※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。
モノをつくる人がいて、それを使う人がいる。使い手がつくり手から直接買うこともあるだろうけれど、ほとんどの場合、その間にはモノを売る人がいます。
この三者の関係って、いったいどういうものでしょうか。
全国各地から“日本のスグレモノ”を集めた、日本百貨店。
ここでは、つくる人と使う人を近づけるばかりでなく、売る人もその輪のなかに入っていきます。
日本各地の職人さんのもとを訪れ、何度もコミュニケーションを重ねながら、どうしたら商品が売れるかをともに考えていく。モノの背景にある想いをお客さんに伝えたり、イベントやワークショップを通じて、モノがつくられる過程の大変さ、感動を一緒に体感する。
そんなふうにして、つくり手や使い手を巻き込んだ輪は、少しずつ広がってきています。
今回募集するのは、販売スタッフ。
舞台は、吉祥寺アトレ内の「Nippon Department Store」、たまプラーザにある「日本百貨店てらす」、そして新たに加わる横浜赤レンガ倉庫の店舗です。
まずは御徒町の「日本百貨店ふるどうぐ」を訪ね、お話を伺いました。
「ふるどうぐ」は、秋葉原と御徒町の間にある高架下の商業施設、2k540内にある店舗。以前から何度か取材で訪ねている本店の、すぐそばに位置している。
ここで最初にお話を伺ったのは、代表の鈴木さん。「最近になって、ようやく落ち着いてきましたね。小売業はぼくにとってはじめてだったので、特にノウハウもないところから5年前に日本百貨店をつくって。新店舗を開いたり、人を増やしたり、ほんとにジタバタしながらやってきたんですが、ようやく全体として小売店らしくなってきたと思います」
前回お話を伺った佃さんをはじめ、腰を据えていろいろなことを語り合える人が増えてきた。さらに、横浜赤レンガ倉庫など大型店舗の出店の話もあがってきた。新しく次のステップへと進むこのタイミングで、今回の募集に至ったという。
「生産者さんにちゃんとお金を回すっていうのは、ぼくらのミッションだと思ってるんです。だとすると、今の規模では足りないんですね。これからは、ある程度の規模のお金を回して、その人たちがいいモノをつくり続けられるような環境をつくりたいんですよ」
根っこの想いは変わらず、むしろそれをしっかりと実現させるため、規模を拡大していきたいと考えているそうだ。
そんななか、少しずつ考え方が変わってきた部分もある。
「『つくっている人のこと大切にして、使う人と出会える場をつくろう』って、はじめはそんなことばかり考えてたんです。けれど最近は、『売る人もその輪に入って、みんな出会えばいいじゃん。ぼくらも出会っちゃおうよ』と思うようになってきてますね」
つくり手や使い手と同じ輪に入って出会う。なんとなくイメージはつくけれど、具体的にはどういうことなのだろう。
実際に、どんな出会いがありましたか。
そう聞いてみると、鈴木さんはすぐそばで話を聞いている石塚さんと間中さんのエピソードを話してくれた。
「この前、石塚と一緒に群馬県の桐生にいきました。そのときに、彼女がつくり手さんたちとたくさん話してくれて、オリジナルのストールのオーダー会をやろうっていう話になったんです。『売れても売れなくても、とにかくやってみよう!』と盛り上がったんですね」
「そこで彼女のすごいところは、自分の店舗だけじゃなくて、他の店舗も巻き込んで、全部のお店でオーダー会を開いたんですよ。言葉にしてしまうとちいさい話かもしれないけれど、着実に一歩ずつ進んでいくのを感じました」
鈴木さんは、さらに続ける。
「間中でいえば、福井の鯖江だったね。よく講演会でお店の話をしにいくんです。彼女はデザインができるので、この間はじめて鯖江についてきてもらって、講演のなかでデザインについて話してもらいました」
「すると、つくり手さんたちから『ああ、そういうことも考えて売ってくれているんだ』という声が聞こえてきたんです。しかも彼女の場合、デザインだけじゃなくお店にも立っているので、どちらの感覚もうまく伝わって、すごくいい感じだったんですよね」
これ以外にも、まだまだエピソードはある。
愛知県で90年近く、剣道や柔道などの道着をつくり続けてきたメーカーさんと一緒に、オリジナルのバッグをつくった話。
コーナー展開しているロンドンに有田焼の商品を卸したところ、その職人さんがとても喜んで連絡してきてくれた話など。
ひとつひとつ詳細に、楽しそうに話してくれるところからも、いい関係が生まれていることがうかがえる。
また、自分たちから足を運ぶだけでなく、つくり手さんから提案をもらったり、実際にお店に足を運んでくれることもあるそうだ。「そういう意味でいうと、ひとつひとつの関係が深くなっているのかもしれないですね。『鈴木さんたちも一生懸命言ってくれるから、じゃあつくってみよう』なんて言って、試作してくれたりもします。そういうふうに応えてくれると、こちらもがんばってもっと売ろう!と思える。その連続ですかね」
お互いに反応が返ってくるということが、自分の仕事をより一層がんばろうと思う原動力になっている。
