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二人の想いを花に託して

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

家族や友人の結婚式を思い返すと、その空間にはたくさんの花がありました。

たとえば新婦のブーケや、テーブルからウェルカムボードに至るまで。

新郎新婦にとって大切なエピソードを持つ花が添えられていたり、色使いから二人の雰囲気がにじみ出ていたり。

二人にとって、一生に一度しかない特別な日を彩る大切なピースです。

jec-01 今回はウエディングフラワーを制作し、一つの空間を仕上げるフラワーデコレーターとデコレーターを支える事務スタッフを募集します。

会社の名前は株式会社ジェック。結婚式場を中心に、花で空間をデコレーションしています。

ただ花を飾るだけの仕事ではないそうです。まだ形になっていない二人の想いを表現していく仕事だと思います。




この日訪れたのは、名古屋。

地下鉄で2駅先の丸の内駅へ。そこから5分ほど歩いたところに、ジェックの名古屋アトリエはある。

中に入ると、机から棚まで至るところに花があふれている。きっと、会場に飾る花なのだろうな。

jec-02 「きれいでしょう。婚礼の前には、アトリエが花でいっぱいになるんですよ」

そう話しかけてくれたのは、営業マネージャーの大住さん。一つひとつ丁寧に言葉を選んで話してくれる方。

jec-03 「ジェックは、17年前に静岡で創業した会社です。今でこそウエディングフラワーが中心ですが、当時はスリランカなどから輸入した珍しい植物を販売する事業からのスタートでした」

「試行錯誤するうちに、『結婚式に自分たちのお花を飾ってみたい』という声がメンバーから自然と上がってきて。華やかなブーケや花束を制作することへの憧れがあったんです」

根っこにあるのは、お花や植物はコミュニケーションツールのひとつという考え。

まずは友人や知人の結婚式に花を持ち込み、式場に営業することからはじめた。そうするうちに、一つ二つと価値観に共感し、装飾を任せてもらえる会場が増えていく。

ここ名古屋アトリエも、現在は3会場を担当し、多い日には1日10組ほどの婚礼を手がけるまでになった。

ところが、忙しく過ぎていく日々の中で、自分たちは花という素材ばかりを見て大切なものを見落としているのではないかという思いが生まれたそう。

「我々の仕事はお花をきれいに飾ることです。けれど一番大切にしなければいけないものは、新郎新婦お二人の想いを形にすることなんじゃないかな、と原点回帰する機会があって」

新郎新婦の想い。

「結婚式に花があふれているのは、そのほうが見栄えがいいという単純なものではない。新郎新婦のご両親への感謝の気持ちや、ゲストへのおもてなしの気持ち、そんなお二人の言葉では表現しきれない想いをお花を通して伝えるためなんです」

jec-04 結婚式に飾られる花は、たしかに感謝や祝福の気持ちが表れているように思う。

「スタイルやセンスはもちろんですが、『花を飾りたい』と思っている人の気持ちをしっかりと受け止め、形にする。お二人の想いがゲストの方にもしっかりと伝わる空間を花で表現することこそ、いちばん大切なんです」

「おもてなしする二人の想いに寄り添って、花を通じて空間にストーリーを添える。これが僕たちの仕事なのだと思います」




続いてお話を聞いたのは、昨年の春からデコレーターとして働く長田さん。澄んだ声と柔らかな笑顔が印象的な方。

「先週末は婚礼が続いて。私も緊張していたので、今は少しほっとしています」

jec-05 ジェックには新卒で入社。けれどもともとは、別の職業を目指していたそう。

「小さなころからマスコミ業界に憧れていたんです。けれど就職活動を続けていくうちに、どうして自分がマスコミで働きたかったのか分からなくなってしまって」

本当に自分が探している仕事はなんだろう。手がかりを掴むため、手元にあったノートに、勉強やサークル、アルバイトと、今までの経験をすべて書き出した。

「そうするうちに、自分は人から『ありがとう』と言ってもらえたときが一番うれしかったな、と気づいて。その場所を探すために、また一から就職活動をはじめました」

ジェックを知ったのは、まさにそんなとき。偶然見つけたホームページの「お花でありがとうと言ってもらう仕事」という言葉に目が止まった。

「お二人にとって一生に一度しかない大切な日に、お花を贈ることで感謝してもらえる。すごく素敵な仕事だと思ったんです」

jec-06 一方で、華やかなことばかりではないだろうという覚悟もしていた。

「やっぱり短期間で覚えなければいけないことが本当に多かった。花の種類や金額はもちろん、花の扱い方、お客さまとの打ち合わせの練習も。目が回りそうでした」

「けれど、入社して2週間ほどで打ち合わせに同行させてもらえて。数年間は下積みで、お花には触れないだろうと思っていたからすごくうれしかった」

デコレーターは制作だけでなく、打ち合わせからセッティングまで一貫して関わる。

特に気を遣うのが打ち合わせ。今の時代、SNSでさまざまな情報を集められるようになり、デザインの選択肢が広がったぶん、どれもしっくりこないと焦るお客さまが多いのだそう。

