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ネイティブ・アメリカンは常に7世代先の子孫のことを考え、自然に感謝しながら暮らしていたそうだ。バッファローを射るときは、群れの中で1番年老いたものを狙い、若いものや子供がいるものは絶対に狙わなかった。捕らえたら痛みなく殺し、食料や道具として余すことなくいただいた。そうして、自然の恩恵を次の世代へと受け渡した。
NGOグリーンピースで働く人たちを見ていたら、教科書で習ったそんなネイティブ・アメリカンの生き方を思い出しました。

次の世代に残していく未来のために、人々の意識を変えていくアクションを起こしています。
そうしたグリーンピースの考え方や取り組みを、Twitter、FacebookをはじめとするSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を用いて発信し伝えていく、「デジタル・コミュニケーション・スペシャリスト」を募集します。
グリーンピース・ジャパンのオフィスは新宿駅から徒歩15分ほど。住宅街の一角にある。
オフィスの真ん中には、大きな丸いテーブルが2つある。魚のオブジェが飾られていて賑やかなのは、海の生物多様性を守る「海洋生態系」チーム。そしてもうひとつは、脱原発へ向けて持続可能な自然エネルギーの促進を考える「エネルギー」チーム。

キャンペーンの基本の考え方として、市民を巻き込み一緒に行動を起こしていくことがある。
そのため、より多くの人に今地球上で起こっている環境問題を知ってもらいたい、キャンペーンの取り組みを知ってもらいたい、とグリーンピースは思っている。
そして、それを伝えていくのが「コミュニケーション部門」と呼ばれる広報にあたる人たち。
今回募集するのは、このチームのなかでSNSの可能性を探りながら、発信方法を考えていく人になります。
ふつう、SNS担当といえば、広報だったり事務だったり、なにかの業務と兼任しているイメージがあった。だから、それを専任で担当する人を募集すると聞いたときは少しびっくりした。
実は、グリーンピース・ジャパンでも、今まではスタッフたちが兼任してSNSを担当してきたそうだ。より専門的にコミットできる人が必要だとして、今回募集することになった。
世界40以上の国や地域にあるオフィスでは、すでにこの業務に就き活躍されている方たちもいる。そして、その方たちを指導する立場にあたっているのが、ローラさん。

実は、今年の2月に1ヶ月だけ、ウェブを使ったコミュニケーションのトレーニングのため、日本に滞在していたそうだ。
世界各国のオフィスを飛び回っているローラさんは、インターネットを用いたデジタル・コミュニケーションの重要性について、こう話してくれた。
「わたしたちグリーンピースは環境活動をするにあたって、企業や政府からの寄付は一切受けていません。個人のサポーターの方からの寄付だけで成り立っているのは、ひとりひとりの意見や個人を大切にしたいという考えからなんですね。そうすると、TwitterやFacebookをはじめとするSNSは、誰でも参加できる民主主義のツール。これを活用しない手はありません。」
「加えてグリーンピースは、『次の世代に伝える』というアクションも大切にしています。若い世代に環境保護の重要性を伝えるためにも、SNSでの発信は適していると感じます。」

SNSには、若者も含め、人々が自由に発言する機会がある。
「魅力は、グリーンピースのサポーターさんや、ふだんツイートや投稿を見てくださる方に、直接話しかけられるところ。なかには批判する方もいますが、そういう方にもきちんと対応していける体制を整えつつ、建設的な話し合いができる場にしていきたいと思っています。」
話し合いの場は「リツイート」や「シェア」によってどんどん広がっていく。
より多くの人に知ってもらい、参加してもらうにはどうしたらいいか?それを考えていくのが、デジタル・コミュニケーション・スペシャリストの仕事になる。
極端かもしれないけれど、エジプトではFacebookから100万人規模のデモが起こった例もあるし、SNSの可能性は未知数だと思う。なにか、ひとりひとりの発言が結びついて大きなうねりになっていくようなイメージがある。

たぶん、この仕事に向いているのは、人を巻き込んでいくことができる人。ローラさんも、ローラさんに会ったことのあるスタッフに印象を聞いてみると、明るくて人を巻き込む力があるということで有名(?)なのだそうだ。
ローラさんに、どんな人がデジタル・コミュニケーション・スペシャリストにふさわしいと思うか聞いてみた。
「スキルでいうと、例えばウェブのデザインとかコーディングとか、プログラミングの技術のある人がいいですね。あとは、自分が持ってないスキルを学ぶ前向きな気持ちがある人。」
「性格は、シャイじゃない人がいいと思います。海外のオフィスとやりとりをすることも多いので、コミュニケーションが上手くとれる人だったら、なおいいと思います。」
最後に、日本に来たときの印象を聞いてみた。

