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観光と教育とまちづくり

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白馬といえば、やっぱり「スキー」。

冬のシーズンに遊びに行き、あの美しい白銀の風景に魅了された人も多いと思います。

hakuba01 いま白馬村は「教育」に力を入れているのを知っていますか?

魅力ある高校づくりによって全国から入学生を集め、地域活性化を目指す「白馬高校魅力化プロジェクト」がはじまっています。

今回募集するのは、このプロジェクトの一翼を担う公営塾「しろうま學舎」の講師スタッフです。放課後の時間を使って、教科学習やアクティブラーニングの考えに基づいた実践的なプロジェクト学習を実施します。

目的は学力アップだけではありません。大学進学や有名校合格といったことに縛られず、生徒が自分のなりたい方向に気づいて進めるような環境づくりを進めています。

ただ、いまは土台づくりの真っ最中。公営塾を営む3人のメンバーと一緒に、形づくっていく人を求めます。

 
東京から長野へは新幹線で1時間半くらい。

長野駅の目の前にあるバスロータリーに着くと、並んで待っている外国人観光客の多さにびっくりした。白馬村へと向かうバスの中も外国人の家族連れでいっぱい。

子どもたちのはしゃぐ様子は日本も海外も変わらないなぁ。そんなことを思いながら、バスに揺られること約1時間。白馬駅に到着しました。

迎えてくれたのは、白馬村教育委員会の教育課長、横川辰彦さんです。

hakuba02 さきほどのバスの様子を伝えると、白馬村は年々インバウンドが増加しているのだそう。

とくにオーストラリアからやってくる人の割合が全体の5割を超えるほどで、アジアからの人気も根強いらしい。

世界でも屈指のスキーの名地である白馬村。けど実は、全国の地方地域と同様に少子高齢化に悩まされています。

「スキーが盛り上がっていたころ、白馬村はいまよりもっと賑わっていた。日本のスキー人口が減って、いまや観光事業は最盛期の3分の1まで落ち込みました。民宿の跡取りをせずに近隣都市へ働きに出ていく人が増えたりして、地元に残る人は少なくなりましたね」

また、長野県で学区制がなくなったのも大きく影響したそう。子どもたちの選択肢が広がるのはいいことだけれど、長野市や松本市といった都市部の学校へ進学する子が増え、白馬高校の入学者数は減少してしまった。

hakuba03 いつしか統廃合の話まで浮上するように。地域に唯一の高校がなくなると人口減少はより加速するため、村にとっても死活問題です。

そこではじまったのが「白馬高校魅力化プロジェクト」です。

地域の特性を活かした魅力的な学びの環境をつくることで、全国から生徒を呼び込もうというもの。

白馬高校は昨年、国際観光科を新設しました。

hakuba04 地域に根ざしながらも世界に通用する人材や、村の基幹産業である観光業を背負う人の育成を目指し、特別なカリキュラムを組んでいます。

「普通科に比べて、とくに英語のコマ数が多いのが特徴です。2年生からは第2外国語のような形でアジアンランゲージを学びます。地域へ繰り出すフィールドワークも週に1回行っていて、観光シーズンにはスキー場の案内所で外国人観光客に案内しています」

ほかにも東京のブリティッシュスクールと提携して、外国人の学生と交流できる場をつくったり、ニュージーランドのマールボロという都市への短期留学を設けたり。各界の著名人を講師に招く「グローバル講演会」も定期的に開催しています。

さらに白馬高校は、全国から入学する人を受け入れるための寮「しろうまPal House」を新設しました。

「単なる生活の場ではなく、教育寮です。ハウスマスターが普段の生活の中に勉強の時間を設けて学習指導したり、地域を知るために村のお祭りや清掃活動に参加するようなことも企画しています」

寮に住む学生たちが地域行事に参加してくれることに、地域の人たちはとてもよろこんでいるという。子どもたちも徐々に地域に馴染んでいる。

「全国募集で来た子どもたちは非常に元気がいい。そんな積極的な姿勢に、地元の子たちもいい刺激を受けている様子だと、先生方から聞いています」

hakuba05 昨年、国際観光科に入学した生徒数は38名。そのうち13名が県外からやってきた生徒です。全体の入学者数が前年に比べて15%増加していることから、かなりの手応えを感じているという。

そんな魅力化プロジェクトを支えている柱は、国際観光科や教育寮のほかに、実はもうひとつあります。

学生が放課後に通うことのできる公営塾「しろうま學舎」です。

運営を任されているのは、地域おこし協力隊として県外からやってきた3人のメンバー。

この日は、塾長の奥田純子さん(写真右)と講師の小野ひとみさん(写真左)のふたりにお会いしました。

hakuba06 まずは、しろうま學舎の立ち上げ時期から魅力化プロジェクトに参画している奥田さんに話を伺います。

奥田さんの出身は埼玉県。昔から地元への愛着がなく、「いつか故郷へ帰りたい」と話す大学の友人がうらやましかったのだそう。

そんなことから“地域”について興味を抱き、北海道の大学院へ進学。地方創生や地域活性化について学んだ。

卒業後は札幌の会社に就職し、道内でまだ埋もれている魅力的な食材を発掘してプロデュースする仕事をしていました。

「私は地域で活動したいっていう気持ちが強いんです。それも行政に頼らない地域活性化の方法を見つけたくて。縁あって白馬高校の話をいただいて、教育から地域活性化ができるのかと、すごく興味を持ちました」

