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誇りをつくる

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

できないと思っていたことができるようになると、それが自信になる。ありがとうと言われると、誰かの役に立つことができた喜びで胸がいっぱいになる。

仕事の対価は、きっとお金だけじゃない。喜びや自信を積み重ねて、誇りを生み出すもの。

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今回募集するのは、仕事を通して得られる”誇り”をつくっていくような、そんな仕事です。

千葉県木更津市に、「地域作業所hana」という名前の、精神や知的に障がいのある方たちが利用者さんとして通う福祉作業所があります。

ここで、利用者さんの日々の作業をサポートしながら、やりがいを持って働いてもらうためにはどうしたらいいかを考えていく「作業指導員」を募集します。

東京から木更津へ「さざなみ9号」に乗って1時間。電車のほかに東京や横浜から「アクアライン」という直行バスも出ているので、意外とアクセスがいい。

駅から矢那川を越えて5分ほど歩いていくと、小学校の向かいに「地域作業所hana」と書かれた看板が見えてくる。

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「hana」には、ハワイ語で「仕事」という意味があるそうだ。

「仕事に人を当てはめるのではなく、人の個性に合わせて仕事を創り出していきたい」という想いから、この名前がついた。

ここには約60名(1日は約20名)の利用者さんが通っている。通う目的も、性格も得意不得意も、人によってさまざま。

だからここには、人の数だけ”hana”がある。

今、主に取り組んでいるのは、メーカーやブランドから依頼を受けて、梱包や雑貨品組み立て、縫製などの作業を行う受注の仕事。

そして、英字新聞を使った「新聞エコバッグ」、マザー牧場のお土産として人気のお菓子「石けりコロロ」(ポルボローネ)などのオリジナル商品の制作。

それから、畑での野菜づくりと販売など。

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今年の冬には、「hanahaco」という新しい事業所も立ち上がる予定。そこは、カフェ&ショップとして運営していくそうだ。

「こういう生活がしたいとか、将来の夢とか、誰もが持っているものですよね。でも、障がいがあるがゆえに、持てない人たちもいるんです。それを一緒に考えて一緒に実現していくのが、私たちの役割だと思っています。」

そう話すのは、8年前にNPO法人コミュニティワークスを立ち上げ、「地域作業所hana」をつくった代表の筒井さん。

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障がいのある方に、働くことを通して得られる対価で、自分の理想とする生活に少しずつでも近づいていってほしいと思っている。

「もちろん、お金が全てではありません。でも今、私たちのような障がい者施設で働く障がい者の月々の賃金は、全国平均で1万4千円ほどなんですね。その水準が少しでも上がったら、それは誇りにもつながると思うんです。」

利用者の方の賃金を上げるためにはどうすればいいか。それを考えるのも、ここで働くスタッフの役割。

受注生産には、決められた個数と納期がある。

たとえば、今日10個しかできなかったらそれを明日は11個にするために、どういう支援や工夫をすればいいのか。

そうしたことを考えながら、ひとりひとりの特性も見ながら、作業を割り振ってサポートしていく。

「僕たちの日々の仕事は、その一瞬だけを切り取ると、すごく淡々としているんです。でも、生産量が少しずつ上がっていけば、それは利用者さんの賃金が上がっていくことにもつながっている。賃金が上がればその先にご本人が思い描く生活に少しずつつながる。そこまでイメージしてほしいなと思っています。」

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新作が出るたびに作業の依頼をくださる企業の方や、hanaで作業することを前提に組み立てを考えてくれる担当者の方もいる。

デザイン性が高い商品が多いのもhanaの特徴で、作業に関わった商品が、話題の百貨店やミュージアムショップなどに並ぶこともある。

自分たちがつくったものが、お店で売られていること、手にとって買った人が喜んでくれるのを知ると、利用者さんたちも嬉しくなる。

クライアントも気づかなかった商品の傷を見つけたり、頼まれる以上の仕事を率先してやってくれる人も出てきた。

「僕たち職員は、きちんと稼げる仕事を整えていかないといけない。でも、やりがいも同じくらい大切です。両方があたりまえのように得られるようにしていきたいです。」

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そのための新しい一歩が、ここから車で15分ほどの場所にできる「hanahaco」という事業所。

木更津には海側と山側があり、その山側に位置する田園風景のなかに、これから建設されるそうだ。

「hanahaco」は、どんな場所になるのだろう。

「カフェ&ショップのような、飲食店と雑貨屋さんの複合店になると思います。裏方さんも含めて、その周りをとりまく働く人たちは、実は障がいのある方たち。そんなイメージです。」

現在hanaの方で行っている受注作業は、ものづくりや細かい作業が苦手な方には、難しかったりする。

そういう方にも活躍してもらえるような、サービス業的な仕事をつくりたいと、以前から思っていた。

たとえば、カフェで使う割り箸やおしぼりの準備、野菜の下ごしらえ、清掃、お庭の手入れなど。

効率や納期ではなく、自分たちのペースでできる仕事を、ここからどんどん増やしていきたい。

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今は、「hanahaco」オープンに向けて、みんなでコンセプトを詰めたり、メニュー開発などの準備を進めている。

新しく入る人は、当面は「hana」で経験を積むことになるけれど、その後に「hana」と「hanahaco」のどちらで働くことになるかは分からない。

それは職員ひとりひとりの個性を見ながら決めていくそうだ。

ただ、どちらにしても、目指すことや気持ちは同じ。

「僕自身、もともと福祉が専門ではなかったし、今働いているスタッフも経験のなかった人が多いんです。だから、新しく働く人にも、福祉の経験は一切問いません。分からないことは教えますし、むしろ、これからはじまるカフェや雑貨などの事業そのものに興味がある方でもいいかもしれません。」

