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思い入れや愛を感じる人の話は、聞いていてとても気持ちがいいです。それはどんなところから感じるのでしょう。語る言葉の端々に、うれしそうな声色に、真剣な表情と身ぶり手ぶりに。
ついつい引き込まれてしまいます。
そんな方々に出会えたのは、秋葉原の高架下でのことでした。

そのなかでも食品を専門に扱う「日本百貨店しょくひんかん」の販売スタッフを募集します。
また、3月のはじめにオープンしたばかりの「日本百貨店あかれんが」と、4月上旬にオープン予定の「となりに。日本百貨店」、たまプラーザ駅直結の商業施設内にある「日本百貨店てらす」のスタッフもあわせて募集中です。
いずれも販売の経験は問いません。最も大事なのは、このお店の想いに共感できるかどうかだといいます。
少しでも興味があれば、ぜひ読んでみてください。
秋葉原駅と御徒町駅の間にある高架下の商業施設「CHABARA」。
ここはかつて、神田青果市場のあった場所。生産者と消費者がつながれる食文化の街、CHABARAとして生まれ変わりました。
注文ごとに豆を焙煎する「やなか珈琲店」や、気軽に本格的な精進料理を楽しむことができる「こまきしょくどう−鎌倉不識庵−」などのお店とともに軒を連ねるのが、「日本百貨店しょくひんかん」です。

各県ごとの棚や期間限定のイベントコーナーがあったり、試食販売の方がいたり。ぐるっと一周したら、すぐに買い物カゴがいっぱいになってしまいそうです。
迎えてくれたのは、店長の蓑島(みのしま)さん。
2013年7月のオープンから、一歩ずつこのしょくひんかんをつくりあげてきた。

「お客さまとの会話を放棄しているわけではなくて。この店にはこの店なりのやり方があると思っています」
扱うモノは雑貨と食品で異なるし、店舗の広さも異なる。“訪れる人にとっていかに楽しい空間にできるか?”を試行錯誤し続けて、ようやくしょくひんかんの形ができあがってきたところだという。
ハード面での違いはあっても、根っこの想いはどの店舗にも共通している。
「つくり手と使い手の出会いの場をつくること。そして、いいものづくりが続いていく仕組みをつくることです。その核が同じだから、どこの店舗にいってもみんな話が合うんですよね」
しょくひんかんで扱う商品には、大きく分けて買い取りと委託の2つがある。
「買い取りは、ぼくらがいいなと思うものを生産者さんから買い取って仕入れる商品のことですね。委託というのは、生産者さんから商品を預かり、きちんと場所代をいただいて販売している商品のことをいいます」
地元の定番として根付いているものや、こだわってつくられた本当にいいもの。販売員ひとりひとりがバイヤーとして仕入れに関わっている。

「そうすると、だいたい誰かから反応があるんですよ。味やパッケージについて、率直に意見をくれる人もいます。そういったやりとりは、あまり堅苦しくなくやれていると思いますね」
ただ、どんな提案も通るとは限らない。蓑島さん自身、最近になるまで気づけていなかった視点があると話す。
「生産者さんと一緒に進めていくなかで、エゴが生まれがちなんですよ」
エゴ?
「いいものを見つけたから、なんとかしてこれを世に広めたい。一方で、生産者さんは地元で店が回れば満足できる。そこにぼくらが割って入るのはおかしいですよね」
たくさんの人に知られて、売り上げを増やすことがゴールではない。必要以上に需要が増えれば、供給が追いつかずに生産者を苦しめてしまうことにもつながりかねない。
「サラダパンってご存知ですか?たくあんのマヨネーズ和えを挟んだパンで、滋賀県のつるやパンというお店の商品です。インパクトもあるし、おいしいんですよ。そこで仕入れのご相談をしたんですが、最初は丁寧に断られまして」
「『従業員に苦労はかけたくないし、ぼくらは東京で金儲けがしたいわけじゃない。サラダパンを通して、滋賀県を知ってもらえることがうれしい』。そうおっしゃったんです」
仕入れの場合、一度買い取ったものを販売するので、委託に比べて生産者のリスクは少ない。商談はスムーズに進むと思っていたため、このときは衝撃を受けたという。
「あぐらをかいていたわけじゃないですけど、ひとつの商品を仕入れるにも、もっと話すべきことがあったと気付かされましたね」
すると、店舗につるやパンの方が訪ねてきた。どんな店で売ろうとしているのか、実際に見にきたそうだ。
蓑島さんからあらためて想いを伝え、無理のない数だけ仕入れることになった。
「地元の方には懐かしく、県外の方には新たな発見を楽しんでいただく。そんな売り場づくりのために、なんとか協力してほしいと伝えました」
「消費期限は2日も持たないし、正直なところ、儲けになる商品ではないです。小売としては間違っているかもしれない。それでも、ぼくは商売人として大事なところに気付かされました」

