仕事百貨の編集って?
今回の「仕事百貨の編集ゼミ」は、今まで「文章で生きるゼミ」というタイトルで開催してきたイベントをブラッシュアップしたものです。
今回のタイトルを「文章で生きる」ではなくて、あえて「仕事百貨の編集」としたのは、書くこと以外にもこの仕事のやりがいを伝えたいと考えたから。
このコラムでは、この会社で編集者になったらできること、について話してみます。
話し手は、2年前の「文章で生きるゼミ」に参加して今は編集者として働いている私(高橋)と、日本仕事百貨の相談窓口などの仕事をしている黒澤さんです。
黒澤:佑香子さんは、どうして「文章で生きるゼミ」に参加しようと思ったんですか。
高橋:本当にそのままです。文章を仕事にしたい!っていう。編集者になってからは、年間5〜60本は原稿を書いている計算になるので、願ったり叶ったりですね。
黒澤:入ってみてから、ギャップはありました?
高橋:思ったより話し合いが多い会社だったっていうことかな(笑)。みんな好きよね、話し合い。
黒澤:あんまりルールや決まりがない会社だからでしょうか。佑香子さんは話し合いのとき、よく「そもそも」って言いますよね。今こういう話になっているけど、そもそも何が目的なんだっけ、って。
高橋:そうかな。
黒澤:それってすごく編集者らしい視点だなあと感じていて。相手が言った言葉をそのまま書くんじゃなくて、どういう考えからこの言葉が出てきたのかっていう根っこを、まとめて伝えようとする、みたいな。
高橋:たしかに。取材でもよく「それって、こういうことですか?」って、相手の気持ちを別の言葉で確認したりします。答えは「そうそう!」でも、「それはちょっと違う」でも、どっちでもいいんです。それがきっかけで相手の考えが整理されることもあると思うから。
黒澤:そうやって話を聞くこともそうだし、実際には文章を書く前の、準備みたいな作業も多くないですか?
高橋:準備?
黒澤:たとえば求人の記事を書くとき、募集要項の書き方まで提案することもありますよね。
高橋:あるある。「企画事務」って書いてあるけど、「企画」と「事務」は、やりたい人の人物像が違いそうだから、ふたつに分けませんか、とか。
黒澤:「販売」としか書いてないけど、「バイイングはできるんですか」とか、「お店でイベントできたら楽しそうですよね」とか。
高橋:自分が応募したくなるような要素を引き出しているところがあるかも。それって、その会社の働き方に関わる提案でもあるね。
黒澤:仕事百貨に依頼をくださる会社さんは、どんな募集にしようか悩んでいることも多い。文章を書く前段階の、そういうコミュニケーションも実はすごく大事なんじゃないかと思うんです。相手がまだ気付いていないことを引き出していくような。
高橋:そう考えたら、アウトプットの方法は文章以外にあってもいいのかも。最近はイベントの相談とかも増えているよね。
黒澤:はい。形は違うけど、話を聞いてストーリーを伝えていくっていうプロセスはおんなじだと思っています。その伝え方が文章でもいいし、イベントでもいいし、ワークショップでもいいし、映像とか絵を描いて伝えるみたいなのもありかも。
高橋:そうね。相手の魅力が一番伝わる方法を、手段から考えられるとよさそう。
黒澤:その人の良さを、まだ知らない人に伝えるっていう意味では、結婚相談所とも近い役割な気がします。
高橋:たしかに。その人に合う相手を真剣に考える感じとか。あと、文章を書いているときに読者に対して、「いい人なのよ〜。どう? 会ってみない?」っていう気持ちが入っているところとか(笑)
自分自身のことであっても、誰かと話すうちに腑に落ちたり、納得したりするときもある。
編集者の仕事は、そんな潜在的な思いをひもといていくことなのかもしれません。
ゼミでは、参加者同士でインタビューしあうワークもあります。
どんな人なんだろう、何を考えているんだろう。
まずは相手に興味を持つところから。一緒にやってみましょう。
(話し書き 高橋佑香子)