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「自然豊かな場所に移住して暮らしたい。」そう考えることはあっても、日々忙しく暮らす中で、行動に移すことってなかなか難しい。
仕事、家、お金、どの地域に暮らすか。
移住を踏みとどまる理由を考えることは簡単だ。
でも、一歩踏み出したい人に知ってもらいたいプロジェクトがあります。
それが『ちくご移住計画』。

福岡県とちくご地域の12市町村で構成された筑後田園都市推進評議会が主催していて、福岡R不動産が企画・運営などを手伝っているプロジェクト。
伝統的な職人の技を学ぶことのできる木工職人や酒蔵での仕事、普段なかなか出会うことのない神棚職人や船頭の仕事、自分の技術を活かしてグルメマップをつくったり、フリーランスのSOHO、アーティスト・イン・レジデンスまで、地域ごとに6つのプログラムを用意している。
家賃もプロジェクトによっては月額500円からと、移住のネックになる「仕事」や「家」「費用」の面を包括的にサポートしてくれる。

今回は6つのプログラムのうち、伝統的な技を学ぶことのできる木工職人、神棚職人、酒造りの3つを紹介します。どれもちくごならではの仕事ばかり。
福岡空港で福岡R不動さんの坂田さんと待ち合わせ。ここから車に乗って南へ進んでいく。早速社内で坂田さんが話をしてくれた。
「昨年は5組の方が体験して、その後定住して木工職人として働いたり、この体験を通して移住を検討されている方もいらっしゃいます。福岡県内の方が多いと思っていたのですが、県外の方が3組と多かったです。そういう方はちくごのことを、このプロジェクトではじめて知った方が多いですね。」

大川に近づくと、それまでの田園風景から一気に家具会社が多くなる。
受け入れ先の『プロセス井口』に到着。さっそく代表の井口さんに話を伺った。

「ものづくりに関してはすごい技術があります。木に関することは日本一ですね。材料もなんでも揃いますし、機械もある。修理にもすぐ飛んできてくれるので、家具をつくることに関しては恵まれているところです。」
普通だとなかなか難しい機械の修理もその日のうちに済んでしまったり、材料も揃っているから注文するとすぐに届けてくれるそうだ。
もともと製材屋からはじまったというプロセス井口。現在は、材料の仕入れや、『トラデス』という家具屋を立ち上げ、6名の職人さんたちによって家具の製作も行われている。
国産材から外国材まで、世界の8割ほどの種類の材木を扱っているという。
日々、どんなものをつくっているんですか?
「小物から大きなものまでつくっています。たとえば病院の家具や大学の家具をつくったり、最近だと茶室などもつくりました。」
6角レンチ1本で組み立て可能な茶室『MUJYOAN』は、東京の八芳園のために製作されたもの。大川家具を広める活動に力をいれていきたいそうだ。
注文を受けて家具をつくるだけでなく、新しいことにたくさん取り組んでいるのがプロセス井口の強みなんだと思う。

どんな人と一緒に働きたいですか?
「そうですね。好きじゃないといいものはできんですね。インテリアや家具を好きな人に来てほしい。どうやってものができているのか知ってほしいです。」

「いままで通りの仕事をしていく。それはもちろんですが、これからは年配の職人さんを雇って、若い職人さんに技術を教えてもらう学校のような場所をつくっていきたいなと思っています。もう実際に動き出していて、近くに900坪くらいの場所を買ってはじめようと思っています。」
大川の技術を継承しながら、日々新しいものづくりに挑んでいく。
つぎに伺ったのは大川市の南に位置する隣町、柳川市。
市内を掘割が通ることから水の都ともいわれている。
九州では3軒しかない、いまではなかなか珍しい神棚職人さんの工房に伺った。

伝統的工芸産業功労者でもある古賀さんに、いつも作業をしている工房で話を聞かせてもらいました。
工房に足を踏み入れると、檜の香りがふわっと広がる。壁には神棚づくりにつかうカンナがずらりと並んでいる。
職人さんということで、少し緊張していったのだけど、話をしてみると、すごく気さくに、なんでも話してくれたのが印象的でした。
神棚職人と聞くと、神棚を専門でつくっているのかと思っていたけれど、お神輿や、お堂など、宮大工のような仕事もあったり、宝くじ用の神棚をつくったりと神道に関わるさまざまなものづくりをしている。
古賀さんはいつから神棚づくりをはじめたのですか?

もともと神棚はお札を直接見ないためにあるもの。お寺にお参りすると中の如来様や仏像は扉が開いていてみえるようになっているけれど、神社の中の扉はしまっていて、中のご神体はみえないようになっている。
お札をお受けするということはご神体をお受けするということなので、神棚の扉の中にいれ、扉を閉めないといけないそうだ。
どういう人がお客さんに多いのでしょうか。
「一番多いのは商売する人ですね。それと、遠方から来てくださる方も本当に多い。そういう方はみなさん土日に来なさるから、土日に休めるということはありません。」

まずは、どんなことをしていくのでしょうか。
「最初は組み立てからですね。それから道具の手入れ。道具の手入れが一通りできるようになったら、仕事もだいたい覚えていってます。」
神棚づくりに使用する部品は、金具以外はすべて手作業でつくっている。
部品づくりも含め、どのくらいで一人前に神棚をつくれるようになるのでしょうか。
「家庭用の神棚づくりだったら、3年くらいしたら一人前になります。ところが、お祭りのときの神輿、お宮の中の神殿とか、お稲荷さんのお堂とかもつくります。そういう特殊なこともします。それを覚えていただくとなると5、6年。でも、その方のやる気ですかね。だらだらとしていたらきりがない。」
仕事体験プログラムではあるけれど、弟子入りする覚悟で来てほしいとのこと。

神棚のみならず、宮大工のような仕事をすることもあるそうなので、ぜひこの技術を受け継いでもらいたい。
そして最後に訪れたのは久留米市・田主丸。筑後川と耳納連山の間に位置している。
以前、日本仕事百貨でもインタビューをさせていただいた酒蔵『若竹屋』が受け入れ先になっている。

創業元禄12年。300年を越える歴史を誇る若竹屋。14代目である林田さんにお話を聞かせてもらいました。
酒造りは、季節が限定されている仕事であるため、冬場が仕込みの季節。
そのため今回の蔵人の研修は12月から。
蔵人の仕事はどういうものなのでしょうか。

麹や菌を扱う仕事。わずかな変化が味に影響してしまうそうだ。

どんな人が向いていると思いますか?
「そうですね、ものづくり、食品、麹や酵母を扱うことになるので、そういうものが育っていくことや、食文化に興味がある人はいいですよね。やらないといけない作業の種類は多いので、それは徐々に覚えていってもらえればいいです。それと、うちの杜氏は気が回る人が好きみたいですね。」
お酒が飲めないとつとまらないでしょうか。
「やっぱりお酒が好きだとうれしいけれど、お酒は飲めなくても大丈夫です。人の口に入るものですから自分自身がそういう意識を持って取り組める、想像ができる人。」
ちょっとハードではあるけれど、酒蔵内に住み込みすることもできます。
若竹屋の成り立ちはぜひこのコラムを読んでいただきたいです。
木工職人、神棚職人、蔵人と、ちくごでなければなかなか出会えない仕事だと思います。
ほかにも、グルメマップづくりや、フリーランスの方が自分の仕事をつくる準備期間としてつかうことのできるSOHO、アーティスト・イン・レジデンスまで、多様な仕事と住居が待っています。

準備運動としては、地域の様子や仕事のことを知る絶好の機会だと思います。
(2014/06/11 吉尾萌実)