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ゼロから始める木工家具職人

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

「経験があってやる気がないよりは、やる気のあるド素人のほうがいいですね。木やものづくりが好きであれば大丈夫。ただ、職人になるには最低でも3年はかかりますよ」

日本で一番広い村の中にある、小さな木工家具製作の工場。現在、村に2人しかいない木工家具職人ですが、3人目の職人候補として、見習いとして働く方を募集します。

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工場があるのは、源泉かけ流しの温泉や、世界遺産である熊野古道があることで、年間70万人程の観光客が毎年訪れるという奈良県の十津川村

この村では、村の文化や産業を盛り上げていくために、村役場が職人見習いを支援するというチャレンジを始めている。前回の和菓子職人への弟子入りに引き続き、今回は木工家具職人への弟子入りです。

まずはこの取組を担当してきたという、村役場の吉本 (よしもと)さんにお話を伺いました。

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「十津川村は、面積の96%が森林で、資源が豊富にある。この森林から切り出された材木を使って、家具や木工品を製作していけないかと思っているんです」

林業の六次産業化に取り組んでいく木工家具協議会の活動が始まったのが4年前。

これまで家具職人さんたちはそれぞれ自分の工房で製作を進めていましたが、今年から協議会の工場に製作用機械も揃い、みんなで製作していける体制ができてきたそうです。

「村の資源である木材の利活用を通じて、雇用をつくっていきたいというのが村の願いです。いま、村で林業関係の仕事をしている人が70~80人います。あと、村の高校の工芸コースには、木材加工を学んでいる生徒たちがいる」

「そうした若い人たちが、いずれ山仕事や製材加工、そして家具製作など木に関われる仕事についてくれるといいなと思っていますね。この林業の取組がうまくいけば、彼らの就職先の1つの選択肢になっていくと思うんです」

これは、展示会のときの写真。日本を代表する家具デザイナーの岩倉榮利さんとコラボレーションしているという家具が並んでいます。デザインを岩倉さんが行い、製作をこの協議会で行うという形で、タッグを組んでいるそうです。

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「これまでは、公営住宅や学校など村の中で使う家具の製作の依頼が多かったんです。今はだんだんと村の外からのご依頼も増えていて、自分たちでデザイン提案することも積極的にすすめているので、今年は大きく前進できると思っています」

見習い期間は、覚えが早ければ今年度いっぱいかもしれないし、もう少し訓練期間が必要であれば見習いを1年延長するなど、スキルの習得具合によって変わってくるそう。

期間終了後は、その人が将来どういう方向性を目指していくかによっても変わりますが、職人さんの工房や協議会に就職する形もあるかもしれないし、自立して自分のブランドを持っていくという形もありえるそう。

また、見習い期間は村の臨時職員という立場になり、住宅は村から提供され家賃は免除。2DKほどの物件で、スーパーやコンビニへは車で1時間程かかるけれど、とても静かな場所にある。

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「道普請(みちぶしん)といって、住民が共同で使う道の手入れなどをする機会が、年に1回あります。そうした地域の草刈りやお祭りなどにも顔を出してくれるとうれしいですね。若い人が来てくれることは村人も歓迎しているので、近所の人もこころよく受け入れてくれると思います」

村として、今後はどういったことをしていきたいですか。

「最終的には、営業展開をもっと自分たちでやっていけるようになるといいですね。現段階では、職人さんが営業マンも兼ねてくれて、事務局を助けてくれているんです。そうした部分にも力をいれて、ひとりでも多くの仲間を育てられるようサポートしていくのが、村の責任かなと思っています」

「今回応募してくれる人に対しても、最初は職人候補として指導していくけれど、最終的には事業パートナーのような形になってもらいたいなと思っています。自立をめざして腕を磨いて、一緒に村の木工家具産業を支えていってくれる人になってほしいですね」

協議会に所属している職人のひとりである岡(おか)さんにも話を聞いてみました。33歳のときにUターンしてきた方で、今回募集する職人候補者は岡さんのもとで修行することになります。

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「高校まで十津川にいたんですが、なにかものづくりの仕事はないかなと探したら、九州で家具職人の募集があって。手に職を付けたかったんで修行に行ったら、つくることにはまってしまったんです」

「その後、奈良でB’styleという自分のブランドをはじめて、こちらに帰ってきたのが2年半前ですね。大きなきっかけは特にないんだけど、自分の根がここにあったのかな」

