※このイベントは終了いたしました。

こんにちは。編集者の荻谷(おぎたに)です。
「介護」や「ケア」にまつわる多彩なゲストをお招きし、話を聞く“ケアするしごとバー”。
第4回は、園芸療法を実践する福祉施設「デイサービスセンター晴耕雨読舎」(以下、晴耕雨読舎)施設長の石神洋一(いしがみ・よういち)さんにお越しいただきます。

JR高槻駅から、バスで30分とそこから歩いて10分ほど。
晴耕雨読舎は、緑ゆたかな三好山のふもとにある。

園芸療法とは、草花や野菜、自然との関わりから心身の回復・改善を行う取り組みのこと。1950年代に欧米ではじまり、日本でも医療や福祉などの現場で実践されています。
およそ300坪の敷地には、利用者が立ったまま作業ができる箱型の畑が並んでいる。1人1つ持つことができるこの畑は、幅60cm、長さ1m。作付け計画から土づくり、水やりなどの日々のお世話も、できる限り利用者自身が行っているそう。
訪ねた12月中頃は、ちょうど大根の収穫時期。晴耕雨読舎のあちこちでは、大根を掘りおこしたり、とれた大根と写真を撮る姿が。

土を触ったり、辺りを散歩したり、花を摘んだり、施設内で使う棚をつくったり。広い敷地のなかで、利用者は思い思いの活動をしている。見学していると、「こんにちは」「どこから来たの?」など、やわらかい表情で声をかけてくれる。
晴耕雨読舎に登録している60名の利用者のうち、1日の利用者数は20名ほど。9割以上の方には認知症の症状があります。
作業の途中で何をしていたか忘れてしまったり、前回の作業を覚えていなかったりすることもあるそう。それでも利用者が晴耕雨読舎に着いてまず行うのは、その日の予定を自分でたてること。
「今日の過ごし方はどうしましょうか?って声をかけ、ご自身で計画を記入してもらうんです」と石神さん。
「『今日はしんどいから外でないです』だったら、今ならお正月飾りをつくるとか屋内でできることを提案します。利用者さんと『これをする』と合意をとってから活動をします」
「スタッフに『何したらいいの?』『なんかやることを持ってきて』と聞いて受け身になるのが、利用者さんにとって一番つまらない。そういう関係にならないために、予定を組むことは大切なんです」

晴耕雨読舎が大事にしていることは「心が動いて身体が動く」。
好きだから、やりたいから、行動をするという順番を大切にしている。
「多くの高齢者の方は、基本的にデイサービスなんて通いたくないんです。家族やまわりの人にすすめられるから、イヤイヤながら行く。利用をはじめたばかりの人からは『早くお迎えが来てほしい』というような言葉を聞くこともあります」
「ここでの活動から、利用者さんたちが『何かできそう』から『できた』とか『楽しい』に。『この施設なら行ってもいいかな』とか、ひいては『もうちょっと長生きしてもいいかな』と、生きがいにつなげていきたいんです」
昼食の時間に声をかけられてもワラを切る作業をしようと粘る妻と、それを見守りながら木にヤスリがけをする夫。「今日はここを3周する」と施設の周りを歩く男性は、義理のお母さんと一緒に通っているそう。施設内の畑をじっくり見ながら自分の畑の大根の収穫時期を考える男性。
訪れた短い時間のなかでも、いい表情で過ごす方にたくさん出会いました。

育てた野菜や花を持ち帰ると家族が喜んでくれる。自分がつくった道具やものが施設内で誰かの役にたつ。
自分がしたことがほかの人や自然とつながっている。
ケアされる立場になると、きれいに舗装された道路を歩かされるような日々を過ごすんだと思っていました。晴耕雨読舎や石神さんのケアは、凹凸や石や道草がある道に、自分の地図を持って一緒に歩いてくれているようなイメージ。
人によってこの場所が合っているのかそうでないのか、もちろん差はあると思います。ただここでのケアは、自分の内側から湧き出てくるものに気づくことができる。そんなもののように感じました。
しごとバー当日は、石神さんが立ち上げた晴耕雨読舎のこれまでや、もともと環境の研究をしてきた石神さんが高齢ケアに関わるようになった理由、日常の話、園芸療法のことも聞いていきます。
日々の生活でやりたいことが見えづらくなっている人にも、何かヒントになるようなことがあるかもしれません。
ゆったりと話を聞き、考える時間にしたいです。
<現地参加をご希望される方へ>
⚫︎時間
20:00-22:00
※20:00-21:00 トークイベント
21:00-22:00 アフタートーク(現地参加のみ)
⚫︎場所
リトルトーキョー 3F
135-0022 東京都江東区三好1-7-14
⚫︎チケット
無料(ワンドリンク制)
Peatix上でご予約ください
※当日のお支払いは電子決済のみとなります
※なお、SNSを介して発生したトラブルなどの責任は負いかねますこと、あらかじめご了承ください。
※しごとバーでは、特定の思想や宗教、マルチ商法、情報商材の販売などに関わる方の参加はご遠慮いただいております。そのほか、セクハラ行為なども含めて、参加者に不快感を与える行為を目撃した方はお知らせください。
※当イベントは現地参加の場合、事前予約制を推奨しておりますが、当日の飛び込み参加も可能です。
※座席をご希望の方には、お早めにご来場いただくことをお勧めいたします。状況により立ち見となる場合もございますので、予めご了承ください。
「介護」や「ケア」と呼ばれる領域には、まだまだ知られていないユニークな場所や人、活動、創造的な取り組みや、科学的なアプローチが存在します。その領域のしごとや働き手は、人が“自分らしく”生きるために大切なことへのまなざしを多くもつ、と言えるのかもしれません。
身近に感じる人も、まだまだ遠いと考える人も、立ち寄ってゲストの話に耳をすませてみませんか?

石神洋一(いしがみ・よういち)
デイサービスセンター晴耕雨読舎施設長、園芸療法士、NPO法人日本園芸福祉普及協会 理事。大阪府出身。アメリカ・オハイオ州オハイオ大学大学院で環境学修士課程修了。その後、環境緑化を行う造園資材メーカーに勤め、都市における緑と人の関係を学ぶ。在職中に園芸療法に出会ったことをきっかけに、2001年にNPO法人たかつきを設立。園芸福祉・園芸療法にかかわる講演や講座も行っている。
🔗デイサービスセンター晴耕雨読舎 HP
中田 一会(なかた・かずえ)
マガジンハウス〈こここ〉編集長。1984年東京都生まれ。千葉県在住。武蔵野美術大学芸術文化学科卒業後、IT関連出版社、(株)ロフトワーク、(公財)東京都歴史文化財団アーツカウンシル東京で各種事業を担当しつつ、広報PR職としても勤務。2018年に独立し、個人事務所〈きてん企画室〉を設立。多様な組織での経験を活かし、文化・デザイン・福祉領域のコミュニケーション活動に伴走。企画と編集をベースにした情報発信・記録設計が得意。2021年4月、ウェブマガジン〈こここ〉を創刊。「個と個で一緒にできること」を合言葉に、福祉をたずねるクリエイティブマガジンの編集長としても活動中。
🔗 福祉をたずねるウェブマガジン こここ
荻谷 有花(おぎたに・ゆか)
日本仕事百貨の編集者兼リトルトーキョー運営スタッフ。新潟出身。印刷・企画制作を行う会社でデザイン業務を経験。その後シゴトヒトに入社。産地のインターン「オープンハサミ」や、焚き火をかこむ合同企業説明会「かこむ仕事百貨」の企画/運営に携わる。土の近くで暮らすことが夢。