コラム

働き方をデザインする
根っことプロセスから考える話
 

エイトブランディングデザイン代表の西澤明洋さんが『アイデアを実現させる建築的思考術』という本を出版された。実は私もこの本のためにインタビューいただき、「場」というテーマで場づくりと建築の統合的デザインについて紹介いただいています。

他にもコンテクストや共創などのテーマで色々な方にインタビューされていて、とても面白いです。一冊の本にされた西澤さんに「建築的」とは一体、どういうものなのかあらためて話を聞いてみました。(日本仕事百貨/ナカムラケンタ)

―まず西澤さんにお聞きしたいのが、今回の著書の中でどんなことを感じたのか聞いてみたいです。様々な人の話を聞くことで、西澤さんの考えも深まったんじゃないでしょうか。

まずお話ししたいのが、高度経済成長の後に、デザイン業界もそれ以外も社会の仕組みが整った中で、それぞれの働き方などの役割がきちんとしてきたじゃないですか。その型を今、改めて問い直すことが重要だと思ったんですね。だから根っこに帰って、型から問い直そうというのが僕の結論なんですよ。建築を学んで、建築以外に行った人って、それがすんなりとできているように思うんですよね。

―なぜでしょう。

設計という型を学んだあとに、その型を今の環境にあわせて応用できているからだと思うんです。建築の仕事の進め方は完成されているものですが、他の業界にそのまま持っていっても使えない。だから型を応用する必要があるんです。つまり「プロセスのデザイン」からデザインしているんですね。

隈研吾さんにインタビューして感じたことは、隈さんは建築を学び、建築の仕事をしているのですが、設計の型を持ちながら、意図的にもう一回作り直しているんです。だから建築業界の中でもヒットメーカーになったんじゃないか。

著書の中で、隈研吾さんは自分の仕事の進め方について次のように説明している。

僕のやり方の特徴を話すとしたら、僕からの一方的な表現というより、建物の場所や依頼者側など、僕の向こう側にあるものの本質をいかに発見し、みんなで共有できるかに注力している点でしょう。そのために人の話を聞き、場所の「声」に耳を傾け、その場所でしかできないことは何かを考えています。

『アイデアを実現させる建築的思考術』より

―隈さんの具体的な設計の作り直しとして、西澤さんが注目しているのが、「マテリアル選定・ディテール設計」という、通常は最後のほうに考える設計の作業を、あえて一番はじめに考えるという方法論でした。

そうですね。建築はそもそも地域に根ざした土着的なもの。その土地で手に入りやすい材料で作られてきましたし、だからこそ建物が風景や文化に馴染みやすいと思うのです。ただ、今ではコンクリートや鉄など、どの建築も同じような画一的な材料でできている。だからこそ今改めてマテリアルから考えるのはどうだろう、ということだと思うんです。

それって、プロセスをデザインし直しているんですよね。設計で言えば、マテリアルの選定は、本来最後の工程だったものですから。設計してから素材を考えるのが一般的ですよね。

つまり、もともとあった旧態依然とした枠組みの中で考えるのではなく、何をやりたいのか、どう働きたいのか、というところから考えていくことが重要なんだろうなと思うんです。

―根源を探していく、というのは、僕らも大切にしていることです。根っこを探す、というような言い方をしています。根っこから求人記事を考えていく上で大切なことは「書く」ことよりも「聞く」こと。きちんと聞くことで根っこを見つけられれば、方法も形も自ずと決まっていきます。西澤さんが、ブランディングデザインをしていく上で大切にしていることって何ですか?

まずブランディングデザインという考え方をお客様と正しく共有することですね。その正しい理解こそがブランディングデザインの一歩だと思います。

ブランディングデザインとはこういうもので、こうやって使っていきましょうね、みんなで考えていきましょうね、というレクチャーを最初にやります。それでディスカッションして、「フォーカスRPCD®️」のリサーチに入っていく。

―「フォーカスRPCD®️」というのはエイトブランディングデザインの特徴的なブランド開発手法ですね。ブランディングの対象の良いところや違うところに「フォーカス」し、市場を取り巻く環境やトレンド、競合他社などの商品コンセプトを「リサーチ」してから、「プラン」「コンセプト」「デザイン」していくもので、詳しくは著書を読んでいただくとして、その「フォーカスRPCD®️」の前にレクチャーがあるんですね。

そうなんです。プロジェクト初日はレクチャーをして、ディスカッションして、できればそのまま食事に行きますね。食事も大切なことだと思っていて、初日にできなくても数日以内にはやりたいことで。

最初は深いところまで分かり合えなくても、ブランディングの対象の表面的な強みはわかるんです。でもお客様の社内の意思決定に関わることとか、会社の空気とか、暗黙知とか、そういうものは少し酔っ払って軽口叩けるような感じにならないと、わからないんですよね。

あとはお客様とワークショップ形式の打ち合わせも複数回やりますね。最終的なアウトプットがロゴとかパッケージとかWEBのようなデザイン会社がワークショップをやるなんてかなり珍しいと思うんですけど。

―デザイン会社の一般的なイメージとして、まず打ち合わせをして、しばらくしてから「いくつか考えてみたので見てください」という連絡があって、プレゼン提案するみたいなことが多いですよね。そういうことを重ねていくことでコミュニケーションになっているんでしょうけど。

