に、全国へ広げていく予定。
新しく加わる人は、来年度に開拓予定の地域を含めた西多摩エリアをメインに、事業者との関係性づくりから返礼品の開拓などを進めていく。
「物販の世界で、売れる・売れないを実感してきた方がいいなと思っています。一方で、自治体の事情やプロポーザルの考え方も理解しながら、営業から納品までプロジェクト全体を見ていく必要がある」
「その両方を行ったり来たりできることが、この仕事の面白さだと思っていて」
ECポータルの運営や立ち上げ、プロジェクトマネジメントなどの経験を活かせる仕事。
ただ売り上げを追うのではなく、地域にお金の流れを生み出して、新しいプロジェクトが立ち上がったり、補助金に頼らず公共の施設が存続できたり。
地方創生につながる手応えを感じながら、商品づくりや広報に向き合えるのがこの仕事の魅力だと思う。

同時に、ふるさと納税事業はさとゆめの新規事業でもある。全体開発・推進も担っていってほしい。
そのため 、事業を進めていくスピード感も重視している。
檜原村の寄付金額は、2023年度の約235万円から、さとゆめが関わりはじめて2年目の2025年度は、約800万円の見通し。返礼品の数は40個ほどから90個以上に増えている。
そんなスピード感で事業を進めてきたのが、桐山さん。新しく入る人にとって身近な先輩になる方。

檜原村でも、もともとふるさと納税は行われていたものの、寄付額や登録事業者の数が伸び悩んでいた。
そこで桐山さんが最初に取り組んだのが、関係性づくり。
「役場に紹介してもらった事業者さんへひたすら会いに行って、さとゆめについてや、ふるさと納税のシステムについて説明したり。はじめのころは週に一度は自宅のある神奈川から檜原村へ通っていましたね」
「事業者さんに向けて説明会も開きました。役場の広報誌で、ふるさと納税に登録してみませんか?って呼びかけたら、想定以上に来ていただいて。それをきっかけに登録してくれた方も多いですし、説明会に来てくれなかったら出会えなかった事業者さんもいます」

関係性づくりと並行して求められるのが、「寄付を集められる返礼品」を見極める視点。限られた地域資源のなかで、どう魅力を引き出し、伝えていくかが問われる。
「ふるさと納税は、寄付額が増えるほど村に貢献できる仕組みです。そのベースには農家さんや職人さん、事業者さんの思いがある。つくり手の声をきちんと聞いて、そのストーリーをサイトに反映してきました」
その結果、もともとは焼酎など限られていた返礼品に、柚子ジャムやアヒージョなどが加わり、現在では非加熱の生はちみつが一番人気の返礼品になっている。

さらに、コーヒー豆を焙煎する店や、グランピング、サウナや食事も楽しめる宿泊施設、オイルセラピーを行う事業者など、選択肢は少しずつ広がっていった。
「地元の人にとっては当たり前のことでも、僕らからすると、すごいものや光景だったりする」
「まずは純粋な視点で、現地でのコミュニケーションを楽しんでほしいですね。そのアドベンチャー感がおもしろいんです」
アドベンチャー感?
「たとえば、クラフトビールの事業者さん。ふるさと納税の返礼品として登録したいという相談があったのですが、当初は単価が高くて、そのままではマーケットに合わなかったんです」
「それを『難しいですね』で終わらせるのではなくて、どうすれば成立するかを一緒に考えて、返礼品として登録していったんです」

やりとりを重ねるなかで、話は商品そのものにも及んだ。
「ビール自体も、もう少しブラッシュアップしたいという話が出てきて。さとゆめは、いろいろな地域で特産品開発に関わってきたので、そのノウハウを使って、一緒に開発できるかもしれない」
「たとえば、工場は長野県にあるのですが、将来的には檜原村にビール工場をつくって、見学できるようにするとか。ふるさと納税をきっかけに、事業そのものが広がっていく可能性もあると思っています」
コミュニケーションを積み重ねていくうちに、新しいアイデアが生まれたり、別の事業者を紹介してもらったりすることもある。
こうした考え方は、物に限らず、体験型の返礼品づくりにも広がっている。
今後は、「檜原村都民の森」という施設で行われている木工教室を起点に、地域を巡る着地型の観光ツアーなども構想中。滞在時間が延び、周遊してもらえれば、そのぶん地域にお金が落ちていく。

今回募集する人がメインで関わる西多摩エリアでも、檜原村のノウハウは活かせると思う。
「たとえば奥多摩には、さとゆめの別事業である『沿線まるごとホテル』の宿泊棟がすでにあります。それをふるさと納税の返礼品として活用していくこともできるし、地元の事業者とツアーをつくって体験型の返礼品もつくれると思っています」
ディレクターは、こうした現場を持ちながら、ほかの地域に向けてふるさと納税事業の提案や営業も行っていく。
自分の地元や、好きな地域と仕事をする機会もあるかもしれない。
「ふるさと納税は、規模が大きい会社だと役割が分かれていることも多いけれど、さとゆめは現場に大きな裁量があって、川上から川下まで全部やっていく。それを楽しんでくれるとうれしいです」
「僕はさとゆめに入社するまで、地方創生の経験はなかったんです。でもプロモーションの経験があって、PRするんだったらどういうビジュアルや言葉がいいかなとか、役立つこともある。どの経験も何かしら活かせる環境だと思いますよ」
最後に話を聞いたのは、檜原村役場の大久保さん。

「役場としてふるさと納税に割ける人員が少ないんです。ふるさと納税のポータルサイトも、もともとは1つだけで。今はシェアが大きいポータルサイトを2つ追加で運用してもらっていて。さとゆめさんが率先して進めてくれるので、助かっています」
檜原村出身の大久保さん。さとゆめが関わり、外からの視点が加わることの価値を感じている。
「正直、檜原村で広く知られているものは、ジャガイモとこんにゃくくらいでした。でも、今いちばん売れているのははちみつ。地元出身の僕でも、その養蜂場があることを知りませんでした」
「人口は少ないけれど、面積は広い。いろんな事業者さんがいることを知れるのはありがたいですね」

一方で、課題も感じている。
「檜原村は、いわゆる特産品が多い地域ではありません。どうしても肉や魚には勝てない部分があって、数としては、いずれ頭打ちになるかもしれないとも感じています」
「檜原村の環境が好きなので、村に来てもらって、体験してもらえるような返礼品を開拓してもらえたら一番いいですね」
寄付という行為の、その先にある風景まで想像する。まだ知られていない誰かの営みに光を充てる。
ふるさと納税は、単なる制度ではなく地域の可能性を広げ、未来をつくる入り口なのかもしれません。
その入り口に立って、地域と寄付者、そして事業者をつなぐ。地域の夢を、少しずつかたちにしていく仕事です。
(2026/01/27 取材 大津恵理子)