それは、とても健やかな関わり合いだと感じました。
続けて、鈴木さんの話にもでてきた間中さんにお話を伺います。日本百貨店ではデザイナー兼販売スタッフを担当しています。
間中さんは、高校生のころから志していたグラフィックデザインの仕事を7年半ほど続けたものの、一日中パソコンと向き合うばかりの毎日に行き詰まりを感じて、退職。日本のあちこちを回る旅に出た。その旅のなかで、日本のものづくりに関わる仕事がしたいと思うようになる。そしてたまたま訪れた日本百貨店が、なんとなくピンときたという。
どういうところがピンときたのでしょうか。
「うーん、かっこよすぎないところですかね。いわゆる民芸屋さんや工芸屋さんとは違いますし、雑貨屋さんとも違うんです。背伸びしていない、入りやすい雰囲気が身近に感じました」
そう言われて店内を見回してみると、たしかに、整い過ぎていないというか、親しみやすさを感じるような不揃い感がある。
ポップの文言も短く端的にまとめられていて、商品にそっと添えられているという印象。それだけモノのよさに自信がある、ということなのだろうか。
「それに加えて、みんなが接客を経験するというのが一番大きいかもしれないです。デザインでも、お客さんはどういう情報をほしがってるのか、どうしたらこの商品のことをよりよく伝えられるのか考えるときに、お客さんに接する経験が活きていると思います」
パソコンに向き合っているだけではわからない、生の反応にたくさん触れたことで、デザインの仕事を前よりも面白いと思えるようになったという間中さん。
今では日本百貨店オリジナルの缶バッジをデザインしたり、新たに食品のパッケージデザインを担当することになったりと、挑戦できる幅が徐々に広がってきているという。
これからはたらく人も、まずはお客さんと接するところからはじめることになる。たとえ接客以外でなにかやりたいことがあったとしても、まず接客の仕事をしてみる。そこから自分の領域を広げていくのが、日本百貨店での基本的な考え方。
求められたことをやっていけば、次第に任せてもらえることも多くなっていく環境なのだと思います。
「Nippon Department Store」で店長を務める石塚さんも、そうやって少しずつ自分の領域を広げてきた方。
吉祥寺の商業施設「アトレ」内にある店舗へと場所を移し、お話を伺いました。
こちらのお店は吉祥寺駅からつながっていることもあり、地元の方がよく訪れるそう。「アトレ吉祥寺自体が地元密着の商業施設だから、毎日いらっしゃる方が多いんですよ。毎日のようにみかんのジュースを買って、そこで飲んでいくおばあちゃん。鳥のグッズを買いにくるおじちゃんもいます。ご年配の方が多いので、顔が見えないとちょっと心配になったりもしますね」
鈴木さんの話してくれたエピソードでもそうだったけれど、石塚さんは自然に人との距離を縮めるのがうまいのだと思う。地元の人にもだんだんと認知されてきたので、これからもっと馴染んでいって、愛されるお店にしたいと話してくれた。
ちなみに、普段はどんなお仕事なんでしょう。
「店頭業務が主ですが、商品が入ってくれば検品作業もしますし、それを店頭に出すのに商品棚を変えたりします。2週間ペースで催事があったりするので、その入れ替えの作業をすると同時に、次にどういうイベントをしようか並行して考え、企画も行います。商品の発注も、空き時間を見つけて自分たちでやります」
お客さんと接するだけでなく、裏方の仕事も全部自分たちでやる。前提として求められている仕事の量は、けっこうたくさんありそうだ。大変だけれども、両方やることに意味があるという。
「職人さんの想いを伝えるのもそうですけど、お客さんからこういう要望があったとか、これがよく売れているとか、この間こういう人が買ってくれましたよとか。そういう反応を届けるのも、わたしたちの役割なんです。だから、お互いにとってプラスになる存在でいたいですね」
職人さんのものづくりに対する想いを伝えたら、何度もその商品を買って、「自分の息子を継がせるわ!」と言ってくれたお客さんもいた。
そんな言葉が聞けたら、職人さんも相当うれしいだろうなあ。
ここまでお話を聞いてみて、鈴木さんの言っていた「みんな出会っちゃえばいいじゃん」という言葉がすっと腑に落ちた。つくり手や使い手の仲立ちをして、近づけるだけが売り手の仕事ではない。
同じ輪のなかで、喜びを分かち合ったり、お互いを思いやったり、それに応えるために一段と気合を入れてがんばったりしながら、いい循環をつないでいく仕事なのだと思います。
つないでいくためにはお金を回すことが必要だから、そのバランスをとるために、体力的に大変な面も当然ある。
けれど、この想いに共感して、一緒につないでいきたいと思える人であれば、きっと乗り越えていけるはずです。
最後に、鈴木さんが少し照れくさそうに口にしていた言葉を紹介します。
「月並みな言い方ですけど、一番大事なのは仲間なんです。みんなが楽しそうにはたらいてたら、つくり手さんも輪のなかで楽しくなれるし、お客さんも楽しく買い物してくれるだろうし。悪いことないですよね」
そんな日本百貨店の輪に加わりたいと思った方は、ぜひ応募してみてください。
(2015/10/28 中川晃輔)