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1杯のコーヒーから

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情報でもモノでも何でも、新しくて話題になるものが毎日のように生まれている。

はじめは新鮮でいいかもしれないけれど、多くは気づいたときにはなくなっていることも。

どうせなら脈々と続いていくようなものがいい。

tgp01 「1杯のコーヒーから建築まで」

その言葉通り建築・不動産・フード・ファッション・音楽・アート・アウトドアなど、多岐にわたる領域からまちの文脈を紡ぐようなコンサルティングを手がけるTHINK GREEN PRODUCE。

前回の募集に続き、まちづくりプロデューサーと事業コーディネーターを募集します。

 
立ち上がってもうすぐ10年を迎えるTHINK GREEN PRODUCE。

代表の関口正人さんは、もともと建築や不動産の領域で仕事をしていた方です。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 財閥系不動産会社を経て、コーポラティブハウスの草分け的存在でもある会社で様々なプロジェクトに携わっていました。

広くまちづくりをしているという意味では、今も昔も変わらない。

ただ大きく異なるのは、そのアプローチの仕方。

「いい感じの生活、いい感じのまち、いい感じの文化をつくっていきたい。じゃあ『いい感じ』とは何だと言ったら、建物に愛着が持てることとか、おいしいコーヒーがあることとか。至極当たり前の文脈から出てくるんです」

「それを形にしようと思ったとき建築だけじゃ収まらない、一方でコーヒーだけでも収まらない。だから僕たちは『1杯のコーヒーから建築まで』の多岐に渡る領域を仕立て上げるコンサルティングサービスをしています」

 
関口さんがその考えに行き着いたのは、いまから10年前。

前職時代からずっとジレンマを感じていた。

「商業性の高い都市部ではあまり考えずに建屋をつくってもそれなりに売れたり稼げたりする。それもいいけど、もうレッドオーシャン化していて、案件化しても収益が薄かったり、面白いことがなかなかできなかった」

そんなときに関わったのが、鎌倉の七里ヶ浜にあるWEEKEND HOUSE ALLEY。海に面した場所で、住宅やショップがはいっている。

002-01 エリアは都心に比べ圧倒的に人口が少なく、アクセスがいいわけでもない。けど、そんな場所にこそ都市部にはない別の価値があるかもしれない。

そう思う一方で、計画を立てていくとやはり人がいないという現実的な問題に直面した。

「人が集まるためにはどうしたらいいのか。いろんな方法があるなか僕が行き着いた考えというのは、人が集まるきっかけになるひとつの磁石があればいいということ。体感として『それなら行ってみたいな』と思われることであり、僕は“食”だったんですね」

それは関口さんの趣味のサーフィンにおいても実感することだった。毎日のサーフィンのあと、おいしいごはんを食べられる場所がこの辺りにはなかった。

そこでオーガニックスクランブルエッグやスイートコーンフリッターを食べることができるオーストラリア発のレストラン『bills』を起点に、サーフショップやビューティーサロンなど計6店舗を揃えた。

多くのサーファーで賑わう場となり、七里ヶ浜周辺の盛り上がりの一翼を担ったという。

「そこで僕は確信を持ったわけです。まちづくりのアプローチの仕方として、もちろん建物もロケーションも大事だけど、その価値をより高めたり潜在的なものを価値化するには、中にあるコンテンツ、とくに食に力があると」

そうして、そのコンサルティングを行うTHINK GREEN PRODUCEを立ち上げることに。

ただ、単に提案するだけでは説得力がない。細かいオぺレーションから、味や値段についても話せるようになりたい。

直営の飲食店をはじめることを思いつき、実現したのがGARDEN HOUSEだった。

tgp04 鎌倉駅から少し歩いたところにある築60年の古民家で、もともと「フクちゃん」で有名な地元の漫画家・横山隆一さんのアトリエ。

建物は老朽化し、180坪もの敷地では雑草が生え放題。有効活用できないかという関係者からの相談に、THINK GREEN PRODUCEが借りて自分たちでお店をはじめることを提案した。

この案件を関口さんと担当したのは取締役の川又祐介さん。関口さんとは前職時代からの仲間で、会社を一緒に立ち上げた方。

tgp05 計画を練る上で最初に思い浮かべたのは、鎌倉にはどんな人がいて、どのようなライフスタイルがあり、いま何が求められているのかということ。

「実は鎌倉って入り込み観光客数が年間約2000万人いるんです。ハワイよりも多い数の観光客が来ている。ところが調べていくと、そのうちの半数以上が50代の人たちなんですね」

「これからの鎌倉を考えていくと、若い世代が集まれるコミュニティ形成の場をつくっていかなきゃいけない」

 
そんな思いではじめてみたものの、難しいことはたくさんあった。

そもそもこの古民家が位置するのは、賑わいのある鎌倉駅の東側ではなく、西側。ローカルコミュニティが色濃く、東京からやってきたものが必ずしも響く場所ではなかった。

さらに建物は用途変更や構造補強も必要で、新築にしたほうが安いくらいだった。

「ただ、鎌倉の著名な漫画家さんのアトリエだったということで地域の方もすごく大切にされていた。我々の経済的なことだけで壊して新しくしてしまうのは鎌倉のまちにとってよくない」

