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香川を結ぶ

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

2009年、総務省によってはじまった「地域おこし協力隊」。

全国各地の地方自治体が募集を行ない、昨年度では444の地域で約1,500人の隊員が活動。

なかでもめずらしいのが、県に所属する地域おこし協力隊です。

今回は、香川県の地域おこし協力隊を募集します。

市町の壁を越えた県の協力隊として、香川で活動する人同士をつなげるハブのような役割を担います。

話をうかがいに、高松を訪ねました。

 
取材で高松を訪ねることは多く、そのたびにいい街だなと感じる。

温暖な気候で、人も穏やか。ものすごく田舎というわけでもないから、首都圏出身の人でも暮らしやすいと思う。うどんは美味しいし、瀬戸内海ならではの多島美の風景が広がっている。

kagawa01 今回お話をうかがったのは、写真左から香川県庁の廣瀬さんと地域おこし協力隊の秋吉さん。

「よかったら近くの公園で」と、香川県庁から歩いてすぐの公園で話をうかがった。

kagawa02 秋吉さんは前々回の募集で入られた、県ではじめての地域おこし協力隊員。

香川県で活動する各地域の協力隊員をつなげ、ハブとなるような役割を期待されるなか採用された。

もともとは神奈川県小田原市の職員。退職後は1年間フリーとして活動し、地元のクリエイターと一緒にマルシェを開いたり、地域プロモーション映像をつくったりしていたそう。

「いろんなことをやっていると、どんどん小田原の中のことばかりになって、外に出にくくなっちゃったんですよね。生まれも育ちも小田原だったので、実は外のことを全然知らないやって、漠然とした不安があって」

外に出たら自分はどんなことができるんだろう。そう思いはじめたころ、日本仕事百貨で香川県の募集記事を読んだそう。

「もともと、地域で新しいものをつくらなきゃとか、地域が変わらなきゃみたいな機運ってあんまり正しくないなと思っていて。それよりも、地域にあるものをうまく使って生かす活動のほうがカッコイイなと」

「いま地域にいる人たちを繋ぎ合わせて何ができるか考えてほしい、という香川県の募集に共感できたんですよね」

kagawa03 秋吉さんが活動をはじめたのは2015年の8月。

まずは1ヶ月間挨拶回り。県内のさまざまな地域を訪れ、県内にいる18人の協力隊員や地域で活動する人たちに出会った。

おもしろい人たちに会って、繋げて、新しいコミュニティをつくろう。そんなふうに意気込んでいたけれど、さまざまな人と出会うなかで必要なことが見えてきたという。

「地域でがんばっている人たちを取り上げるのもいいんだけど、その隣にいる協力隊が困っていたり、すごく不安げな様子だったんです。協力隊の人たちがイキイキと活動できているのか、疑問に思って」

そこで翌月からは、県内の協力隊を一堂に集める会「さぬきの輪の集い」を定期的に開催。協力隊同士のネットワークづくりをはじめた。

たとえば11月に行った会では、さぬき市で活動している先輩隊員の舟越さんに悩みごとや分からないことを相談できる時間を設けた。

地元の人との付き合い方や、行政の人との協力の仕方はどうしたらいいのか。予算はどう組むのか、3年後の任期終了後を見据えてどのようにビジョンを立てたらよいのかなど、いろんな質問が飛び交ったという。

「協力隊の一番むずかしいところは、メンターがいないこと。とくにミッションが定まっていない地域に入ると、協力隊は自分でやることを選ぶところからはじまる」

「いま自分がやっていることが、はたしてその地域にとって正しいのか、それは誰にも分からない。やり続けていった結果でしか分からないんですよね。それがきっとつらくて、地域の協力隊は自分しかいないって状況だとなおさらですよね」

すごく落ち込んでいたけれど、また明日から頑張れます。そんな感想が会の終わりに配ったアンケートに書かれていたという。

kagawa04 協力隊同士で集まって話していくうちに、地域での共通の困りごとが見えてくる。どうすれば解決できるのか、地域同士がつながることで新しいアクションが生まれているという。

「山のほうではイノシシの被害がものすごく多いんですよ。同じ課題を持つ地域がいくつかあったので、獣害対策のプロジェクトを有志の協力隊でやっていて」

各地域で取り組んでいる獣害対策を調べてみると、高松市塩江町のあるホテルではイノシシ肉が食べられる宿泊プランを準備していたり、さぬき市では獣害対策の勉強会を開催したりしていることがわかった。

そういった一つひとつの情報を、協力隊で制作したWebサイト「イノシシ対策本部」にまとめて発信した。

「同じ悩みなら、地域なんて関係なく、みんなで協力すれば楽しく解決できる。Webサイトの文章とかデザインもそれぞれ得意な協力隊の人につくってもらって、一緒にやっています」

kagawa05 「ただ、こういうプロジェクトは協力隊がずっとプレイヤーとしてやっていくものではないと思っていて。各地域でもともと獣害対策に取り組んでいる方々がいるので、その方がいろんな地域の人と繋がったり協力できる、土壌づくりをしたいんですよね」

