コラム

日本仕事百貨っぽさって?
企業文化を見つめ直す
ワークショップ

人生の3分の1を占める「はたらく」という時間。

この時間をどんな人たちと、何のために使いたいか。給料や勤務場所といった条件に限らず、生き方という観点から改めて見つめ直してみるのもいいかもしれません。

そんな「はたらく」をテーマにしたイベント「Lifestance EXPO 2024」が6月14日〜16日の3日間、東京・品川の「THE CAMPUS」で開かれます。

主催するのは、PARaDE(パレード)。

「これからの時代のいい会社」について考え、実践している企業が集まった共同体です。中川政七商店や、THE、ukaなど、面白い取り組みをしている企業が参加しています。

イベントにはPARaDEの参画企業など、19社が参加予定。さまざまな生き方・働き方を紹介している求人サイト「日本仕事百貨」を運営するシゴトヒトも協賛企業として参加します。

当日は、参加企業の想いを反映した商品が並ぶマーケットや、特別ゲストを招いたトークセッションが開かれます。

ほかにも、さまざまな企業で働く人たちと直接話ができるスペースなど、魅力的な企画が盛りだくさん。入場料500円で、だれでも自由に参加することができます。

イベントの目玉の一つが、各企業のビジョンや企業文化が一目でわかる「カルチャーパネル」。

それぞれの企業が大切にしている価値観や、働いている人の雰囲気、その企業ならではの習慣など。なかなか知ることができないリアルな「企業文化」をまとめた大型パネルです。

わたしたちもカルチャーパネルを作成するため、PARaDEが主催する、企業文化を顕在化するワークショップに参加してきました。

今回はワークショップの様子について、編集者の高井がお伝えします。

 

はじめに.企業文化って何だろう?

2024年4月、オンラインでのワークショップがはじまった。

日本仕事百貨から参加したのは、しごとバーなどのイベントを担当している中野、後藤。そして窓口業務を担当している槌谷と、編集者の高井の4人。

取材やイベントを通じて人の話を聞く機会は多いけれど、自分たちが話をする機会は少ないので、みんなすこし緊張気味。

画面右上にいるのが、野村さん、左下が奈良部さん。2人はPARaDEで「Lifestance EXPO 2024」を担当している方々。

まずは、奈良部さんからワークショップの趣旨について説明してもらう。

「今回のイベントのテーマは、『働くにおけるライフスタンス』です。ライフスタンスってあんまり聞きなれない言葉ですよね」

「ライフスタンスは、15年ほど前に PARaDE代表の中川がつくった造語なんです。個人の生き方に対する姿勢や態度。企業で言えば、ビジョンや思想、文化を指す言葉と定義しています」

Lifestance EXPOは、ライフスタンスという考え方を広めていくためのイベント。

2023年に開かれた第1回目は「つくる。買う。選ぶ。の未来」がテーマ。

たとえば、靴を買うとき。「履きやすいから」、「かっこいいから」という理由だけではなく、「環境に配慮した靴づくりを掲げる会社の姿勢に共感したから」という観点から選んでみる。そんな「スタンス」を軸にした新しい消費の考え方を提案した。

第2回目となる今回は、「はたらく」におけるライフスタンスがテーマ。どんな内容になるんだろう。

「はたらくにおけるライフスタンスって何だろうって考えたときに、わたしたちはビジョンと企業文化の2つに大別されると思っていて」

「さまざまな企業のビジョンや企業文化を伝えることで、来場者の方が自分の仕事の選び方を見直したり、自分のライフスタンスを改めて理解したりするきっかけになればいいなと思っています」

佐宗邦武さんの『理念経営2.0』によると、企業文化とは会社の価値観によって無意識に現れる口癖や思考、行動のこと。働いている人たちが無意識でやっていることだから、他人に説明するのはなかなか難しい。でも、企業文化を理解できれば、その会社らしさや、大切にしている価値観を知る手掛かりにもなる。

ワークでは、そんな企業文化を明らかにするため、20以上の質問に答えていく。

今回は、ワークのなかから4つの質問に絞って、その様子をご紹介します。

まずは、日本仕事百貨の「理想」について。

 

1.仕事百貨が理想にしている価値観って?

