※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。
「自分が考える『想い』を撮ることが大事だと思うんです。たとえば、卒業式を撮りに行ったとき、単純に泣いている女の子を探して撮っても『想い』までは撮りきれていないことが多い気がするんです」「でもサンショウの社員は、卒業式を撮っていると自分も泣いちゃったりするんですよ。それくらい自分も気持ちを重ねながら撮っていると、撮るべきシーンも自然と分かってくるんです」
福岡に本社を置き、全国に11の営業所があるサンショウ株式会社は、幼稚園から大学、専門学校などの卒業アルバム制作をおこなう会社。
1986年にはじまって以来、多くの思い出をアルバムにしてきました。
今回は卒業アルバムの営業から企画、撮影、編集、そして販売までを一貫しておこなう人を募集します。
全国に11箇所ある営業所のうち、大宮営業所で話を聞きました。JR大宮駅からバスに乗り、10分ほどで事務所に到着します。
事務所は一見すると辺りの住宅と変わらのない一戸建ての建物。看板も出ていないため、迎えに来ていただくことに。
迎えてくれたのは大宮営業所所長の福岡淳さん。
サンショウで働こうと思ったきっかけを聞くと、福岡さんは「サンショウには、全部やれる環境が揃っていたんですよ」と答えた。
「たとえば車のエンジニアになったとすると設計はしても出来上がった車を売るまでは関わらないですよね。でも、サンショウは自分で営業から販売までをおこなえるんです」
基本的に、担当する学校が決まると、ひとりの担当者が最後まで責任を持つ。
さらに、新規で契約する学校も自分たちで営業をおこなって探すため、先生や学校と信頼関係を結ぶことから仕事は始まる。
そこで大事なスキルを聞いてみると、意外な答えが返ってきた。
「いいアルバムをつくるには、撮影技術よりもコミュニケーション能力のほうが必要ですね。そういう意味でも、営業から関わって話せる環境って良いんですよ」
福岡さんは、福岡の本社で働いた後に地元広島で営業所を設立。
10年ほど会社の土台を固めた後、関東を盛り上げてほしいということで大宮営業所へ異動。
なかでも特に印象に残っている一冊があるという。
「広島で働いていたときに、学校内の畑で穀物を育てている学校を担当することがあったんです」
けれども今までのアルバムに載っていたのは、育てた麦を収穫している写真ばかり。写真からは楽しさが伝わってこない。
そこで種をまくところから撮らせてほしいとお願いをした。
「収穫風景の写真よりも、0から育てる姿を撮り続けることがその学校のテーマだと思ったんです。なので種まきから1年かけて撮影した写真でページを構成しました」
すると子供たちや先生と接する機会も自然と多くなり、それぞれの人柄が見えてくるように。
「完成したアルバムを見ると満足のいく一冊になっていました。すぐに担当の先生から『アルバムすごかったよ!』って電話がかかってきて」
「さらに、別クラスの先生からも『あんなアルバムはじめてみたよ』って電話をいただいて。想像以上に喜びの声をいただいたんです。そのときはすごくうれしかったですね」
自分自身とクライアント、写真に写る子供たち。三者にとって満足するものができた。
「僕は勝手に、サンショウには『3笑(サンショウ)』っていう意味が込められていると思っているんです」
「サンショウと、お客さんと、サンショウに関わっている人を笑顔にする。サンショウで働くなら、関わる人全員が喜ぶ仕事がしたいなって思っています」
福岡さんが入社したころ、スタッフは16名だった。今では、70名近いスタッフが全国の営業所で働いている。
会社が拡大し続ける一方で、環境が変わる苦労もあると話します。
「各営業所の能力に差が出るといけないので、一定のレベルを保持するためのルールが多いんです。たとえば、すべての工程に関わるため、編集・データ整理・販売・営業事務といったマニュアルが10冊近く用意されています」
「はじめは厳しいと感じることもあると思うんですが、働くって結局は約束事で。日々の業務も守れないのにお客様と約束を守れるのって思うんです。そういう意味でも、最低3年は働かないと要領はつかめないかな。仕事の仕方が分かってからこそ、その先に面白いことがたくさんあると思います」
続いて話を聞いたのは、前回の募集で入社した平田慎太郎さん。前職では美容師として働いていました。
どうしてカメラマンの世界へ入ったのでしょうか。
「専門学校を卒業後、東京で順調に働いていたのですが、35歳手前で体を壊してしまったんです。都内で働く男性美容師って35歳で店長になったり、独立したりすることが多いんですよ。当時は復帰する自信もなくなっていて、今後の働き方を考えていました」
そんなときに見つけたのが、日本仕事百貨でのサンショウの記事でした。
「『思い出カメラマン』っていうフレーズがすごい気に入って。悩んだ挙句一回チャレンジしてみようと思って履歴書を出しました」
経験は無いけれど、何か新しいことをしてみたかった。
