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仕事って、つらいもの?たしかにどんな仕事にも大変なことはあります。そんななか楽しそうに働いている人たちがいました。
オン・ジャパンのみなさんです。

オンはスイスから生まれたランニングシューズブランド。
もともと取材する前からオン・ジャパンのみなさんと個人的に知り合いで、休みのときも仕事のときもオンオフがないように見えるんですよね。いつも同じ調子で、楽しそうであり、真剣に働いている。
まだ4人のオン・ジャパン。今回はセールス、つまり営業を募集します。
東横線が乗り入れているみなとみらい線。馬車道駅で降りて地上にでると、新旧の横浜の風景が飛び込んでくる。古い銀行や赤レンガの建物。見上げればランドマークタワーが見える。そんな港町、横浜の真ん中にオン・ジャパンのオフィスはあります。

オンとの出会いは偶然だったそうです。
「もともとスイスの商社に勤めていたんです。そこで上司から『駒田くん、スポーツ好きだよね』って言われて、担当したのがはじまりでした」

「そういうことはよくあったんですけど、なぜやめるんだって、めずらしく食い下がったんです。そんなことしても意味ないことはわかっていたんですけどね」
「はじめて1年半。まだまだ少なかったんですけどいいお店も増えていたし、出展すれば『いいシューズだから、これからもがんばってね』と声をかけられる。それなのにやめてしまったら、その人たちになんて説明したらいいかわからなかった」
撤退が決まったのが2014年9月のはじめ。
そんなときに駒田さんへ、オンの共同創業者、キャスパーさんから電話があった。
「元気?って聞かれたから、正直に答えたんです。全然ファインじゃないし、ハッピーでもなんでもない。ただ、ショックだって」
「そしたら『もう聞いているなら話が早い、10月に日本に行くから会えないか?』って言われて」
真剣にオンをどうしたらいいか考えていると、同じく共同創業者であるオリヴィエさんからも連絡があった。
オンには共同創業者が3人いる。

「オリヴィエから『元気かい?』って聞かれたから、少し元気になっていたんでファインって答えたんです。そしたら10月の頭にトランジットで成田に寄るから会えないか?って聞かれたんです」
そこで駒田さんはオンをどうしたらいいか聞かれた。
オンはなくしちゃいけない、オンが好きな人がいるから裏切ったら絶対ダメだ、と答えた。
「そしたら、オリヴィエはうれしそうに飛行機に乗っていきましたよ。その数日後にキャスパーに会ったんです。そこでプレゼンしたのは『もう輸入代理店はダメ、同じことを繰り返す。本気なら日本法人をつくってください』って」
ところがプレゼンのあと、しばらく連絡は来ず。
クリスマスが過ぎて、年の瀬にやっと連絡がきた。「待たせたな。提案してもらったプランで行く。来月チューリッヒに来てくれ」というものだった。
年が明けて2015年1月、チューリッヒ。そこで駒田さんはプレゼンした。
「役員5人を前にして、しかも英語。集中力はもって3時間だった」

「彼らもあきれていましたよ。でも決めた以上はやるしかない。プロジェクト名は”ビッグ・イン・ジャパン”となった。完全に皮肉ですよね(笑)」
プロジェクトの中身は、4ヶ月で会社を立ち上げて取引先をすべてまわるという過酷なものだった。しかも、創業メンバーも探さなくてはいけない。
しかも、すぐ目の前には大きなイベント「東京マラソンエキスポ2015」が控えていた。まずはこれを成功させなくてはいけなかった。
そのイベントを手伝ってくれたのが、現在オン・ジャパンのセールスを担当している鎌田さん。実は駒田さんのなかでは「この男に営業をお願いしたい」と心に決めていた。
今度はそんな鎌田さんに話を聞きます。もともとアスリートで、営業経験もなかった方です。
「小学生のときから陸上をやっていました。みんなが塾に行っているときも、父親がつくってくれたメニューで練習する毎日でした」

そこで日本選手権2位となる。
「まわりは体育教師になるのがほとんど。そんななか、もっとチャレンジしてみたいと思っていたんです。結局、大学を卒業して2年は続けていたんですけど、最後は怪我に悩まされました」
この経験を活かせる仕事はないか、ずっと探していた。
スポーツクラブのマネジメントやトレーナー業をしているときに、駒田さんと出会うことになる。はじめはオンのサポートアスリートになった。
「もともとオンのことは知っていたんですよ。履いてみたらクセが強いのかと思えば、いい意味でそうではないのにクッション性がよくて」
「小学生のころ走っていたから、ほぼすべてのブランドのシューズは試したんじゃないかな。その上で、オンは面白いし、かっこいいし、履いてみたいと思っていたんです」
そこで話は東京マラソンエキスポ2015へ戻る。“ビッグ・イン・ジャパン”プロジェクト立ち上げ直後の大事なイベントだ。