自分たちはどんなチームでありたいか。わたしたちが記事を書いたり、しごとバーなどのイベントをしたりする上で大切にしていることって何だろう。

槌谷:
「ビジョンとして掲げているのは、『自分の仕事をしている人が増えている』。あとは、誠実さを大切にしている人が多いと思うな。社員同士もそうだけど、求人を応募してくれる企業さんや、読者に対して誠実でありたいっていう想いは強いと思う」

高井:
「誠実さって、わたしたちが目指している『ギャップのない採用』っていうことにもつながっているんじゃないかな」

「仮に、企業の良いところだけを伝えて応募がたくさん来たとしても、記事と現実の間にギャップがあったら、せっかく入った人もすぐに辞めてしまう。だから、ありのままの姿を伝えることが、読者に対しても、企業さんに対しても誠実なんだと思う」

槌谷:
「応募数にこだわらないのも、そういう想いがあるから。わたしたちはたくさん応募が来れば良いとは思ってなくて。数が少なくてもいいから、本当に会社の価値観を理解して募集してくれる人に記事を届けられればいいなと思っています」

後藤:
「みんなの話を聞いて思ったのは、日本仕事百貨のメンバーって、会議とか議論をするときに根本に立ち返る人が多いってこと。『そもそも』に立ち返る考え方が浸透しているのも、求人に対する姿勢につながっている気がする」

誠実に、ありのままを伝えるという姿勢は、求人取材の仕方やしごとバーなどのイベントにも現れている。

中野:
「日本仕事百貨はWebメディアなんだけど、リアルをすごく大切にしていて。取材も、オンラインじゃなくてクライアントさんの職場まで足を運んで対面でする。しごとバーというトークイベントを開催しているのも、リアルでしか伝わらない空気感とか熱量があると思っているから」

高井:
「記事を書くときも、言葉にはならないけど、その場の空気みたいなものを伝えたいと思っています。たとえば、写真。記事ではインタビューを受けてくれた方の顔写真を載せるんですけど、わたしは必ずしも笑顔じゃなくて良いと思っていて」

「100分話したなかで、その人が笑顔でいた瞬間が1分なら、笑顔の写真は使わない。代わりに真剣な表情とか、緊張している顔とか、その人らしさが伝わる写真を選ぶように意識しています」

中野:
「写真で言えば、カメラ目線の写真を使わないのも、そういう理由だよね。カメラを意識してつくった姿じゃなくて、できるだけありのままを伝えたい」

改めて大切にしているものを言葉にしてみると、部署を超えて共通している価値観が見えてくる。

 

2.どんな服が好き?

次は、実際にどんな人たちが働いているか、社内の日常習慣、制度について考えていく。

たとえば、働いている人の服装について。社員がよく着ているブランドや、服の色味などの特徴について考える。

「会社ごとに服装の特徴って結構違うんです。たとえば、中川政七商店の女性はヒールの人がほとんどいないとか、Takramは黒いリュックを背負っている人が多いとか。企業によって結構特徴が出るんです」と、奈良部さん。

仕事百貨で働く人たちの服装の特徴はどうだろう。

槌谷:
「落ち着いた色味の人が多いかも。高級ブランドのロゴとかがある服よりも、ボーダーとか、無地の服が多い気がするな。あとは古着も多いよね」

後藤:
「たしかに、今日みんな無地かボーダーですね(笑)。あとは、クライアントさんのお店やブランドの服を買ってきている人も多いですよね」

取材を通じてものづくりの背景や想いを聞くことが多いから、取材をしたクライアントさんのものをつい買いたくなる人が多いのかもしれない。

そう言えば、今年結婚した社員は、結婚指輪にクライアントさんの商品を選んでいたな。

仕事百貨の人たちの服装を改めて考えてみると、流行りものや、大量生産されているものよりも、つくり手の想いや、こだわりがあるものを選んでいる社員が多い気がする。

 

3.働いている人はどんな人?

