※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。
倉庫にうずたかく積まれたアンティーク家具の在庫。工房では職人たちがリメイクに励む。その隣には、言葉をひねり出すライターの姿。株式会社ライジングプレナーはアンティーク家具の仕入れからリメイク、国内最大級のネットショップ「ラフジュ工房」での販売、そして「RAFUJU ROOM」や「RAFUJU MAG」でのコーディネート・記事提案まで一貫して手がける会社です。
北欧ビンテージのダイニングチェア、鉄脚のついた民芸箪笥、ペイントを施してよみがえったガラスケース。さらには、照明やマグカップまで。
その時代ならではの魅力を活かしつつ、現代の暮らしに合わせたリペア・リメイクを施しています。
今回はショップの広報を担うインテリアコーディネーターとライターを募集します。経験は問わないとのこと。
より多くの人に取り入れてもらうよう、写真と文章を通して、暮らしをまるごと提案していく仕事です。
最寄りの常陸大宮駅からタクシーに乗って10分弱。
駅前の商店街を抜けると、里山の見渡せる景色が広がります。
ライジングプレナーに到着すると、代表の岩間さんが家具の溶接を行っていました。
「もともとインテリアが好きだったんです。骨董屋さんをまわって、箪笥を買ったのがきっかけです。はじめは一人で、実家の裏で作業をしていました。仕事が増える中で、人を雇うようになりました。」
それから7年。いまでは30人が働いています。
スタッフのみなさんは20代を中心に、女性の姿が目立ちます。
「ほとんどが市外出身者なんです。いまでは県外からも6人が集まってきましたね。」
働く方の経歴も人それぞれです。
昨年、日本仕事百貨を通じて2人の方が入社しました。
女性の関口さんは長年海外で生活してきた方。カナダで美術を学び、テキスタイル関係のお仕事をされてきました。現在は、インテリアコーディネーターとして活躍しています。
男性の中村さんは都内の建築事務所を経て、自らものづくりをしたいと職人の道へ。
「はじめは不安もあったけれど、来てみたら何とかなりました(笑)。」
住まいはマンションを借り、日常の買い物は駅前の商店街で間に合うとのこと。
ライジングプレナーの特徴は、倉庫や工房、それに広報を行う事務所すべてが同じ敷地内にあること。
お昼休みは和気あいあいと話しつつ、休憩が終わると各々が仕事に打ち込む。会社として働く環境を整え、7時にはほとんどのスタッフが帰宅しているという。メリハリある働き方が伝わってきました。
今回の募集について、代表の岩間さんはこう話します。
「アンティーク家具を暮らしに取り入れる提案の仕事です。今後、新たなサイトも立ち上げるなかでの求人です。」
「現時点での資格や経験は問わないので、気軽に応募してください。このあとは、広報チームの2人に任せます。よいところだけでなく、大変なところも聞いてあげてください。」
そう言って、早々に席を譲った岩間さん。
入れ替わりに話をうかがったのは、インテリアコーディネーターの笠原さん。
2年前、仕上げのワックス塗りを担当するパートとして働きはじめました。
「もともとインテリアが好きでした。子どもを出産後、設計士さんと打ち合わせながら、自分の家を建てて。その後は、趣味でガーデニングやインテリアをやれたらいいかな、と思ったんです。でもどうせ働くのなら、好きなことを仕事にしたい。そう思ったときにライジングプレナーを見つけたんです。」
家づくりの経験を買われてRAFUJU ROOMのコーディネーターになった笠原さん。
現在は正社員として働き、家事との両立に追われる日々。
「時間が足りなくて。家で料理しながらも、家具のことを考えたり(笑)。それぐらい楽しいんです。」
会社としても、残業なく働けるように配慮したそうだ。
笠原さんは、「寒い季節もほっこり過ごせるダイニングと、ずっと使える子ども部屋。」というテーマのコーディネートを紹介してくれた。
「上の棚は格子戸、中央にはダイアガラス、そして下の扉には楕円の窓。味とあたたかみのある食器棚が魅力的でした。その佇まいを活かしつつ、食器棚からインテリアを組んでいきました。」
よく見ると、食器棚には脚がついています。
「これ、RAFUJU ROOMから生まれたアイデアなんですよ。工房にお願いしてつくってもらったんです。いまは、フローリングの家が中心ですよね。脚をつけることで、掃除が楽になりました。床暖房のある家でも、熱で家具を傷める心配がありません。」
「ラフジュ工房では、家具本来の美しさを残しつつ、いまの暮らしに合わせたリメイクを心がけています。ルームをはじめたことで、より暮らしの目線に立ったリメイクが考えられるようになりました。」
その他にも、リメイクにより差し替えたダイヤガラス。
コーディーネーターが家具のリメイクを提案することもあるそうだ。
そんな笠原さんは、アンティーク家具で痛い目にあった経験があるそうだ。
「イスを買ったんですが、すぐに背もたれが『バーン!』と外れたんですよ。そのまま後ろに倒れこみ、薪ストーブで足をやけどしてしまいました。それ 以来アンティークは、眺める分には魅力的でも、実用には向かないと思ったんです。同じような思いで敬遠する人も少なくないかもしれません。」
