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あせっても、火は熾きない。まずは気持ちを落ち着ける。ストーブに薪をくべ、ちいさな火をゆっくりと育てていく。

間伐後の放置が目立ちつつあった山の木々が材料となっている。
地方にある豊かな自然資源を磨きあげ、さまざまな事業の形にしていくのが、有限会社きたもっくです。
北軽井沢の地に根ざすきたもっくは、20年間をかけて、3万坪の牧草地に1,500本の木を植え、何十もの小屋をセルフビルドしてきました。
そうして誕生したオートキャンプ場「スウィートグラス」は年間5万人が訪れ、日本一と呼ばれるように。
その他に、フォレストアドベンチャー、薪ストーブなども展開。今後は温泉で心身を整える湯治(とうじ)も計画しています。
ここで、仲間を募集します。
場を日々営み、育むマネージャー。
そして、場の魅力を自ら感じとり、“本能的に”表現するクリエイター。
お互いに連携し、両輪となる仕事です。
厳しい自然環境だからこそ、仕事を通して創造することが、生きることに重なってきました。
東京から車で2時間ほど走り、避暑地として知られる軽井沢が見えてきた。
そこから山あいの別荘地を30分ほど進み、北軽井沢へと着いた。
脇道へ入ると、森の中に洋館が見えてきた。

“LUOMU”(ルオム)とは、日本と同じく森林に囲まれたフィンランドの言葉で、「自然に従う生き方」を意味する。
まず木々にワイヤーを渡し、樹上を渡り歩くフォレストアドベンチャーを開業した。これは、フランス発祥の樹上体験施設。
次に、築95年の廃屋化した洋館を修復・復元。
ルオムの森の中心的な存在となるこの洋館は、建築家ウィリアム・メレル・ヴォーリズの手によるもの。浅間高原北麓最古の洋館でもあります。
現在はブックカフェ、レストラン、ショップそしてBBQレストランとして営まれる。四季おりおりに、バザールやマルシェや結婚式といった多様な表情も持っている。
ここで迎えてくれたのは、福嶋淳平さん。

千葉で育ち、10歳で北軽井沢へ。高校・大学で東京へ出た後、アウトドア専門のシステム会社を起業。
2007年にきたもっくへ加わり、クリエイティブ事業部を立ち上げます。
「北軽井沢は寒冷地ですし、火山も生きている。自然が厳しい場所なんです。」
「1783年に浅間山が噴火して、大地は塗り替えられました。そこからもう一度、植物たちが根を張りはじめた。冬のあとの新緑は、輝くようにきれいです。植生が若く、いまも発展途上。命の競争が激しいんです。」

「地域にある自然資源の原石を掘り起こして、磨きこみ、輝かせて。自然に従う生き方を、様々な時間軸において提案しているんです。」
自然の中に“泊まる”キャンプ場「スウィートグラス」。木に囲まれたカフェやレストランで“くつろぐ”ルオムの森。
2011年にはじまり、年間で80〜90件の販売施工を重ねるのが“あさまストーブ”。
もしエアコンならばスイッチを押すことで、自分の思うように部屋を暖められる。
けれど、薪ストーブで暖をとるには、自然に時間を合わせることが必要。
「火を通して、自然と人の関係を見つめ直す。そんなライフスタイルを提案しているんです。」
ルオムの森の洋館やスウィートグラスのキャビンには、約70台の薪ストーブが設置・稼働。

「ガスや石油と違い、薪は自分たちの手でつくれる燃料です。薪ストーブをつかいはじめた人に向けた『燃料も自分で用意しては?』という提案です。」
日本の木材は、戦後の数十年間で経済的な効率性が追求され、輸入材にとって代わられるように。大量生産・消費の社会が大きく変わりつつある中、いま一度その価値に光をあてようとしている。
地域の林業家と連携をとり、間伐後の木材の有効活用に取組み、事業化していった。
「お金が伴うまでには、時間もかかります。地域に根ざす事業に、回り道はつきものなんですね。いっぽうで、たしかな手応えを感じることもできます。それは一過性のスタイルではなく、長い関係を育んでいけるものだと思います。」
その言葉が力強く感じられるのは、実績も生み出していることが大きい。
1994年。5棟のロッジからオープンした「スウィートグラス」。
軽井沢から峠を越えて、30分。アクセスはけっしてよくない。訪れるお客さんもなく、じりじりする時期が長く続いたという。
現在では過去6年間で4度、ユーザー投票による日本一のオートキャンプ場に輝いている。

「ここにしかない魅力をつくりだそう。距離を越えて、お客さんが来たくなる場にしよう。魅力を掘り出し、事業を立上げ、一つひとつ磨いてきました。色々なことがありました。太陽や風向きを考えて建物をつくること。植物を育てること、訪れた人への接し方、広報… 」
そこで両輪を担ったのが、場をつくりあげる現場マネージャーと、魅力を伝えるクリエイターの連携だった。

