求人 NEW

より小豆島らしく

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

海辺を歩いていると、あたたかい海風が吹いてくる。遠くに見えるのは、重なり合うように浮かぶ島々。

ここで暮らせたら幸せだろうな。訪れるたびに思うくらい、瀬戸内地域がすごく好き。

今回の舞台は、そんな瀬戸内海に浮かぶ島のひとつ、小豆島です。

shimayadomari01 400年の伝統をもつ手延べ素麺や醤油、そしてオリーブなどの食品産業が盛んな島。

「二十四の瞳」や「八日目の蝉」など、映画やドラマの舞台としても知られ、瀬戸内国際芸術祭の会場のひとつになったことから、毎年約100万人もの観光客が訪れます。

本州や四国からのアクセスがよく、学校や病院などのインフラも十分に整っていて、移住するのにはハードルがとても低い地域。家族連れを中心に毎年約150人の移住者がやってくるそうです。

shimayadomari02 そんな小豆島に、島宿真里という宿があります。

それぞれ趣の異なる7つのお部屋。自分たちで育てた季節の野菜や地元の魚を、島の特産品である醤油ともろみで仕上げた「醤油会席」。都会にはない、この島ならではのサービスを追求しています。

今年で15周年を迎える真里は、より深い“小豆島らしさ”を求めて新たなるステージへ向かおうとしています。

「この宿ができて15年ぐらい。お客さんの評価をいただけて安定できるようになったというところですね。ただ、これからこの宿一軒でできることが非常に少なくなっていて、もっと広がり持たせるかなあと思いながらも、どうしてもできない。四苦八苦しとるのが、現状なんですね」

そう正直に話してくれたのは、真里の店主である眞渡さん。

お母さまが切り盛りしていた民宿を引き継ぎ、真里を先頭に立ってつくりあげてきた方です。

shimayadomari03 なかなか宿に広がりを持てない理由のひとつに「人の問題があった」と眞渡さん。

お客さまに対してより小豆島らしい魅力を味わってもらおうと、これまではお客さんを一番に考え、スタッフのことは二の次になっていたそう。

「より喜んでもらえる宿」であるために、一つひとつの所作にも厳しさがある。仕事の忙しさや移住の不慣れさも相まって、入社1年もたたずに去っていく人が少なくなかったという

「でも、いまは働く人を一番に考えて、その次に働く人の家族、そのあとにお客さんだと。ここで働く人が幸せだと感じられる会社なのかっていうことを、いま一度考え直さなあかんと思っています。それは、僕が十数年間宿づくりをやってきて、この歳になってやっと考えはじめたことで」

働く上での基盤づくりやお互いの考え方について、もう一度話し合う必要がある。

そう感じた眞渡さんは、今年から月に一度の勉強会を開いている。仕事について学べる場であると同時に、眞渡さんやスタッフ同士とのコミュニケーションを深める場にもなっているという。

「これまで、この子はあかんかなあと思っとった社員が変わりはじめている。その子は言葉が汚いし、若い子に対して言葉がきつかったから『その人が嫌だ』言うて辞めた人もおったんです。それを勉強会で『これまでを反省して、変わっていきたい』と社員全員の前で話してくれて。それをみんなが評価して、その子も見事に変わってきたんです」

「いまは、そういう空気感が出はじめたところで。島らしさについても、僕だけではなくて、働くみんなと一緒に掘り下げていこうと思っています」

shimayadomari04 いままで続けてきたことを整える一方で、新たに打ち出していくことも。

眞渡さんは、真里とは別の新しい宿を計画しているという。

「これまで僕は地域のことをあまり考えてなかった。真里に泊まりたいから小豆島に来るってくらい、宿の力があればええと思っていたんですよ。ところが、いろんな人と出会ったり学ぶなかで、地域との関わりをもっと持たなあかんと。宿だけがよくなってもだめやと」

そのひとつに、地元住民の雇用を検討しているという。小豆島はほかの地域に比べて障がい者の方が多いけれど、雇用されている人は少ないそう。

また、これからは高齢のお客さまが増えてくる。新しい宿をバリアフリーにして、スタッフにもそういった方々の気持ちがわかる人に働いてもらうことで、優しい宿づくりをしていく。

地域との関わりとして、もうひとつ計画していることがあるという。それは漁協と協力して、獲れた魚の加工販売を新しい宿で行なうということ。

「小豆島の相場が安いおかげで、島で獲れた魚の6割は島外の市場に出るわけです。ものが悪いのは島に残って、いいものは外に出て、高い値段になってまたこっちに戻ってくるんですよ。小豆島の魚であるにもかかわらず、高松産とか岡山産になってしまう。いい循環ではないんです」

Exif_JPEG_PICTURE 「新しい宿は海の目の前。四国が見えて、海と山と空しか見えないロケーション。そこに生けすをつくろうと、漁協の方々と話しています。漁師さんが獲った魚を入れてくれたら、一定の相場を出しますと。魚はうちの宿だけのものにせず、僕の友だちのお店でも使えるようにする。そうしながら、雇った地元の人たちが余った魚をそこで加工するんです」

