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モノから人へ、地域へ

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

旅行に出ると、民藝品の店に立ち寄ったり、そこでしか食べられないものを食べてみたり。

その土地独自のものを探す人もいるのではないでしょうか。

農家、漁師、伝統工芸の職人… 地域には、手間ひまをかけてものづくりをしている人たちがいます。

1 けれど、出会うきっかけがなかなか持てないことも。

東京・日本橋で、「三重テラス」というプロジェクトがはじまろうとしています。

三重県が発案し、民間の株式会社アクアプランネットが企画・運営を手がけています。

ショップ、レストラン、イベントスペースの3つからなる三重テラスのコンセプトは、「三重のものを通して、地域を身近に感じてもらう」こと。

食材、伝統工芸に料理。魅力あるものをどんな人がつくっているのか、どんな人が暮らしているのか。地域の人に興味を持つことからはじまり、ゆくゆくは旅行で現地を訪れたり、Uターン、Iターンの流れが生まれてくる。

そんなきっかけづくりの場を目指しています。

2 7月には、広報や商品企画の立上げメンバー募集を行いました。

今回は9月のオープンに合わせ、ショップ・レストランで商品や食事をお客さんに届ける人を募集します。

お盆を前に、再びアクアプランネットの本社を三重県・松阪に訪ねました。

オフィスに入ると、代表の福政さん以下、立上げチームのみなさんでわいわいと打ち合わせをしているところ。

聞けば、明日からはじまる商談会の準備をしているのだそう。

現在立上げメンバーとして中心になっているのが、前回の記事で働きはじめた濱地(はまじ)さん、磯(いそ)さん。

ときおり福政さんのサポートが入りつつ、二人に話を聞かせてもらう。

3 メガネをかけた濱地さんは三重県・伊勢の出身。三重に関わる仕事がしたいという思いから、地元新聞社に新卒で入る。企業向けの営業として県内を駆け回っていた。

「三重に関わりたいけれど、具体的に何をしたいかはわからなかったんです。それなら、まずは誰よりも三重のことを知ろう。そう考えました。」

たくさんの人と出会い、知識も深まったところに三重テラスの求人を見つけた。

「三重のものを県外に発信することで、地域を元気にしたい。そう思いました。」

現在は三重テラスの立上げに向けて、扱う商品のラインナップ決めを中心に準備を進める日々。

4 これから4日間にわたって商談会をする業者さんのなかには、前職でお付き合いのあったところも少なくないという。

三重テラス立上げにおける地域との渉外の中心的存在になっている濱地さんだけれど、同時にこんな悩みも感じている。

「三重についての知識はあっても、外の人がどう受け取るのか。また魅力をどう伝えたらよいかが、いま一つわからないんです。そこで相談するのが磯さんです。僕が魅力的だと思っていたものがそうでもなかったり、逆に見落としていたものが、とてもいいと言われる。新鮮です。」

5 磯さんは前職ではWEBディレクターとして、WEBを通しての地域紹介を行っていた。

媒体としての効果は大きかったけれど、さらに一つの地域を深掘りして、盛り上げていきたいと思うようになった。

「もっと地域に寄り添って、紹介をしていけたらと思ったんです。現地を訪ねて、自分で見聞きして感じた言葉は、伝わり方が全然違うんですよ。」

現在は東京と三重を行き来する生活を送っている磯さん。

「地場の方のものづくりへのこだわりは魅力だと思うんです。一方で、デザインや見せ方に不慣れで、十分に伝えきれていないことも。私たちは、パッケージのリデザインや、店舗でのディスプレイを工夫することでこだわりをきちんと伝えていけたらと思います。」

6 こだわりと伝えることのバランスをとることで、三重の生産者と東京の生活者を橋渡ししようとしているんだな。

二人は一緒に働きはじめてまだ一ヶ月ほど。けれど、仕事の話から何気ない冗談まで、チームというか仲間というか。そうした感じが伝わってくる。

再び磯さん。

「『地域に関わりたい』という大事なところを共有できているからじゃないかな。わたし自身、三重に縁はありませんでした。でも、ものを通して地域に関わりたくて。濱地くんのように、三重に関わりたい人もいれば、手間ひまかけられたものが好きという人もいるでしょう。入り口は人それぞれでいいと思うんです。」

これから店舗で働く人も、同じことが大切になるんだろうな。

「オープン直後は、どうしても不測の事態だって起きるでしょうし、バタバタすることだってあると思うんです。先ほどお話したリデザインや見せ方の工夫も、時間をかけてじょじょに進めていくものです。そんななかで臨機応変にいろいろな人がお互いにサポートしあう。みんなで一緒にやっていけたらと思います。」

7 同時に、立上げから関わることの魅力もあると思う。

三重テラスには、三重出身で東京に住んでいる方から、三重を全然知らない人まで、いろんな人がやってくるだろう。

商品候補の並ぶ倉庫も見せてもらうと、野菜、海産物から加工品、お酒に伝統工芸まで。幅広い商品が所狭しと並んでいる。

販売という仕事には、決まったイメージがあるかもしれないけれど、それにとらわれず、自分の好きなこと、進んでいきたい方向があれば、どんどんやっていける場だと思います。