「美容師は体力勝負なところがあるので、体力には自信がありました。実際に入社してみると、カメラの基本的な使い方から撮り方やコツみたいなものまで丁寧に教えてくれました」
「撮影する行事は、修学旅行や文化祭などある程度決まっているんです。ですから自ずと撮影のポイントも決まってくるんです」
撮影のポイントですか。
「たとえば、入学式では子供たちの並び方にコツがあるんです。きれいに一人ひとりの顔が見えるようにひな壇を組んでいくなど、細かいところまで自分で調整していきます」
カメラのスキルというよりも、シャッターを押すまでの努力が大きいように思う。
また、サンショウの仕事は営業からはじまる。自分で学校に飛び込み営業をして、撮影を担当する学校と契約を結んだのち撮影へ入ります。
「まずは営業で仕事を取ってこないことには撮影は始まりません。ものづくりを始めるにも、まずは素材を集めることが第一の仕事かなって。ですから、コミュニケーション能力が何よりも求められます」
「撮影中はもちろん、営業でもコミュニケーション能力は必須です。僕もはじめこそ苦労しましたが、学校の先生と仲良くなり少しずつ契約ができてきて、撮影したアルバムを納品した瞬間は本当に嬉しかったですね。すべてに携わりたい方にはもってこいの環境だと思います」
すべてを自分の手で生みだす姿勢は、ものづくりの感覚に近いんでしょうね。
「だからこそ仕事の中で哲学が生まれやすいでしょうし、それが実際の仕事ではまった瞬間にはやりがいを感じます。まさにアルバム職人ですね」
アルバム職人。たしかに話を聞いていると、奥深い世界観が伝わってくる。
「僕は卒業アルバムって思い出したときにしか見ないものだったんですけど、ここで働きはじめてからみんなとアルバムについてすごい盛り上がるんですよ」
たとえば、このレイアウトが良いとか、この写真の差し色が効いているとか。自分たちも求人記事をつくるときにそんな話をしていることを思い出す。
「僕もそういう人間になっているんだなって実感することが多いですし、仕事の話でそんなに楽しくなれることにとても幸せを感じました」
どういう人が向いていると思いますか。
「あれやりましょうとか、これしましょうって提案してくれる人であれば男女関係なく向いていると思います。こっちが圧倒されるくらいの元気な人がいいですね」
すぐに形になるような仕事ではないけれど、さまざまなところで魅力を探しだせる人ならきっとやりがいが尽きない仕事になるのかな。
最後に話を聞いたのは関根麻吏菜さん。昨年の9月にサンショウへ入社したばかり。
「高校を卒業後、すぐに介護士として3年間ほど働いていました。でも、働くなかでこのままずっと介護をすることに疑問をもって」
「そのころ趣味で写真を撮っていたのですが、もう少し写真のことを勉強したいと思って専門学校に通いはじめました。それで写真に関わる仕事に就きたいと思っていたときにサンショウを見つけました」
なぜ写真に関わる仕事をしたいと思ったのでしょうか。
「自分が写っている写真を振り返って見ていたとき、ふとした瞬間を撮った写真があったんです。全然気づかなかったんですけど、その写真がずっと頭から離れなくって。そういう写真をアルバムにできる仕事がしたいと思いました」
そのような思いもありサンショウに入社。今でもはじめて撮影した学園祭のことははっきりと覚えているそう。
「今、目の前で起きている学園祭をすべてカメラで撮るんだっていう気持ちが強くありました。一生残るものを撮っているっていうこともあり気合が入りましたね。これからこういうことが続くんだっていう覚悟が固まった瞬間でした」
趣味でカメラを構えるのとは違う感覚だった。
「そうですね。カメラの経験は多少あったので問題なかったのですが、営業に関しては苦労しました。撮ることよりも、話すことが好きじゃないと大変だと思います」
担当する学校につきひとりの担当者が責任を持つため、その人自身の人柄も大事になってきます。
「実際の現場では幼稚園児から先生まで幅広い世代の方と関わることになるので、はじめは慣れるまで大変だと思います」
取材中、気になっていた質問を投げかけたときのこと。
それは『写真を撮っていると、どうしてもそのとき残したいと思った気持ちが、実際に出来上がった写真を見るとこぼれ落ちていることはありませんか?』というもの。
その問いに冒頭で紹介した言葉が帰ってきた。
サンショウの方の話を聞いて感じたのは自分自身の気持ちに素直になって働くことはもちろん、信頼を寄せてくれた学校の思いに応えているということ。
なにより写真にうつる子供たちがアルバムを開いたとき、当時の気持ちがよみがえってくるかどうかを大切にしていました。
この記事で使われている写真も、今記事を読んでいる方々を考えサンショウの方がすべて撮影してくれました。
写真を撮ることでどれだけ想いに寄り添えるか。
その想いをアルバムという形で届けるということが、アルバム職人という仕事なんだと思います。
(2017/02/17 浦川彰太)