家具づくりでは主にスギ材を使っている。十津川には良質なスギが揃っているが、柔らかくて傷が付きやすい素材でもあるため、制作には工夫を重ねているそう。

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「奈良にいるときは、堅さがある広葉樹の材を使っていたんです。十津川に来てからは、使う木材は全部スギやヒノキに変えました。柔らかい木材だから、以前とはつくり方も変わりますね。太い材木を使うなどして強度を持たせる必要があるけど、デザイン的な考慮も必要になるから、そこをどう工夫していくかだなあと」

注文にあわせたオーダーメイド家具をつくれるのが、ここの協議会の強みだそうで、十津川村のホテル・昴(すばる)のロビーにも、岩倉さんがデザインして岡さんたちが製作した家具が使われている。重心が低めにつくられているため、頑丈そうだが、圧迫感を感じさせないデザインだ。

「地域おこしの一環として、家具づくりに取り組んでいる地域は、全国に結構あると思います。同じコンセプトでやっていても共倒れしてしまうので、ターゲットを絞って、クオリティの高いものを製作していく。安さで競っていくのではなくて、品質のいいものをつくってブランドで勝負していきたいんです」

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今回の募集は、木工や家具の製作経験がなくても大丈夫とのこと。求められているのは、経験よりもやる気。

小さな工場のため、ライン作業で役割分担して進めるるのでなく、ひとりでひとつの家具を組み立てていくのも、ここの特徴だ。自分で家具製作の全行程が身につくように指導を受けられる。

「1番最初は、板の接ぎ(はぎ)という作業から行います。板と板をくっつけて磨いていくんですが、どのくらいで覚えられるかは、人によって違います。形が決まっている商品をある程度つくるまでに、1年くらいかなあ。だからものづくりが好きで、コツコツやれる人がいいですね」

行政との調整やマネジメントなど、協議会の事務局を担っている向井(むかい)さんにもお話を聞いてみました。

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「今はもう退職しましたが、もともと十津川高校の校長だったんです。村として林業の六次産業化に力を入れていこうという動きもあったので、普通科だった学校に、工芸コースという木工や美術、村の林業について学ぶコースをつくりました。その卒業生が働いていけるような場所をつくろうと、今はボランティアで事務局を担っています。村の若い人材と協議会や行政の動きをつなげていくのが、自分の仕事です」

現在は週1、2回ほど、高校の工芸コースに教えに行っているそう。将来的には、工芸コースの学生の実習をこの工場で行いながら、職人さんたちとの交流を深めつつ、木工・家具製作の現場に直接触れていけるような形にしたいそうだ。

向井さんに、工場のまわりを案内してもらいました。

「工場も、傷んだ箇所を自分たちで修繕しながら使っているんですが、まだまだ改築するところがたくさんあります。工場の隣のこの建物は、将来的にはカフェを併設したショールームや事務所をつくっていきたい。新しく来た方には、修繕を一緒に手伝ってもらうこともあると思います」

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併設するカフェには、村に観光に訪れる人や村の人が気軽に立ち寄って行けるスペースにしていきたいという。

「この場所でそういった将来を一緒に計画し、一緒に育っていける仲間として、村に来てくれたらなと思っているんですね。指示されたことをやるだけじゃなくて、こういうものをつくったらいいんじゃないかとか、こういう方向性がいいんじゃないかとか、アイデアをどんどん出していってほしいです」

今後はどういうふうにしていきたいと考えているんですか。

「営業面を充実させていきたいと思っています。イベントや展示会に出品したり、ホームページに掲載したり、十津川村の木工家具を知っていただく努力をしていかないといけないなと。現在は受注でつくっている商品も多いですが、ゆくゆくは協議会のブランドや職人さんそれぞれのブランドを育て、販売していきたいですね」

職人候補として村にくる人には、本当に工場の立ち上げ段階からかかわってもらう形になりますね。

「大変だけれど、一緒に夢を描いて実現していくというなかなかできない経験なんじゃないかなと思います。ゆくゆくは、協議会を盛り上げることに加えて、自分でもブランドを持って、つくりたいものをつくっていってほしいですね。それが村を盛り上げていくことにつながっていくかなと」

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まだまだ改修中のスペースも多く、まさに今始まったばかりの工場。どんなふうに広がっていくかははじまってみないとわかりません。

言われたことだけする、というようなイメージだと、とても大変だと思います。

でも、ゼロから一緒に創り上げていくのが好きな人、ものづくりが好きな人にとっては、またとないチャンスかもしれません。お給料も決して高くはないけれど、そういった人にとっては、修行しながら活動支援金をもらうと捉えることもできるかもしれない。

村で暮らしながら、「どんな工場にしようかな?」と、DIY精神を持ってはたらける人におすすめです。

(2015/6/11 田村真菜)