「23歳のときでした。必要なことはわかったけれど、まったく知識も経験もなかったんですよ(笑)。知人を頼り、東京のシステム会社に弟子入りをします。」
現在福嶋さんの仕事は、きたもっくの活動を発信するクリエイティブへと広がっています。
「日々の季節のうつろい、木々のさざめき、肌をなでる風の感触。そして、毎日ご飯を食べる。ここにいること、ここに生きることを自分の五感で受けて。感じたことをそのまま切り取り、WEBや紙に表現する。本能的な仕事だと思います。」
今回は、コーディングやデザインにおける基礎がある上で、表現に飢えている。そんな方に来ていただきたい。
「自然を読む感性と、形に落とし込んでいく表現力。その両方が大切になります。はじめは、拙い表現でもいいんです。めいいっぱい感じて、表現してほしいんです。」
仕事の一例として「ツリーハウスの世界」を見せていただく。
これは、スウィートグラスに誕生したツリーハウスを紹介するWEBページ。

「デザインやコーディングにおける最新の技術をつねに求めていきたい人には合わないかもしれません。」
「一人ひとりが、デザイナーでありコーダーであり、ディレクターです。どう伝えたらよいか。どんな素材が必要か。考えることからが仕事です。小道具のDIYからはじめる場合も、プロのカメラマンに依頼するときもあります。」
制作への反響が、電話や生の声として、かえってくることもある。
「まずは現場のスタッフが、宿泊施設やツリーハウスをつくりあげていく。次にその思いを汲みつつ、表現していく。スタッフ間で生まれた熱は、お客さんにも届きます。」
共感して働く仲間も増えてきました。
現在は、通年雇用のスタッフだけでも30人。半分は県外からやってきた方だという。
続けて、話をうかがったのは嶋村さん。
ルオムの森の“顔”として現場を切り盛りする方です。

ゴールデンウィークを皮切りに、夏場は家族連れを中心とするお客さんの対応やイベントの企画・運営に明け暮れる。紅葉が終わると一段落。
取材当日は、11月末の連休明け。小雨の続く日でした。
静かな時間を求めて、こんな日に訪れる地元の方もいるという。
「北軽井沢は土地の歴史が新しいので、人がフレンドリーで温かいんです。家族っぽい。ここは、北軽井沢の暮らしを体現する場です。これからの季節にこそ、訪れてほしいんです。」
「一人ひとりのお客さんと話して、料理の希望にこたえることもあります。」
温かさは、働く人同士のやりとりからも聞きとれました。

それでも、通年で営業をするという。
「暮らしは、一年を通して営むものですよね。むしろ、わたしは冬が一番好きだったりします。雪一面の森の中にぽつん、と洋館がたたずんで。時間の流れ方。窓の外には、動物の姿が見えることもあります。すばらしいですよ… もしよければ、一度来てみてください。」
嶋村さんは、北軽井沢の位置する長野原町の出身。
もともと接客が好きだったという。県内の体験型施設、ウエディングプランナーを経て、きたもっくへ。
4年の間に、仕事の幅はどんどん変わり、広がっていった。
カフェスタッフとして働きはじめた1年後。ルオムの森では、BBQレストラン、軽食コーナー、ショップ、レストランと4つの事業を立ち上げることに。
嶋村さんはBBQレストラン「あさまグリル」を立上げから任されます。
「もともと飲食がやりたくて入ったので(笑)、戸惑いました。けれど次第に楽しくなってきたんです。」
「仕事は設計からはじまりました。テラスのデッキ、テーブル、机。すべてつくったんです。スウィートグラスにいる大工さんに、木材のカットをお願いして。オープンまでは、大変でしたね。雪の降る中、何十脚も組み立て、インパクトで打ちつけ、塗装。気づけば、できることもずいぶんと増えていました。」

北軽井沢は、海の幸以外は揃う食材が豊富なところ。
「地の野菜を楽しんでもらおうとはじめたのが、バーニャカウダ。ソースにつかう味噌やトウモロコシは、スタッフが家でつくったもの。ハーブも、森のガーデンで育てています。地元の肉屋さんに特注のソーセージもつくってもらっていますよ。」

「飲食も好き、ものづくりも、アドベンチャーもあります。北軽マルシェというイベントを企画からすすめることもあります。限られた1日という時間の中で、あれもこれも。色々やりたい方にこそ来てほしいです。」
「それから。わたし、ここにきて内面から変わったと思います。仕事の幅が広がっただけでなく、生活との重なりも増えてきました。」
北軽井沢では、厳しい自然があるからこそ、春に輝くような新緑が見られます。
人にも、同じことがいえると思います。
(2015/2/2 大越元)