白馬村へやってきたのは一昨年の9月。まだ公営塾の形が何もないところからのスタートでした。

教科学習に使う教材は、すべて自分で探して選んできたもの。曜日ごとに時間割を作成し、様々な学習レベルの生徒に対応できるように、希望者には個別の時間もつくっています。

「私が通っていた高校では同じような学力の人が集まっていたけれど、こういう地域の高校はその幅がすごく広いんです。しっかり勉強できる子もいれば、中学の勉強の復習が必要な子もいたりして」

卒業後の進路も様々。大学へ進学するのは全体の約3割で、専門学校へ通ったり、就職する生徒もたくさんいる。

hakuba07 ただ、両親やまわりの人に進路を決められたり、これしか選択肢がないと思っている子も多いのだという。

コンパクトな地域で、コミュニティも狭い。そういった環境で、将来何をやりたいか聞いても、限られた職業しか出てこない。

「だから、ここで教科学習を教えるだけじゃダメで。世の中にはもっといろんな仕事や考え方がある。世界はもっと広いんだよってことを伝えられたら、子どもたちの視野も広がるかなって。本当にやりたいことを見つけて、自分で進路を決めてほしいんです」

そんな想いから、プロジェクト学習「輝☆ラボ(てるらぼ)」を昨年2月にはじめました。

1年生はまず社会に出てからも役立つ基礎的な力を養おうと、月に一度グループディスカッションやピンポンディベート、マシュマロチャレンジなどを行っています。

hakuba08 2年生はさらに実践的な形式で毎週開催。昨年は地域課題を見つけてその解決策を考える、大学のゼミのようなワークを行いました。

はじめは問題意識を考えるポイントや、そもそも問題とは何かを説明。シャッター街の問題を発見するケーススタディーも行った。

そうしていよいよ白馬村の地域課題を探ってみると、生徒たちからは「電車やバスの本数が少ない」「遊べる公園や憩いの場がない」「図書館が小さく、本屋がない」という3つの意見が挙がった。

「交通については高校生がどうにかできる問題じゃないから、憩いの場と図書館をミックスさせようという話になって。それをテーマに何ヶ月もかけて練った案を提言書で提出したんです。最後は行政職員や学校の先生方、地域の人たちの前で報告会までして」

hakuba09 実際に提言書を見せてもらうと、あまりの完成度に驚いた。普通の大学生がつくる論文よりしっかりしているかもしれない。奥田さんはサポートに徹し、基本的には生徒たちが頑張って書き上げたという。

どれも生徒たちにとってはじめての経験だったと思う。最初のグループワークでは全く発言しなかった生徒がだんだんと喋るようになり、最後は報告会で司会を務めるといったうれしい成長もあったという。

ただ、生徒が自ら進路を決められる力をつけるには、まだまだ他の経験も必要です。

「本当は、いろんな大人と対話する時間を設けたりとか、イベントやワークショップをやりたい。そう思ってはいるんですけど、まだできていなくて」

輝☆ラボの企画・運営を担当しているのは、奥田さんただひとり。流用できるような教材はなく、自分の経験を頼りに手探りでつくったりするから、なかなか時間が足りないのだという。

だから今回の募集で加わる人には、教科学習に加えて輝☆ラボも担当してもらいたい。

もしここで自分のやりたいことがあれば、それにチャレンジしてもいいと思う。

講師の小野さんは、観光学をしろうま學舎でも教えることを考えているのだそう。

hakuba10 白馬高校の魅力化プロジェクトに参画した一番の理由は、大学生時代に観光学を専攻し、外国人観光客の誘致について学んでいたから。

高校と連携して、学生が観光系の資格を取得できるようなサポート体制をつくろうとしています。

「それは本当に個人的な想いで。日々勉強を教えることで『テストの点数が上がったよ!』って報告を受けたりするのもすごくうれしいです。学生も塾のメンバーも、私とは歳が離れているのにすごく仲良くしてくれるので、ありがたいなと思っています(笑)」

行政も学校もとても協力的で、気兼ねなく仕事できる環境だという。地域には野菜をおすそ分けしてくれるような人がたくさんいて、暮らしの面でも心地よく過ごせるそう。

「塾のメンバーで一緒に遊んだりもしますよ。この前は、高校生の話題に乗れるようにってアニメ映画を見に行って。今度は、京都に旅行へ行くんです。誕生日は必ずお祝いをしてますね」

ただ、見ていると、べったりした感じでもない。距離感を保ちながらも、仲のいい感じ。

hakuba11 「3人はそれぞれ全然違う個性だと思うんです。共通しているのは自由というか、鈍感というか、あまり周りの評価にとらわれない。そういう空気に馴染める人がいいなと思うんです」

ふたりの話を聞いていると、ここにいるのは目の前のことに飛びついて夢中になれる人たちだと思った。

みんな思い切ってここへやって来たし、任期が終わる3年後のことより目の前のことにひたすら精一杯に取り組んでいる。

そんなふうに夢中になれる人なら3人と合うかもしれません。

何か引っかかることがあったら、実際に白馬を訪ねてほしいです。奥田さんや小野さんも快くいろんな話をしてくれると思いますよ。

(2017/1/30 森田曜光)