「より地域に根ざしてじっくりやっていこうと。そのためにおいしいコーヒーやご飯をただ用意するだけじゃなくて、鎌倉で法人を設立して、地域に昔からある会社さんと一緒にものづくりをしたんです」

探してみると意外にも、鎌倉らしい食べものは鳩サブレーなどのほかにはなかなか見当たらなかったという。

そんななか出会ったのが、創業110年の老舗『鎌倉ハム富岡商会』さん。

昔ながらのこだわりの製法でロースハムをつくっている。実は市販のハムの多くは含有物の約80%が肉以外とのこと!とてもびっくりしてしまったが、ここでは100%肉でつくっていた。

「1本5000円するような高級ハムで、有名ホテルでも扱われている。素晴らしいと思う一方で、買う人の多くはお中元やお歳暮のためだから若い人は買わないだろうと。鎌倉のまちと同じことが起きていた」

「それでお願いしに行ったんです。大変僭越なんですけど、新たな食べ方・価値創造を僕らと一緒に考えていただけませんでしょうかと」

すぐに共感してくれたものの、既存の製造ラインがあるため新商品開発は難しいとの話だった。提案するからには当然鎌倉ハムさん側のメリットも必要だった。

話し合ううちに出てきたのが、ハムをつくる際に筋や脂身をとって成形していた行程をなくし、肉そのままの形でハムをつくるという案。これなら手間もコストも省ける。

川又さんたちはそれをもとにレシピ化し、ハムステーキを看板メニューにした。

また、クラフトビールをつくる『鎌倉ビール』ともコラボし、GARDEN HOUSEオリジナルのビールを醸造してもらった。

tgp06 当時は盛大なレセプションパーティーで東京から人を呼んで打ち上げ花火的にお店をはじめるのが主流だったが、地域の色合いを考えて宣伝は一切しなかった。

逆に地元の人に来てもらえるようにと、新聞の折込チラシをつくり、近隣の人にはワインボトルをプレゼントするようなフェアを行った。

10月にオープンし、はじめの1ヶ月は大盛況だったという。

ところが秋の紅葉が終わりピークの過ぎた鎌倉からは観光客が減り、11月からお店にはお客さんがいなくなってしまった。

「地元の人たちも『大丈夫?』と。このままだと本当に潰れるかもしれないって状況になると、ご飯食べにくるよって応援してくれる地元の方が増えてきて」

「口コミで広がっていって、GWにはハムステーキが売り切れた。そのときは、鎌倉ハムさんは休みなのに職人さんが『今から2キロ持って行くから!』って」

tgp07 実はオープンまでの開発に2年も費やしたのだという。これだけ地道なことを繰り返していたなんて、お店や会社の雰囲気からは全く想像つかなかった。

目先のことに終始するのではなく、一つひとつ丁寧にまちの文脈を紡いできた結果なんだと思う。

 
宮田應大さんは、そんなTHINK GREEN PRODUCEの考えやコンサルティングに共感して今年7月に入社しました。

dsc_0958 川又さんの下につきコンサルティングを担当。これまでも建築や不動産に関わってきたかというとそうではなく、前職は広告代理店で働いていた。

「学生時代からイベントを運営していた経験から、リアルに人が動いたり集まることに興味があって。その会社ではイベントやキャンペーンなどのプロモーション領域の仕事を10年くらいやっていました。けど、だんだん疑問に感じる部分が生まれてきて」

疑問?

「それは本質的に人の役に立つとか、それがあってよかったっていう思いを誰かに届けられているんだろうかって」

「一過性の話題を重視した広告視点よりも、繰り返し長く残り続ける事業視点から人を動かすことのほうが自分の価値観に沿っている。そう思って転職を考えるようになりました」

様々な会社の面接を受けてみたものの、しっくりくるところはなかなか見つからなかった。

どうしようか悩んでいるところ、宮田さんの家のリフォームを手掛けた建築家の方がTHINK GREEN PRODUCEを教えてくれたという。

「転職先の条件は3つあったんです。本質的に長く続くことやまちづくり視点をちゃんともっているのか。直営店舗を持つなどして自分でも実践しながらコンサルティングをやっているか。最後はセンスで、会社のデザインやクリエーティブが自分にフィットするかどうか」

「THINK GREEN PRODUCEを調べたらその3つが揃っているんじゃないかって。手がけているお店を巡って店員さんと話してみたところ、自分の感覚に近いなという感触もあった」

実際に仕事をしてみてどうですか?

「実は、やっていることが前職とあまり変わらないんです」

そうなんですか?

「事業計画とコンセプトづくり、そこからどういうテナントを入れていくかとかソフトを企画してプロデュースするっていうのは違和感なくやっている」

「一方でこれから身につけていかなきゃいけないのは、会社のアイデンティティを理解するためにお店を経営することの実感値を1〜2年でつけていくこと。建築や不動産の知識もこれからですね」

tgp09 最後に宮田さんにお聞きます。どんな人がこの会社に合っていると思いますか?

「どの業界にいた人ならいいというわけでもない。日常やまちのことを大事にできたり、幅広い視点で仕事を回せるのは個人の感覚の問題なので。だから、一番はこの会社に興味があるっていう人が合うんじゃないかと思うんです」

「入り口はどこからでもありえます。見ている目線が近ければできると思う」

(2016/12/26 森田曜光)