求人 NEW

モノとヒトを再発見する

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

世田谷の深沢不動前にあるリユースショップ「くらしのくら」。きもの担当アルバイトスタッフを募集した前回に続き、今回は「家具などの買い取り担当」「インターネットでの販売担当」という2つの職種でスタッフを募集です。

あなたの家にある良品を買い取ります。このようにうたう「くらしのくら」。まったく不要になった品物を引き取るのではなく、大事に使っていた品物を、適正な価格で買い取るのがモットーだ。

シーズンに合わせて、さまざまな商品が広い店舗にディスプレイされている。手書きの商品解説が丁寧に書かれ、商品の状態とともに価格の裏づけになっているのが特徴だろう。

前回の求人記事 では、リユースショップという業種の醍醐味をうかがった。あらためて代表の野坂治雄さんに聞いてみる。

他のお仕事とは、どこが違うんでしょうか。

「私たちの仕事は、個人のお宅への買い取りから始まります。これは人生の転機に立ち会う仕事。お客さんが品物を他人に売るときというのは、結婚、引っ越し、家の建て替え、リフォームなど、さまざまな転機が多いものです。」

この記事を書いている今、僕も引っ越しの準備中。この感覚はよくわかるな。

いろんな事情で手ばなす品物が出てくる。引っ越し代金を捻出するというより、その品物がどこかで使われ続けてほしいから、リユースショップに連絡を取る。

「モノにはモノの値段しかない、思い出にプレミアはつかない、と良く言われますが、モノにまつわるヒトの話をしっかりとお聞きすることがとても大事だと思っています。多くのお客さまは『モノを売るだけでは済ませたくない』のですね。リユースのモノの値段を説明するだけではなく、そのモノに対する売り手の気持ちに寄り添える『聞き上手』になりたいと、いつも考えています。」

それは、うれしいですね。どんなお客さんが多いですか?

「お買い取りするモノが多種多様であるように、お客様もさまざまですよ。人生の来しかた行く末を話さずにはいられない方もいれば、自分の両親がこのモノをどれだけ自慢していたかを懐かしげに話す方もいます。」
今回の求人、その1番目は「トラックを運転しての買い取りスタッフ」。家具などの大きな品物をクルマで運ぶため、運転するのは2トントラック車です。

荷物を積み降ろす野坂さんとスタッフの矢満田さんを激写。マッサージチェアのあまりの重量に、思わず苦笑いがこぼれる。

運転の技量や体力は大事だ。だけど、もっとも重要なのは「買い取らせていただく」という姿勢なのだそう。

今回来てもらいたい人は、単なるドライバーというよりは、運転もできる買い取りスタッフという印象を受けた。野坂さんは求める人物像について、こんな感じで説明してくれた。

「きちんとした服装と汚れていない靴でうかがい、家に上がるときには靴を整えます。ていねいな言葉づかいで挨拶もしっかりする、これが大事です。」

ちなみに買い取りは2人で行くのが基本だ。未経験でも大丈夫でしょうか?

「ええ。いちばん必要なのは、本当のところ『人生経験』です。買い取りのとき、高齢の方の話をしっかり受けとめていくのは、20代には大変です。でも『聞く耳』さえしっかりあれば、必ず相手とお話ができますよ。そうすれば、若くても平気なんです。」

販売価格を考えながら、買い取らせていただく価格をお客さんに伝える。値段をつけるのは、それまで愛着を持っていたモノだ。ああ、これくらいの金額なのか、と落ち込むお客さんも少なくないんだろうな、と想像してしまう。

そんな、ヒトとモノに接する仕事。ズバリ、この仕事のやりがいってどこにありますか?

「買い取りというのは、他人の人生のターニングポイントに関わっていくということ。ですから、きっとこの仕事を通じて、自分の人生が年輪のように深まっていくと思いますね。間違いなく。」

そうなんだ。モノだけじゃなくて、ヒトに対する興味がなかったら、きっとつとまらない。ハードだけど、なかなか得られない経験に触れられる現場だと思う。

お店で働くスタッフの皆さんは、年齢も持ち場も多種多様。シャイな方が多い印象だけれど、接客や店頭の買い取りのときは、ハキハキと受け答えをされている。

なにより雰囲気が明るい。モノを大切に扱い、モノを通じて物語を伝える人ならではの快活さを感じる。繁忙期以外は、あまり残業もないとのことだ。

くらしのくらには他にも、軽自動車のワンボックスがある。お店の裏のガレージに停めてあったのは、コンパクトながらモノが出し入れしやすいような、使い勝手のいいクルマだった。これなら住宅街でも小回りがききそう。

きものや雑貨、小型家具や陶磁器、洋服の類はこの軽自動車で買い取りに向かうことになる。

「今後は、大きな家具を買い取る機会も徐々に減っていくでしょう。今、大型家具が売れにくくなってきています。ゆくゆくは、軽自動車で仕事をするほうが中心になっていくかもしれません。」

野坂さんがこう語る背景には、近年のネットショップでの売り上げの増加がある。すべての小売り店舗に共通する「ネットへの現場シフト」は、リユースショップでも確実に起こっているんだな。