捕まえたイノシシを捌ける地域とできない地域を結ぶことで、問題解決に結びつけるのではという具体的な道筋も見えているという。

協力隊をつなげることではじまったプロジェクトによって、こんどは地域同士がつながっていく。

市町の壁を越えた、県の協力隊だからこそできることだと思う。

「市町の協力隊がこういうことをやろうとすると、当然市町のことをやらなきゃってなるので、まわりの人や地域と手をつなぐ余裕があんまりないと思うんです」

「けど、僕みたいに県内全域で活動できる人がいると、こうしたほうがいいよねってことも、さらっと言えてしまう。そんなことから、イノシシ対策本部だけじゃなくて、合同のマルシェをやろうって話もちょっとずつ出はじめているんです」

kagawa06 協力隊同士をつなげたり、さらにそこから新しいプロジェクトが生まれたり。

秋吉さんが香川県に入ったことで、協力隊同士の連携が深まっているという。

「いろんな企画が生まれるっていうのもそうですけど、一番は気持ち的な連携ができるようになることが大切だと思うんです。ちょっと困ったときに相談できるかとか」

「だから、協力隊のみんなが集まるときは、絶対に堅い雰囲気にしないです。アイデア出しのときは音楽をかけながら話したりとか。普段の仕事環境とはちょっと違う、ラフな感じにしていますね」

kagawa07 秋吉さんは活動をはじめて4ヶ月ほど。まだまだやれることがあるという。

次に計画しているのは「地域おこし協力隊のあり方」を考えるプロジェクト。

「協力隊について、知らない人がものすごく多いんです。地域の人は『協力隊に何をお願いしたらいいの?』『そもそもお願いしていいもんなの?』って。協力隊自身も、協力隊はどうあるべきか、どうやって地域と絡んだらいいかっていうのが分からない」

「協力隊って地域とどうあるべきか。そんなことを考えて発信していこうと。Webサイトやフリーペーパー、Facebookページをつくりはじめています。コンテンツをつくるにしても、地域の人にやってもらいたいし、協力隊の人とも一緒にできたらなって。常にアンテナを張って、誰と協力してやろうかなって考えてます」

香川県内で活動する協力隊は18名。20代後半から30代の方が中心の、元気でユニークな人たちなんだそう。

飯田さんという方は美容の会社での経験を活かし、男木島で生えている植物を使いアロマの化粧水を作成。島のおじいちゃんおばあちゃんたちにフェイシャルマッサージをしているそう。

多賀さんという方は昆虫博士なのだとか。もともとNGOで環境保全の活動をしていた方で、イノシシ対策本部に書かれているイノシシの習性などは、すべて多賀さんが調べてくれたという。

kagawa08 「みんなと一緒にやっていて何が面白いかというと、必死なんですよ。みんな必死だから、イノシシ対策本部のWebもデザインも1ヶ月で形になった。次はあれやりたいこれやりたいって、いまでもみんなから言ってくれるんです」

なぜ必死なのか。それは協力隊の任期が3年だから。

「限られたなかで、来たからには地域の役に立ちたいと。休みの日も休んでいいのかなって、セミナーに参加したりして」

それは大きなモチベーションとなる一方で、常につきまとう不安だという。

協力隊としての3年間で何ができるのか。そして3年後はどうするのか。

「3年間丸々いようとは思っていないんですよね。1年やって、やり残したことがあれば、次の1年も継続する。そうしないと、3年間があっという間におわる気がしていて」

「2年目の協力隊の人も、いま考えてることが1年前とは全然違うって話していたんです。やっぱり、人との出会いでいろんな道がポンっと見えてくるものだと思うんです」

kagawa09 これから加わる人は秋吉さんとタッグを組み、県の協力隊として香川をつなげる役割を担う。

秋吉さんはどんな人に来てほしいのだろう。

「スキルは何も求めてないです。巧みな話術とかは全然なくていい。ただ、コミュニケーションに妥協しない人がいいですね」

コミュニケーション力が高いとかではなく、妥協しない人?

「たとえば『ありがとうございます』『ごめんなさい』ひとつにしても、言わなくてもいいけど言ったほうがいいかな、みたいな微妙なときってあるじゃないですか。そういうときも、ちゃんと言える人。アイデア出しでも妥協せずに意見出して、とことん話し合える人がいいです」

「環境はすごくいいですから、そこは安心して。香川の人って穏やかでいいですよ。県庁も職場関係がよくて、協力隊も面白い人ばかりだし。よい人間関係と楽しい仲間は保証しますので、楽しめる人に来てほしいですね」

kagawa10 全国でも数少ない県の協力隊。秋吉さんの活動はまだはじまったばかりだけれど、県内の人々を結ぶよい循環が生まれている。

取り組みは県外から注目され、問合せも増えているそうだ。県の協力隊のあり方が香川県で体系化されば、全国の先進事例としても発信できると思う。

数ある協力隊の募集のなかでも、いいチャンスだと思います。

「県で協力隊をやっているところはあまりないので、それが面白いところでもあるし、『誰か答えを教えてくれよー!』ってなることでもある(笑)。これからいろんなことが実現していく、そのプロセスを一緒に楽しみたいですね」

(2015/12/21 森田曜光)