「そんなときには、会場を選んだ理由や誰のために用意したパーティーなのか、一見お花に関係ないことからお聞きします。そうするうちに、どこに重点を置いて花を飾りたいのか掴めてくるんです」

二人の選んだ衣装も大事な判断材料。たとえばサテン生地であれば落ち着いたデザインを、フリルが多ければかわいらしいデザインを提案してみる。

「写真をお見せしながらじっくりとイメージを固めていきます。制作のときも、お二人のことを思い浮かべながら形にしていく。ただお花を飾るだけの仕事ではないですね」

jec-07 ここで、印象的だったお客さまを教えてくれた。

「カラフルな会場を選ばれたお客さまでした。お花もピンクや水色、黄色や白を使ったカラフルなものをご希望で。打ち合わせも順調に進みました」

「ただ、婚礼が近づくにつれて、新婦さまがお花の仕上がりをとても心配されるようになって。色が混ざってしまって、まとまりのないものになってしまったらどうしよう、と不安でいっぱいなご様子でした」

ウエディングフラワーは、当日まで形となって現れない。

長田さんも何度もシミュレーションを重ね当日を迎えたが、果たしてお二人のイメージ通りに制作できたのか、不安に思っていたそう。

婚礼が終わったあと、一通のメールが届いた。

「あの新婦さまからでした。緊張しながら開くと、『想像以上の仕上がりでした。素敵なお花をありがとう』と書いてあって」

「ああ、本当によかったって。とてもうれしかったんです。ずっと忘れられないと思います」

jec-08 少しずつ経験を積んできた今でも、もどかしさを感じることがあるという。

「正解がない仕事です。お客さまの『こうしたい』というイメージが明確でも、ご予算の都合で実現できないこともあります。そんなとき、すぐに代案を出せない自分が悔しいし、お客さまに対しても申し訳ない気持ちになってしまう」

「それでもお客さまと打合せを重ねて、最後に『素敵な花をありがとう』と言葉をかけていただけると、ほっとして肩の力が抜けるんです。そのひと言があるから、頑張れているのかもしれませんね」




最後にお話を聞いたのは、事務スタッフの安田さん。

取材当日も、あちこちから「安田さん、ちょっといいですか」と声がかかっていて、周囲からお姉さんのように慕われていることが伝わってきた。

jec-09 「以前は、金融業で10年ほど働いていました。そのころからお花が好きで、アレンジメントも習っていて。次はお花に関わる仕事をしたいと思っていました」

インターネットで検索したところ、ジェックの求人を見つける。

「デコレーターの募集もありましたが、あまり自信がなくて。まずは自分のできる範囲でお花に関われたらいいなと思って事務職を選びました」

ジェックの事務スタッフは、経理や電話対応といった一般的な事務作業から、花や備品の仕入れ、デコレーターの管理まで幅広く担当する。

さらに今回募集するスタッフは、東京の本部で全アトリエのデコレーターが制作に集中する環境を用意することが仕事。そのため、総務や経理といった管理業務も行うことになる。

「アトリエでも本部でも、私たち事務スタッフはデコレーターを支えることが仕事です。お花を扱いますから、ざっとでも色や種類を覚えているとスムーズに仕事が進むかな。お花に興味がある方だといいかもしれませんね」

そんな安田さんは、仕事をする上で譲れないことがあるという。

「絶対にミスをしないことです。お二人にとって、結婚式は一生に一度しかありません。もし私がデータの数字を間違えてしまったら、デコレーターが積み上げてきたものはもちろん、結婚式のすべてが台無しになってしまいます。二重、三重のチェックは欠かせません」

jec-10 「帰ろうとしたときに、至急の電話を受けることもあります。もし私が帰ってしまえば、結果的にお二人に迷惑がかかってしまう。ですから、夜遅くまで作業する日もあります。緊張感は常にあるかな」

様子見のつもりだったけれど、気づいたら4年も働いていたと笑う安田さん。

働き続ける理由をたずねると、こう答えてくれた。

「デコレーターのおかげですね。皆、大変なはずなんです。手も荒れてしまうし、多くの婚礼を控える日には夜遅くまで残って制作している。『どうすればいいかな』と周囲に相談している姿もよく見かけます」

jec-11 「お花の仕事というと華やかで軽やかなイメージでしたが、デコレーターは想像以上に体力と気力を使う仕事でした。それでも『お客さまのために』って明るく頑張っている姿を見ると、私も皆を支えたいと思えるんです」




最後に、印象的だったデコレーターの長田さんの言葉を。

「不安になることもあります。それでもお二人のためのお花は、お二人の想いを知っている私にしかつくれない。一生に一度の特別な日に、私のつくったお花をそばに置いていただける。すごくありがたいなと思います」

まだ形になっていないものをつくる仕事です。ときには、大変に思うこともあるかもしれない。

それでも、想いを形にして届けた先には特別な笑顔が待っているのだと思います。

(2017/9/22 遠藤真利奈)

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