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「知名度ゼロのランニングブランドで、名ブランドひしめく日本のシューズマーケットを変える」2013年の年明けに、オン・ジャパンの代表・駒田さんは夢を描きました。
当時、まだ無名だったブランドの名前は「On (オン)」。スイスで生まれたランニングブランドです。
それから4年が経った今、国内での売上は40倍近くになり、プロ、アマ問わずランナーの間では熱心なファンも生まれています。

まだスタッフは5人しかいないし、忙しくて大変そう。けれど、調子をうかがってみると、みなさんそろって「楽しいです!」と答えてくれる。
夢、仲間、挑戦。なんだか少年マンガのようで、ちょっと照れくさくなるような言葉がぴったりのみなさんにお会いしてきました。
赤レンガ倉庫に、ランドマークタワー。海を臨む山下公園の脇には異国の雰囲気がある。横浜は、散歩にもランニングにももってこいの街だと思う。
そんな横浜の真ん中、馬車道駅を降りてすぐのビルに、オン・ジャパンのオフィスはある。


「オンは自分の人生を変えてくれたシューズなんです」
流れるような語り口で話ははじまった。
「僕は、オンに出会うまで逃げっぱなしの人間だったんです。子供のころは体育から、次は司法試験から逃げて、その次は営業という仕事からも逃げて」
意外なことに、駒田さんはもともと身体が弱く運動が苦手だったそうだ。それでも勉強だけは得意だったため、司法試験に挑戦するも挫折。営業として就職した最初の会社では、プライドが邪魔をして成績が出せず転職した。
転職先はスイス系の商社。そこで10年近く働いたころ、マーケティング担当を命じられたのが、ランニングブランドのオンだった。
「僕は走るのが一番嫌いだったんですよ。今まで逃げてきたツケがまわってきたように思えた。その日はがっくりしながらデスクにもどってね」
「でも、オンのサイトを見てみたら格好良かったんです。ブランド創業者の3人の対談を読んで『いけるかも』って思いました」
オンの歴史は、アキレス腱の故障に苦しんだトライアスロンの元アイアンマンチャンピオンのオリヴィエ・ベルンハルドが、自分自身が本気で履きたいと思えるシューズをつくろうと考えたことからはじまった。
その友人のキャスパー・コペッティとデビッド・アレマンがそれぞれセールスとマーケティングを担当するかたちで2010年に創業する。
アスリートの視点でつくられたシューズはクッション性が高く、それでいて軽い。“雲の上の走り”と、評されるほどの履き心地で、創業して早々、国際的なスポーツ展示会で賞を獲った実績があった。

「あなたも一緒にオンを信じてくれませんかって。『助けてくれ』と言って味方をつくるしかなかった」
個人のブログやSNSで広告塔になるべく、嫌いだったランニングも開始した。
「そうしているうちに、サポートアスリートが何人かできて、オンを置いてくれるお店もできた。『前よりも少し大きくなってきましたね』とか『期待してます』という声をもらうようになって」
「オンの成長を、まるで自分の子どもを見るように楽しみにしてくれる仲間が少しずつ増えていったんです。大変なことだらけなのに、はじめて仕事を楽しいと思えた」
ところが、はじめて1年半ほどで会社はオンの撤退を決める。短期的に結果を出すことを求められる商社では、できることに限界があった。

「僕もそのころには本気でオンを育てたいと思うようになっていました。ランニングも好きになっていました。もう逃げる気にならなかったですね」
「Live a Dream.」「Dream bigger.」この言葉を、スイス本社にいる創業者たちはよく使うのだそう。
「大きな夢を見据えているときは、その過程の面倒なことやしんどいことは楽ではないけど楽しい。僕はそうオンに教えられました」
オン・ジャパンの立ち上げにあたって、営業担当として仲間になったのが鎌田さん。子どものころからずっと長距離ランナーで、営業とは無縁のプロのトライアスロン選手だった方だ。

「オンのセールスは、世間の営業というイメージとは違うかもしれません。だから僕もやれてるのかも(笑)」
セールスの仕事は、取扱店舗をまわってオンの商品を置いてもらう交渉をしたり、販売スタッフに商品説明をしたりといったこと。出展イベントではエンドユーザーに直接販売することもある。
仕事内容だけを聞くと、普通の営業職と変わらない気がする。違うというのはどういうところなのでしょう。
「格好も見ての通りラフだけど、ビジネスというより“人”に会いにいく感じ。メールのやりとりだけでなく、現場のスタッフさんたちと直に触れ合って、自分の想いを伝えるということを大事にしています」
セールスの一番大事な仕事は、オンのスタッフと同じ熱量でオンを想ってくれる販売店やユーザーをつくること。だから、実際に人に会いに行って話をする時間を大事にしているそうだ。友だちのような関係になってしまうこともある。
「いろんなシューズを履いてきたけど、オンは性能もいいし面白いから自信を持って勧められる。僕がオンを売るのが楽しいのと一緒で、やっぱりその商品が好きだったらみんな売ってくれるんですよ」

