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天然水と天然由来の原材料でつくられたオーガニックコーラ、ナポリ近郊の小さな町の3代続く菓子職人さんがつくるトローニ(チョコレート菓子)、アルプスの麓でつくられた自家製レシピのジャムやケチャップ…素直に食べたいと思えるもの。いいなと思えるデザイン。こういう存在が生活のなかにあったらいいな、と自然と手にとってしまうもの。

ご夫婦+2名のちいさな会社です。
ここで、5人目のメンバーとして、あらゆることを一緒にやっていく人を募集します。
仕事内容は、業務全体の仕組みづくりから、扱う商品を探して、日本に展開する方法を商品企画や広報もふくめて考えていくところまで。
興味があれば続きを読んでみてください。
東京から静岡まで新幹線で1時間半。北口を出て大通りを進んでいく。
静岡駅を中心にオフィスビルや主要機関の集まる市街地が広がり、その中心地にほど近い場所に、イタリア語で”たくさんのキス”という意味の「バーチ」株式会社のオフィスがある。
道の先に静鉄清水線の線路と駅も見えるアクセスの良い場所。
訪ねると、そこにはまるで輸入雑貨のお店のような空間が広がっていた。

カジュアルなTシャツを着た代表の藤田さんが迎えてくれた。真っ赤なメガネがよく似合っている。

「人数も少ないので、お客さんの問い合わせや注文に応えることに加えて、仕入れたものを責任持って販売する、デザインや文章などの伝え方を考えるなど、ほんとうになんでもやってもらうことになると思います。だから、バーチが扱う商品だけではなく、デザインやアートなどいろいろなことに関心がある人に来て欲しいと思っています」
お客さんの問い合わせや注文に応える日々の仕事に、自分なりの「+α」をつくっていける人が求められているのかもしれない。
藤田さんが、バーチで扱っている商品をひとつ紹介してくれた。

「健康食品ってなんか堅苦しいな、と僕は思っていて」
堅苦しい。
「はい。僕、静岡に来る前はイタリアに住んでいたんですね。イタリアでは、けっこうオーガニックの食品は認知されているんです。どこにいってもふつうにある。でも、日本に帰ってきて、そんなふうに『ふつう』の買い物をしようとしても、できないんです。自然食品のお店はあるけれど、なんか違う。堅いというか厳格というか、近寄りがたい感じがしました」
「日本では、『ふつう』のものが『ふつう』に手に入らなかったんです」
「体にいいから食べなさい」ではなく、なんとなく惹かれて手にとってみたら実はオーガニックだった。そんな自然な感覚で出会えるような、身近なオーガニックがあればいいのに。
それが、藤田さんがこの仕事をはじめるきっかけだった。

ずっと貿易の仕事を経験していたとはいえ、食品を扱うのは初めて。知識や経験はほぼない状態で、手探りのままスタートすることになった。
「一番最初に扱うことになったのが、さっきのコーラなんです。商品をつくっているメーカーに、なんの実績もないのに『僕たちに日本の代理店をやらせてください』と掛け合いました。それでもなんとか承諾をもらうことができて、専売で代理店をやらせてもらうことになりました。それなら『えいやー』と思い切ってコンテナで2万本購入したんです」
2万本仕入れたはいいけれど、その時点では、売り先はひとつも決まっていなかった。営業の電話をかけてもほとんど相手にされない。
そんなとき、藤田さんのもとに思いがけない電話がかかってくる。
「THE CONRAN SHOPのバイヤーさんから『ぜひ商品を扱いたい』と電話があったんです。それまで、僕は自然食品の店を中心に営業をしていたのですが、インテリアショップから連絡が来たので、えー!とびっくりして。THE CONRAN SHOPは、東京では新宿や丸の内にお店があって情報発信力も影響力も強いんですね。そこからどんどん、広がっていったんです」
食品を扱う会社なのに、いちばん最初のお客さんがインテリアショップだったというところが面白い。
THE CONRAN SHOPをきっかけに、インテリアや雑貨を扱うライフスタイルストアからの問い合わせが増えてきた。
いまは、オーガニックショップ、ホテル、レストラン、コスメショップ、ヘアサロン、キャンプ場というように、取引先も幅広い。