そういう依頼は多いです。50周年だから会社のコンセプトロゴを考えて欲しい、納期は1ヶ月で、予算はおいくら万円でやりませんか?というように。それで形にできて満足してもらえる会社もあるんでしょうけど、僕らは無理なんですよね。

―西澤さんたちのように、その前の準備段階をしてから進めるほうが、同じ時間をかけたとしても深いところまでたどり着けるような気がします。僕らも求人企業の根っこをしっかり確認するからこそ、入社してからのギャップがなく、辞める人も少ないと言われますし。ただ、西澤さんのところは「聞く」前の準備からはじめているところが面白いですね。

大切にしているのが、僕らがデザインしたものをプレゼンして決めてもらうのではなくて、一緒に考えて、一緒に決める、ということなんですよね。意識レベルを共有することが大切なので。

プロジェクトの始まりのころは、会社のこととか経営のことから考えていくからお客様のほうに主導権がある。次第に造形的な話になっていくと僕らの意見が強くなっていくという変化はあるんですけど、一緒に考えながら決めていくことを大切にしています。

―西澤さんはブランディングデザインに必要なものが3つある、と話していますよね。「トップの熱い思い」、「良いモノ」、そして「コミュニケーションチーム」。この中でも「トップの熱い思い」が大切なのは、どんなにいいデザインを作ったとしても、お客様に愛されなければ、きっと世の中には届かないということなんでしょうね。一緒に作っていけば、自分たちのものになる。

そうですね。やっぱりわかり合う、ということは大事だと思っていて。

仕事というと、どうしてもスピードや効率を優先される。でも最初のレクチャーで、リサーチ、プラン、コンセプトをやらないとデザインしませんよ、というインフォメーションを先にしているんですよ。それも大切なデザインですよ、と。そうじゃないと、クライアントはすぐにデザインしたものが見たくなるんですよね。

そこに3、4ヶ月もかける意味を分かり合うことが、ブランディングデザインのキーになっている。それがうちのプロセスのデザインになっていて。

―なるほど。もしかしたら、最初から最高のデザインが分かっている場合があったとしても、それをただ提案するだけなら、成功も半減してしまうかもしれない。

そうですね。結局、デザインを使うのはお客様なので。その人の腹に落ちていなければ、単にかっこいいデザインで終わってしまう可能性がある。

お客様も自分たちが一緒になって頑張って作った、と思っている人が多いだろうし、「あれは自分が考えたアイデアだよ」と話している人もいると思います。

―エイトブランディングデザインで働くデザイナーも同じように感じます。どんな仕事でも自分のこととして働いている人が多い。だからアウトプットが良いのだろうし、濃い経験を積むことができる気がする。それを育んでいるのが、始まりから一緒に考えていくこと。だからこそ、デザイナーもお客様も、そしてそれを利用する人たちも「自分のもの」と考えるのかもしれない。そういった感覚はエイトブランディングデザインで働く秘書兼広報兼マネジャーの人たちも同じなのでしょうか。

秘書や広報、マネジャーという仕事も、世の中ではすでに体系化されたものです。それを学ぶことも大切ですが、エイトブランディングデザインなりに再構築していくほうがいいと思っています。秘書や広報の当たり前を疑っていきたい。課題の根っこを自ら考えて、問題意識を持ち、形にしていく。

それに、デザイナーだけじゃなく、秘書兼広報兼マネジャーも、本当はみんなでやっていくことだと思うんですよ。一体となってやるというか。分業はどちらかと言えば古い制度だと思っていて。秘書兼広報兼マネジャーの行き着く先って、会社を代表して話すことで、外部と内部に味方を増やしていくような感じなのかな。

―建築はすべてを1人で実現できるものではなくて、施工や管理、さらには建築後のことなど、色々な人が関わるもの。その人たちがバラバラだったらうまくいかないですよね。全員の頭の中を統合する必要がある。さらに関わる人たちが川上から川下まで考えを共有することが大切なんでしょうね。そんなデザインを実現するにはどうしたらいいんでしょう?

それは自立することだと思うんです。分断されたプロセスの一部だけに参加するのではなく、責任感を持って世の中を良くするためにデザインをやりきること。これが建築的働き方だと思います。

建築とは、まさに総合芸術と言われるように、色々な分野を統合して進めていくものだと思います。さらに建築は設計だけでは完成できるものではないから、関わる人たちと考えていることを共有することも求められる。こういった分野や意識の統合が建築的なものであり、さらに異業種へ進んだ人は、建築的な型を再編集して働くことから、枠組みにとらわれないプロセスのデザインが自然と生まれているように思いました。(取材・文=ナカムラケンタ)

デザイナー、秘書兼広報兼マネジャー 募集

 エイトブランディングデザインでは、ブランドコンセプト「ブランディングデザインで日本を元気にする!」に共感し、一緒に成長していってくださる方を募集しています。エイトブランディングデザインのサイト内には、他にもブランドが生まれた物語トーク音源なども公開しています。もしデザインに関わる方なら新しい発見があるサイトなので、ぜひ読んでください。

求人の詳細は下記よりご覧下さい。ご応募お待ちしています!

https://www.8brandingdesign.com/recruit/