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鳥や花のモチーフのものから、コップやブローチまで。BIRDS’ WORDSの陶製品を手にとると、自分の日常の中に置きたくなる。それは収集欲とか、誰かに自慢したいとか、そういうものではなくて、あくまで自分のそばに置いて、日々眺めていたいと思わせるもの。
それはなぜなんだろう?と考えつつ、そんなこと考えるのも野暮なことと思いつつ。
でも職場を訪れてみると納得できました。
BIRDS’WORDSでは、陶製品をつくる人、そして世界へ届ける人を募集します。
大阪心斎橋から東に2駅。松屋町で地下鉄を降りて地上に上がる。雑居ビルが立ち並ぶ場所。問屋街なのでチェーン店も少なくて、おじさんがベンチに座って店番してたり、下町のようなのんびりした時間が流れている。
そんな昔からの街並みが残っている一方で、新しいカフェや雑貨屋さんも目につく。全体として、のびのびと生きている人が多い場所のように感じた。
大通りの角を曲がると、からほり商店街の入口が見える。その手前にある雑居ビルの2階にBIRDS’ WORDSのオフィスとギャラリーがある。
古い扉をノックすると中から「どうぞ」という声が。中に入ると代表の富岡正直さん。
部屋の中も、富岡さんも、なんだかとてもやわらかな印象。明るくて居心地もいい。
壁面や棚には作品が展示されていて、その反対側に机がある。
富岡さんはオランダの大学でインダストリアルデザインを専攻していたそうだ。
「オランダで学んだのは、なぜそれができたのかというプロセスがものにどう反映されているかを重要視するというものでした。」
その後、日本に帰国して、BIRDS’ WORDSのデザイナーであり、富岡さんの奥さんでもある陶芸作家の伊藤利江さんと出会うことになる。
「大阪に来たときに、伊藤の個展がたまたまやっていたんです。前から作品は知っていたんですけど、ちゃんと見るのははじめてで。自分もいろいろな美術や工芸の作品をヨーロッパなどで見てきましたが、伊藤の作品を見たときはすごいショックを受けました。」
ショックだったのですか。
「見ててとてもドキドキしたんですよ。なんというか… 作品に柔軟性をすごく感じたんですね。たとえば現代アートの作品としても捉えられるし、生活や人に寄り添う温かみも感じるし、建築装飾の一部とも言えるかもしれない。すごく広がりを感じたんですよね。」
「それって、陶芸とかアートとかデザインとかのどこにも属そうとしてないし、作品に媚びない潔さがあるからだな、と思って。」
たしかに、意図を強く感じるデザインだと、その意図が読めて気持ちが冷めてしまうことがある。時代を追い求めてつくったものは、時がたてば陳腐化することもある。
そういうデザインはわかりやすいものの、広がりにくいのかもしれない。
「椅子を例にすれば、長くつくり続けられている椅子は、ぱっと見て、いつの時代につくったのかわからなかったりするんですよ。普遍性がある。そういうものって、どんな空間にも合ったりする。みんながいいなと思うものは、その適用範囲が広いんです。それは媚びてないから。そうするといろんなところにしっくり収まる。」
そういうものをつくる伊藤さんに対して、富岡さんは「こんなものをつくってみたら」と提案する役割なんだそうだ。
「ぼくはアイデアをたくさん出すことはできるけど形にはできない。伊藤は0を1にできる人。しかも大体、ぼくの想像を超えてくるんです。僕が思い描く形が1だったら、それを10にも100にも。ただ、伊藤は作品が売れようが売れまいが気にしないし、欲がないので。逆に欲があってほしくないんですけどね。これ売れるだろうと思ってつくったものって、僕は魅力をまったく感じないので。」
媚びている、ていうことですからね。
「そうです。狙ってつくるようなことはしたくないので。」
媚びているものってわかりますか?
「わかります。世の中に溢れてるもののほとんどは、売りたいがためにつくってる。ぼくはそれに手を出したくない。もちろん世の中がまわっているのは、そういったものがあるからなので否定はしません。ただ、ぼくもものを選ぶ消費者でもあるし。」
「自分たちがつくるときは、自分たちが欲しいものをつくろう、というスタンスです。自分たちが伝えたいこと、そして相手がいいなって思うものを提供すれば、いい連鎖が続いていくと思っていますよ。」
富岡さんとオフィスで話をしてから、工房にいくことになった。工房は歩いて10分もかからない距離。せっかくなのでからほり商店街周辺をぶらりと歩きながら進んでいく。
途中で元気のいいおじさんに声をかけられたり、狭い路地を歩くとまるで昭和の雰囲気だったり。そのすぐ横にオシャレなお店があったりして、じつに不思議で面白い場所だった。
さらに歩いていくと突然ハングルなどが目立つようになる。工房は国際色豊かな場所にあった。
中に入ると、窯の横にたくさんの陶製品がならんでいる。その隣の部屋では、大きな作業机を囲んで、スタッフのみなさんが黙々と作業していた。
型に粘土を入れて取り出して、手作業で成形しているようだ。デザイナーの伊藤さんも同じように黙々と作業している。
早速、伊藤さんになぜものづくりをはじめたのか聞いてみる。
「幼稚園のときからものをつくるのはすごく好きで。紙で家をつくって、中の椅子とかキッチンとか細かくつくったりしていました。とにかく何かつくり続けていきたいなと思っていて、気付いたら今に至る、という感じですかね。」
「でもやっぱり皆さんに知ってもらうきっかけになったのは、grafさんで展覧会をさせていただいたこと。たくさんの方に来ていただいたので、それはすごく大きかったかなと思っています。」
デザインはどのようにして考えるんですか。
「私の場合はまずスケッチをして、立体におこすっていう形なんですけど。」
スケッチブックを見せてもらう。ちょうど今は、自宅をリノベーションしているそうで、その壁に使うタイルをつくっているとのこと。いろいろなデザインのスケッチがあふれていた。
職場ではどんなふうに過ごしているんですか?