扱う商品は、どんなふうに選んでいるんですか?
「人の紹介であったり、自分でインターネットで調べたり展示会に行ったり、いろいろですね。それから、イタリアだけではなく海外旅行に行ったら必ず現地のスーパーマーケットに行くようにしています」
「たとえば、バーチの人気商品のひとつ『TorroniBaci(トローニバーチ)』のチョコレートは、友達の駐在員の奥様が、日本に帰るときに必ずお土産に買うチョコレートだったんです。いただいて食べてみたらすごく美味しくて。それに、名前が社名と同じバーチだったし、なにかいい予感がして」

「そんなふうに、小規模ながら良質なものをつくっている方の商品を売りたいと思って。効率的ではないしリスクもあるのですが、そのぶんやりがいもある。メーカーだけではなくお客さんとのやり取りもあって、こういうものが欲しかったんです!という声を聞くと、やっぱりうれしいですね」
藤田さんに話を聞いたあと、実際にここで働くスタッフの方にも話を聞いてみた。
「ふだん、あまり勘で動くタイプではないので、今までこんなに『ここで働きたい!』と思える会社はなかったんです」

この仕事は、ぐうぜん求人広告で見つけたそうだ。
「以前はフォークリフトを扱う会社で働いていたのですが、次は自分が好きなものを扱っている会社で働きたいと思っていたんです。わたし、食べることが大好きで、自分が好きなものを人に勧めるのも大好きなんですね。バーチが扱っている商品は、自分が食べてみたいと思えるものばかりだったんです」
働いてみて、どうでしたか?
「働く前から事前に忙しいと聞いていたので覚悟はしていましたが、実際は想像の10倍くらい忙しかったです。ちいさな会社だから、自分の役割だけではなくなんでもやらないといけないんです」
なんでも。
「はい。たとえば、商品が海外から船で届いて倉庫に入るので、それをお客さんに届けるために出荷作業をするのもわたしたちの仕事です。並行して、お客さんからの問い合わせがあるのでそれに対応したり。欠品があったりすると、そのフォローもあるのでイレギュラーな仕事も増えます」
欠品が出てしまったときは、何度もやりとりをしたり、お客さんからクレームを受けることもある。
「お客さんも困っていて、ぶつけるところがなくて仕方なく声を荒げてしまうのだと思います。そういうときは大変だなと感じますが、決して仕事を辞めたいとは思わないんです。それよりも、終わったときの達成感のほうが大きい。それに、職場のみんなの距離が近いので、今日はこんなことがあった、と言えば気持ちを共有できるんです」
そうした日々の仕事に加えて、新しい商品が入るとみんなで試食会をして意見を言い合ったりもする。
「少ない人数だから大変なこともあるけど、そのぶん自分が関われる範囲が広いのは楽しいですね」
白鳥さんの隣でうなずきながら話を聞いていた市川さんも、話に加わってくれた。

市川さんは静岡出身で、ここで働く前は名古屋の輸入会社で働いていたそうだ。ところが家族が体調を崩してしまい、Uターンを考えたときにこの仕事をみつけた。
いまは働いて数ヶ月になるそうだ。
「最初は、人数が少ないので相性が合わなかったら大変だろうな、と思っていました。でも、面接のときに、どんなことが好きなのかとか、趣味や食べ物の話をじっくりとすることができたんです。この会社なら大丈夫だな、と安心できました」
「お客さんも、バーチの扱う商品が好きだから問い合わせをくれるのだと思うので、わたしたちも、もっとていねいに返していきたいなと思います。そういった部分を一緒につくってくれる人にきてほしいです」

「僕たちが売っているのは、食品ではなく、ライフスタイルだと思うんです。僕も、食べ物だけではなく、環境やデザイン、アート、いろいろなことに興味がある。すべてつながっているんです。だから、働く人もいろいろな部分に興味を持ってもらえたらいいな。ルーティンワークではなく、アイデアを出しながら自分の考えで仕事を進めていきたい人にきてほしいです」

自分の関わり方がなにか想像できたら、ぜひ連絡をとってみてください。
(2015/08/16 笠原名々子)