「福島県の農家さんで、山燕庵の杉原さんという方がいます。震災後は、石川県の同じ農法の農家さんと一緒に商品をつくっていて、想いがすごく強い方なんです。ありがたいことに、うちで商品を売りたいとおっしゃってくれて」
「でも、それをぼくらが売るっていうのはちょっと違う気もしました。つくってらっしゃる方の想いにはどうしても敵わないですから」
そこで、委託販売をする代わりに、毎週木曜日にここで試食販売をしてほしいと頼んだそう。「やりたいです!」と答えた杉原さんは、その翌週から欠かすことなく足を運んでいるという。

「面白いでしょ?人と人とのつながりが出てくるお店だなと思っています。意外につながるんです」
このほかにも、日本百貨店に関わる生産者同士がコラボレーションして、新商品を売り出したり、数社合同のイベントを自主的に実施したこともある。
つながりが生まれる場は、お店の外にも。各地で開催される商談会では、人づてにいいモノを紹介してもらったり、思いもよらない形で出会いが生まれることもあるという。
2月から副店長を務める小熊さんは、福岡での商談会が印象に残っていると話す。

「8代目の田中社長は、とても控えめな方で。東京のメーカーと取引はなく、福岡のパン屋さんにだけ出していたそうです」
田中社長は「知名度はないけれど、真面目につくっています」と言って、ある映像を観せてくれた。
一面の小麦畑と、小高い山、きれいな青空。そして、とても古そうな製粉用の機械が出てきた。
「ボロボロの機械なんですけど、ゆっくりと動かすことによって、小麦粉に無駄な熱が加わらないんですよ。だから香りが飛ばないし、粒もすごく細かい。おかげで膨らみのいい小麦粉になって、焼いたときに香りがすごくするパンに仕上がるんです」
「その話を聞いて、実際に焼いたパンをもらったら、もうめちゃくちゃうまい。小麦の香り、甘み、あと食感。これはいい!と思いましたね」
小熊さんにとって、これがはじめての仕入れの機会。仕入れ方も、店頭でのディスプレイの仕方もわからなかったけれど、試行錯誤しながら売り場をつくっていった。
「自分で仕入れると、知ってほしい気持ちも強くなりますよね。お客さまにも積極的に話しかけにいくようになりました」

生産者と自分たちにとっての一番のしあわせはなんだろう?とよく考えるそう。
「『東京:地方』っていう対比が好きじゃなくて。東京で売れること=しあわせなのかな?と思っちゃうときがあるんですよ。地域でいいなと思った感覚って、本当はそこでしか味わえないものだったりしますよね」
「ぼくは、地元の人が地元のおいしいものを知っているのが一番だと思っています。その中間地点としてうちは、いろんな人においしいものを知ってほしい。生産者さんには、執着せずに上手く使ってほしいですね」
最後に紹介したいのが、去年の3月に入社した竹田さん。
相づちが絶妙で、するすると話したくなるような方だ。

ここに入ってみて、どうでした?
「一番最初に入ったときに、『この店の人たち、一瞬で覚えられる!』と思いました(笑)。それぐらいみんな個性的というか、意思を感じる人しかいないというか」
常連さんは、「あなたに会いにきたの」と話す方も多いそう。
「入りたてのころ、商品数が多すぎて覚え切れなくて。お客さまから『これ食べたことある?おいしいんだよ』って教えていただいたこともあります」

販売の経験は必要ないとのこと。「入ってからが大事です」と竹田さん。
「最初は1日中立ってるだけでもしんどかったですし、声も小さくて猫背で。接客なんてできるもんじゃなかったです(笑)」
「今ではだいぶ声も大きくなりましたし、重いものも持てるようになりました。それに、興味があれば話も聞きたくなってくると思います。だからきっと、経験なんてなくても大丈夫ですよ。なにか感じたら、応募してほしいです」
ぼくはお話を伺っていて、この場所やそこに並ぶモノたち、関わる人たちへの愛と思い入れをたっぷりと感じました。
もしもなにか感じたなら、ここで働くことを考えてみてください。
(2016/3/14 中川晃輔)