ちょうど来日していたキャスパーさんも含めて三人で食事に行くことに。結果的に面談のような時間となる。
そのときのことを駒田さんが話してくれました。
「面談のあと、キャスパーと話したんです。そしたら『営業も接客も素人だろう?英語もできない。本当に彼でいいの?』って」
「だから言ったんです。たしかに経験はあったほうがいいけど、情熱とか夢にくらべたら些細なことだって。キャスパーやオリヴィエだって、もともと門外漢でしょ。彼はお客さんに走ることを楽しんでもらいたい、って話していたよって」
実は「楽しく走る」はオンの創業からのキーワードだった。
オンを創業したきっかけは、元アイアンマンチャンピオンのオリヴィエのアイデアから。
慢性的なアキレス腱の炎症に悩まされていたオリヴィエは、もっとランニングを楽しいものにするにはどうしたらいいか考えていた。
そこでいろいろなものをランニングシューズの裏に貼り付ける実験がはじまった。庭の水撒きホースの輪切りにしたものも靴底に貼ってみた。走って10mでバラバラになったけど、いい感触だった。

もう一人、オン・ジャパン設立時に合流したのがカスタマーサービスマネージャーの前原さん。彼女も同じような思いを持っていた。
前原さんにも入社した経緯を聞きました。
「最初にオンを知ったのが、2013年の東京マラソンエキスポ。そのとき、はじめて東京マラソンに当選したんですよ」

そんな縁もあり、前職を辞めたところでオンを紹介してもらった。
鎌田さんと同じように、前原さんもスイスとインターネットで面談。でも英語は思ったよりもうまくできなかった。
「スイス人の英語ははじめてだったし、なによりすごい緊張しちゃって」
でも彼女も「楽しく働きたい」という言葉があったことを駒田さんは見逃さなかった。もともと大手の不動産会社に長く勤めていた前原さんの言葉だったから信用できた。
それにしても「楽しい」という言葉がたくさんでるけど、実際はどうなんだろう?
あらためて今回募集するセールスを担当する鎌田さんに聞いてみる。
「オンのセールスの仕事は履いてもらうのが一番のポイントです。履いてもらえさえすれば、みんなニコニコしてくれるんです。ほかのシューズと違うし、フワフワするって言われたり」
雑誌の企画でいろんなメーカーのシューズを試し履きできるイベントがあった。メーカーは出展無料で、参加者が入場料を支払うというもの。
「セールスの仕事には、イベントにでることも大切なことです。準備とか大変なんですけど、楽しいんですよね。試し履きのイベントでは、参加者はシューズを履いたら1kmほど走る。するとみんなニコニコしながら帰ってくるんですよ」
このイベントでは参加者による投票が行われる。オンは見事3冠を達成した。名もなきブランドであっても、履いてもらえさえすれば楽しさが伝わる。
「もちろん、イベントの仕事は全体のほんの一部ですよ。全国に130店舗弱あるお店とやりとりも大切なこと。仕事は無限にあります」

「たしかにオンは”Put some fun into your run.”が根本にあるんです。でもこの言葉と同じくらい使われるのが”It takes a lot of effort to make something look effortless.”です。現役引退して、もう10年も経っているのに、オリヴィエは今でも毎日20km走っている」

取材を通して、ワイワイ賑やかだったのが印象的だった。ときには冗談を言い合ったり、ものすごい真面目な話もあったり。風通しがよくて、会社組織というよりもなんだかスポーツチームのような感じ。
でもちゃんと成果は上げているのだ。売れた靴の数は、毎年のように倍に増えていて、今年は3倍になるということ。
もしかしたら遊んでいるように見えるかもしれないけど、ちゃんと働いている。
オン・ジャパンのみなさんにとって、オンオフはないのかもしれない。だからといってワーカホリックというわけじゃない。
働いているときも休んでいるときも、どちらも自分の時間なんだと思う。
つまり、常にオンということ。

楽しいですよ、きっと。
(2016/11/28 ナカムラケンタ)