「海のファクトリーみたいな感じですよね。ものづくりのゾーンがあって、宿のなかにも過ごすゾーンと食事ができるゾーンがある。見ることも、買うことも、一緒につくることもできる。そういう循環にならんかなと」

加工してつくるのは、もちろん小豆島らしいもの。通販も行なうことで、小豆島の味わいを全国に届けようと考えている。

ものづくりや人づくり、地域に対してできること。これから新しくスタートを切ることで、より島らしさが深まり、島宿真里の魅力につながっていく。

この過渡期に加わる人は、会社づくりに参加する姿勢が求められると思う。

「島が好きな人に来てもらうのはいいけど、仕事に対しての重みをしっかりもっとってほしいですね。ただ、そればかり考えたらしんどいから、仕事もプライベートもひっくるめて、島暮らしを楽しめる人だといいです」

shimayadomari06 「暮らしを丁寧に」とか「ゆったりと過ごす」というよりも、島暮らしを思いっきり楽しむ。そんな人のほうが、ここでの暮らしに合っているんじゃないか。

スタッフの中野さんの話を聞いていて、そんなことを感じました。

「休日ですか?あんまり島から出ないなあ。産地直売所に行ったりするのが楽しいです(笑)。つくり手さんがすごく近くにいるから、顔の見えるものを食べたりするのが贅沢だなあって」

shimayadomari07 中野さんはスタッフの中でも一番のベテラン。10年前に岡山から移住し、真里で働いている。

「棚田に水が敷かれた季節にはドライブしにいったり、お店が新しくできたら行ってみたりして。だいたい一通り島を周ったけど、また行くと新しい発見があるんです」

「そういうのって、ここに住まなきゃ得られないものかなって。受け売りじゃなくて、自分がいいなと思ったことをお客さんに伝えたい。旬のものを食べて季節を感じたりすることで、相手にも伝わるのかなと思っていて」

Exif_JPEG_PICTURE 宿での仕事は、部屋の掃除に料理の配膳、予約受付などさまざま。

少人数の宿だからこそ、接客のほかにも様々な仕事を担うことになるけれど、中心となる仕事は生活にも活きることだという。

布団を敷いたり、アイロンしたり、お茶を出したり。真里の仕事一つひとつが自分の生活を見直すきっかけになるし、島での生活や遊びで感じたことが真里の仕事で活きてくる。

そんなふうに「島で暮らしながら仕事をするっていうのが面白くて」と中野さん。

「ただ丁寧な暮らしとか、島暮らしだけに憧れて来ると、大変だと思う。やっぱり宿の仕事は一日が長いし、移住者同士の集まりがあっても土日が仕事で参加できなかったりするから、寂しさを感じるかもしれない。はじめの1年はいろいろつらいことがあるかもしれないけど、踏ん張れば必ず先が見えてくるって知っておいてほしいです」

shimayadomari09 最後に、今年の春から新卒で入社したふたりを紹介します。

写真左から、祖母井さんと河原さんです。

祖母井さんは経済学を、河原さんは栄養学を大学で学んでいたそう。

ふたりとも接客の仕事を探すなかで、真里に出会ったといいます。

shimayadomari10 入社して間もないふたりに、小豆島の印象について聞いてみる。

「初対面なのに親しくしていただいて、人と人の距離がすごく近いです。このあたりでも『真里に新しい子が入ったらしい』ってすぐに広まったらしくて、スーパーに行くと『真里の子やろ?』って言われて(笑)。そういうのはうれしいですね、ちょっとした有名人みたいで」

ふたりは休日も一緒に出かけたりして、山も海も楽しんでいる様子。小豆島の暮らしを「いいとこどりみたい」と話していた。

仕事をしてみて、どうですか?

「はじめの2ヶ月が本当に覚えることだらけで。ものの配置や並べ方、それが部屋によって違うので大変でした。いまようやく少しは慣れてきたところで、まだわからない部分も多いですけど。ここからがまたスタートだと思っています」

これから加わる人は、どんな人がいいですか?

「掃除からご飯を運ぶこと、衣食住に関わることすべてをやることになるので、なんでもやりたいっていう人がいいんじゃないかなと思います。社長は『やりたいことがあったら、言ってね』って感じ」

shimayadomari11 英語が得意な祖母井さんは宿の案内文の英訳作業に、製菓栄養士の資格を持つ河原さんはお茶菓子づくりに携わっている。

受身な働き方ではなく、いかに自分の仕事にしていくかを、得意なことを通じて学んでいる最中だという。

たとえ専門的な能力や資格がなくても大丈夫。大切なのは「なんでもやろうとする意思」だと中野さんは話していた。

それはきっと、ここでの暮らしにも通じることだと思う。自分からどのように地域と関わり、充実させていくか。

まずは小豆島を思いっきり楽しんでほしいです。

暮らしも仕事も楽しむ。その先に、真里の目指す小豆島らしさが見えてくるのだと思います。

(2015/8/27 森田曜光)