「今は店全体の15%の売り上げがネットでの販売です。今後はそれが50%を占めると思っています。取り扱いのアイテム数も今の600点から、常時2000点を目指しています。」

そのための求人が今回、もう1つの「インターネットでの販売担当スタッフ」だ。「これからの小売店は店で売っていくだけの時代じゃなくなる」と野坂さんは語る。

「ネットでの販売は日本中の人がお客さんなので、店舗のエリアにとどまらない。この店で売れないものが売れる、そういう意外性のある面白さも得られます。」

仕事は、ネットショップへの出品および管理。店にある品物を1点1点撮影して、ネットショップやオークションサイトに出品して、売れた後に入金確認、メールで連絡をするまで。梱包と発送は別のスタッフが担当してくれる。

現在のネット販売商品は、陶磁器、雑貨、骨董、貴金属。今後は、きものや家具もネットで販売していく予定だ。

ただしこの求人、ネット専任だけの仕事にとどまらない。扱うアイテムが多岐にわたるので、それぞれの専門を持っているスタッフが、仕事をカバーしあいながらの作業となる。ときには、お客さんへの販売をサポートすることだって必要となってくる。レジの近くにもPCがあるのは、そのためだ。

「ネットでモノを売るのが好きなだけじゃ、ダメなんです。トラックでの買い取りと同様、人間との接点が重要になってきますから。ネットをツールとして、品物と人に関わっていくのが好きになるのが大事じゃないかな。ネットのお客様でも常連客がいますし、どういうものが好きかが、名前だけでわかってきますよ。」

ある意味で、時代の最先端をいく仕事なんだと思う。この職種で身につくスキルはありますか?

「スキルというより、ネットを担当すると『いくらで売れるか』を正確にわかる人になれるんです。これはいつでも買い取りができる人なんですよ。この業界でものスゴい実力です。その時代の値段の感覚をつかめるのが、ネットオークション。同じメーカーでも『このマークがついている品物は高い』といった、細分化された品物の世界が見えてくるんです。」

なるほど、なるほど。2つの職種、どんな人が向いているんでしょうか?

「レトロなものが好きな人には最適な仕事です。モノを売ったり買ったりすることを楽しめる人かどうか。古くても価値あるものに対して魅力を感じるかどうかに尽きますね。」

くらしのくらのホームページには、「モノ語りヒト語り」と題したコラムがある。応募を検討される方は、バックナンバーをぜひご一読を。スタッフがどのような思いで働いているかが、よく伝わってくるんです。

たとえば「アンティークは日本も巡る」と題したコラムでは、アンティーク家具の視点で、リユースショップの商売が語られる。

昔のご主人様はイングランドに住んでいた・・・・・・つまり私もイギリス生まれであることは確かである。
その道に詳しい人間によると優に100歳を越えているらしい。大西洋を渡ってこの日本に来たのが5年前、東京のアンティーク家具店で身づくろいを施されて、日本人のご主人様に仕えていたのもたった2年、海外フニンとかで私は「くらしのくら」という店に貰われることになった。
(中略)
商談はまとまり、私はこのご主人様の寝室に収まることになった。人間の商売とは不思議なものである。人から人へ渡るたびに取引がなされ、利益とか損失を生み出していくものらしい。何回繰り返されようが最終的な金額はほぼ変わらないというのも面白い。


ユーモアあふれる文章なのに、深い味わいと含蓄がある。全文は、ぜひこちらのページ(アンティークは日本も巡る)でどうぞ。
最後に、前回の仕事百貨に掲載した「きものスタッフ」求人で採用され、働きはじめて2カ月めの松本さんにショップの雰囲気をうかがった。

お仕事はもう、慣れましたか?

「はい、毎日が楽しいです。着付けの学校に5年通っていたので、きものの経験はあったんですが、レジなどは未経験でした。くらしのくらではお店に立ったとき、きもの以外の分野もお客様に説明する必要があるんです。みなさん親切で、丁寧に仕事を教えてくださいます。なごやかな雰囲気ですし、社長も細かいケアをしてくれて安心しました。」

この日は、仕入れてきた品物の検品と値札をつくる作業中。この仕事でやりがいを感じるのは、どこでしょう。

「呉服屋さんでは出会えないような、古い着物が出てくるのが魅力ですね。いろんな時代の着物が巡り巡ってくるのがいいなと思います。先輩の大石さんのあとについて、勉強の日々です。」

写真のきものの解説を書いたのは、松本さん。モノを愛する気持ちがストレートに伝わってきて素敵ですね!

「わからないことはネットで調べたりして、自分で販売価格を考えます。それをチェックしてもらい、適正でない価格のときには修正します」とのこと。これから品物やお客さんとのやり取りで、松本さんはどんどん経験を積んでいくことだろう。ここは、モノとヒトに触れあえる仕事場だ。

職種やジャンルがさまざまでも、古いものを愛する気持ちは同じ。そんな仲間の一員となってくれる人をお待ちしています!(2013/3/15 カンキup)