「日本は、色々な意味でとても進歩的な国だなと思います。みんなスマートフォンを携帯し、常に情報を持ち歩いているように見受けられました。そして、これはおそらく、昔から続いてきた考え方によるものなのだと思うけれど、自然に対する尊敬というか、畏怖の念がある。そして、人に対しても礼儀正しいと思います。だから、グリーンピースとして活動するにはいい環境ですよね。」
次に、グリーンピース・ジャパンの「コミュニケーション部門」でマネージャーを務め、広報などとりまとめている関本さんに話を伺った。

例えば、どんなことをしていくことになるんだろう。
今までSNSを使ってやってきたという事例を、現在1万近くの「いいね!」が集まるグリーンピース・ジャパンのFacebookページから、いくつか教えていただいた。

「この画像を見てください。『海洋に放射線廃棄物を捨てるなんてイケてないよね』って、ウミガメが腕を組んで怒っているんです。」
「これは、本部のグリーンピース・インターナショナルとコラボレーションしたものです。福島第一原発の汚染水漏れなどの報道がピークのときでした。わたしたちは本部に、あまりシリアス過ぎず、言葉は少なく、など、日本人にも受け入れやすいように要望を出して、この画像が出来上がりました。」
そういう他国とのコラボレーションもあれば、日本が独自につくっているものもある。
「たとえば、今、日本政府が海外の国々に対して、原子力発電所の技術をセールスする計画が進められているんです。その動きや重大さを、情報を視覚化して伝える『インフォグラフ』という手法で表現しました。」
視覚に訴えるものは、瞬間的に伝わる。この投稿には、いいね!が230以上、シェア数も80以上になったそうだ。

「こういう仕掛けは、『コミュニケーション部門』のチームのメディア担当やウェブ担当、それから『キャンペーン部門』のエネルギーチームと一緒に、話し合いを重ねてつくっているんです。」
コミュニケーション部門に属しながら、キャンペーン部門と一緒になって企画をすすめる。グリーンピースでは、これを『クロスファンクション』というそうだ。
「同時進行で色々なことが行われていますので、とてもエキサイティングだと思いますよ。」

「プロジェクトを、どうやってSNSの力で生かすことができるのかを考えること。そして、SNSにいるグリーンピースのファンがどういう情報を欲しているのかを吸い上げ、チームにフィードバックすること。そうした新しい観点が入ることによって、グリーンピースのキャンペーンやコミュニケーションがより進化していくことを望んでいます。」
どんなことができるかは、その方次第だと思う。
今はTwitterとFacebookが最もポピュラーなツールだけど、例えば、もっと写真に特化したものを取り入れたければ、TumblrやInstagramなども使えるかもしれない。
「革新的な方法をどんどん取り入れていきたいと思っているので、新しいものに好奇心旺盛な方に来てほしいと思います。」
他に、こんな人に来てほしい、というイメージはありますか?
「あとは、次世代のために良い社会を残す、良い地球を残す、という強い意志のある方だといいですね。」
「2年前に福島で原子力発電所の事故があって、やっぱり今、日本は転換点に来ているんじゃないかと思うんです。20年後、30年後の人に、どうして日本は原発を止められなかったのかと聞かれたら、すごく後悔すると思いますし、言い訳はしたくないとわたしは思っています。グリーンピースのスタッフには、未来にどういう地球を残したいのか、というビジョンを明確に持っている人が多いですね。」

ここまで話を聞いていて、疑問に思ったことを質問してみた。
環境問題に無関心な人も多いなかで、声を枯らして叫んでも、それが届かないと感じることもあったと思います。それでもタフに活動を続けられるのはどうしてですか?
「うーん。ひとつは、わりと長期の目標を立てているからかもしれません。」
「例えば、わたしたちは、『自然エネルギー革命シナリオ』というものをつくっているんです。そこには5つのステップがあって、最終的なゴールは『省エネと自然エネルギーで自立する社会』をつくることです。ただ、そのためには段階があって、まず最初のステップは、『原発ゼロの瞬間をつくろう』ということにしたんです。」
「実は、去年の5月5日に、原発の稼働が一度ゼロになっているんですよ。こどもの日に、全ての原発が止まったんです。それでも電気は足りていたし、みんな問題なく生活できていたんですよね。原発は、13ヶ月稼働したあと定期点検に入ります。今稼働している大飯原発の2基も、いずれはまた止まる日がくるんです。そういった積み重ねですよね。」

「原発事故が起こる前は54基もあった原発が、今は2基しか動いていないということだけでもすごいことだと思うんです。そう考えるとものすごい勢いで、日本は脱原発に向かっているんじゃないかと思います。」
今だけ見ていると苦しくても、少し長い目でものごとを見てみることで、全然違う世界が見えてくるのかもしれない。
この仕事にぴったりだと思うのは、ネイティブ・アメリカンのように長い目でものごとを捉えられる心と、新しいテクノロジーを追いかける好奇心旺盛な心を併せもっている人。そんな人なら、きっと活躍できると思います。(2013/7/10 笠原ナナコup)