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お気に入りの洋服があったら、袖を通すたびにうれしくなる。長く着ていたいから大切に扱うし、思い出が重なれば愛着もわいてくる。そんな服を着ていると、ほかの人から見ても素敵だなと思うかもしれない。
建築も、似たところがあると思います。
タカギプランニングオフィスは、 建築家が設計した建物の賃貸や売買の仲介・管理をする不動産会社です。自社にも設計スタッフを抱え、デザインを行っています。
デザインに加えて、機能性も備えたマンションは、住む人にも愛され、ていねいに住んでもらうことが多いのだとか。
建物への愛着は、自然と街に対しても広がっていく。
今回は、そんな建築とオーナー、住まい手をつなぐ賃貸管理と、縁の下の力持ちとして働く事務を募集します。とくに経験は問わないそう。建築が好きな人に知ってほしいです。
JR四ッ谷駅を降りる。江戸城の名残であるお堀を横切って5分ほど歩くと、タカギプランニングオフィスが見えてきました。
まずお会いしたのは、代表の高木さんです。
コワモテだけど、とても穏やかな方。聞けば高木さん、子どものころから建築が好きだったそう。
大学卒業後は不動産会社に勤め、同じような間取りの物件ばかりを見てきたといいます。
「街を見渡すと、衣食住の中で衣と食は色んなものがありますよね。住も、もっとバリエーションがあっていいんじゃないかなって、ずっと考えていました」
もやもやしていたとき、建築家を迎えてデザインした集合住宅の案内を担当することになった。
それがデザイナーズマンションのはしりと言われている「SQUARES(スクエア)」。
中庭を中心に住戸が並び、空間も住人同士もつながりが感じられるデザイン。部屋は広いワンルームで、間仕切りにもなる可動式の収納がつき、これまでにない自由な住み方ができた。
「内覧にはたくさんの人が訪れ、みなさんとても驚いていました。当時としては、まったく新しい住まいでしたから」
これからは人口が減るにつれて賃貸住宅は供給過多になり、住み手が選ぶ時代がやってくる。
高木さんは、住み手に喜ばれるような住まいを提供しようと思い、タカギプランニングオフィスを立ち上げます。
「改めて、どうしたら喜ばれる住まいを生むことができるのかと考えました」
というのも、90年代には、スクエアを皮切りにどんどんデザイナーズマンションが建てられた。ところが、住み心地が二の次になってしまった世の中の奇抜なデザイナーズマンションの多くは、10年も経たずに破綻してしまったものもあったそう。
「つくるだけだと、やっぱり無責任なものになっちゃうんじゃないかな、と感じて」
無責任?
「そう。建物というのは、ずっとその場所にあって、住む人を育んだり、風景として街の一部になったりする。とても影響力があります」
「建てたらおしまいではなくて、その建物とずっと付き合っていくよ、という姿勢。それがあるのとないのとでは、やっぱり建物を建てる真剣味が違うと思んですよね。…結婚みたいなものです(笑)」
それに、所有するオーナーにとって、建物は財産でもある。
「その財産が建築にかたちを変えて愛されるものになれば、喜ぶ人も増えますよね」
タカギプランニングオフィスでは、企画段階から参加し、建築家の設計や監理まで寄り添うパターンと、既存の建物に対して、入居者の募集や管理というかたちでサポートするパターンがある。
企画段階から入っていくときは、長く愛される場所になるよう、普遍的な美しさを目指しているという。
「わたしは“デザインレスデザイン”って言うんです。落ち着いた色彩と、なるべく直角で構成された空間。デザインしてないようで、さりげない使いやすさにこだわっているというか」
「そういうセンスは、日本の建築家は世界でもダントツだと思いますよ。やっぱり、これまで積み重ねてきた建築の文化が影響していると思います」
たとえば、京都や奈良などで見られる町屋。
通りに面してお店を設けるため、手前に店、奥が住居になるように縦に細長い建物が隙間なく並ぶ。採光や通風が採りづらい間取りの中で、中庭や天窓を設け、光や風をうまく取り入れる。他の国にはない、合理的で住みやすい工夫があちこちに見られる。
タカギプランニングオフィスの企画に関わる建築家は、そういった機能美も得意な人たちばかり。
「都内で手がけた100世帯の集合住宅は、3人の建築家がそれぞれ1棟ずつデザインしています。近所の人たちも、建物がかっこいいね、って。あの周辺では有名になっていますよ」
デザインがいいからか、入居者さんとの関係もいいそう。ある入居者さんは管理人さんに「いつもありがとうございます」と書いた手紙と置物をプレゼントしたそうです。
よりよい関わりが生まれるには、不動産オーナーとのコミュニケーションも大切です。だからこそ、率直に話し合える関係でありたい。
もし土地を持っている方から相談があったとしても、高木さんがうまくいかないと思ったときは、「これはやめたほうがいい」と正直に話をするそう。
腹を割って話すから、お互いに信頼して仕事ができる。
