求人 NEW

お茶畑でつかまえて

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

「ただお金をかせぐための労働ではなくて、自分のために楽しく仕事をしてもらいたいんです」

毎日の仕事のなかに、自分の楽しみを見出せたとしたら。それってとても素敵なことだと思います。

今回募集するのは、日本の文化の一つである「お茶」に向き合いながら働く人。

具体的には、お茶づくりに関わるスタッフと、その茶葉を利用した新商品を開発するスタッフです。

_DSC9529sss 取材したのは、鹿児島で68年の歴史を持つお茶の製造会社、鹿児島堀口製茶有限会社(以下堀口製茶)

ここで働く皆さんと仕事についてお話ししていると、なんだか自然と元気が出てきます。

お茶の会社ではあるけれど、お茶のことをよく知らなくても大丈夫。新たな挑戦を楽しんでみたい方や、家族を連れての移住を考えている方にも、読んでもらえたらと思います。



前回の取材から一年。

鹿児島空港に到着すると、常務の堀口大輔さんが迎えにきてくれていました。

IMG_4623 大輔さんは現社長の息子さんで、次期社長にあたる方です。いつも目をキラキラさせていて、少年のような人。

しばらく車を走らせると、のどかな畑が続く志布志市に入る。抜群においしい魚が穫れる志布志湾と、農産物に適した気候にめぐまれた大隅半島は“食の供給基地”なんて呼ばれることもあるみたい。

堀口製茶はここで70年近くのあいだ、お茶をつくってきた。

茶葉を育てるところから加工、飲料メーカーへの卸し、“和香園”という名前で自社のオリジナル茶葉も販売している。

地方の中小企業と思ってあなどるなかれ。堀口製茶は国内唯一の安全認証を武器に、自分たちで販路を拡大。今では海外でも茶葉を販売している。

お茶の製造工場は、大隅半島どころか日本で一番の大きさです。

「もっとおいしくなるんじゃないかって、お菓子と何かをまぜてみたりするような子どもでした。堀口家の血で、失敗してもいいから何かやりたくなっちゃうんですよね」

大輔さんがそう話すとおり、堀口製茶は新しいことをするのが大好き。

現社長の泰久さんは、“食の安全”という意識が芽吹く数十年前から、独自の機械を開発して無農薬栽培につながるお茶をつくってきた。

志布志にありながら海外の販路をもてたのも、長い間無農薬にこだわってきたおかげなのだそう。

大輔さんは、堀口製茶の主な卸先である伊藤園グループで修行をしたのち、堀口製茶に入社した。今年で8年目になる。

今は世代交代のタイミングだと言います。

去年の夏に社長の泰久さんが体調を崩されたのをきっかけに、大輔さんは社内の部署分けや役職づけといった組織化をさらに加速させてきた。

「自分たちの仕事に責任とやりがいをもてたら、もっと楽しく働けると思うんですよ。若い人たちにも裁量を与えて、失敗をしながらでもいいから働いてほしいと思ってます」

大輔さんもお父さまから仕事を引き継ぎつつ、新しいことをはじめている。たとえば、お茶づくしの創作料理を出すレストランや、茶葉ブランドTEAETの開発もそのひとつ。

IMG_4701 今後は地元の農業生産者と協力して観光事業をはじめるつもり。目玉商品として、大隅半島産の食品とコラボしたフレーバーティーを考えているんだとか。

商品開発のスタッフも、一緒になってアイディアを出していけそうです。

「大隅半島全体で楽しんで働く人が増えていけば、すてきなことだと思いませんか。そんなふうに働く人が増えれば、新たな事業や地域の課題にも取り組んでいけると思うんです」

観光地でもない田舎のお茶工場だからこそ、一人ひとりが自分なりのアイディアを生かして、働くことにやりがいを持てたら。大輔さんのもとで、会社の雰囲気も変わっていく予感を感じます。



お茶をつくっているスタッフの方たちにもお話をうかがいました。

まずは茶葉を育てるところから。130ha以上の自社茶園の管理をしている茶園管理部係長の小牧さんです。

IMG_4827 小牧さんは7年前に入社するまで、大阪で10年以上のキャリアを持つ美容師でした。

早朝から深夜まで続く仕事に限界を感じていたとき、地元志布志でお茶農家をしているお母さまが、突然やってきたのだそう。

すこやかな生活ができているというお茶づくりの話を聞いて、思い切って転職をすることに。「畑違いとはこのこと」と言って笑います。

とはいえお茶栽培の知識は何もなかったので、まずは契約している堀口製茶に入社して肥料や摘採の方法を学ぶことにした。

最初はどんなことをしたのでしょう?

