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「カーテンやクッションなどのファブリックを、ただ販売するんじゃない。ファブリックで部屋の中のいろいろなことをクリエーションし、提案することが僕たちの仕事なんです。この役割を、社内ではファブリケーターと呼んでいます」ソファやカーペット、カーテン。家の中を見渡すと、いたるところに布が使われていることに気づく。
空間を心地よいと感じるかどうかは、使われている布の肌触りや目に入るデザインなどに大きな影響を受けているように思います。
人生の長い時間を、共に過ごす布たち。その可能性に挑戦し続けているのが、株式会社ニーディックです。独自のテキスタイルや、テキスタイルを使ったファブリックを企画から製造、販売まで一手に行っています。
今回は、ニーディックで作られたファブリックを使って空間をコーディネートする、ファブリケーターを募集します。
みなさんに話を聞いてみると、その仕事は“販売”というより“ものづくり”という感覚だそう。なにより自分たちの扱うテキスタイルに、自信と愛着を持って働く姿が印象的でした。
布にはこんなにも可能性が秘められている。それを知って、この仕事に興味を持ってもらえたら嬉しいです。
ニーディックは代官山、池袋、横浜、銀座そして大阪と福岡に店舗がある。働くのは、このいずれかになりそうです。
今回は代官山のお店を訪ねて話を聞いてきました。
代官山駅を降りて、旧山手通り沿いにのんびり歩いていくと、10分ほどでお店が見えてくる。
中に入ってみると、コンセプトごとにコーナーがつくられている。
和をモチーフにしたものやモダンで落ち着いたものなど、がらりと雰囲気が変わるから見ているだけでおもしろい。
「うちはこれまでにファブリックを購入して失敗したり、妥協したりして『今度こそ』っていうお客様が多いと思う。もっと好きだと共鳴できたり、おもしろいと感じるテキスタイルを探している方がきてくださるんじゃないかな」
そう笑顔で話してくれたのが、代表の南村さんです。
創業は1959年。創業者である南村さんのお父さまの代から、マルイが展開する家具・インテリア雑貨ショップ、「in The ROOM」で扱う製品を手がけてきた。
「企画からデザインはもちろん、ディスプレイもやるし販売スタッフもうちから派遣していて。他社の縁の下の力持ち的な会社でしたね」
一時は社内でつくられているものの90%がin The ROOMの商品になるほど、主要な事業だったそう。だけど南村さんの代になり、経験を重ねているうちに自分たちのオリジナルのものをつくりたくなった。
なにかきっかけがあったのでしょうか?
「リアルな年齢層とか、ライフスタイルを送っている人たちが企画していない商品が目立つな、と思ったんです。たとえば30代以上の大人が、20代の若者はきっとこういうものを好むだろうと想像してつくったようなものとかね」
マーケティングリサーチの結果に基づいて、ものづくりが行われていく。自分たちが本当にほしいと思うものをつくるような、リアリティのあるものづくりが失われているように感じた。
「売れ筋ってよく言うじゃないですか。それって誰かがつくって売れたものを、コピーしていくことで生まれている。すごくビジネスライクな仕事だなと思うんですよ。それは決して、みんなが満足できるものではないはずなんだ」
そのころ南村さんの年齢は、in The ROOMを訪れる人たちの年齢層よりも高くなっていた。だからこそ、自分たちがほしいと思うものが、同じような世代やライフスタイルで暮らしている人にとって価値あるものになるのではないか。
今の自分たちだからこそつくれる、オリジナリティのあるテキスタイルをつくろう。そんな想いから第一号店となる代官山店を開店したのは、今から20年前のこと。
具体的に、どんなテキスタイルがつくられているのだろう。見せてくださいとお願いすると、次々に独創的なテキスタイルが運ばれてきた。
刺繍によって生地に立体感を生み出したものや、熱によって収縮する糸としない糸を両方使うことで柄を表現したもの。
どれも工場で大量生産されるのではなく、職人さんたちが一つひとつ手仕事でつくっているのだという。
なんだか、私が今まで持っていたカーテンなどのファブリックのイメージとは全然違う。固定概念にとらわれず、より自分の個性にあった部屋をつくることができるんだろうな。
個性が強いからこそ、きちんとその特徴を理解して提案できる人が必要だと南村さん。
「たとえば天然のシルクって細かったり太かったりする。この生地はシルク100%なんだけど、糸がボコボコしてると思うんです」
「僕らにとっては天然ならではの味でも、きちんと伝えないと傷に間違われたり不良品ととらえられてしまう」
他社に卸すと、クレームにつながる可能性があるからと毛ぎらいされることもあるそう。
「だから彼女のように提案ができるといいんじゃないかな」と南村さんが紹介してくれたのが、小俣さんです。
やわらかい笑顔が印象的で、気さくで話しかけやすい人でもある。
現在入社5年目。インテリアの専門学校に通っていたときに開催された説明会で、ニーディックのテキスタイルに出会ったのがここで働くきっかけになったといいます。
「テーマごとに分けて生地が置かれてて。なにも説明されなくても、これは和風な感じだなとか、フェミニンな感じなんだとわかったんです」
「言葉じゃなくて、20枚くらいの布で表現しているのがすごいなと思って。生地一つでいろんな表現ができるということに魅力を感じました」
実際に入ってみてどうですか?
