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「自立したスペシャリストたちがお互いに尊敬して信頼し合える。そんな会社にしていきたいんです。」前回の取材でFiReP Rebar Japan代表の塚本さんから、聞いた言葉です。
半年ぶりに会社を訪ねるとスタッフが増え、オフィスも大きくなっています。塚本さんの思いが着実に実現しつつあることが感じられました。
FiReP Rebar(ファイレップ・レバー)は、FRPという素材を加工するメーカーです。
本社はスイス。スロベニアと中国に工場を持ち、ドイツ、カナダ、そして日本に製品の販売を行う現地法人があります。
日本法人のFiReP Rebar Japanはいま、FRPという素材をより多くの人に身近に、知ってもらうために新しいフェーズに進もうとしています。
今回はデザイナー、技術責任者、そして営業を募集します。
訪ねたのは東京・有楽町駅前のオフィス。
ドアを開けると新しく加わったスタッフのみなさんが迎えてくれた。
前回はスーツで登場した塚本さん、今回はTシャツにランニングシューズというラフな姿での登場だ。
「ほんとうはこっちの方が好きなんですよ。このまま走りにも行けますしね(笑)。」
ドイツに生まれ育った塚本さんは、いずれ会社経営をしたいと思いつつ、留学先の日本でものづくりに魅せられる。
FiRePのドイツ法人で働いたのち、2011年に日本法人を立ち上げた。
FRPは、ガラス繊維とプラスチックを原料とする素材。日本は製造技術において高い技術力を誇っている。
耳慣れないかもしれないけれど、実は用途はさまざま。飛行機や自動車に身の回りではバスタブ。それから、アート作品の材料として用いられることもある。
FiRePではFRPを素材に、トンネルなどの公共建築物で使用される製品をつくっている。
製品の一つにロックボルトがある。トンネルや橋の壁面に打ち込むことで、補強の役割を果たすというもの。
従来より鉄製が主流であるけれど、サビによる腐食という弱みがある。ときには、トンネル崩落といった事態も生じてきた。
「FRPは耐久性に優れています。腐食がないので、より安心安全に地下鉄や高速道路を利用できるんですね。」
塚本さんは「FRPを生活者にとってより身近なものにしたい」と話す。
もともとは特殊素材として誕生したけれど、生産技術の向上や普及を図ることで、鉄とほぼ同値で扱うことができるようになった。
「現在は日本に工場を建設する準備を進めているところ。今後も内需が見込まれることと、中長期的にはアメリカでの補修需要を取り込んでいきたいです。」
より身近な存在になるために、今後はどんな展開を考えているのだろう。
「公共建築物に限らず、マンションや戸建てといった一般建築にも展開していきたいんです。」
一般建築にですか?
「ええ。断熱性、そして耐久性。FRPの特徴は、実は一般建築にこそ活かせると思います。」
高い断熱性による、夏も冬も住みよいエネルギー効率の高い住宅。鉄筋に替わりFRPを用いることで、コンクリートの耐久年数が伸び、リフォームコストが低減される。また、磁気を帯びない性質を活かし、強力な磁力を発し磁場が乱れることをきらう病院のMRI周辺のみ骨組みにFRPを用いる。
可能性が広がっているんですよ、と塚本さんはうれしそうに話す。
「一般建築は身近なことに加え、市場規模がもっとも大きいんです。家を建てるときに、いまは木造と鉄筋が一般的ですよね。今後は新たな選択肢として、FRPを一つのスタンダードにしたいですね。」
そのために、今回は営業を技術面でサポートする人を募集する。
「実際にFRPを住宅に組み込む際の構造計算にはじまり、事業展開における技術責任者になっていただけたら。一級建築士の資格があり、できればコンクリートに明るい、経験豊かな方と働きたいです。」
世界的にも、一般建築に用いられることはほとんどないという。
「FiRePは誰もやっていないことを、楽しみながら一緒につくっていきたいんです。日本をモデルとして、海外支店においても一般建築への展開を視野に入れています。」
将来的には、一般建築に限らず日本法人における技術責任者になってほしいと塚本さんは話す。
そして、デザイナーと営業も募集する。こちらは学生を中心に考えているという。
新卒採用や、アルバイトとして働きはじめてお互いに意思があえば働くことになりそうだ。
塚本さんはどんな人と働きたいですか?