「今でも鮮明に覚えてるんですけど、初日はスプリンクラーの整備をしました」

ハサミをシャベルに持ち替えて、最初の仕事はスプリンクラーの配管のために畑の土を掘る作業。もちろんはじめての経験だった。

「イメージしていた仕事と全然違いました。冬場なのに汗だくで土掘って」

「初日は疲れきって、お風呂の中でずっと寝てましたね(笑)」

というのも、小牧さんが入社したのは2月。“お茶時期”と皆さんが呼ぶ4月から10月以外は、お茶摘みに向けて機械を整備していくのも大切な仕事のうちなのだ。

_DSC0679_2sss 春が来たらほかの部署の社員や地元の人にも協力してもらって、手作業や機械でお茶摘みや肥料まきなどをする。

少しの不備が命とりになるから、お茶時期は日の出前から動き出し、夜でもローテーションで畑の見回りをする。

「体力は必要かもしれないですね、畑仕事ですから。でも、睡眠も食事もちゃんととれる。人間の生活だなって実感できています」

冬季はのんびりとしているので、メリハリをつけて働ける。なんと小牧さんは、志布志に帰ってきて10キロも体重が増えたんだとか。

今はご実家の茶園も見つつ、堀口製茶の肥料担当として配合の設計などをしています。

「正直、無農薬ってむずかしいです。茶樹が病気になったり、虫の被害にあったりしても何もできない。我慢するしかないんです」

とはいえ、黙って見過ごす訳にはいきません。

たとえば、水と風で虫をはじけるんじゃないか、そのためにはどんな機械を開発すればいいのだろう。もっといい方法がかならずあるはず、と信じて考える。

「良さそうな意見があれば、とりあえずやってみる。駄目だったら駄目でいいんです。その人のモチベーションがあがるだけでも、意味はあると思う」

現場で働く人の意見を吸い上げる風土は、堀口製茶ならではのもの。

小牧さんも、過去に肥料の配合をする建物の使い方について提案をしたという。

それまでは肥料の配合と完成品の袋づめが同じ棟で行われていた。完成した肥料を搬出するためには、毎回配合中の肥料をどかさなければならない。

当時は入社2年目を迎えたばかり。けれどもどうすればみんながもっと働きやすくなるのか、小牧さんは考えた。

その結果、配合用と完成品用で棟を分けて使うことを思いつく。

「移動させるのにどれだけコストと時間がかかるのか、すべて計算して社長に提出したら『これはすごい』と言われて」

何十年も変わっていなかったやり方はすぐに一新され、今も続行中だ。

「固定概念にとらわれず新しいことを取り入れていくことできれば、たのしい環境で仕事ができると思います。僕自身もこれがきっかけですごくモチベーションがあがりましたね」

今は畑仕事や肥料のイメージをよくするために、においの少ないコーヒーかすを再利用した堆肥を考えるなど、日々現場を良くしようと奮闘している。

自分なりに考えたアイディアを提案できる環境があるって、きっとすごく楽しい。

IMG_4765 (1) 「僕はもっと社内をよくしたい!と言って、暑苦しい存在です(笑)。でも、そういう人が10人、100人いたら、世界レベルの会社になれると思う」

今の茶園管理部はとてもいい雰囲気なのだそう。これからはこの思いを、下の人たちに伝えられたらと話してくれた。



小牧さんたち茶園管理部が育てた茶葉の水分を、加工しやすいように飛ばしていくのは製造部の仕事です。

日本で一番大きな工場だという“Tドーム”を案内してくれたのは、荒茶製造部主任の山田さん。

IMG_4723 ここでは、茶葉を蒸して揉む工程を機械によって行なっています。

冬季なので工場内に茶葉は流れていないけれど、圧巻の大きさ。機械操作だけで茶葉を加工していくのかと思いきや、実はそうでもないらしい。

「蒸し途中の茶葉をその場で手で揉んで、実際にお茶をいれてみます。色を確認しながら温度調整をしていくんです」

機械の至るところに茶葉を出せる窓があって、微妙な蒸し加減は、自分たちの五感をつかって調整していく。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA この蒸しの状態でお茶の「味・香り・水色」の基本的な性格が決まるというから、まさに職人の仕事です。

まずは機械の操作を覚えなければなりません。広い工場なうえに、工程ごとの機械についたスイッチはすごい数。

「最初は先輩について、必死にノートに書いて覚えました。機械に2,3時間つきっきりで、触りながら覚えていくんです」

ストレスではなかったですか?

「なかったですよ。まったく経験がなかったから逆に良かったのかな。お茶ってこういうふうにつくられるんだ!っていう驚きが楽しかったですね」

山田さんは入社して3年目。働きはじめてから今まで、お茶の魅力が尽きたことはないと言います。

「お茶は奥深いです。まだまだおいしいお茶をつくれるんじゃないかって、いつも思います」

「摘採の時期や畑、肥料のやり方によっても出来が違ってくるんです。何十年してる人でも悩むっていうくらい」

OLYMPUS DIGITAL CAMERA お茶摘みの時期は、24時間2交代制で週休1日。工場は休まない。

冬季には、フル稼働してきた機械のメンテナンス。製造部とはいえ、ときには畑に出て作業することもある。

「僕らはなんでも屋さんでもあります。畑で摘採機にはじめて乗ったときはすごくおもしろかった(笑)」

4月にはTドームの隣に、新たなTポールという工場も完成する予定。今までの緑茶にくわえて、フレーバー系の烏龍茶、紅茶やてん茶、さらにオリジナル茶種の加工場が入ることになっている。

IMG_4677 製造部の仕事の範囲はさらに広がっていく。

「勉強になると思えば楽しみです。あれもこれもできる。僕はやってみたいです」

山田さんは新しいことに挑戦できることが、楽しくてたまらないよう。

「新しく知ることを楽しめる人には、うちの会社は本当におもしろいですよ」

新しくはいる人には、わからないことはどんどん質問してほしいとのこと。自分の仕事を楽しもうと思ったら、待っているだけじゃ駄目なのかもしれません。



お話をうかがったみなさんは、いきいきと自分の仕事を楽しんでいました。

この空気が会社や地域全体に浸透していけば、ここでの仕事はもっとおもしろくなる。そんな予感がする一日でした。

IMG_4746 このメンバーと一緒に、これからの堀口製茶を楽しんでみたい。そう思えた人はぜひ応募してください。

みなさんよろこんで迎えてくれると思います。

(2017/2/23 遠藤沙紀)