「閉店セール」という垂れ幕が年中下がっているようなお店には置きたくないと、取扱いを断ることもあるとのこと。
「生意気かもしれないけど、一緒にオンを育てていきたいと思ってくれるお店としか働きたくないんです。ちゃんと定価で、自信を持ってセレクトされてるもののほうが信用できるでしょう」
オン・ジャパンでは、積極的にスタッフの名前を駒田さんのブログに載せるし、メディアにも出す。それはお店に行ったときに“オン・ジャパンの営業が来た”ではなくて“鎌田さんが来た”と感じてもらうためなのだそう。
ときには、お店側から会いたいスタッフの指名が入るなんてこともあるそうだ。
「僕たちからしたら、店舗スタッフも代理店もエンドユーザーもみんな仲間なんです。一緒にオンの価値を広めてくれる仲間の力がなくちゃ、オンは成長できないですよ」
続いてお話を聞いたのは、鎌田さんと同じくオン・ジャパン創業メンバーの前原靖子さん。オンのサポートアスリートのランニングチームに入っていた縁で駒田さんとつながり、オン・ジャパンに参加した。

売上を急激にのばしているオンを支えるカスタマーサービスは、基本的にメールでの対応をしているものの、人手が足りていない状況だそう。
「私は今まで英語を使って仕事をしたことがなかったんです。英語でのメール対応は楽ではありませんし、カスタマーサービスの日々の仕事は作業みたいなものもたくさんあります」
たとえば、100足の注文が入ったら100足分のサイズと色をシステムに入力する。同じことを何度もしないといけない場合もある。
「これを単純な作業と思ってしまったら辛いでしょうね。でも、良いシューズと良い営業がいて、その結果私たちのところに注文をいただけるんです。その後も、倉庫の方たちがシューズを一つひとつ箱に丁寧に詰めてくれて、お客様の元へ届けてくれている」
「いつも、1人ひとりにシューズを届けるチーム・オンの流れのなかにいると思って、丁寧に仕事しようと心がけています」
前原さんは、入社したばかりのころに訪れたスイス本社で、印象的なことを言われたそうだ。
「最初に上司のマークに『ヤスコはオンだからね』って言われたんです。Yasuko is On.なのだから、仕事を楽しくするのもつまらなくするのも私次第だって」
ときには、カスタマーサービスでもイベント出展に立ち会うこともある。チームなのだから協力し合うのは当たり前だと話してくれた。
みなさんと話をしていると、ちょうどセールスの新人、青野さんが営業先から戻ってきた。半年前の日本仕事百貨の記事をきっかけに入社した方だ。
青野さんは箱根駅伝の10区を走った経験がある長距離ランナー。大学卒業後はスポーツとは無縁の仕事をしていたけれど、やっぱりランニングに関わる仕事がしたいと思うようになったそう。

入社してみてどうですか?
「まだ5人しかいない会社なので、結構いろんなことに放り込まれます(笑)」
入社1週間目には、東京マラソンEXPOの販売スタッフの研修を任された。
「まだ入ったばかりなのに人に商品の説明をしないといけないなんて、焦りましたよ。大変なんだけど、これをやればきっとスキルアップになるって思えました」
そのあともバイヤーに向けたプレゼンテーションなど、どんどん新たな仕事を任されているそうだ。

「みんな放り込まれますからね!」と鎌田さんと前原さんも笑いながら加わってくれた。この雰囲気がオン・ジャパンという感じ。
そんなみなさんを前にして、最後に駒田さんがこんな言葉をくれました。
「この少人数で、ほんの数年前には無名だったブランドを、人気ブランドにしていく。そして、オンを通じて日本のランナーに楽しさを提案する。僕たちはそんな勝利を目指すチームなんです。そのためには楽はできない。一生懸命に練習して強くなって、チーム一丸で勝ちに行く」
「だから、とにかくやってみようって動ける人のほうが楽しめると思う。しくじったって後でみんなの笑い話になるんだし。みんなでフォローもしますしね、僕らはチームなんだから」

いつだって楽しく夢を見られる人を、オン・ジャパンでは求めています。
(2017/8/23 遠藤沙紀)