次は、働いている人の特性について。

「体育会系―文化系」「スピード重視―じっくり進める」など。二極化した指標のなかから、自分たちに合ったものを選んでいく。

まずは、体育会系か、文化系か。

中野:
「完全に文化系だよね(笑)。でもスポーツが好きな人は多いから、12月にも5人のメンバーがフルマラソンに参加する予定だし、この間は卓球大会も企画していたし。スポーツへの愛がある人が多いけど、テンションはまったく体育会系じゃない」

槌谷:
「文化が好きな人も多いよね。音楽とか映画が好きな人が集まっているイメージ」

最近は、映画好きのメンバーが中心になって、毎月1本課題映画を観て、感想を話し合う「シネマ部」もはじまった。ほかにも、プライベートでZINEをつくっていたり、仕事終わりにコンサートに行ったりする人も。

次の質問は、スピード重視かじっくり進めるか。

槌谷:
「昔はじっくり。でも最近はスピードも大切にしているよね。とくに最近転職してきた人たちはスピード感のある人が多いかも。代表のケンタさんは、もともと思いついたらすぐやりたいっていうタイプです」

日本仕事百貨は16人のうち5人が1年以内に入ったメンバー。新しい人がどんどん入ってきているから、会社の雰囲気も少しずつ変わっている。

後藤:
「わたしが入社した8年前から比べると、推進力がすごく出ているなって思います。でも、スピードだけを重視するよりは、丁寧に進めるところは丁寧にする。それは変わっていない。そんな安心感はあります」

新しく入る人や規模感、会社自体の成長に合わせて、日本仕事百貨の雰囲気も少しずつ変わってきている。一方で、ずっと変わらない姿勢が日本仕事百貨らしさを支えてきたんだろうな。

 

4.社内の口癖は?

社員の口癖についても話してみる。

高井:
「編集者の間だと、『根っこ』って言葉がよく出るかな。企業の求人記事を書くときに、そもそもこの企業の根幹にある価値観とか考え方、大切にしている『根っこ』になるものってなんだろうって話し合うことが多いです」

槌谷:
「入社したときに感じたのは、仕事百貨らしいメールの文面。たとえば、記事を出して応募が少なかったとき、『申し訳ないです』じゃなくて、『心苦しいです』って共感するような言葉をつかっていて。そのあたりは、後藤さんが形成してくれた文化ですよね」

後藤:
「わたしも、先輩とか同僚に教えてもらったり、どう思うって意見を聞いたりしながらです。意識的にっていうより、積み重ねで少しずつ出来てきたものだと思います」

 

おわりに.日本仕事百貨らしさってなんだろう?

いろんな角度から自分たちらしさを考えた2時間のワークショップ。

改めて言葉にしてみることで、自分たちがどんな会社なのか、どんな価値観を持っているのかを再認識することができました。

ライフスタンスエキスポでは、このワークを通じてつくったパネルも展示される予定。仕事百貨のメンバーがよくランチに行くお店や、社内のコミュニケーション方法など。記事では紹介しきれなかった、さまざまな要素が詰まった展示になると思います。

イベントでは、日本仕事百貨のほかにも多くの企業のカルチャーパネルを見ることができます。

いろんな企業の文化や価値観を知ることで、自分が「はたらく」上で大切にしたいことや、自分の「ライフスタンス」を考えるきっかけになるかもしれません。

多様な考えを持つ企業の人と話すことができるチャンスでもあります。

「はたらく」について一歩立ち止まって考えたい人。仕事と生活のバランスが気になっている人、いろんな企業を知りたい人など。

「ライフスタンス」という言葉に引っかかるものがある。そんな方は、ぜひイベントに足を運んでみてください。日本仕事百貨のスタッフも、会場でお待ちしています。

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