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Global Reuseの渦

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

型落ちのPC。バンパーが錆びて腐食した農機具。日本では見なくなったブラウン管TV。子どもが使わなくなった、名前入りの学習机。引っ越しを機に処分した洋服たち。

日本で使われなくなったモノを集めて、アジアへ。再資源化されたものは、再び原料として製品に組み込まれて、日本へ戻ってくる。

1 新たなグローバルリユースの仕組みをつくろうとする会社が鹿児島にあります。

当時22歳の若者が立ち上げたECOMMIT(エコミットは屋号/株式会社K&K)です。
ECOMMITでは、グローバルリユースネットワークを構築する人を募集します。

いま、新たなリユースの渦の中心となりつつある鹿児島には、続々と面白い若者が集まっています。

社会によいこととビジネスを両立させたい人はもちろんのこと、自分の専門性を活かして働きたい。従業員というよりは共同経営者になりたい。0から1をつくりたい。仕事に学歴は関係ない。

一つでも引っかかる方は、まずは読んでみてください。

ECOMMITという屋号は、エコロジーを通して世界にコミットするという意味です。

2 けれど代表の川野さんは、“ソーシャルビジネス”という言葉にはまったく興味がないと笑う。

「僕はもともとスケートボードをやっていたんですよ。」

今から10年以上前、高校生の川野さんは東京八王子でスケートボードに明け暮れていた。そして、ムラサキスポーツのスポンサードライダーとなった。

ある大会の会場として借りた、企業の駐車場。

大会が終わり高校を卒業した川野さんは、ひょんなことからその企業で働きはじめます。

事業内容は、国内で使われなくなった家電製品や農業機械、建設機械を集めて、海外へと輸出すること。

3 外国人労働者にまじって、炎天下の港で海上コンテナを積み込む日々。

その働きぶりを気に入られて異動した営業職で、転機は訪れます。

「積み込みしながら『こんなボロボロのモノを出荷して、本当に売れるのかな』と思ってたんですよ。あるとき先輩がその先を見てこい、って。アジアに連れて行ってもらいました。」

そこで見たものに圧倒される。

「ボロボロだったモノが、めちゃめちゃ綺麗にリペアされていたんですよ。まずその姿に衝撃を受けました。」

いまでも覚えていることがあるという。

「40代後半ぐらいのおじちゃんが耕運機を買いに来たんです。1ヶ月分の給料を握りしめて、本当に嬉しそうに、大事に耕運機を持って帰ったんです。」

テレビも、冷蔵庫も。喜び感謝する現地の人たちの姿を見て、はじめていい仕事だな、本当に意義のある仕事だと思った。

4 帰国後は仙台から鹿児島まで、全国の営業所を回り、仕事にのめり込んでいったという。

けれどその後、会社はなくなってしまう。

自分の身の振り方を考えて浮かんできたのが、鹿児島での起業だった。

「出向で鹿児島に来る度、自分だったらもっとよく出来るのにと思っていたんです。何より若かったですね。自分でやっちゃおうと立ち上げたのがECOMMITです。」

5 今年30歳を迎える川野さんは、当時22歳。

初年度こそ好調なスタートを切ったけれど、その後はリーマンショックの影響もあり3期続けての赤字決算。

銀行からの資金融資も思うようにいかない日々が続く。

「ひどかったなぁ… 飯食えなかったですから、本当に。お金がなくて食事ができなかったんですよ(笑)。」

その後も川野さんは、映画かマンガのような出来事を経験します。会った際にはぜひ話を聞いてみてください。

谷底の時期を経て、黒字に転化したのは2011年のこと。次第に共感する仲間も集まりはじめます。

6 この3年間の成長は目を見張るものがありました。

売上げで見ると、2011年度が2億円、2012年度は5億円、そして今年度も同様のペースで伸びているという。

仕事内容も集荷業務から、企業や自治体向けのコンサルティングへとシフトしつつある。

たとえばリユースショップからの回収。

「国内のリユースショップにモノが並びますよね。あれを1次リユースとすると、僕らが取り組むのは2次リユースです。実はリユースショップでは、売れ残りが大量に廃棄されているんですね。海外では、それらもとても喜ばれるんですよ。僕らは廃棄されるモノを買い取り、海外に販売する仕組みをつくっています。」

7 リユースショップにおける廃棄物処分コストは、年間で一店舗あたり数十万円。チェーン展開している企業であれば、その額は何十倍にものぼる。

ECOMMITは、企業からのコンサルティング料とモノの販売による利益を手にしている。

さらに、川野さんは次のステップを見据えている。

「海外に届けたモノも、10年後には廃棄物となります。それらを回収・分別・分解して、海外で再資源化する。そして日本のメーカーの生産ラインに組み込む。いずれは“グローバルリサイクルネットワーク”も実現していきたいんです。」

現在は、法律により回収から分解までリサイクルは、基本的に日本国内で行うことが推奨されている。

けれど分別解体は手作業によるもの。人件費の高い日本ですべてを行うことは難しい。

コストが合わない有害廃棄物は、埋め立て処分される現状だ。

また廃棄物は不法に輸出されることもある。

中国では、健康・環境面に配慮しない手法で廃棄物の再資源化が行われることで、水俣病で見られたような深刻な人体被害を引き起こしている。

「車も、PCも電化製品も。日本の製造業は、海外生産が当たり前のこととなっていますよね。モノのサイクルで言えば、出口にあたるリユースとリサイクルだけが国内に縛られていました。」