「ゆっくりとしているかもしれない。家だと子どもがやんちゃなのでバタバタする。」
ここにいると自分のペースなんですね。
「そうですね。ここにいると皆いるし。喋りながら手を動かして。テレビもつけているんですよ。」
普段はテレビをつけて見ている、ということを聞き出したので、早速つけてもらう。昼ドラが定番とのこと。手を動かしながらテレビの音を聞いていると、時計代わりにもなるそうだ。
なるほど。みなさん気取らずに、リラックスして働いているみたい。
伊藤さんに聞いてみる。スタッフの方に「もっとこうしなさい」とか「違うじゃないの」とか厳しく言わないんですか?
「…ないよな?(笑)ないと思う。今は和田さんがみんなを指導してくれているので。その分、わたしは新作のデザインを考えたりできるので助かっています。」
伊藤さんに紹介されたのが和田さん。一番長くこの場所で働いている方。
以前はどんな仕事をしていたのだろう。
「看板とか、FRPをつかっていろんな作品をつくっていましたよ。とにかく時間がありませんでした。夜も遅かったし、休みもなくて。今は時間にすごく余裕が出来ました。」
一日の時間の流れってどんな感じですか?
「はやいですよ、本当に。時間だけが過ぎていく。」
それくらい黙々と集中しちゃうんでしょうね。
大変なことってありますか?
「釉薬とか、思った通りに全然いかないんですよ。そのときの窯によって。だから、こうなるはずやと思ってやってるのに、出来上がったら違うっていう、そういうのはめっちゃあります。そこが一番難しいです。」
どんなに余裕を見ていても、間に合わないこともありそうですね。
「ありますね(笑)まあまああります。そしたら事務所の人に何とかしてもらう(笑)調整してもらっています。」
「あとは手が荒れますね。釉薬とか、粘土をこねていると手の油分が取られてしまうので。」
でもほかのスタッフには手袋して作業している方もいるそうだ。スタイルはひとそれぞれ。
自分の作品をつくりたい、という欲求は生まれないのだろうか。
「昔はやっていましたよ。意外と、前の仕事のときはずっと作品もつくって展覧会とかもやっていたんですけど。ここに来るようになって、ずっと粘土を触るようになると、逆に自分のことをしなくなっちゃったんですよね。」
それくらい充実しているんでしょうか。
「そうですね。前は時間全然ないのに帰ってきてから夜中とかに来て。それを思うと今は時間あるのに何もしてない。何でか分からんけど(笑)」
なんだかみなさん自然体で居心地のいい職場だと思う。背伸びしない感じ。
どういう人を求めているのか。役割としては主に3つ。「卸業務・生産管理」「陶作品の制作」「出荷業務補助・製品加工」のスタッフ。
「卸業務・生産管理スタッフ」は、全国に100店舗ある取引先から受注して、必要な商品の生産を管理する人。今は富岡さんともう一人のスタッフが兼務しつつ担当しているそうなので、専属のスタッフが必要とのこと。オフィスのあるビルで勤務することになる。
求められているのは取引先に対してきめ細やかに対応しながら商品の管理ができること。そして商品をよりよく伝えていくこと。
「制作スタッフ」は工房で一緒に陶製品をつくる人。経験のある方が望ましい。
伊藤さん曰く、「丁寧にできる人」がいいそうだ。テレビを見るくらいなのでリラックスできる職場だと思うけど、ある程度の経験と精度の高い仕事が求められている。
経験者であれば1、2ヶ月ほどでできるようになるとのこと。
「出荷業務補助・製品加工スタッフ」は、実際に発注を受けたものを送ったりする役割。さらにブローチの金具の取り付けなどの最終工程も担当する。
会社がひとつのメーカーになって、みんなで家族のように働いている。そして、それぞれの役割にあった人がのびのびと働いているのがいい。
まるで昔の町工場のような雰囲気があるのかもしれない。それが、洗練されている中にも温かみを感じさせる理由なのかもしれない。
ここで働く人は、そんな日常を楽しんでいける人なんだろうな。目の前のことをコツコツ積み上げていくのが好きな人。そして、今を生きる人。
とはいえ、未来も楽しそうな会社です。
最後に富岡さんに未来のことを教えてもらいました。
「自分たちのお店をつくりたいですね。直接、BIRDS’WORDSのことを伝えられる場所をつくりたい。でも突拍子もないことはしないと思いますよ。何かしらの方法で、大きな注目を集めるとかね。」
楽しみです。
じっくり丁寧に大阪で働きたい方。ぜひ応募してください。
(2014/5/29 ナカムラケンタ)