ライジングプレナーの工房を見て、イメージが変わったという。
「イスのがたつき一つまで確かめて直します。その姿を見て、わたし自身納得したんです。働きはじめてから、アンティークの魅力を知りましたね。いままで機会のなかった人にこそ、暮らしの家具として、ぜひつかってほしいんです。」
続けて話をうかがったのは、昨年8月に入社したライターの茶園(ちゃえん)さん。
現在はRAFUJU MAGのライター業務を主に、社内の広報・企画制作を担当している。
前職はグラフィックデザインを中心に、イベント企画など、人と人がつながる場づくりにも取り組んできました。
「もともと興味はありましたが、仕事を通してものづくりをもっと深く知りたいと思うようになったんです。ライターの経験はなかったけれど、思い切って飛び込んでみました。」
はじめは不安もあったという。
家具の魅力を伝えきれているかわからず、記事に自信を持てなかったこともあった。くり返し書く中で、見えてきたという。
「たとえば、イギリスの陶芸家バーナード・リーチが指導にあたった松本民芸家具は、ブランドとしての考えやものづくりへの姿勢がしっかりあります。最初のうちはストーリーばかりを紹介していました。けれど、それだけでは足りないことに気づきました。」
「自分の暮らしに取り入れるイメージを持ってもらうことが大切なんですね。わたしたちが届けたいのは、暮らしの家具です。たとえば、着物を収納するのに使われていた衣装箪笥は、普通に想像してみると洋服ダンスとしてしか使い道がないように思えますよね。でもよく見ると、この衣装箪笥は通常のものよりも深さが浅め。浅めだからこそ広がる活用法は、実際に触れることができる私たちでないと知ることができません。」
家具を紹介する上で、考えることは幅広い。
「たしかな専門性が求められる仕事です。材質から技法、時代背景まで幅広い知識が求められます。わからないことがあれば、とことんまで調べます。工房を訪ねて教えてもらうこともあります。」
記事を届けたい人を想像して、届けることも大切だという。
「『こういう人が共感してくれるんじゃないか』。繰り返し書いていく中で、その家具を求めるお客さんの顔が見えてきます。目の前のお客さんのことを一生懸命考え、家具に向き合い、伝えていく。たとえネットを介したお客様とのつながりであっても、細かいところまで考えを行き届かせるのは、実店舗運営と変わらないと思います。」
お客さんの反応も、ページビューや注文状況などを通して感じられるという。
そして、言葉のトレンドを知ることも大切です。
いまはどんな言葉が求められているのか。どんな検索ワードでラフジュ工房のサイトにたどり着く人がいるのか。自分たちの届けたいものが、現代ではどんな暮らしのシーンで求められることなのかを知るためにも必要なことだという。
「ネット上では和モダン、ナチュラルアンティークなど、色々な言葉が日々生まれています。新しい言葉だからこそ、つかわれ方も様々で、定義がないのも事実。それならば、家具のプロとして、わたしたちが言葉を定義づけていけるようになりたい。
アンティーク家具が、これまでの使われ方を知って頂いた上で、現代の暮らしの家具としてきちんと普及していくように、ラフジュからどんどん伝えていくつもりです。」
ライジングプレナーにおける広報の仕事は、はじまったばかりです。
その可能性は、これから広がっていきます。
コーディネーターの笠原さんは、インテリアコーディネートをお客さま向けのサービスとして展開していきたいと話します。
また、茶園さんは立上げをすすめるサイト「丁寧な暮らし」を紹介してくれました。
「名前の通り、日々の暮らしを少しずつでも大切にしたい女性を対象に考えています。家具を取り入れることで広がっていく暮らしを、お客さんの隣に立つような気持ちで伝えていけたら。もっと身近な存在になりたいんです。」
二人から、一緒に働く人に伝えたいことがあります。
「インテリア、つくること、表現すること。どれか一つでも好きなことがあれば、あらゆる表現方法で実現していけると思います。扱う家具は、年代も国も幅広くデザインも様々。ほんとうに色々な暮らしを描くことができます。」
これまで家具・インテリアに深く触れる環境がなく、きっかけがなかった人にこそ来てほしいという。
「働きながら、どんどん吸収していけます。コーディネーターであれば、まずは雑貨を飾るところからはじまり、ルーム全体のコーディネートをどんどんお任せしていきます。情熱を持っている人たちと働いてみてほしい。一緒に頑張っていきましょう。」
話を終えてスタジオをのぞくと、笠原さんがコーディネートを組んでいました。
マグカップを入れ替え、電球の高さを調節して、絵を飾るためドリルで壁に穴を開けて。その姿はひたむきでした。
家具を語る上で欠かすことのできない“民芸”という言葉があります。
名もない職人たちがつくり、暮らしに根ざしてきた日用品に光をあて、“用の美”を見出そう。柳宗悦がそう唱えたのは大正時代のこと。
いまここに暮らし働くことから、あらたな言葉やデザインが生まれるかもしれない。そんな可能性を、ライジングプレナーに感じました。
(2015/3/27 大越はじめ)