そこで川野さんは環境省にかけ合い、新たな流れをつくろうとしている。

たとえば、2013年から施工された小型家電リサイクル法。

回収対象となるスマートフォン、デジカメ、携帯ゲーム機やカーナビには、金銀やレアメタルと呼ばれる価値の高い金属が多く含まれる。

資源に乏しいと言われる日本だけれど、金銀に至っては、世界埋蔵量の20%が眠る“都市鉱山”として注目されている。

8 けれど、人件費の高い日本では、事業としてのリサイクルが成り立たない。

そこで川野さんは次の提案を環境省に行った。

タイに工場を建設、高いレベルでの解体を行った後、再資源化。日本に移送するという仕組みだ。

「一度目は『ムリ』と言われたんですよ。事例を調べるうちに、コピー機メーカーがアジア間で移送して、再資源化しているモデルを見つけたんです。これだ!と思って。何度もしつこく通ううちに反応が変わってきたんです。」

「リユースとリサイクルにおいては、民が試されている面もあるんですね。僕らが責任を持って回収することで、官も信頼して政策を打ち出せる。官民で一緒につくっていきたいんです。」

最近では、環境省から意見を求められる機会も増えてきた。

1,000億円規模の売上げを誇る業界最大手に並び、中古家電リユースの検討会に招待されることも。

今回入社する人にも、ビジネスとして成り立つリユースの仕組みを考えてほしい。

どんな人に来てほしいかをたずねると「順応性のある人がよい」とのこと。

「考え方が凝り固まっていては、やっていけないと思います。ときには向こう見ずに、突っ走れるぐらいのほうが楽しめるのではないでしょうか。」

そう話すのは、企画営業の鈴木さん。

9 こう続けます。

「順応性と言っても、ECOMMITに自分をあてはめるということではないんです。むしろ、はみ出しちゃう人がいい。せっかくうちに来るのであれば、それぐらい勢いのある方がいいと思います。」

実は入社してまだ2ヶ月の鈴木さん。彼女自身もどこか“はみだしている”人だと思う。

子どもの頃に、ジブリアニメ「もののけ姫」を見て環境に関心を持ったのがきっかけ。大学は農学部へ。東京にある企業の環境事業部で働きはじめた。

「大学時代に色々活動をする中で、思いだけでは何も変えられないと気づいたんです。環境問題を解決するにもビジネスや!と思ったんです。」

前職の事業内容は出版にセミナー、そして企業コンサル。けれど部署として利益は上がっていなかった。

加えて多忙な日々に体が悲鳴を上げ、故郷の鹿児島に戻ったのが去年のこと。そしてECOMMITに出会った。

入社してからの2ヶ月間は社長の出張に同行する日々。すでに、企画から一人で立ち上げた案件も成約させたそうだ。

このスピード感はK&Kの一つの特徴だと思う。
社内の情報共有も、オンライン上のツールを中心に行っている。ベンチャーというよりは、グローバルな展開を視野に入れているからこそ。

話をうかがうなかで印象的だったのは、鈴木さんと代表・川野さんの距離感だ。

鈴木さんは代表を前にしても、まったく臆する様子は見られない。むしろ川野さんが合わせる場面さえ目にしたぐらい。

10 ここで再び川野さん。

「僕が提案をしても『川野さん違うんじゃないですか?』とめっちゃ言われるんですよ(笑)。」

少し慌てる鈴木さんを尻目に、川野さんは続ける。

「僕はそれがいいと思ってるんです。自分の考えが100%正しいとは思っていません。みんなでECOMMITをつくっていきたいです。もう一人、大手証券会社からうちに来た都合(とごう)くんがいます。彼も、本当に一生懸命勉強しています。僕が敵わない点もたくさんありますよ。思ったことはどんどん言ってもらいたいですね。」

「社長についていく」というよりは「一歩先を行く先輩と一緒に新たなマーケットをつくっていく」。

そんな言葉がしっくりくる職場だと思います。

11 この日は紹介しきれませんでしたが、ECOMMITには続々と人が集まってきています。

川野さんが紹介してくれた福岡出身の都合さん。

管理部門を支える彼は「何をするかよりも、誰と仕事をするか」を軸にECOMMITを選んだと言います。

前職の大企業では当たり前のことが、ECOMMITではできていない。そんなギャップも感じつつ、会社としての組織づくりに取り組んでいます。

大変だけれども楽しい。そんな充実した姿が印象的でした。

また中学を卒業して、南九州エリアのマネージャーとなった人もいます。彼は23歳を迎えた今年「一回り大きくなって戻りたい」と退社を決意。リユースのマーケットとして注目される東南アジアを歩きつつ、大学進学も視野に入れた勉強をしています。

12 いま、鹿児島にはリユースの渦が生まれつつあります。

取材の帰り道にふと思い出したことがあります。

企業経営において日本が多くを学ぶアメリカでは、ナイキはオレゴン、アップルはカリフォルニア、コカコーラはジョージア。色々な都市に各分野のフロンティアが点在しています。

日本では東京への一極集中が長く続いてきました。鹿児島で新たなフロンティアをはじめてみませんか。

(2014/6/6 大越はじめ)