「生地を選んでもらったら、その生地でクッションをつくったりベッドリネンもオーダーできたりとか。できることの幅があまりに広いので、正直はじめはびっくりしました」
小俣さんたちファブリケーターは、お店でお客様の要望や好みをヒアリングし、テキスタイルを選んでもらったあと、実際にお宅に伺って採寸やフィッティングを行う。
その後出来上がった商品をセッティングするまで、すべて一人の担当者が行うことが特徴だ。
小俣さんは、店内でも一番リピーターのお客様が多いのだという。どんなふうに、お客様とテキスタイルを選んでいくのでしょうか。
「どういうふうに使いたいか、どんな生活をしているのかをお聞きするようにしています。たとえば朝早く起きるのかということや、家族構成なども伺います」
お客様からは「犬を飼っているから汚れが目立たないものがいい」「家で洗濯できるものがいい」という要望をいただくこともある。
だけどそれは、求めていることの一部に過ぎない。
より好みに合うテキスタイルを見つけたら、洗濯がしにくくてもそれを選ぶかもしれないし、少しの工夫で問題は解決できるかもしれない。最終的に、何を一番に求めているのか話を聞きながら探っていく。
「レースのカーテンを気に入ってくれたお客様が、自分の家は1階で人通りが気になるから使えないとおっしゃったんです。たぶん他人事というか、安易な考えだったら『じゃあこれはやめましょう』で終わっちゃいますよね」
「でも妥協してもらいたくなくて。無地の布を一枚重ねることで透けずに使うことができるとご提案したんです。スタイルは変えても、生地の良さは消さずにどう生活にあった提案をするかというのが大事かな」
こういうアイディアは、店舗を問わずにみんなで共有しているのだという。過去の事例からアドバイスをもらうこともある。
年に一回の展示会では、全店舗のスタッフが直接デザイナーから話を聞く機会もあって、自然と布に愛着を持つようになったそう。
華やかにみえる一方で、大変なこともあるといいます。
「私自身も寸法がずれていて納品できないという失敗をしたり、重い生地を遠方まで持っていっても、決まらずに選び直しということもある。どんなときも自分で動かないといけないんです」
「途中でつらいなと思うこともあるけど、すべてが終わってありがとうと言われると、またやれそうって思うんです。その繰り返しですね」
じっくりと話を聞くことで、求めているものの輪郭がはっきりしてくる。さらに日々の暮らしのことまで考えながら、予想以上の価値を提案しようと試行錯誤する姿勢が、お客様からも信頼されるのだと思う。
もう一人紹介したいのが、西武池袋店で店長として働く広瀬さんです。6年前から西武池袋店で働いていて、その前は代官山店にいたという。
百貨店の中にあるお店と路面店では、なにか働き方に違いがありますか?
「路面店よりも、ご来店の気軽さはありますね。催事のついでにふらっと寄ったという方もいます。ニーディックを知らなかった、という方も多いんです」
「だから商品に関して、見た目だけじゃなく取り扱いについてもきちんとご説明することを心がけていますね」
たとえばビーズがついているので取れやすいということや、家の洗濯機で洗うことができないものなど。
自社だけでなく、百貨店の看板も背負ってお店に立つ。ニーディックのテキスタイルをよく知らずにお店を訪れたお客様にも、暮らしの中で気持ちよく使ってもらえるように。より丁寧に情報をお伝えすることを心がけているそう。
「百貨店からの依頼でほかの家具メーカーさんと一緒に、家の中をすべてコーディネートして整えるということもありました。ほかのメーカーさんと一緒に家づくりまでできるのは、百貨店ならではのことですね」
とはいえ、どこの店舗であっても実際にお客様のお宅に伺うことや、既成概念にとらわれずにものづくりができるところは変わらないという。
「以前カーテンを納品したんですけど、アパートだったので古いふすまがあったんです。それをどうにかしたいとおっしゃって。カーテンに合わせるにも、ふすまの貼り替えってなかなか難しい。考えた末に、うちのテキスタイルをふすまに貼ったんです」
テキスタイルをふすまに、ですか。
「自社のテキスタイルを使っていれば、どんなことでもできるんです。だからものづくりという感覚が強いのかもしれません。みなさんそういう働き方を楽しんでいるし、お客様にも伝わっていると思いますよ」
自分たちが本当に良いと思えるものを、愛着と自信を持って販売する。誰にでもできるような仕事ではなく、想像力を巡らせながら自分にしかできない仕事をしていると感じました。
なによりみなさんが矛盾なく、仕事を楽しんでいる様子が伝わってきて、心地よい空気が生まれている場所だと思います。
まずはぜひ、お店に足を運んでニーディックのテキスタイルやファブリックと直接出会ってみてください。
スタッフのみなさんも、じっくりと話を聞いてくれると思いますよ。
(2016/4/15 並木仁美)