「会社名や給与よりも、『面白そう』という感覚を大事にしている人ですね。」
「実際にうちで働くスタッフもみんな、はじめてのことを前にして、不安よりも『やってみたい!』『面白そう』と前向きに感じる姿勢が共通しているんですよ。」
僕も、日本仕事百貨で働くインターンと「何を基準に就職したらいいか」話すことがある。
そこで大切なことは2つあると思う。
はじめに、自分ごととして取り組める仕事か。自分ごととして取り組むには、任せてくれる会社の雰囲気も必要です。
そして、誰と働くのか。信頼ができる人からはどんどん吸収していけるし、お互いに贈りものをするように働いていけると思う。
成長できるのか?という不安も耳にする。日々の仕事に一生懸命取り組むことができれば、自ずと成長はしていけるのではないでしょうか。
塚本さんと話すのは2度目になるけれど、FiRePにはそうした環境があるように、僕は思います。
デザイナーの仕事について、これから入社する人の上司にあたる江夏さんに話を聞いてみる。
彼女は日本仕事百貨の前回の記事がきっかけとなり入社した方だ。
美大卒の江夏さんはこれまで、グラフィックおよびウェブデザインの仕事を日本そして海外でしてきた。
前職を離れ、独立を考えていたときにFiRePと出会い、働きはじめた。
現在はロゴマーク、パンフレットや名刺、展示会のポスターといったデザイン全般を担当している。またfacebookで施工事例を伝えることなど、広報的な仕事もはじめたところ。
一見バラバラに思える仕事には、ある共通点があった。
「FiRePという会社のアイデンティティづくりが私の仕事です。クライアントはもちろん、一般生活者にもFiRePを知ってイメージを持ってもらう。そのためには色々なアプローチができると思うんです。」
制作物はどうやってつくられていくのだろう?
「たとえばこれがパンフレットです。まずはラフデザインを私が起こして、みんなに意見を聞いていきます。塚本さんからコーポレートブランディングと照らし合わせて『もっとアイコンを入れてみよう』とか、営業の2人には『この言い回しの方が柔らかくていいよね』とか。それから技術的なことも教わります。」
「黙々と制作物をつくるというよりは、みんなと話して、一緒にデザインをつくりあげていくんですね。」
もちろん、ライターをはじめとする外部スタッフの協力も必要になる。
さらには、海外支店の意向も踏まえ、FiRePとしてのグローバルブランディングも手がけている。
「ドイツのスタッフから、『ここにもう少し厚みがほしい』というリクエストもあれば、スイスやドイツからもロゴを使いたいと言っていただいています。ロゴの色一つをとっても、日本と中国やスイスでは好みも違いますよね。さまざまなことを取り込んでデザインをしていきます。」
人の思いを形にすることに惹かれる。人と関わるなかでデザインをしたい。そういう人がよいと思う。
江夏さんのもとでは、どんな風に仕事をしていくのだろう。
「ブランディングのガイドラインはありますが、それに基づいていればどんどん提案もしてほしいです。一番大切なのは、FiRePとして最適なデザインをしていくこと。一緒に考えて、つくっていきたいんです。」
社内外の人たちとのやりとりを通して、自分の制作物が形になる。そして、手に取る人がいる。
実務を通して学び、手応えのあるデザインをつくっていくことができると思う。
一つの会社やものに対して、ウェブ、グラフィック、情報発信… 多角的にデザインできる仕事はそうそうないだろう。
自ずと、部分ではなく全体を見渡すことにもなる。早い段階から、本当の意味でのクリエイティブを間近で体感できる仕事だと思う。
ちなみに江夏さんは専門学校での講師経験もあるので、教えることにも慣れているとのこと。
また希望次第では、工学的デザインに関わる可能性もある。
「工場のデザインですね。設備を、人をどう配置すると最小限の労力で、最大限の能力を発揮するか。実際に工場のなかのレイアウトを考えていきます。人間工学に近いですね。」
かなり広い意味でのデザインになるけれど、経験はなくてもできるのでしょうか?
「私たちも工場の建設ははじめてのことです。ただ工場のデザインには、考え方としてプロダクトデザインと共通する点があります。関心があれば、まずは相談してやっていきましょう。」
続いて、営業の仕事についても話を聞いてみる。
男性の佐川さんと女性の久保さん。前職はトンネル工事関連資材の営業をしていた。ヘッドハンティングにより、FiRePで働きはじめた。
現在は、トンネルや橋といった公共建築物向けの営業が中心だ。クライアントは、民間企業から国家省庁を訪ねることもある。
さらに今後は高層マンションなど一般建築に早く展開していきたいと考えている。
今回入社する人は、まずは久保さんについて仕事を覚えていくこととなる。
久保さんにFiRePで働きはじめたきっかけを聞いてみた。
「楽しいことができそう、と思ったのが決め手でした。日本の建設業界は、どうしても男性社会の面が強いんですね。女性はなかなか営業に出るのが難しいこともありました。でも、塚本さんにこう言われたんですよ。『FiRePでは好きなことは全部やってほしい。まずは久保さんが楽しんでくださいね。』って。」
「いまは現場にもよく行きますよ。とにかく任せてもらえるので。チャレンジできる場だと思います。」
任せてもらうことで、仕事がどんどん自分ごとになっていける。そうやって楽しくなり、会社にとってもよい結果を生み出せる。よいサイクルがあるように感じた。
最後に塚本さんがこう話してくれました。
「仕事でわからないことがあったとしますよね。営業で困ったことは佐川、デザインだったら江夏に聞こう。それぞれのスペシャリティを活かし、いいチームとして仕事ができているんです。」
「これから働く人も同じです。技術の方はすでに強みがあるでしょう。デザイン、営業においても、一緒に働くなかで自分のスペシャリティを見つけていってほしいです。」(2013/7/4 大越はじめup)