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期待値を超えていく

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

今はモノに溢れた時代。コンビニは24時間やっているし、インターネットで注文した商品は翌日に届く。

それでもわざわざ人が足を運びたくなるお店ってどんなところなのだろう。

そこにあるのはきっと、商品だけではないと思う。人、空間、サービス。豊かで満ち足りた気分になるような、そこでしか得られない体験がある。

だからこそ、時間とお金をかけてでもそこに行く。

SONY DSC そうした人々の期待に応えていくのが、今回募集する仕事です。

江戸時代から続く、日本でいちばん最初の百貨店「三越」の、入口の案内所に立つ店内案内スタッフを募集します。

百貨店に入ると、まず最初に目に飛び込んでくる案内所。ここには老若男女さまざまな人がやってきます。

お店の場所を知りたい、催事について聞きたい、道に迷った、などなど。そうした要望にひとつひとつ向き合いながら応えていく仕事です。

キャビンアテンダントなどと並んで、小さい頃憧れた人も多いと思う。日本人なら誰もが知っている職業かもしれない。

既にイメージができあがっているぶん、期待される水準も高い。

でも、だからこそ、その期待に応えようとすることが自分の誇りにつながっていくような仕事なんだろうな、と感じました。

SONY DSC 知っているようで知らない仕事の舞台裏を、ちょっと覗いてみてください。

銀座駅を降り、駅直結の「三越銀座店」へ。

今からおよそ300年前の江戸時代に、呉服店「越後屋(ゑちごや)」としてはじまった三越は、その後「デパートメントストア宣言」を行い日本初の百貨店となった。

日本初のエスカレーター、バーゲンセール、お子様ランチ、正面玄関前のライオン像、そしてキャッチコピーとともに知れ渡ったポスターやコマーシャルなど、三越から生まれたカルチャーは数知れない。

SONY DSC 日本橋の本店に次いで、銀座4丁目の交差点前に三越がオープンしたのは、昭和5年のこと。

食・ファッション・芸能などあらゆる文化が集積された銀座という土地柄、三越銀座店にやってくる方は、洗練されたファッションやライフスタイルを好み、目が肥えた方が多いそうだ。

海外からの観光客も年々増加している。平日でも、ものすごい人だった。

「とくに土日祝日は、こちらの喋るスピードが追いつかないほど沢山のお客様がいらっしゃいます。入ったばかりのときはもう、はっちゃかめっちゃか、という感じで(笑)、その忙しさに圧倒されました。」

そう話してくれたのは、三越銀座店に勤める菊地さん。海外の観光客向けに、日本語だけではなく英語での案内も務めている。

SONY DSC 事前に聞いていたのは、菊地さんが、お客様にだけではなく働くスタッフに対しても自然と笑顔で接することができるような方だということ。会ってみて、その通りだと思った。

菊地さんは、ここに勤める前は、PR会社や事務職として働いていたそうだ。

「事務職をするなかで、やっぱりわたしはサービス業のようにお客様と触れ合うことができる仕事のほうが、喜びややりがいを感じるんだな、と改めて気づいたんです。」

そんなとき、店内案内の求人を見つけた。

「説明会に行って採用担当の方と話して、会社の目指すイメージに魅力を感じました。それから、ふだんお店を利用していて、やっぱり歴史や伝統があって雰囲気がすごいので、もし自分がここに勤めたら、誇りを持って仕事ができるんじゃないかな、と思ったんです。」

次に、仕事が終わってから三越日本橋本店から駆けつけてくれた加藤さんにも聞いてみる。

SONY DSC 加藤さんは、とてもおっとりした第一印象。ただ、話していると、どっしり構えた部分も垣間見える。今は、お客様をお名前でお呼びしよう、と心がけているそうだ。

もともとは金融会社に勤めていて、その後結婚式場でのサービス業を経て去年の10月からここで働きはじめた。

「動機のひとつを申し上げると、わたしは音楽がとても好きなんですね。三越日本橋本店には、上階に三越劇場、そして一階の広場には大きなパイプオルガンがあって、毎週演奏があるんです。そういう場所で働きたかったんです。」

大正3年に建てられた三越日本橋本店のルネッサンス様式の建築は、それ自体とても見応えのあるもの。

パイプオルガンをはじめ、行き先ボタンのない手動運転のエレベーターなど見所が多いため、企業や修学旅行生を対象に、店内を巡るツアーも定期的に開催されている。

SONY DSC 手動のエレベーターを現役で運用しているのは、日本でも非常に珍しい。そして、そのエレベーターの運転も加藤さんの仕事だそうだ。

芸術、文化、伝統。そうしたものに囲まれて働けるのは幸せです、と加藤さん。

話を聞いて、自分が居たいと思う空間に居られる、というのも仕事を選ぶ上で大事なことなんだと感じた。

それはきっと、さっき菊地さんが言っていた「誇り」にもつながることだと思う。

そして、最後に紹介する伊勢丹新宿本店の藤野さんも、やりがいや誇りにつながる仕事を求めてここに転職してきたひとり。

SONY DSC 伊勢丹新宿本店は、本館・メンズ館からなる”ファッションミュージアム”。ここの案内所に立つには、それなりの情報量が求められる。

そんな伊勢丹新宿本店を「挑戦して、あえて第一希望にしました」と話す藤野さん。

小さい頃は旅館の女将さんになりたい!と思っていたそうだ。最初はホテルに勤め、ドアガールなどを経験したのち、美容院での受付業を経てこの仕事をはじめた。

実際に働いてみて、どうでしたか?