オーナーさんによっては、所有する賃貸が満室になったときや、年末やお正月に一緒に宴会をすることもあるのだとか。オーナーさんとのいい関係が想像できます。
愛着がわく建築をつくる。
そうすれば関わる人が幸せになるし、不動産の価値も高まっていく。そうやって、幸せが広がっていく。
タカギプランニングオフィスでは、そんないい循環が生まれているように思う。
今回募集する賃貸管理と事務も、それぞれの役割のなかで、いい建築づくりの一端を担っていく。
ここでお話を聞いたのは、事務担当の郡司さん。
郡司さんは、もともと建設業界の出身。
以前は工事現場の機材を扱う会社で、商業施設の建設に関わっていた。
「建物が建つと、やっぱり感動するんですよ。でも、建て終わると、おつかれさま!解散!という感じで、建物を使った感想も聞けない」
「建ったあとの建物がどうなっていくのかっていうところに興味を持ったんです」
ひょんなことからタカギプランニングオフィスを知り、3年前に入社。
日々、住む人の様子が垣間見えることが楽しいという。
「事務は、契約書づくりと、お客さまの問い合わせ対応が主な仕事です。実際に建築やお客さまと接する機会は少ないですが、書類やお電話を通して、人の暮らしに触れるんですよね」
「お引越しのお電話を受けると『この部屋の天井の高いところが大好きだったけど転勤が決まっちゃって』という事情をお聞きしたり。引越しってハッピーな理由でもアンハッピーな理由でも、人生の転機になると思うんですよね。契約書を一個一個つくっていると、なんだか考えてしまうときがあります」
繁忙期は契約書も倍になる。
そんなときでも、優先順位をつけてこなすことがコツなのだとか。
「あとは、事務だけど、事務だけやっている感覚はないかもしれませんね」
どういうことでしょう?
「たとえば、お電話を受けると入居者さんのトラブルだった、ということもあります。賃貸管理のスタッフに取り次ぐんですけど、入居者さんにしてみれば、電話口に出た人はみんなタカギプランニングオフィスの人。管理が何度も聞き返さないように、必要な情報をお聞きして伝えたりしています」
「書面上ではあるけれど、大体の建物のことは把握するようにしています。その上でわからないことがあれば、それぞれの部署に確認します。すべて対応できなくても、力を合わせて補い合っている感じです」
関わりが密なのは、社内も同じ。人とのやりとりが好きな人だとよいかもしれません。
続けてお話を聞いたのは、賃貸管理担当の奥平(おくだいら)さん。
「けっこう女性が多い会社なので、正直、人間関係とかどうなんだろうって思ってました。でも、みなさんよく話すし、よくしてくれる。居心地がいいです」
入社して1年半になる奥平さんは、結婚を機に愛知から東京へやってきたそう。
もともと愛知でも、家業である建築や不動産管理の仕事を手伝っていた。
「知り合いの紹介でタカギプランニングオフィスを知ったとき、HPを見て、『あっ、かっこいい』って思ったんです。実家では普通のワンルームばかりを扱っていたので、こんなところがあるんだってすごく興味が湧きました」
働きはじめてから、どうでしたか?
「入居者さんもオーナーさんも、建物に対して気持ちの入っている方がすごく多いなと感じます。建物をこだわってつくっているからですかね」
「エントランスに毎月その月に合ったオブジェを飾るオーナーさんがいたり、退去される方から『このベランダには鳥がよく来てね』って、ちょっとしたポイントを教えてもらったり。どんな建物かっていうのを、生の声から知れるんです」
賃貸管理の主な仕事は、入居中の困りごとに対応することと、退去時の立会いと原状回復。
「大変なのは、原状回復のとき、借主さんとオーナーさんの折り合いがつかないときです。間に立って交渉するんですが、長引いてしまうとやっぱりオーナーさんに対して申し訳ないなって気持ちになったりします」
ある建物では、カビが生えてしまっていたことがあるそう。
それでも、借主さんとしては普通に使っていたとのことだった。
「客観的に判断しづらい部分なので、なかなか難しいです。でも、折り合いがつかないと、最悪訴訟や裁判になってしまいます。どちらにとってもお金も時間もかかることになってしまうので、そうならないよう話をしてみます」
ときには顧問弁護士に過去の判例を調べてもらい、判決をもとに提案することも。
「どんな問題でも、借主さんの気持ちにも、オーナーさんの気持ちにも寄り添って考えないといけません。人を思える人に向いているんじゃないかなと思います」
水漏れやエアコンの故障など、日々の困りごとも同じ。
「生活に直結することだから、不安も大きいですよね。それをできるだけ早く解決して『ありがとう』って感謝していただけると、やりがいを感じます」
事務も管理も、毎日小さな作業の積み重ねだけれど、目の前のこと一つひとつに向き合う姿勢が印象的でした。
愛着ある建築をつくるから、住まい手も、オーナーも喜んでいく。その好循環は、街にも広がっていきます。
そんな風景を維持していくために、働く人たちも建築に愛着をもっているのだと思いました。
(2016/6/26 倉島友香)