たとえば日本酒が好きな人は、いろいろ取り揃えて、飲み方を提案したり、ときには蔵元さんを巻き込んでのイベントも考えられるでしょう。好きなことから、役割はつくっていけると思う。

8 「それから、販売ってとても可能性のある仕事だと思っています。お客さんの声を本社に、地域の生産者に一番届けることができる人なんです。」

ここでは、伝統工芸品である萬古(ばんこ)焼きの話を聞かせてもらう。

「かつては輸出するほど盛んだったんですが、いまは廃業するところが増えていて。現地を訪ねると、窯元さんが更地になっていたり、元気がなくなってきているのが、目に見えてわかるんです。そのなかでも陶器市を開いたり、頑張る人たちを見ると、三重テラスが役に立てないか。そう思います。」

そこにはライフスタイルとのズレがあるという。

主な産品に急須があるけれど、つかう人は年々減っているそうだ。

「ものづくりへのこだわりは残しつつ、時代にあったデザインも大事だと思うんです。けれども、プロが「急須は売れませんよ」と話をしてもなかなかことは進みません。それよりも、お客さんの『ポットがあれば使いたいです』という生の声を伝えることから、変化が生まれてくると思うんです。」

お客さんの声を聞いてまずは本社に伝えていく。それが積み重なることで、声は生産者に届き、やがては商品が少しずつ変わっていく。

「仕組みとしてすでに用意されているわけではありません。けれど、やりたいことはどんどん実現していける会社なので(笑)。そうした流れをつくることはできるし、求められていると思います。」

「だからこそ、お客さんといっぱい話をしてほしいです。どういうライフスタイルがあるかを知り、そこからデザインも考えてみるとか。三重テラスが、売る人にも生産者にとっても、チャレンジする場になればと思います。」

それから、今回三重テラスには三重食材を用いたイタリアンレストランもオープンする。そこでキッチン、ホールとして働く人も募集している。

三重から東京に戻って、シェフを務める佐藤さんにも話を聞いた。

佐藤さんは、イタリアの三ツ星レストランで修行を経て、現在は外苑前の「イルデジデリオ」でシェフを務めている。

9 佐藤さんが得意とするのは、日本独自の食材をもちいたイタリアン。

開口一番、佐藤さんは三重の食材の魅力について語りはじめてくれた。

「三重を訪ねたら、驚きますよ。ほんとうに食材が豊かなんです。知られているのは松阪牛や伊勢海老といったブランドですよね。でもそれだけに限らないんです。」

「たとえば柑橘系一つとっても、熊野の新姫に、マイヤーレモン… 従来のものと比べると、酸味・甘みの出方が全然違って新鮮です。」

加工品でも知らない食材がどんどん出てくるという。

「“カッチョビ”という鰹のオリーブオイル漬けがあるんです。これまたおいしくって。アンチョビの代わりに入れていいアクセントになりますよ。」

10 珍味ではマンボウの干物なんてものもある。そうしたものも積極的に出していきたいと話す。

「もちろん、カキにアワビ、マグロといった定番も間違いなくおいしいんですよ。ただ、料理って、その土地の文化を伝えるものです。今回は三重の食材を用いたイタリアンなので、一皿を通して三重の文化がにじみ出てくるようにしたいんです。」

「そのときに、三重でしか手に入らない食材を東京で出すことは一つの可能性かなと思っているんです。料理を食べて『おいしい』。そう思っていただくことから、三重に興味を持ってもらえたらいいですね。」

キッチンについては、経験豊富で、佐藤さんとともにシェフを担う人から、未経験だけれど、料理を仕事にしたい人まで。幅広く採用したいと考えている。

「野菜や魚介類は基本的に生産者から直接仕入れるようにしました。メニューから考えるのではなく、食材ありきで料理を考えることもあるでしょう。料理人にとってはいい経験ができると思います。人を見て決めますが、やりたい人にはどんどん任せていきますよ。」

もちろんその人の経験や腕によるけれど、共通することがあるという。

「単に言われた通りにする作業ではなく、自分から提案もしていってほしいです。『こういう調理もあるんじゃないですか?』『盛りつけはこんな風にもできませんか?』といった風にですね。」

ホールについても、佐藤さんは強い思いがあるという。

「僕は帰国当初、ホールで働いたんですよ。」

どうしてですか?

「ホールとキッチン、両方があってのレストランだと思うからです。いくら心を込めて料理をつくっても、接客がよくなければおいしくないでしょう?」

11 お客さんとは、どのように関わるのだろう。

「生産者を訪ね、畑の上で野菜を食べ、話をしてほしいですね。そこで見聞きし感じた一皿の背景を、自分の生きた言葉でお客さんに伝えていってほしいです。」

最後に佐藤さんはこう話してくれました。

「話すことが、一番伝わると思うんです。生産者とお客さんと話すことを大切に働いてほしいです。」

実は、同じ言葉を松阪のみなさんからも聞いたんです。話すことから、自分の居場所をつくっていけそうです。(2013/8/23 大越はじめup)