「女だらけの職場って、想像すると怖いかもしれないですけれど、実際はお局さんのような人もいないですし、楽しいです。」

わたしも3人にお会いして意外だったのだけど、みんなサバサバして爽やかな印象。

姿勢と言葉遣いがとくべつ美しいことを除けば、他の企業やNPOに取材に行ったときとまったく同じ雰囲気だった。だから安心してください。

さて、入社してからの流れについて順を追って説明すると、まず最初に、3ヶ月の研修期間があるそうだ。

言葉遣いや所作を身につける講座を受けたあと、先輩がひとりついて実際の仕事のなかで二人三脚で教えてもらう。

SONY DSC 無事に研修を終えて一人前になると、その証としてようやく制服を着ることができる。

その後も、英会話やラッピングなど、業務に直接関係のないものも含め、スキルを磨くさまざまな研修に参加できる。少し先の話かもしれないけれど、社員登用のキャリアアップ制度もある。

そして制服を着たら、ついに1人で案内所に立つ。

「案内所は、持ち場が決まっているわけではなく、毎日シフト表が出て、店内に点在する何カ所かの案内所をローテーションで周るんです。一カ所につき、滞在時間はだいたい30分から1時間ほどでしょうか。案内所での案内、エレベーターの案内、そして事務作業など、一日ごとに流れは異なります。」

場所によって時間によって、人の流れはぜんぜん違う。すべての案内所をまわることで、全体を把握することができる。

SONY DSC お客様には、どんなことを聞かれるんですか?

「伊勢丹の場合は、ファッションの伊勢丹と言われているだけあって、お店の場所を聞かれても、まずはレディースなのかメンズなのかベビーなのか、そこを聞き分けないといけないんですね。最初の頃は、その確認を忘れて『お客様!』と追いかけていってお詫びしたこともありました。」

ときにはお店の名前ではなく、「なにかの雑誌で見たんだけど…」だったり「女優の◯◯さんが着ていた服で…」だったり、情報があいまいな場合もある。

「まさに昨日のことなんですけど、『昨日テレビで牛肉弁当のお店を見たんだけど』というお客様がいらして。『お店の名前か、ご覧になった番組名は分かりますか?』と聞くと、『ちょっと分からないんだよね』と仰るんです。そこで、食品担当に電話をして確認をとってみたら、三越銀座店ではなく三越日本橋本店で売っていることが分かったんです。」と菊地さん。

「お客様も完全な情報をお持ちでないことがほとんどなので、なぞなぞのようにあれこれと情報を集めて、答えにたどり着いていくという感じですね。」と加藤さん。

聞かれるのは、店内のことだけにとどまらない。駅までの道とか、このあたりの観光名所、それからほかの商業施設の情報を聞かれることもある。

半分、公共施設のような仕事ともいえるかもしれない。

それほど、百貨店という場所は、街のランドマークというか、パブリックなところとして認識されているんだと思う。

SONY DSC どんなことを聞かれても「分からないです」ということがないように、日頃からしっかり準備をしておくことが求められる。

たとえば、案内所には、三越伊勢丹の全店及び周辺情報がすべて網羅されたファイルがあり、分からないことはこれをめくって調べるそうだ。

それでも分からないことは、やっぱり人。各分野の担当者に直接聞いたり、他店同士でまめに情報交換をする。

時間を見つけて自分の足で店内を回って、ショップの位置や催事を確認するのも大事なこと。そうした見えない努力もたくさんある。

それでも、どうしてもお客さんの希望に沿うことができなくて、「三越なのに」と言われてしまうこともある。

でもそれは、裏を返せば「三越なんだからできるはず」と期待されているということ。

「大変だな、難しいなと思うこともありますが、情報が見つかったとき、お客様にお伝えできたときは、心から…やった!じゃなくて、よっしゃあ!って思いますよね。」と藤野さん。

SONY DSC この仕事に向いているのは、どんな人なのだろう。

「目の前の人のために、一生懸命動けるか。お客様に喜んでいただけたときに、自分も喜びを感じられるような人であれば、やりがいを持てると思います。」

藤野さんもこう話す。

「催し物も1週間単位で変わりますし、情報が常に入れ替わるので、それを楽しめる方。常に興味を持って、次に何があるかとか、テレビでこんな特集がやっていたとか。公私混同とまではいかないけれど、プライベートもうまく仕事に取り入れられるような方なら、楽しいと思います。」

続けて、興味深い話をしてくれた。

「デパートのお姉さんって、小さい頃少なからず憧れた仕事だと思うんです。だから、なりきる(笑) 。なりきってください。笑顔を大事にしていれば、たぶんお客様も声をかけてくださるので。」

多くの人が期待するイメージがある。一生懸命リクエストに応えながら、そのイメージに近づく、あるいは追い越すことが、藤野さんの言う「なりきる」の意味なんだと思う。

「おしかりをいただくこともありますが、ちゃんとしっかりお客様の話を聞いて、三越だったらこうやって話を聞いてもらえる、ここだったら対応してもらえると言っていただけると、すごく嬉しいです。ただ案内するだけの仕事じゃないな、というのを感じます。+αの部分が、この仕事のメインだなって。」と菊地さん。

SONY DSC ただ正確な情報だけが欲しいのであればタッチパネルで十分だし、今はスマートフォンだってある。

それでも、人と人が直接やりとりすることに代わる価値はないのだろうな。

どこにも真似できないサービスがあるから、人はわざわざ足を運ぶ。

期待が多いぶん、得られる誇りも多い仕事です。ここで働くことを考えてみてください。

(2014/6/24 笠原ナナコ)