筒井さんに話を聞いたあと、ここで働くスタッフの方にも話を聞いてみた。

田崎さんと三浦さんは、ちょうど1年前の日本仕事百貨の記事を読んで入社した。

木更津市に奥さんとお子さんと暮らしている田崎さんは、ここで働くまでに7回転職したという経歴の持ち主。

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大学では中国語を学び、新卒で楽器メーカーに入社した。その後、翻訳会社、お米屋、音楽教室、豆腐の移動販売など、さまざまな仕事を経験したそうだ。

前職で初めて福祉の世界に飛び込み、そこでは重度の知的障がいの方の介助をしていた。

記事を読んで、「いい意味で福祉らしくない」と感じ、興味を持って連絡をとった。

「この仕事は、退屈しないですよ。人がそこにいれば。でも、お金はあまりもらえないし、休みは多くないですよ。」と笑う。

ときどき、自分のことを、健常者のように振る舞ってきたけれど、世が世なら社会的に不適合だとみなされていたかもしれないな、と感じることがあるそうだ。

「障がいのある方に対して、他人事のような立場でいることが疲れてしまったんです。」

実際に福祉の現場で働いてみると、虚しくないし全然退屈じゃなかった。だから、この仕事は天職かもしれないと思っている。

一方、東京からアクアラインの高速バスで通勤している三浦さんは、就職活動中にhanaのことを知った。

「福祉には、健常者が障がい者を囲うような、がちがちなイメージがありました。でも、入ったら全然そんなことはありませんでした。」

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「今まで障がいのある方とあまり接したことがなかったのですが、精神障がいの方の悩みを聞いていると、わたしたちと何も変わらないじゃん、と思います。そもそも自分がどっちなのか、だんだん分からなくなってきているんですけど。」

隣で聞いていた田崎さん。

「面白いのは、ここで働く職員はみんな、あまり自分が健常者だという自信がないんだと思います。健常者として障がい者を支援する、という考え方は、あまりそぐわないかもしれません。」

日々の仕事はどのような感じなのだろう。

職員たちは、役割は重なり合いながらも、製菓・企業からの受注生産・農作業に分かれて仕事をしているそうだ。

三浦さんが主に担当しているのは、一階の厨房で製菓をつくる仕事。

ここでは、「石けりコロロ」というスペイン菓子のポルボローネをモチーフにしたお菓子をつくっている。

利用者さんたちが、材料をデジタルスケールで計り、それをコロコロと手作業で丸め、オーブンで焼いていく。

それを見守ったり一緒に作業しながら商品を完成させていくのが、三浦さんの役割。

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「利用者の方よりも年下ということもあって、最初はうまく指示を出せなかったんです。その頃はとにかく自信がなくて、一度、大量発注が入ったときに、『できません!』と言ってしまったことがあって。」

母の日、父の日、ホワイトデーなど、季節ごとのイベントに合わせて百貨店の催事に呼ばれることもあるため、ときには一度にたくさんの注文をいただくこともある。

もちろん無理なお願いはお断りするけれど、できる限りいただいた依頼には応えていきたい。

「できないと言ってもやるしかないので、頑張りました。でも、そういったときは周りの職員が必ず声をかけてくれて、フォローに入ってくれるんです。『注文入ったからよろしくね』って言いっぱなしじゃなくて。」

個人というよりもチームワークで、みんなで協力しながら作業を進めていこう、という雰囲気がある。

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田崎さんのほうは、こうした日々の仕事のほかに+αで、利用者の方に対して自分ができることを考えているそうだ。

たとえば、作業の手順書をつくったり、店頭の販売促進を考えたり、hanaのオリジナル商品を営業したり。

hanaの看板商品のひとつである「新聞エコバッグ」を、結婚式の引き出物を入れる袋として利用してもらったらどうかと考えて、パンフレットをつくり営業活動もしている。

「こういうことをしたいと相談すると、ちゃんと話を聞いてアドバイスをくれて、締切や経費の話を具体的にしていけるので、思いついたことを実現しやすいですね。フットワークがとても軽い職場だと思います。」

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ここで働くのは、どんな人が向いているのだろう。

「こうあるべき、というのが強い人は向かないと思います。人間はこうあるべき、とか男はこうあるべき、とか。総称ではなくて、その人がどうなのか考えていくのが大事だと思うので。しなやかさや柔軟さのある方がいいと思います。」と田崎さん。

特に精神疾患の方は、昨日いい関係をつくれたと思ったら、今日は急に心を閉ざしてしまう、ということもある。

相談を受けても、簡単に答えがでないことも多い。

「今は、話をじっくり聞いて、ただ共感することしかできなくて…。なかなか解決の糸口を見つけることができずに、自分自身が悩んでしまうこともたくさんあります。」と三浦さん。

「でも、楽しいです。すごく。毎日が同じようにただ淡々と過ぎていく、というところではないので、予期せぬ事態も楽しめるような人に、来て欲しいと思います。」

大変なこともありつつも、ふたりは楽しそうに働いているのが感じられた。

同じような思いで働ける方が来てくれたらいいと思う。

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最後に、代表の筒井さん。

「障がいのある方たちは、観察力がすごいんですね。こちらがイライラするとすぐに伝わるんです。ついつい、他人のことを責めたり、できていないことを指摘してしまったりするけれど、そういうとき、じゃあ自分はどうなんだろう?と、矢印を自分に向けられるか。相手を変えようとするのではなく、まずは自分ができることを変えていく。そんな気持ちで一緒にやってくれる方が来てくれたら嬉しいです。」

利用者の方たちと一緒に働くことを通して、自分自身の働き方も考えていけるような人ならば、ここで自分の仕事や誇りもつくっていくことができると思います。

(2014/7/10 笠原ナナコ)